仕事で学び、人が育ち、事業が育つ─Sky株式会社が実践する“AI事業の成長循環”

クライアント・システム開発事業本部 テックリーディング部 次長 河野 武(かわの・たけし)
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AI時代到来に向けていち早く、外部専門家との連携を起点に、学びを事業へ転換する流れを構築。個人の情熱と組織の機会が結びつき、AI推進の核が生まれた
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社内研修の体系化と継続的アップデートにより、JDLA認定資格で最もハイレベルな「E資格」の認定プログラムを社内実施できる国内唯一の企業として育成基盤を確立。学び→実務→成功体験の循環で、事業成長と人材成長を同時に実現
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競争が激化するAIエンジニア採用では、転職希望者の自律的な学習実績を選考の軸に置き、2025年度は14名が入社している
「AIとともに、まだ見ぬテクノロジーの空へ。」を掲げるSky株式会社。法人向けパッケージソフトで知られる同社ですが、エンジニアだけでなく営業・バックオフィス系でも生成AIを活用した業務効率化や開発高度化が進み、事業展開においてもAIが核になっているといいます。
Sky株式会社のAI領域における躍進は、まだAI時代と言われる前の2016年のスタートから、外部有識者との出会いや継続的な技術開発、社内研修の高度化などを通じて築かれてきました。特筆すべきは、その過程が「AI人材を採用する」ことに加えて、「熱意がある人を育てて戦力化する」取り組みとして進められてきた点です。
学びを仕事へ、仕事を成果へとつなげる循環を生み出し、AI事業を拡張してきた同社。その“AI躍進10年史”を支えたキーパーソンの河野氏に、これまでの歩みを聞きました。
AI専門人材がほとんどいなかった10年前のスタート地点
──現在のSky株式会社は企業ロゴにも「AIとともに」という文言が掲げられ、AIを中心とした事業展開を進める姿勢が明確となっています。御社がAI領域へ本格的に参入するようになったきっかけを教えてください。
河野氏:私自身が関わるようになった取り組みの端緒は2016年です。私は大学時代に画像認識技術を研究しており、社内でも画像認識に注目して取り組み始めていました。
そんな折、私が所属する部署で出展準備を進めていた展示会があり、この場で画像認識技術を活用したコンテンツを来場者に披露しました。これが想定を上回る集客につながり、事業化の可能性があるのではないかと考えるようになったのです。

──当時の社内には、AIを専門とする人材が在籍していたのでしょうか?
河野氏:お客さまのロボティクス事業に関わる中でAIを学んでいる人が数名いた程度で、専門人材はほとんど在籍していませんでした。私自身も機械学習やAIを一から勉強し直していたのです。事業としてはまだまだ芽生えの段階でしたから、この状況は当然と言えるものでした。
──そうした状況の中、河野さんはどのような思いを持って取り組みを始めたのですか。
河野氏:もともと画像認識技術を研究していたこともあって、「この技術をビジネスに応用できるはずだ」という思いがありましたね。当時は組織としてAIに取り組む体制は整備されていませんでしたが、自身の関心や挑戦が起点となって、徐々に領域が広がっていきました。人材育成から案件獲得まで、AIを本格的なビジネスへとつなげる取り組みを推進していきました。
「AI領域推進の旗振り役」を担うきっかけとなった出会い
──AI領域を推進するにあたり、まず河野さんは外部の知見を取り入れることから始めたと聞きました。印象に残っていることや、そこから得られた学びがあれば教えてください。
河野氏:2018年、社長からの紹介で、当社の上位幹部向けに東京工業大学特任教授の松岡聡先生がAIについて教えてくださる場が設けられました。
世の中でディープラーニングが注目され、「これからはAIの時代だ」と言われるようになったタイミングで、第一人者である松岡先生の教えを受けられるようになったわけです。研修の場は部長層以上が全員出席する月1回の定例会で、私も上司の推薦によって特別に加えていただきました。
もともと人一倍AIに関心を持っていたこともあり、松岡先生による専門的な講義によってさらに学びを深め、社内へも広げていきました。その姿が経営陣の目に留まり、AI領域推進の旗振り役を担わせてもらえることとなりました。
──松岡教授との出会いが河野さんの新たなミッションにつながったのですね。
河野氏:はい。松岡先生からは、展示会に出展するAIコンテンツへの具体的なアドバイスもいただきました。
また、社内のより幅広い層がAIを学習するための環境整備でも、松岡先生が関わっていたスーパーコンピュータ(スパコン)、ABCI(AI Bridging Cloud Infrastructure)を活用させていただきました。AI学習の環境を段階的に整え、AI領域推進の基盤をつくっていきました。

学び、仕事をつくり、成功体験を積み重ねる
──社内でのAI関連研修の体制は、どのように構築していったのですか。
河野氏:ここでも社外の先駆者の知見をお借りしました。中部大学理工学部教授であり、日本ディープラーニング協会(JDLA)理事も務める藤吉弘亘先生のご協力を得られることになったのです。
きっかけは、JDLAが発足して最初に設けられた資格である「G検定」に私が合格したことです。JDLAが主催して合格者が集まる会が企画され、その席で藤吉先生と初めてお会いし、Sky株式会社の取り組みなどをお話させていただきました。ここからご縁が生まれ、藤吉先生には当社の社内研修をご担当いただけることになりました。
──社内研修ではどんなプログラムを実施しているのでしょうか。
河野氏:藤吉先生が専門とする画像認識・ディープラーニング技術の研修プログラムを企画しました。まずは私の周辺でAIに関わることが多いメンバーにディープラーニング研修を受けてもらい、その後はAIに興味を持つ人が挙手制で学べるようにしていきました。強制ではなく自発的な参加としたのは、興味・関心のある人に参加してもらうことで、より効果的な学びが生まれると考えたためです。
プログラム内容は毎年アップデートを繰り返し、現在はJDLA認定資格で最もハイレベルな「E資格」取得に挑むための研修ともなっています。ちなみに2026年3月現在、Sky株式会社は社内研修でE資格認定プログラムを実施できる国内唯一の企業です。
──AIの知識を持つ人材を増やす中で、プロダクト開発などの具体的な事業へとつながっていったターニングポイントはどこにあったのでしょうか。
河野氏:当社は、社内で独自の研究開発を行っているわけではありません。基本的にはお客さまの課題を解決するための仕事を獲得し、その仕事によって自分たちのレベルを上げていかなければいけないのです。その意味では、画像認識やAIの仕事を増やし、学びの機会をつくっていった一つひとつの過程がターニングポイントでした。
当初は実績の構築が課題でしたが、もともとは組み込み開発などの技術に強みがありました。そこで、社内研修でAIを学んだ人材がいることを活かし、お客さまに対してAI活用の提案を積極的に行っていきました。そして実際にプロジェクトを成功に導き、その経験を組織としての成功体験として積み重ねていきました。
こうした知見が、2022年にリリースした自社パッケージ商品の「SKYPCE」(スカイピース)に活かされています。SKYPCEは、営業支援・名刺管理のサービスで、名刺情報のテキスト化を画像認識で効率化しています。経営トップの強いリーダーシップのもとで開発が進められ、当社のAI事業を象徴する存在となりました。

AI人材のポテンシャルは自律的な学習実績で測る
──AI人材の採用についても教えてください。Sky株式会社では2020年からAIエンジニアのキャリア採用を開始したと聞きました。始めたきっかけは何だったのでしょうか。
河野氏:きっかけは、展示会での偶然の出会いでした。当時、企業展示会の各ブースを回りながら名刺交換をして営業につなげるという活動をしていたのですが、ある企業のブースで出会った方が、後日当社の選考を受けてくださったのです。その方は高い技術力を持つAIエンジニアで、現在は中核メンバーとして活躍しています。「こういう方が来てくれるなら、AIエンジニア専用の採用枠を設けたほうがいい」と思ったのが始まりです。
──採用枠や採用規模はどのように推移していますか?
河野氏:採用枠という概念は持っておらず、当社で活躍していただけそうな方には、できるだけ多く入社してもらいたいと考えています。
2020年度と翌年度はそれぞれ3名の採用実績でしたが、2022年度以降は6~7名に増え、最新の2025年度は生成AIエンジニア枠なども合わせて14名が入社してくれています。
ただ、採用活動は簡単ではありません。当社はパッケージソフトのイメージが強く、AI領域での認知向上が課題となっています。そのため即戦力となる人材だけではなく、ポテンシャルを重視した採用も行っており、入社後の育成も考慮しています。
──AIエンジニアとしての成長する人材には、どのような特徴がありますか。
河野氏:成長している方に共通しているのは、独学を続けているという点です。AIの技術は調べているだけでは身につきません。自ら手を動かし、学び続けることが大切です。
たとえば、個人でも活用できる「Kaggle」というAIコンペティションプラットフォームがあります。こうした学習プログラムに継続的に取り組み、結果を残している人からは、学びへの確かな本気度を感じますね。
──入社後の育成で重視していることもお聞かせください。
河野氏:前述の「JDLA E資格認定プログラム」がAI人材育成の核となっています。
受講者にディープラーニングの理論から実装まで体系的に習得し、E資格取得を通じて実務への応用力を身につけてほしいと考えています。その学びを通じて、近年のトレンドである生成AIなどについても、どのように事業へ活かせるのか原理や背景の部分から理解できるようになります。資格を取得したメンバーの声からも、そうした手応えを得られていることがうかがえます。
E資格はかなり取得が難しいものの、当社全体では40名を超える規模になりました。まずは「50名」を一つの目標としていますが、その先は100名規模に到達したいと考えています。
「AIを仕事にしたい」という情熱を持つ人が、存分に力を発揮できる環境を
──今後のAI領域の取り組みに向けた展望をお聞かせください。
河野氏:世の中では、多くの人がテキストベースの生成AIを業務効率化などに活用するようになりました。次のトレンドとして注目しているのは、現実世界の物理法則や因果関係を理解し、自ら判断して物理的な行動を起こせる 「フィジカルAI」です。
日本国内でも、防衛・航空などの成長産業ではフィジカルAIに関するニーズがさらに高まると想定しています。技術者としてさらなる知見を積んだ人材を増やし、仕事を通じて成功体験を積む機会を重ねていきたいと考えています。フィジカルAIをはじめ、AIの可能性をさまざまな領域に広げていくことが、今後の当社の大きな方向性です。
──10年にわたるAI領域への取り組みを聞いて、その推進力の源泉はどこにあるのかが気になりました。河野さんの情熱の源泉はどこにあるのでしょうか。
河野氏:「AIを仕事にしたい」という強い思いを持ち続けていることだと思います。10年前、実際に画像認識技術を活用する取り組みに関われるようになった際には、大きな喜びを感じていました。
それまでも誠実に仕事と向き合ってきましたが、自分の強みや情熱をどこに活かすべきか、まだ答えを探している時期だったように思います。しかしAIを仕事にできるようになってからは、「会社から求められる成果の2~3倍を残そう」と思い、必死に勉強しながら事業に取り組んできました。結果的に自社の新たな収益につながり、やりがいが増幅していく好循環が生まれました。
組織の規模や既存業務の比重によっては、「AIを仕事にしたい」という情熱があっても、実現する機会を得にくいケースもあるでしょう。情熱を秘めた人を見つけ、思いきってAI推進のミッションを与え、大きな裁量を持って動いてもらう。企業には、そんな視点が求められているのではないでしょうか。

【取材後記】
河野さんが歩んできた道のりを聞いて印象に残ったのは、「AIを仕事にしたい」という個人の情熱が組織の変革と重なり合っていく過程です。最初から整った環境があったわけではなく、外部との出会いや小さな成功体験を積み重ねながら、少しずつ道を切り開いていった過程が具体的に伝わってきました。AIという最先端領域であっても、本質は人の情熱と学びの継続にあるのだと感じさせられます。特に印象的だったのは、「学び→実務→成功体験」という循環を意図的につくっている点です。これは人材育成と事業成長を結びつける一つのヒントになるのではないでしょうか。企業が成長する鍵は、技術そのものよりも、それを担う人材への向き合い方にあるのかもしれません。
企画・編集/酒井百世(doda人事ジャーナル編集部)、岩田悠里(プレスラボ)、取材・文/多田慎介