【弁護士が解説】2022年 人事・労務の法改正最新トレンド。人事・採用担当者が押さえておくべき“ポイント”

2022.03.23

第一東京弁護士会労働法制委員会、日本CSR普及協会(雇用労働専門委員)、経営法曹会議等に所属。経営者側労働法を多く取り扱い、労働審判・労働訴訟等の係争案件、団体交渉(組合・労働委員会)、労災(行政・被災者対応)、労務DD対応を得意とする。
経営課題を抽出し、依頼者のニーズを踏まえたベストプラクティスの提案を心掛ける。
主著に『労働行政対応の法律実務』(中央経済社 共著)、『「働き方改革実行計画」を読む』(月刊人事労務実務のQ&A 2017年7月号 日本労務研究会 共著)など。

【高齢者雇用安定法】年齢が65歳から70歳に引き上げられた
【パートタイム・有期雇用労働法】中小企業も同一労働同一賃金の対象に
【パワハラ防止法】中小企業も義務化。迅速な対応が求められる
【育児介護休業法】産後パパ育休が創設。育休の柔軟な分割取得が可能に
【女性活躍推進法】101人以上の企業で「一般事業主行動計画」の策定が義務化
【公益通報者保護法】2004年の公布後はじめての改正で実効性の伴った内容に

2021年4月以降、労働法関連の法改正が増えており、人事・採用担当者は通常業務を行いながら、法改正の動向を追いかけていかねばならず、大変だと思います。

そこで、「高齢者雇用安定法」「パートタイム・有期雇用労働法」「パワハラ防止法」「育児介護休業法」「女性活躍推進法」「公益通報者保護法」の改正内容ならびに、押さえておくべきポイントについて、藥師寺正典弁護士にまとめて解説していただきました。

【高齢者雇用安定法】年齢が65歳から70歳に引き上げられた

<施行日:2021年4月1日>

これまでも同制度はありましたが、今回の改正により、高齢者の就業確保措置の年齢、具体的には、定年に達した人を引き続き雇用する継続雇用制度の導入が65歳から70歳へと引き上げられました。定年制の廃止についても、変わらず盛り込まれています。

雇用確保措置以外の選択も可能となりました。「継続的な業務委託契約」「社会貢献事業への継続的な参加」です。これらを選択する場合には労働組合もしくは、過半数代表者の同意を取る必要があります。ただし、あくまで同法は努力義務です。そのため対策を講じなくても、企業名が公表されるなどの行政指導や罰則はありません。

「該当する従業員はいるのかどうか」「65歳を超えても働きたいと望んでいるのか」このような現状ならびに従業員のニーズを把握することが、まず対応すべきポイントになります。長年培ってきた業務知識をはじめ、特殊技術や豊富な人脈など、高齢者は事業に貢献できるさまざまなアセットを備えていることが多く、安定雇用をすることによるメリットがたくさんあります。

一方で、いつまでも高齢者に頼っていては、技術やノウハウの継承ならびに、若手への世代交代が進まないという課題が生じます。人件費に関しても若手より高い場合が一般的であり、労災リスクも高齢者の方が高いと言わざるを得ません。このように、自社の状況ならびに利点・課題などを総合的に判断した上で、就業確保措置の導入について検討することが大切です。

高年齢者雇用安定法改正の概要はこちら

【パートタイム・有期雇用労働法】中小企業も同一労働同一賃金の対象に

<施行日:2021年4月1日>

同じ仕事をしている労働者には同じ給料を支給する。改めてのおさらいになりますが、パートタイム・有期雇用労働法(同一労働同一賃金)の基本的な考え方であり、正社員とパートタイムやアルバイト、有期雇用の契約社員や非正規雇用の従業員との不合理な格差をなくすために設けられたものです。

 

同法は大企業では2020年4月1日からすでに施行されていましたが、2021年の4月1日からは中小企業へも適用されていて、実際に裁判に持ち込まれた事例もいくつか出てきていますので、紹介しながらポイントを解説していきます。

 

上の囲み2つの判例は、労働条件の相違が不合理ではないと最高裁で判決が下った、つまり、会社側の主張が認められた事例です。一方、下の3つは条件の相違は不合理であると判断され、会社側の主張が退けられたケースとなります。

勝訴例の内容は、正社員に対しては支給している賞与・退職金を、有期雇用の契約社員・アルバイト職員には支給しないことが不合理に当たるかどうか。一方、敗訴例の内容は、夏や冬の長期休暇、私傷病、祝日出勤や扶養者への手当といった待遇についての相違でした。

両事例の内容から明確な判断基準を客観的に答えるのは難しく、差を設ける場合は、どのような主旨や目的で設けるのかをじっくりと考えることが大切であり、専門家に相談することも必要でしょう。

【パワハラ防止法】中小企業も義務化。迅速な対応が求められる

<施行日:2022年4月1日>

こちらもおさらいになりますが、パワハラは主に6種類に分類されており、スライドのような行為が対象となります。中小企業においてはこれまでは努力義務であったパワーハラスメント防止措置、いわゆるパワハラ防止法が、今年の4月1日より義務化されます。

 

すでに対応している企業も多いと思いますが、改めて講ずべき措置や内容について解説していきます。まずは「方針の明確化ならびに周知・啓発」です。具体的には以下の2つの措置を講じる必要があります。

・職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること
・行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則などの文書に規定し、労働者に周知・啓発すること

相談窓口の設置など、パワハラを受けたのではと感じた従業員に対し、適切に対応するための体制整備も求められます。こちらも法律に明記されている具体的な対応策を紹介します。

・相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
・相談窓口担当者が相談内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること

相談を受けただけでは策を講じているとは言えません。事実関係の確認などを迅速に行うとともに、パワハラと認定された場合も、同じく迅速に対処します。こちらも、具体的な策を紹介します。

・事実関係を迅速かつ正確に確認すること
・速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
・事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと
・再発防止に向けた措置を講ずること

さらに、次のような措置を講じることも義務化されています。

・相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨を労働者に周知すること
・相談したこと等を理由として、解雇その他の不利益取り扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

【育児介護休業法】産後パパ育休が創設。育休の柔軟な分割取得が可能に

育児介護休業法の改正は2022年4月1日から施行され、2022年10月1日、2023年4月1日と三段方式、大きく5つの内容で改正が進められていきます。それぞれ解説していきます。

 

1.雇用環境整備、個別の周知・取得意向確認の義務化

<施行日:2022年4月1日>

 

育児休業を取得しやすい雇用環境の整備においては、スライドに記載された①~④のいずれかの措置を講じる必要があります。いずれかですから、全て対応する必要はありません。

個別の周知・取得意向確認の義務化においては、産後パパ育休など、育休に関する各種制度などを周知する必要があります。ただし先とは異なり①~④の措置を“すべて”実施することが義務付けられています。

確認においては基本面談、書面公布としていますが、従業員からの申し出によりメール等でも可能となっています。どちらにおいても重要であり注意すべきは、“個別”に行う必要があるということです。

2.有期雇用労働者の取得要件緩和

<施行日:2022年4月1日>

雇用期間が1年以上必要といった以前の条件が撤廃されました。そのため雇用期間が1年未満の有期雇用者など、以前は取得条件に該当していなかった非正規労働者なども、同法の対象となります。より多くの労働者が、育児・介護休業を取得しやすくなったと言えるでしょう。

3.出生時育児休業制度の創設(産後パパ育休)

<施行日:2022年10月1日>

今回の法改正の本丸と言える内容です。育休とは別枠で、産後8週以内に最大4週間(28日間)の育休が取得可能になります。分割取得が2回まで可能になったことが大きなポイントです。

 

申請期限においても以前は原則2カ月前でしたが、休業の2週間前までと大幅に短くなりました。ただし対応が難しい企業を考慮し、労使協定を結び1カ月前と定めることもできます。

同じく会社側と労働者が同意し労使協定を結べば、産後パパ育休中であっても、上限はありますが働くことができます。

4.育児休業の分割取得

<施行日:2022年10月1日>

分割については、従来からある育休制度においては原則1回であったのが、分割して2回取得可能になりました。その結果、夫婦が期間をずらし交代で、育児休業を取得しやすい状況になったと言えるでしょう。

5.育児休業取得状況の公表義務化

<施行日:2023年4月1日>

常時働いている従業員が1000人を超える企業に対しては、どの程度の割合の従業員が育児休業を取得しているのかといった情報を、自社のホームページや厚生労働省の関連サイトで公表することが義務化されます。

【女性活躍推進法】101人以上の企業で「一般事業主行動計画」の策定が義務化

<施行日:2022年4月1日>

女性活躍推進法においては、自社の女性の活躍に関する状況把握や課題分析を行うこと、状況把握・課題分析を踏まえ、国の「事業主行動計画策定指針」に即した「一般事業主行動計画」を策定すること、さらに、同計画書ならびに内容を、管轄の都道府県労働局へ届け出ると共に、労働者への周知・公表が義務付けられています。

今回の改正では、これらの義務対象がこれまでの301人以上の従業員を抱える事業主から101人以上へと拡大されます。その結果、同計画書を新たに作成する企業が増えます。

一般事業主行動計画は大きく次の2つの内容から1つ以上を選択し、その上で数値目標を定める必要があります。ただし、目標の達成は努力義務となっています。

(1)女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供に関連する項目
例)女性労働者の割合など

(2)職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関連する項目
例)男女の平均継続勤務年数の差異など

国の指針も含めた策定手順については、厚生労働省が資料を公表していますので、該当する企業は参考にするといいでしょう。

女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!関連資料はこちら

【公益通報者保護法】2004年の公布後はじめての改正で実効性の伴った内容に

<施行日:2022年6月1日>

2004年に公布されて以降、一度も改正のなかった「公益通報者保護法」がはじめて改正されることになります。背景としてはスライドの通り、対象範囲が狭く活用されていない、実効性に乏しいといった課題解決が目的だと思われます。

 

大きくは3つの観点で改正が行われました。

①事業者自ら不正を是正しやすくするとともに、安心して通報を行いやすくする
②行政機関等への通報を行いやすくする
③通報者がより保護されやすくする

 

①では公益通報対応業務従事者を設定するといった、内部通報体制の整備が義務付けられました。ただし、300人以下の事業者については努力義務としています。

②においては、通報内容について憶測ではなく、事象を裏付ける資料や関係者の供述など信じられる理由が必要でしたが、なくても通報を行えるように改正されました。

③においては、通報者に対する解雇を含めた不利益な取り扱いの禁止に加え、公益通報を理由とする損害賠償を事業者は行えないこととなりました。

対象者は、以前の労働者のみから退職後1年以内の元従業員、役員が追加されました。また、対象は刑事罰相当であったのが、過料も含まれる行政罰も含まれることとなりました。その結果、パートタイム労働法や男女雇用機会均等法などに関する被害も、通報対象となり被害を受けたと感じた場合は、まずは通報することが大切だと言えるでしょう。

編集後記

2022年は人事・労務に関する法改正が多く、それに伴う対応や社内制度の見直しなど、忙しい日々の業務の中で最新の情報を把握するのに苦労されている担当者の方も多いのではないでしょうか。大手企業のみならず、中小企業でも対応が義務付けられる内容も増えてきているため、重要なテーマについては専門家の意見に触れる機会を意識的に持つことも大切です。自社にとって対応が必要な内容を把握するための参考としていただければ幸いです。

取材・文/杉山忠義、監修/弁護士 藥師寺 正典、編集/白水衛・d’s JOURNAL編集部

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