健康経営とは?『健康経営優良法人』認定のメリットは?取り組み方や企業事例を丁寧に解説

2022.06.28
d’s JOURNAL編集部
健康経営とは?
健康経営はいつから、なぜ注目されているのか?
健康経営に取り組む目的やメリットとは?
健康経営の現状と課題
健康経営優良法人の認定基準とは?
健康経営優良法人の申請方法とは?
健康経営に取り組む企業の事例

従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する、「健康経営」。政府も健康経営を推し進めており、優良な健康経営を実践していると認められた企業は、「健康経営優良法人」として顕彰されます。「健康経営に取り組むことで、どのような効果が期待できるのか」「健康経営優良法人に認定されるには、どのような手続きが必要か」などを知りたい担当者もいるのではないでしょうか。今回は、健康経営優良法人に認定されるメリットや申請の流れ、具体的な取り組み事例をご紹介します。

健康経営とは?

健康経営とは、従業員の健康を重要な経営指標と捉え、健康の管理と増進に積極的に取り組むこと。企業においては、医療費の他、「アブセンティーズム(病欠、病気休業している状態)」や「プレゼンティーズム(何らかの疾患や症状を抱えながら出勤し業務遂行能力や労働生産性が低下している状態)」による労働生産性の損失も、健康問題に関連するコストと考えられます。そのため、健康経営の枠組みにおいては、従業員の健康管理の成果指標を「医療費」と「労働生産性」とし、健康施策を検討していくことが重要です。まずは、健康経営に関係する単語の意味について解説します。
※「健康経営®」はNPO法人健康経営研究会の登録商標です。
(参考:厚生労働省『「健康経営」の枠組みに基づいた保険者・事業主のコラボヘルスによる健康課題の可視化』)

健康経営優良法人とは?

健康経営優良法人とは、特に優良な健康経営を実践していると認定された企業のこと。認定をするのは、国民一人一人の健康寿命延伸と適正な医療について民間組織が連携し、行政の全面的な支援の下活動を行う「日本健康会議」です。

経済産業省が2016年度に創設した「健康経営優良法人認定制度」により、地域の健康課題に即した取り組みや日本健康会議が進める健康増進の取り組みを基に、特に優良な健康経営を実践している法人が健康経営優良法人に認定されます。

本制度では企業の規模に応じて「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」の2つの部門を設け、それぞれ健康経営優良法人を認定。その中でも優れた企業として、大規模法人部門認定法人のうち上位500法人を「ホワイト500」、中小規模法人部門認定法人のうち上位500法人を「ブライト500」(2020年度から実施)として認定しています。
(参考:経済産業省『健康経営優良法人認定制度』)

健康経営に関わる顕彰制度(全体像)

(参考:経済産業省『健康経営の推進について』)

健康経営銘柄とは?

健康経営銘柄とは、経済産業省と東京証券取引所により、東京証券取引所の上場会社の中から「健康経営に優れた企業」として選定された法人のこと。長期的な視点で企業価値の向上を重視する投資家にとって魅力ある企業の紹介を通じて、企業による健康経営の取り組みを促進することを目的としています。

健康経営銘柄に選ばれた企業には、健康経営を普及拡大していくアンバサダー的な役割の他、健康経営の効果を分析し、積極的に発信することも求められます。
(参考:経済産業省『健康経営銘柄』)

健康経営アドバイザーとは?

「健康経営アドバイザー」とは、健康経営の必要性を伝え、実践へのきっかけをつくる人材のことです。経済産業省から委託を受けた東京商工会議所が実施する研修プログラムを修了し、効果測定で一定の基準に達した人が健康経営アドバイザーとして認定されます。

健康経営アドバイザーに認定され、所定の有資格者または所定の実務経験者の条件を満たした人は、健康経営に取り組む中小企業に対して課題抽出や改善提案、計画策定などのサポートをより専門的に行う「健康経営エキスパートアドバイザー」の研修を受講することができます。

福利厚生やウェルビーイングとの違い

健康経営と比較されることの多い、「福利厚生」や「ウェルビーイング」との違いを見ていきましょう。

福利厚生との違いは?

福利厚生とは、従業員やその家族が幸福かつ豊かな生活を送れるよう、企業が提供する給与以外の報酬のこと。福利厚生には、社会保険を代表とする法律で義務付けられた「法定福利厚生」と、健康診断の補助や社員食堂といったように企業が独自に定める「法定外福利厚生」があります。福利厚生は、健康経営を実現するための手段の一つであると言えるでしょう。
(参考:『【3分で読める】福利厚生を選ぶならコレ!種類や導入方法など知っておきたい基本事項』)

ウェルビーイングとの違いは?

ウェルビーイングとは、個々の従業員の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態であることを意味する概念です。健康経営では主に心身の健康に重きを置きますが、ウェルビーイングではそれらに加え、「社会的」にも満たされた状態かどうかにも注目します。ウェルビーイングの方が、健康経営よりも広義の意味で従業員の健康・幸せを考えると理解するとよいでしょう。
(参考:厚生労働省『雇用政策研究会報告書 概要(案)』)

健康経営はいつから、なぜ注目されているのか?

従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する健康経営ですが、いつごろから注目されているのでしょうか。時代背景や導入の目的を解説します。

アメリカ発祥の健康経営

アメリカでは、労働災害件数の増加により、1960年代から健康経営に関連する動きが始まりました。1970年代にかけては「企業における安全性向上プログラムの実施」や「労働安全衛生法の制定」などが行われます。1980年代に入り、増大する従業員の医療費負担が深刻化したことで、より多くの企業が健康増進のための施策に取り組むことになりました。

健康経営の概念は、1992年に、アメリカの心理学者ロバート・H・ローゼンが自著「The Healthy Company」において提唱。「従業員の健康管理を重要な経営課題として捉え、企業が従業員個人の健康増進や健康の維持を実践することで生産性などの業績向上が図れる」という考え方を示しました。

2010年代以降は、従業員の医療費削減のみならず、「従業員の満足度や健康意識の向上」「優秀な人材の獲得」などの効果も注目されています。
(参考:株式会社日本総合研究所『デジタルで変容する米国の「The Healthy Company」~日米健康経営の比較から考察するわが国の課題~』)

2000年代前半から日本でも注目されるように

日本では、「労働人口の減少」や「ブラック企業の顕在化」「企業の健康保険料の増大」などの経済的・社会的な背景を受けて、2000年代前半より「人材を確保し、長く活き活きと働ける環境をつくること」の重要性が高まっていました。

政府が、成長戦略として掲げた、2013年の「日本再興戦略」や、2017年の「未来投資戦略」において、「国民の健康寿命の延伸」に関する取り組みの一つとして健康経営を推奨。2014年度に「健康経営銘柄」を選定し、2016年度には「健康経営優良法人認定制度」を創設しました。現在は従業員への健康投資は企業の収益向上につながるとの観点から、経済産業省が主体となって健康経営を推進しています。
(参考:株式会社日本総合研究所『デジタルで変容する米国の「The Healthy Company」~日米健康経営の比較から考察するわが国の課題~』)

健康経営に取り組む目的やメリットとは?

実際に健康経営を取り入れることで、企業にはどのような効果があるのでしょうか。企業が健康経営に取り組む目的や、得られるメリットについてご紹介します。

健康経営に取り組む目的やメリット

個人の心身の健康状態の改善による生産性の向上

健康経営の最大のメリットは、プレゼンティーズムやアブセンティーズムの減少による、医療費の抑制です。従業員の心身の健康状態が良好になることで、事故や労災のリスクや生産性の損失が減少し、企業全体の生産性向上も期待できます。

組織の活性化

組織が活性化することも、健康経営のメリットです。従業員の健康状況の改善を目的とした組織体制の構築や具体的な施策が実行されることで、仕事の満足度やエンゲージメントの向上が望めます。組織の活性化により、離職率の低減や企業業績の向上も促され、企業の持続的な成長につながるでしょう。

企業価値の向上

健康経営優良法人として顕彰されることは、企業価値の向上にもつながります。社会的な評価を受けることにより、顧客満足度や商品ブランドの向上といった効果が見込めるでしょう。また、採用活動において、優秀な人材を確保できる可能性も高まります。

健康経営の現状と課題

多くのメリットがある健康経営ですが、東京商工会議所『健康経営に関する実態調査 調査結果』によると、2018年時点での健康経営の導入は20.8%にとどまっています。その理由としては、「ノウハウや人材の不足」「効果が見えにくい」「プライバシーへの配慮」といったことが課題となり、実践が難しいこともあるようです。

「健康経営」を実践してみたいですか?

健康経営を実践するにあたり、課題になる(なっている)と思うのはどれですか?
(参考:東京商工会議所『健康経営に関する実態調査 調査結果』)

健康経営は中長期的な取り組みであり即座に効果を実感しづらい面もあるため、従業員の不満につながらないよう、事前のしっかりとした説明や個人情報活用への配慮が重要です。その上で、従業員が健康経営へどのように関与していくか、戦略や計画を策定する必要があります。
(参考:東京商工会議所『健康経営に関する実態調査 調査結果

健康経営優良法人の認定基準とは?

では、健康経営優良法人として社会的にも評価を受けるためには、どのような基準を満たすとよいのでしょうか。

先ほど述べた通り、健康経営優良法人認定制度には、「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」の2部門があります。どちらに区分されるのかは、業種ごとの「常時使用する従業員の人数」によって決定します。

また、健康経営優良法人の認定要件は、主に以下の5つの大項目で構成されています。

健康経営優良法人の認定要件

「3.制度・施策実行」には、3つの中項目「従業員の健康課題の把握と必要な対策の検討」「健康経営の実践に向けた土台づくり」「従業員の心と身体の健康づくりに関する具体的な施策」があります。

それぞれの大項目には必須項目と、指定された数以上の評価項目を満たしている必要があるものとがあり、部門によって要件が異なります。ここでは、参考として、2021年度のそれぞれの部門における具体的な認定要件を紹介します。なお、2022年度以降は要件が変更になる可能性もありますので、ご注意ください。

大規模法人部門

大規模法人部門は、中小規模法人部門に比べ、必須項目が多いことが特徴として挙げられます。特に、「産業医・保健師の関与」や「健保組合等等保険者との協議・連携」が必須であることに注意が必要です。銘柄やホワイト500の認定では基準がより厳しくなります。

健康経営銘柄2022選定及び健康経営優良法人2022(大規模法人部門)認定要件

(参考:経済産業省『健康経営銘柄2022選定及び健康経営優良法人2022(大規模法人部門)認定要件』)

中小規模法人部門

中小規模法人部門では、大企業部門と同様「組織体制」や「法令遵守・リスクマネジメント」などの大項目に取り組むとともに、「制度・施策実行」の各中項目において、一定数以上の項目を満たしている必要があります。

なお、「健康経営の取り組みに関する地域への発信状況」と「健康経営の評価項目における適合項目数」を評価し、上位となった500法人が「ブライト500」として認定されます。

健康経営優良法人2022(中小規模法人部門)認定要件

(参考:経済産業省『健康経営優良法人2022(中小規模法人部門)認定要件』)

健康経営優良法人の申請方法とは?

続いて、健康経営優良法人制度に申し込むための流れやスケジュールをご紹介します。こちらも2021年度の情報ですので、最新の予定は経済産業省の健康経営優良法人認定制度に関するページをご確認ください。

申請から認定までの流れについて

申請から認定までの流れは、部門によって異なります。大企業法人部門では経済産業省が実施する「従業員の健康に関する取り組みについての調査」(健康経営度調査)への回答が必要です。

中小規模法人部門では、まず加入している保険者(協会けんぽ、健康保険組合連合会など)が実施している健康宣言事業に参加しなければなりません(加入している保険者が健康宣言事業を実施していない場合などには、代替案があります)。次に、自社の取り組みで認定基準に該当するものを申請書に記載します。

両部門ともに、日本健康会議認定事務局へ申請し、認定審査を経たのち、日本健康会議において認定されます。

申請から認定までの流れについて

(参考:経済産業省『健康経営優良法人の申請について』)

スケジュールについて

2021年度の健康経営優良法人認定までのスケジュールは、以下の通りでした。例年、前年の8月から10月にかけて、健康経営度調査や申請の受け付けが行われているようです。最新情報は『健康経営優良法人の申請について』のページをご確認ください。

スケジュールについて

(参考:経済産業省『健康経営優良法人の申請について』)

健康経営に取り組む企業の事例

実際、各企業はどのように健康経営に取り組んでいるのでしょうか。2021年度に健康経営銘柄に認定された企業の事例を、先ほどご紹介した認定要件の評価項目に照らして、ご紹介します。
(参考:経済産業省『2022健康経営銘柄 選定企業紹介レポート』)

「健康経営の実践に向けた土台づくり」の取り組み事例

「健康経営の実践に向けた土台づくり」では、「ヘルスリテラシーの向上」や「ワークライフバランスの推進」「職場の活性化」などの観点が評価のポイントです。

株式会社KSK「会食支援や読書会などのオンライン対応でコミュニケーションの機会増」

株式会社KSKでは、「オンライン会食の費用を1人当たり10回まで支援」「オンライン読書会の開催」など、さまざまなエンゲージメント施策により社員間のコミュニケーションを活性化。1on1ミーティングも半期で1人当たり平均3.8回実施しました。これらの取り組みにより、高ストレス者の割合低下や相対的プレゼンティーズムの低減といった効果が生まれています。

東急不動産ホールディングス株式会社「労働時間の適正化と睡眠の改善へ向けた積極的なアプローチ」

東急不動産ホールディングス株式会社は、生産性低下の一因に「業務中の眠気」が挙げられたことを受け、PCシャットダウンシステムを導入し、労働時間の適正化と睡眠時間の確保を促進しています。「仮眠室の設置」や「中抜け勤務の制度化」など、プレゼンティーズムの低減につながるワークスタイルも推進。こうした取り組みの結果、問診で9割以上が睡眠においてポジティブに回答したり、ストレスチェックの集団分析で抗うつ感・疲労感が全国平均より良好な結果になったりといった成果がありました。

「従業員の心と身体の健康づくりに関する具体的対策」の取り組み事例

「従業員の心と身体の健康づくりに関する具体的対策」では、「食生活の改善」や「運動機会の増進」「メンタルヘルス不調者への対応」などに関する施策が評価されています。

マルハニチロ株式会社「自社製品を活用した食生活の改善で中性脂肪率が減少」

マルハニチロ株式会社では、水産由来の栄養成分DHAを積極的に摂取する「DHAチャレンジ」を実施。自社製品を活用し、食を通じた健康づくりを推進しています。メーカーの強みを活かした施策により、参加者の中性脂肪率の減少や、全体の健康意識向上と食習慣の改善につながりました。

株式会社大和証券グループ本社「女性特有の健康課題に対応した休暇の制度化で女性活躍を推進」

株式会社大和証券グループ本社では、女性特有の健康課題に対処するため、「Daiwa ELLE Plan」をスタート。健康リテラシー研修や管理職への理解促進など、包括的な取り組みを進めています。従来の「生理休暇」を、生理のみならず更年期の体調不良や不妊治療でも利用できる「エル休暇」に改めたことで、利用者が増加。管理職に占める女性の割合が上昇するなどの効果も表れています。

まとめ

健康経営には、「生産性の向上」や「組織の活性化」といったメリットがあります。健康経営優良法人に認定されれば、企業価値の向上によって優秀な人材の獲得も見込めるでしょう。企業の持続的な成長につなげるためにも、自社の健康課題を把握し、従業員が心身ともに健康になるような施策を行うことで健康経営優良法人を目指してみてはいかがでしょうか。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、編集/d’s JOURNAL編集部)

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