求人票で「アットホームな社風」はNG?求職者が知りたい社風を伝えるコツとは

d’s JOURNAL編集部

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  • 求人票での社風の伝え方の注意点:「アットホーム」「和気あいあい」だけでなく具体的なデータやエピソードを使用する
  • 求人票での社風の書き方の改善策:定量データを正確に記載し、理由も具体的に説明する。エピソードは求める人材が関心を持ちそうな例を具体的に書く
  • 求職者と企業のマッチングについて:求職者が求人票を読んで、その企業での活躍を具体的にイメージできることが重要

転職希望者が企業選びで重視するのは「人間関係」という調査結果があるほか、面接における求職者からの質問でも「職場の雰囲気」や「業務環境」が定番になりつつあります。このような現状を鑑み、企業は求職者が求める情報を提供するために、求人票の段階から「自社の社風」を正確に伝えることが大切です。

一方で、求人票の「組織構成」「自社PR」などの欄に、「アットホームな会社です」「和気あいあいとした雰囲気が特徴です」と記載している企業もあるでしょう。もしかすると、これらの表現は求職者に誤解を与えることもあるかもしれません。

今回は、求人票の社風の書き方について、求職者が知りたい情報を正しく伝えるコツをご紹介します。自社の求める人材を採用するために、ぜひ押さえておきましょう。

転職希望者が企業選びで重視するのは「人間関係」。求職者と企業がいかにマッチするかが鍵

パーソル総合研究所が2022年に実施した「人的資本情報開示に関する調査」によると、転職希望者が転職先を検討する際に重視する要素として、「人間関係がよい」ことが「給料がよい」「ワークライフバランスを保てる」を抑えてトップ、という結果が出ています。

転職希望者が企業選びで重視するのは「人間関係」。求職者と企業がいかにマッチするかが鍵

■出典:人的資本情報開示に関する調査 【第2回】~求職者が関心を寄せる人的資本情報とは~調査報告書

詳細を見ると、人間関係がよいことを「重視する」が56.1%、「やや重視する」が32.2%と、合わせて88.3%の方が重視していることがわかります。

このような状況を踏まえ、近年は入社後のミスマッチや早期退職を防ぐために、企業の社風と求職者がマッチすること、つまりカルチャーフィットの重要性を感じる企業が増えています。カルチャーフィットを実現するには、応募の入り口となる求人票において、人間関係を踏まえた企業文化や業務環境を自社の魅力として求職者に伝え、自社を正しく理解してもらうことが重要です。

■参照:『カルチャーフィットとは?重要性と採用時の見極め方を解説

伝わりそうで伝わらない。求人票によくある失敗例

伝わりそうで伝わらない。求人票によくある失敗例

求人票で社風を伝える書き方として、よく使われるのが「アットホーム」「和気あいあい」「楽しい」「自由」「風通しのよい職場」などです。一見自社の強みを端的に表しているようにも感じますが、明確な定義のないあいまいな表現であるため人によって捉え方が異なり、企業の持つ独自の雰囲気が伝わらない可能性もあることに注意が必要です。

例として、「和気あいあい」「アットホーム」という表現には「相談がしやすそう」「意見やアイデアが反映されそう」といったポジティブな印象がある一方で、「プライベートの時間にも干渉されそう」「残業が恒常化しそう」というネガティブな印象を持つ場合もあるでしょう。具体性のない言葉の使用は、求職者に正しく伝わらない場合もあることを認識しておくことが大切です。

正しく社風を伝えるための改善策~求職者がイメージできるかがポイント~

求職者と企業のミスマッチを防ぐために重要なのは、採用候補となる求職者が求人票を読み、応募前に「自分(求職者)がその会社で活躍する姿」をイメージできることです。具体的な改善例を見ていきましょう。

正しく社風を伝えるための改善策~求職者がイメージできるかがポイント~

定量は正確に。理由もわかりやすく説明する

定量で示せる事柄は、数値を正確に記します。「定着率」「年齢比率」「有給取得率」などは、実際のデータを載せましょう。「年齢比率は年齢別役職比率まで数値化する」といったように、深掘りできる項目があれば詳細に記載します。

求職者は定量データから、以下のように企業の社風をイメージする可能性があります。数値の理由を具体的に説明することで、イメージを補塡する材料となるでしょう。

定量データ 想起されるイメージ例
定着率が高い 長く続ける人が多く働きやすい環境である
年齢比率で求職者と同世代が多い 同世代が多いことで安心感を得られる
役職者の割合に若手が多い 実力主義である、キャリアアップが望める
有給取得率が高い 休みを取りやすい、フォローし合える環境が整っている

例として、有給取得率では「家庭の事情や個人的な理由で突発的にも使用できるのか」「連続して取得できるのか」といったことにも言及すると、より具体的な情報となります。

ただし、定量データから求職者がイメージすることが一定であるとは限りません。例えば、「年齢比率で求職者と同世代が多い」ということに対し、「同世代が多いことで安心感を得られる」と感じる方もいれば、「若手しかいないということは、長く働くことは難しいのかもしれない」と不安に思う方もいるでしょう。

そのような際は、なぜ若手が多いのか理由を伝えます。「募集している部署は新規部署のため若手が多い」「企業として独立支援をしているので、ある程度勤続すると多くの社員が独立する」など、データだけでは伝わらないことは事実をしっかり伝えることが求職者の納得につながるでしょう。

エピソードは具体的に書く

エピソードを記載する場合は、「どのような人材に入社してほしいのか」を意識した上で、求める人材が関心を持ちそうな例を具体的に書くのが鉄則です。自社ならではの魅力をわかりやすく記載しましょう。「なぜその企業で働き続けているのか」など、勤続に関する社内アンケートを取り、社員の声を伝えるのも有効です。

【具体的なエピソード例①】

社内では役職者も含めて全員が「さん」付けで呼び合い、反対意見も含め自分の意見を遠慮なく伝えられる環境があります。実際に、新入社員がリーダーからの指示に対し別の方法を提案し、採用されたケースもあります。この経験は、新入社員のモチベーションアップとリーダーの視野拡大につながりました。

エピソードは具体的に書く

上記エピソードにより、求職者はトップダウンではなくボトムアップによる意思決定ができる企業とイメージすることができるため、「積極的にアイデアを出したい」「自ら考えてチャレンジしたい」という人材からの応募が期待できます。反対に、「指示されたことに黙々と取り組みたい」という人材は応募を見送る可能性があるため、採用には至らないものの、最終的なミスマッチを防ぐことにつながるでしょう。

【具体的なエピソード例②】

誰にでも起こり得る突発的なお休みの際にリカバリーできるように、業務は極力属人化せず、チームでメンバーの個人タスクや、進捗状況を日々共有しながら進めています。実際に感染症の罹患、子どもの急な発熱などによるお休みが発生した際も、やるべきことがわかっているので、スムーズに業務を分担して対応しています。

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この記載例からは、「突発的な理由で仕事を休まざるを得なくなっても、チーム内の体制が整っているので安心して休むことができる」「チームワークがよい」と感じることができます。その一方で、業務の詳細報告が必要な環境を好まない方や、一人で業務を遂行したいと考える人材にとっては魅力を感じにくいエピソードです。

採用後の「イメージしていた社風と異なる」という理由での離職は、求職者・企業ともに望まない結果となってしまいます。募集をする組織の現況は、できるだけ客観的に、詳細を正しく伝えることが非常に大切です。

まとめ

求職者が重視する社風を求人票で正しく伝えることはカルチャーフィットにつながり、企業にとっても求職者にとってもよい結果につながります。記載の際にはあいまいな言葉を使用するのではなく、自社でしか語れないエピソードをわかりやすく伝えることが肝要です。自社の社風がしっかり伝わる求人票となるよう、今回ご紹介したNG例や改善策を参考にしてみてはいかがでしょうか。

(企画・編集/田村裕美(d’s JOURNAL編集部)、制作協力/株式会社mojiwows

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