縁故採用とは|導入メリット・デメリットとリファラル採用との違い

2022.09.14
d’s JOURNAL編集部
縁故採用とは
リファラル採用との違い
縁故採用のメリット
縁故採用のデメリット
縁故採用の導入が有効なケースとは
縁故採用を導入する場合の注意事項
縁故採用に代わる採用手法
まとめ

人との縁や個人的なつながりなどを活かして採用を行う「縁故採用」。人材獲得が難しくなってきている中、十分な人手を確保するために有効な採用手法の一つとされますが、同時に縁故採用に対してネガティブな印象を持つ人も少なくありません。

どのようなケースで縁故採用の導入は有効なのでしょうか。この記事では、縁故採用の概要やメリット・デメリット、導入時の注意点などをご紹介します。

縁故採用とは

縁故採用とは、企業の経営者や役員、社員の伝手(つて)を活かして人材を採用する手法です。書類選考や面接といった通常通りの選考フローを経て採用するケースもありますが、「顔合わせのみで採用する」「書類選考のみ免除する」など、通常とは異なる選考フローを経て採用するケースもあります。

そのため、「選考を行わずに採用されているのではないか」というイメージが先行し、縁故採用に対してネガティブな印象を持つ人も見受けられるのが実情です。

縁故採用は、限られた人材と出会う機会を増やす手段として有効ですが、導入する際は社員への十分な広報やルール設定が求められます。

法律的な問題・違法性について

民間企業の場合、縁故採用に関して法的な問題は生じません。しかし、国や自治体が採用する公務員にて縁故採用が行われた場合、地方公務員法および国家公務員法違反になります。

国家公務員は、憲法第15条が定める「国民全体の奉仕者」として公平に職務を担わなければなりません。そのため、国家公務員の人事管理は縁故や政治的な影響によることなく、能力本位で公正に行う必要があると定められています。

公務員の採用は、法律により「受験成績や勤務成績、その他の能力の実証」により行うのが一般的です。実証を行わない縁故採用によって採用されたことが発覚した場合、採用取り消し処分が下される可能性もあります。

(参考:人事院『公務員制度と人事院 10.縁故や政治的影響を排除~人事における公正性の確保~』)

近年では禁止する企業も増えている

「不公平感による不満から、トラブルが生じやすい」といった理由により、徐々にではありますが縁故採用を禁止する企業が増えています。

この動きは、都市部だけではなく、地方でも見られます。また、縁故採用の禁止に踏み切っているのは、大企業はもとより、中小企業やスタートアップ企業、ベンチャー企業などです。

こうした動きが進む背景には、「縁故採用は、多様性が求められる時代に逆行している」という風潮が高まってきているとの見方もあります。

リファラル採用との違い

縁故採用と似た採用手法に「リファラル採用」があります。リファラル採用とは、自社の社員に友人や知人を紹介してもらう採用手法です。人のつながりを活用するという意味では縁故採用と共通していますが、目的や前提、選考フローが異なります。

リファラル採用は、「企業の採用活動における母集団形成」と「組織の強化」を目的とします。関係者からの推薦にはなるものの、紹介された候補者に求める能力やスキルが備わっているかを見極めた上で採用するケースが多く、必ずしも採用されるとは限りません。縁故採用に比べると一般の選考過程に近い方法と言えます。

一方、縁故採用は「紹介者および求職者の救済」を目的としており、個人同士の関係性を重視して選考する傾向があります。入社を前提とした採用手法という側面もあるため、通常の選考フローを介さず、入社時点で経験やスキルが必要条件を満たしていない人材でも採用するケースが多いとされています。

縁故採用 リファラル採用
目的 ●紹介者および求職者の救済 ●企業の採用活動における母集団形成
●組織の強化
特徴 入社を前提とした採用手法という側面があり、通常の選考フローを介さないケースが多い 候補者に求める能力やスキルが備わっているかを見極めた上で採用するケースが多い
選考結果 どのような人物でも基本、採用する傾向にある 関係者からの推薦にはなるものの、必ずしも採用されるとは限らない

(参考:『リファラル採用とは|メリット・デメリットや導入方法と成功事例を紹介』)

縁故採用のメリット

ネガティブな印象を持たれることもある縁故採用ですが、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。縁故採用の主なメリットは次の3つです。

採用コストを削減できる

求人サイトの掲載料や人材紹介サービスに支払う紹介手数料が発生しないため、採用コストを大幅に削減できることが、縁故採用の最大のメリットです。

他の採用チャネルより書類選考などの作業を簡易化できる場合が多く、人事・採用担当者の工数も最小限に抑えられます。

候補者の身元と実績が明確

縁故採用の場合、候補者の身元と実績が明確な点もメリットです。推薦する側も自身の信頼に関わるため、その企業に合う人物か吟味して推薦します。

そのため、経歴・スキル詐称などのリスクが低く、候補者の性格や特徴、詳細なスキルなども、紹介者から事前にヒアリングできます。履歴書と面接だけで判断するしかない一般採用より、多くの情報を得られるでしょう。

選考辞退や早期退職リスクが低い

縁故採用の候補者は、親しい紹介者から事前に社内の実情を聞いて入社するため、ミスマッチが生じにくく、選考辞退や早期退職のリスクが低いのもメリットです。

紹介者は候補者の性格や考え方などを理解した上で、企業の「よい面」だけを伝えるのではなく、「弱み」や「課題」も含めた率直な意見やアドバイスができます。候補者は「本当に自分にマッチする企業なのか」を判断できるため、早期退職リスクの軽減にもつながるでしょう。

縁故採用のデメリット

縁故採用はメリットだけではなく、デメリットを考慮した上で導入するのが望ましいです。主な4つのデメリットを確認しましょう。

不採用の判断が難しい

縁故採用では、不採用の判断が難しい点がデメリットと言えます。紹介された候補者が採用基準に満たない場合でも、紹介者の企業における影響力が大きいといった事情を背景に、不採用にしづらい状況になることが考えられるためです。

また、採用後にスキルや能力不足が発覚したり、それを理由とした異動や処遇の変更が行われたりした場合には、紹介者と企業間でのトラブルに発展する可能性もあります。

不公平感による不満が生じやすい

通常とは異なる選考フローで縁故採用された社員は、通常の選考フローをくぐり抜けて採用された既存社員や同期社員から不公平感を持たれる可能性があります。

その結果、周囲の社員のモチベーション低下や人間トラブルの発生などの問題が生じるリスクが高いのが、デメリットです。そのため、たとえ縁故採用された社員に十分なスキルや能力が備わっていたとしても、入社後に他の社員との人間関係に悩みを抱えることも考えられます。

多様性がなくなるリスクがある

縁故採用は紹介者と似た性質の人が集まってくる傾向にあります。そのため、変化に強い多様性を持った組織を構成するのには不向きだと言われています。多様性のある既存社員を基点として人脈を広げれば、多様化は促進され、失われることはありません。

しかし既存社員に多様性がない場合、縁故採用によってますます多様性が失われるリスクがあるため、注意が必要です。

採用計画を立てづらい

縁故採用は、個人の伝手(つて)を頼る方法である以上、他の採用方法と比べると「いつ、どの程度の候補者を集められるか」という見込みを立てるのが難しいです。

その性質上、「継続的な人材確保」や「大量採用」は見込めないため、母集団形成にならず、採用計画が立てづらいというデメリットがあります。大量採用や複数ポジションでの募集を検討している場合、複数の採用チャネルを組み合わせていくことが必要です。

縁故採用の導入が有効なケースとは

メリット・デメリットを踏まえた上で、どのようなケースで縁故採用の導入は有効なのでしょうか。導入が向いている企業事例として、具体例を2つご紹介します。

採用活動をしても応募者が来ない

求人サイトや人材サービス会社を活用して応募や紹介を待っていても、候補者が集まらないケースや紹介がないケースがあります。積極的に採用活動を行っても応募者が来ない場合、新たな「攻め」の採用チャネルとして縁故採用が有効です。

自社の社員や役員の伝手(つて)を頼ることで、一人でも多くの候補者に出会える可能性が高くなります。企業によっては、できるだけ多くの人材を集めるための施策とし、紹介者にインセンティブとして報奨金を支給するケースも見受けられます。

長期で働いてくれる社員がほしい

縁故採用では、候補者は実際にその企業で働く紹介者のリアルな声を聞いた上で、自分に合っている企業かを検討します。紹介者も「自社に適した人材か」「一緒に働きたい人物か」を判断した上で紹介するため、採用のミスマッチを低減できるでしょう。入社後は紹介者のフォローによって人材の定着が期待できることから、長期で働いてくれる人材の採用に向いている手法だと考えられます。

これらのケースに該当する場合には、縁故採用の導入を積極的に検討してみるとよいでしょう。

縁故採用を導入する場合の注意事項

採用活動に縁故採用を導入する際は、どのような点に注意するとよいのでしょうか。押さえておきたい注意事項を2つご紹介します。

社員へ説明して理解を得る

縁故採用の効果を最大化するためには、企業のトップや経営層、人事・採用担当者が一丸となり縁故採用に取り組んでいくという方針を社内に伝えることが重要です。

縁故採用を行う際には、不公平感によるトラブル発生を防ぐため、役員や社員などに向けた事前の周知を徹底しましょう。特に重要なのは、「なぜ縁故採用を行うのか」という目的や理由です。これまでの採用活動での経緯なども踏まえ、縁故採用を実施する正当な理由をロジカルに説明し、既存社員の理解を得ることが望ましいです。

正当かつ明確な理由を説明することで、既存社員も納得できるでしょう。

縁故採用だけに注力し過ぎない

縁故採用は採用計画を立てづらく、継続的に採用できる手法ではありません。縁故採用によって十分な人材が確保できるとは限らず、場合によっては、候補者が一人も集まらない可能性も考えられます。

縁故採用は「あくまでも数ある採用方法の一つに過ぎない」と認識した上で、複数の採用方法を組み合わせ、他の採用手法でも人材を確保できる状態を構築することが重要です。

縁故採用に代わる採用手法

縁故採用と似た採用手法として、「リファラル採用」と「アルムナイ採用」が挙げられます。共に母集団形成にも有効な採用手法ですが、それぞれどのような特徴があるのか解説します。

リファラル採用

リファラル採用では、企業理念や文化を理解している自社の社員が、人柄をよく知る友人や知人を紹介します。主なメリットは「求職者以外の人材へもアプローチできる」「ミスマッチ削減により、定着率が向上する」「採用コストを大幅に削減できる」の3つです。

リファラル採用が注目されている背景として、労働人口の減少による人材獲得競争の激化が挙げられます。「求人広告を出しても、求める人材になかなか出会えない」といった悩みを抱える企業も多い中、「質の高い候補者の確保」「マッチング精度の向上」を実現すべく、ダイレクトリクルーティングの一環として、社員のつながりを活用したリファラル採用を導入する企業が増加しています。

(参考:『リファラル採用とは|メリット・デメリットや導入方法と成功事例を紹介』)

アルムナイ採用

アルムナイとは「卒業生」「同窓生」を意味する言葉です。それが派生して、企業では一度退職した人(OG・OB)を指す言葉として使われており、一般的には定年退職者以外の退職者を指します。

アルムナイ採用とは、このアルムナイを貴重な人的資源として捉え、組織化して継続的にコミュニケーションを取ることで再雇用につなげる採用手法です。アルムナイ採用の主なメリットは、「企業文化に合う優秀な人材の確保が可能」「中途採用で新規採用をする場合に比べて教育コストがかからない」「選考スピード・工数を削減できる」の3つです。

「雇用の流動化」が進み、優秀な人材の確保が困難な状況にある中、アルムナイ採用を積極的に進める企業が増えています。

(参考:『アルムナイとは?アルムナイ制度が注目されるワケは?メリット・デメリットや導入事例を詳しく解説』)

まとめ

人のつながりを活かして人材を採用する縁故採用には、「採用コストの削減」「候補者の身元と実績が明確」「選考辞退・早期退職リスクが低い」などのメリットがあります。

一方で、導入するには「不採用の判断の難しさ」「不公平感による不満が生じやすい」「多様性がなくなるリスクがある」などのデメリットをしっかり認識することも重要です。採用計画を立てづらいという性質もあるため、他の採用チャネルと組み合わせて実施することが望ましいでしょう。

今回の記事で紹介している、導入が有効なケースや導入時の注意事項なども参考に、自社に合った採用を検討してみてはいかがでしょうか。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、編集/d’s JOURNAL編集部)

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