フォロワー増を目的にするのは間違い?採用に有効なTwitter活用術

サイボウズ株式会社

事業支援本部 人事部 採用・育成グループ 新卒採用担当
綱嶋 航平

プロフィール
株式会社ガイアックス

ソーシャルメディアマーケティング事業部 事業部長
管 大輔

プロフィール

近年、大きな注目を集めている「採用PR」。その手法の一つとして、人事・採用担当者がTwitterの実名アカウントで採用PR・ブランディングを行うことも増えてきました。そこで、実名アカウントで採用PRを実践しているサイボウズ・綱嶋氏、ガイアックス・管氏に登場いただき、具体的な運営方法などを伺いました。前編では実名Twitterを駆使して採用PRを行うことの必要性や、Twitterで情報発信する内容について言及。「日々得たものや考え方をアウトプットすることが強力なコンテンツ」「課題をフラットに出すことも必要」など、具体的な発信内容のアドバイスは実名Twitterを運用する際に大きな参考になったと思います。そして記事後編では、情報発信するためのコンテンツの集め方から今後の採用PRの考え方まで語っていただきました。

フォロワー獲得を目的にしない

フォロワー獲得を目的にしない

Twitterのフォロワー獲得方法についてお聞きしたいと思います。まさに多くの人事・採用担当者、経営者がTwitterをやる上で気になる部分ではないかと。

サイボウズ・綱嶋氏(以降、綱嶋氏):確かに、フォロワー数が増えると嬉しいですし、気持ちいいですよね。発信力も高まります。ただ、私自身心がけているのが、フォロワーの獲得を目的にしないことです。というのも、フォロワー獲得を目的にしてしまうと、どこかでTwitter自体がつまらなくなったり、伝えたいことが届かなくなったりすると思ったんです。

確かに、フォロワー獲得を目的としてしまうと、本質的な情報発信とはズレが生じてしまいそうです。

綱嶋氏:そうなんです。目的からぶれないように、きちんと伝えたいことを届けるために、タグ付けは意識していました(前編記事参照)。サイボウズのことはもちろん、人事・HR界隈の情報、就職活動中の学生が知りたい情報など、発信していることを知ってもらうためのタグ付けです。そうすることで、「綱嶋と言えば、人事・採用関連の情報発信をしている」と、ユーザーに一目で分かってもらえ、徐々にフォロワー数が増えていきましたね。フォロワーは闇雲に増やしても意味がありません。タグ=テーマをきちんと定めてつぶやき続けることで、私が本来届けたい候補者が閲覧してくれるようになりました。

他にどのようなことを実践されましたか?

綱嶋氏:ある一定フォロワー数が増えてきたら、次に『ワンキャリQ&A』に登録しました。もっとフォローしてくれている人のことを知りたいし、悩み・疑問・期待に応えていきたいと考えたんです。不特定多数の質問に回答し、これはフォロワーに刺さりそうな質問だなと思ったらTwitterでシェアするということもしました。そうすると、Twitterでその情報を知りたい人に届き、候補者となりうるフォロワーが増えるというサイクルが回りだしたんです。実名アカウントに切り替えた当初はフォロワー数が約300ほどでしたが、現在は2000以上にまで伸びました(2018年11月時点)。

ガイアックス・管氏(以降、管氏):すごく戦略的なSNS活用法ですね。(前編の記事でも言いましたが)実名Twitterで重要なのは、個人との関係性づくりです。ターゲットが知りたいことを知るためにも、匿名のQ&Aツールなどは有効です。

綱嶋さんも管さんも、Twitterだけではなく、長文を投稿できるnote(https://note.mu/)も利用して情報発信しています。その他にもFacebookやInstagramなどさまざまなSNSがありますが、どのSNSを利用するのがオススメでしょうか?

管氏:やはりTwitterをオススメしますね。気軽に情報を届けやすいという特性もありますし、良いツイートであれば、たとえフォロワー数が少なくても情報が拡散されます。またTwitterは140文字で勝負するSNSなので、ごまかしが効きません。辛辣な意見をいただくこともあるでしょう。ですので、思考するクセづけにも最適です。発信内容に責任も伴いますからね。
採用にはTwitterが最適な理由

一方、Facebookですが、こちらは実名登録が必須なこともあって、リアルな人間関係が影響してきます。つまり、読み手がほぼ友人・知人・関係者になるため、内容を読まないでとりあえず「いいね」するという“いいね接待”も起きやすい。Facebookの場合は承認制ですし、クローズドのコミュニティであるため、無理に閲覧者を広げたくないという人も多いと思います。Instagramは画像なので、クリエイティブ系の発信に強みを持ちます。採用にリンクしない要素が多いため、最初の活用にはオススメしません。

綱嶋氏:私の場合noteに関しては、Twitterで反響が大きかったものを補完した“まとめ”のような形で利用しています。「いいね」がたくさんつく投稿って、「もっと具体的に知りたい」ってことじゃないかなって思って。自分の考えを整理するためにも日記/ブログのようにまとめる作業も重要だと思っています。

管氏: 私もそのような使い方をしています。Twitterで反響があったというのがポイントです。それだけ多くの人が興味ある内容と言うことですからより深く内容をまとめ発信することに意義があります。また、まとめたものをTwitterで広報することもできますし、記事を読んでくれた人がさらに拡散してくれますからね。

普段の何気ない気づきを発信することからはじめてみる

普段の何気ない気づきを発信することからはじめてみる

前編で管さんは” 採用PRとはまさに「候補者(ユーザー)との関係づくり」”とおっしゃっていました。やはり、情報発信する際に大事になってくるのは、いかに「共感」を生み出すか、ということでしょうか。

管氏:そうですね、情報発信において「共感」を生み出すことはとても大事なポイントになります。反対にSNSでもっとも共感が得られないのは、“作られたコンテンツ”です。中途半端だとリアル感がなくて、「これってPRのためのアカウントか」と思われてしまうと、途端に人は共感しなくなります。作られた内容は一切求められてないんですよね。先ほど、綱嶋さんがTwitterのフォロワー数を意識しないとおっしゃってましたが、あれは大事です。もちろん、1000人目指そうと目標を立てる考えもありますが、そうしてしまうと目的がずれてしまいますし、「格好良いこと」を言おう言おうとしてしまうんですよね。フォロワーとの心の距離が離れてしまいます。

綱嶋氏:分かります。シラけてしまいますよね。実際、私は人事2年目で経験が少ない。自分に知見もスキルもないのに良いことを言おうとしても、かえって何も思い浮かばずに辛かったですから。そういうのはやめて、好きなことをありのままにつぶやくようにしました。

管氏:さらに言うと、ツイートする内容を一から作ろうと考えるのは結構しんどい(笑)。ですので、現実世界で実際に起きたことをメモ代わりのようにツイートするのが良いと思います。例えば、今日この取材で綱嶋さんが話したことや、会議や打ち合わせで誰かが話したこと、上司の発言、本から学んだこと、自分が悪戦苦闘したこと、いま作成している資料のこと……よく見渡してもらえれば分かると思いますが、自分の身の回りにはコンテンツが溢れているはずなんです。それを整理してツイートするのはオススメですね。

無理に情報をひねりだして発信しようすると、確かにしんどくなってしまいそうです。

管氏:自分のメンバーにも上司や同僚との会話で発見があったら、すぐにつぶやくといいよ、と勧めています。だいたい日に一つは学びがあるはずで、それをメモするような感覚でツイートするんです。練りに練ったツイート毎回を考えるのは、正直キツいと思いますし、まずはメモ感覚でつぶやくことを習慣化してみてください。やはり、インプットがないとアウトプットはできませんから。

就職・転職活動の仕方が変化し、採用PRが重視される

実際に実名アカウントで情報発信してから、採用活動にどのような好影響がありましたか?

綱嶋氏:私は新卒採用の担当ですが、「綱嶋さんのTwitter見てます!」と声をかけてくれる学生が、面接・説明会の場で増えましたね。そうした方々は、サイボウズのことをより深く知ってくれているので、事前準備もできていますし、面接にもスムーズに臨めていると感じています。

また先日、キャリア採用で募集している営業職で内定を出した方が、私がまとめた「サイボウズを知るならフォローしておきたいTwitterアカウント30選」をチェックされていたそうなんです。一緒に働いている社員を紹介したいと思って気楽にはじめたことだったのですが、積極的な情報発信が奏功しているなと実感しますね。

管氏:この取り組み良いですよね。採用HPのような制作や編集が介在していない、リアルな社員を知ることができます。

綱嶋氏:会社の魅力を人事が発信するのも良いですが、メンバーそれぞれが発信するのを知ってもらうのもよいかなと。飾られてない各メンバーの素顔を伝えたくてまとめました。

管氏:私の場合は、TwitterのDMで直接「御社への転職を考えています」という相談連絡をいただくケースが増えていますね。この間、新規事業の立ち上げメンバーをTwitter経由で2名採用できました。最近は採用に困らなくなってきています。人材紹介サービスや求人サイトを経由するのではなく、Twitterを活用して転職活動をしている方も増えてきてますよね。個人がSNSを駆使し情報収集している時代、企業も有効に活用しなければ採用競合に負けてしまうでしょう。

いま管さんがおっしゃったように、転職活動の仕方が大きく変わってきているように思います。そうした中で、採用PRもより重視されていきますね。

綱嶋氏:「働く」ということに、多様なニーズが生まれています。さらに今までと同じ価値観で一生安泰という時代でもありません。そうすると必然的に、採用のチャネルも増え、変化していきます。そうした時に、自社の採用情報を知ってもらう手段の1つとして、Twitterなどを駆使する必要性はさらに高まっていくと思います。私は採用の公式Twitterアカウントの「中の人」も担当しているのですが、実名アカウントの方が求職者とのコミュニケーション量は断然多いように感じます。求職者と関係性を育むことができるTwitterというツールを使わない手はないと思います。
Twitterを利用しない手はない
管氏:ひと昔前までは、人材紹介サービスや求人メディアを経由して採用活動ができていました。しかし今は、企業が求職者に選ばれる時代です。副業の解禁も進んでいるこの時代に、企業が「雇ってあげる」という上から目線のスタンスでいると、徐々に人が離れていってしまうでしょう。自社のビジョンや社員がどんな想いで働いているのか、リアルな情報を世の中にどんどん出していかないと求職者から選んでもらえなくなってしまいます。つまり情報発信しないと、人が集められない時代だと思います。

綱嶋氏:何気ないTwitterの発信が、「この人と働きたい」と応募につながるのは面白いと思います。

管氏:企業経由ではなく、個人間で応募できる。まさに、人と人とがつながることができる時代の採用手法ですよね。BtoCビジネスを展開している企業で、一般までブランド認知が広がっているなら、人は集められるかもしれません。ただ、世の中のほとんどの会社はBtoBビジネスの企業です。そうした企業は積極的にリアルな情報を発信し続け、ファンを増やしていくしかないと思います。
人と人とがつながるTwitter

【取材後記】

人事担当者がTwitterの実名アカウントで情報発信することは、スタートアップ/ベンチャー企業ではもはや「当たり前」になってきている。一方、大企業や中小の老舗企業などはさまざまなリスクを踏まえ、社員個人が情報発信することに抵抗を持っているように見受けられる。
しかし、大きな変化の時代を迎えている今、積極的な情報発信しない方が「リスク」と言えるかもしれない。というのも、今後、労働人口の減少が加速するなか、採用はますます厳しさを増していくからだ。そうした状況に対する打ち手として、社員が実名アカウントで情報発信することが採用活動を支援する強力な武器となっていくだろう。

(取材・文/眞田 幸剛・齋藤 裕美子、撮影/石山 慎治、編集/齋藤 裕美子)