中途採用早期化のススメ 採用活動を早期化すべき5つの理由とは?

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d’s JOURNAL(ディーズ・ジャーナル)編集部

はじめに

中途採用が順調に進んだ場合、募集を開始してから1カ月半~2カ月半程度で選考合格・内定となることが多く、希望の入社時期から逆算して採用開始時期を決定することがほとんどではないでしょうか。

 

しかし、コロナ禍以降は転職市場にもさまざまな変化が起きており、母集団形成~選考、また、内定~入社までの対応において時間を要するケースが増えてきています

即戦力となり得るような採用難易度の高いポジションや、エグゼクティブ(経営層・役員クラス)やハイクラス(事業部長やマネージャーなどの管理職)の採用では3カ月~半年以上かかることも珍しくありません

また、求人倍率が高い職種の募集においても採用活動が長期化する傾向が見られます。加えて、内定から入社までの退職交渉・入社前フォローに予想以上の時間がかかっている事例も増加しています。

目標とする時期に新たな人材を迎え入れたいといっても、転職希望者の状況は個別性が高く、コントロールが難しいというのが実情です

そこで今回は、採用活動を早期化すべき5つの理由について、具体的な事象や背景・データなどを参照しながらご紹介します。自社がどのタイミングで採用活動を始めるべきなのかを再検討する材料として、ご参考にしていただければ幸いです。

早期化すべき理由その1:転職市場の変化(求人倍率・求人数・転職希望者の推移)

コロナ禍を経て、転職市場は活況となっています。2022年10月31日に発表されたdoda転職求人倍率※レポート(2022年9月)によると、2022年7~9月の転職求人倍率は、7月1.98倍、8月2.09倍、9月2.11倍となりました。求人数は、2020年9月から25カ月連続で増加し、過去最高値※を更新しています。

※本定義で転職求人倍率を算出した2019年1月以降

原材料価格の高騰やウクライナ情勢による影響も懸念されるものの、採用が後ろ倒しになればなるほど、欲しい人材を獲得するのが難しいマーケット感になっていく可能性があります。

長期的にも少子高齢化が進む日本においては、労働人口全体も減少傾向にあり、人材の獲得競争はさらに激しくなっていくことが予想されます。

早期化すべき理由その2:転職希望者の活動状況の変化(平均応募社数・選考辞退)

dodaを利用して転職をかなえた人が、転職活動を始めてから内定までに応募した求人の数は平均して19.4社(※)。複数の企業の中から転職先を選ぶ傾向が強く、全体のうち、8割以上の人が2社以上の企業に応募していました。さらに約48%の方が11社以上の企業へ応募しています。

(出典元:転職成功者の「平均応募社数」※2021年1月~12月の1年間にdodaエージェントサービスを利用して内定を得た人のデータを元に算出

そのため、欲しい人材を獲得するためには採用競合企業の動きを意識した対策を講じる必要があり、従来よりも長期的な視点で応募者とコミュニケーションを取る必要があります

一方、職種別では、求人ニーズが高く売り手市場が続いている「技術職(IT/通信)」の平均応募社数が12.4社と、全体と比べると少ないものの、1社のみ応募している割合が45.7%と高く、早期アプローチや応募段階で第一想起をしていただくことが重要になっていることが読み取れます。

営業職や販売・サービス職においては、全体の平均応募者数と比較して、さらに多くの企業に対して応募をしていることがデータからわかります。

 

(出典元:転職成功者の「平均応募社数」<職種別>※技術職(IT/通信)、営業職、販売・サービス職の平均応募者数を抜粋

応募する社数が増えているため、「他社から選考合格の連絡があった」「他社の面接が進んでいる」といった理由で、残念ながら選考途中で辞退をされるケースが増えてきています

書類選考合格の連絡をしたものの、タイミングの遅れによって面接を実施することができずに数週間の時間をロスしてしまい、採用活動が長期化してしまう企業も出てきています。

■関連記事:面接を辞退する応募者のホンネとは?20代・30代の「面接辞退」に関する調査

20代・30代の転職経験者にアンケートを実施。「7割近くが面接辞退の経験がある」など、面接辞退の経験やタイミング、辞退理由などについて調査結果をご紹介しています。

年代や地域(エリア)によっても転職時の平均応募社数に違いがありますので、ご興味のある方はこちらのデータを併せてご参照ください。

早期化すべき理由その3:採用手法の多様化と選考プロセスの変化

かつての中途採用は、ハローワークや求人広告(紙・Webなど)・人材紹介サービスが主流でしたが、この数年で新たな採用手法が増え、また、驚くほど進化を遂げています

企業担当者が転職希望者に対して直接アプローチをするダイレクト・ソーシングや、社員の知人・人脈経由で行う採用フローを仕組み化したリファラル採用。フェイスブックやリンクトインといったSNSを活用したソーシャルリクルーティングなど、採用手法は多様化しており、採用したい人材によって適した手法を取捨選択したり、複数の手法を組み合わせて採用活動を進めたりする企業も増えてきています。

選考プロセスについても新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、Web面接を導入する企業が増え、オンライン採用を行うことで、就業中の方やU・Iターンを希望する遠方の転職希望者に、アプローチすることができるようになったことも大きな変化です。また、カジュアル面談など情報交換や相互理解のための対話を重視し、志望動機を問わない選考形式なども増えてきています。

より慎重に、時間をかけて納得感のあるキャリアを選びたいという方も一定数いるため、募集を開始する時期を早くして選考にかけられる時間に余裕を持たせることによって、柔軟に対応できるようにすることが大切です

早期化すべき理由その4:転職希望者の動機の変化(転職理由)

転職希望者の理由についても、ここ数年変化が見られます。従来の「他にやりたい仕事がある」が低下してきており、一方で、「業界の先行きが不安」「会社の将来性が不安」「市場価値を上げたい」という理由が上昇するなど、転職希望者の志向・希望が複線化・複雑化しています

【転職理由ランキング ―2021年度―】

※2021年4月~2022年3月の1年間にdodaサービスにご登録いただいている方のデータをもとにまとめたものになります。

実際に、転職活動をする中でやりたいことを見つけたり、今まで知らなかった業界や会社と出会ったりする転職希望者も少なくありません。選考の中で徐々に志望度が高まり、最終的に入社を決める方も多く、転職希望者の本音を引き出し、差別化された自社の魅力を伝え、懸念点を払拭する手厚いフォローが重要となっています。

入社の意向を高めるために、選考合格後のオファー面談や配属先部門のフォロー面談などを、オンラインや対面で柔軟に対応することによって採用に成功している企業もあります

早期化すべき理由その5:退職交渉が難航・長期化するケースも

転職希望者の中には、現職中の会社に退職の意向を伝えるタイミングや後任への引き継ぎの期間をあらかじめ決めて、転職活動をしている方もいらっしゃいます。

特に3月決算の企業の場合は、年末年始や年度末に組織改編や異動の辞令があることが多く、1週間、数日の間に状況が一変してしまい、退職交渉が難航したり、想定以上に長期化してしまったりすることがあります

また、転職希望者が抱えているプロジェクトや部署・事業の状況によっても変わるため、選考過程の中で退職交渉にかかる期間のめどや入社の時期について、相互理解を深めておく必要があります。

特に最終面接の面接官が多忙であったり、海外出張などで面接が実施できなかったりするケースは注意が必要です。選考合格後に想定外のトラブルが発生しないよう、留意して採用活動を進めていきましょう。

【編集後記】

コロナ禍を経て、中途採用を取り巻く環境にはさまざまな変化が起こっており、欲しい人材の獲得競争は厳しさを増しています。中途採用が長期化してしまうリスクも高まっているため、採用活動の早期化を進め、余裕を持った採用計画を立てることが重要になってきています。

採用手法によっても選考のスピードは変わってきます。そのため、採用のスケジュールやスタート時期を決める上では、採用手法の選定も重要な検討事項です。手法によって一定の応募者を獲得するまでにかかる時間が異なり、選考期間の短縮・延長に影響します。

「新しく募集する人材の採用要件を相談したい」「採用ターゲットとなる転職希望者がどのくらい転職市場にいるか知りたい」「募集職種について採用できる可能性やコストなどを手法ごとに比較検討したい」など、実際の募集を開始する前にできる情報収集を早めに行っておくことが、後の採用活動を有利に進めるポイントとなるでしょう。

企画・編集/d’s JOURNAL編集部 白水 衛