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富士通、freeeが取り組む、リファラル採用成功の秘訣【セミナーレポート】

PROFILE

富士通株式会社

総務・人事本部 人材開発部 人材採用センター マネージャー
黒川 和真

大阪大学経済学部卒業後、1998年に富士通株式会社に入社。健康保険組合、人事勤労部、プロダクト事業推進本部人事部などで広く人事業務を経験し、2011年にプロダクト事業推進本部人事部担当課長に就任。2014年より人事本部人事労政部マネージャーとして、国内人事制度企画業務を担当し手腕を発揮した後、2017年より現職。

freee株式会社

人事採用本部 採用チーム責任者
栗林 由季

情報通信関連の商社で営業としてキャリアをスタートし、2014年2月にfreeeに入社。採用チームの立ち上げから現在は責任者としてfreeeの組織づくりに取り組んでいる。テニス部部長も兼務。

株式会社ビジネスリサーチラボ

代表取締役/採用学研究所 所長
伊達 洋駆

神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。同研究科在籍中、2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、人事領域を中心に、組織の現状を可視化する組織診断を始めとした調査・コンサルティングを実施している。学術知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」サービスが特徴。共著に『「最高の人材」が入社する 採用の絶対ルール』(ナツメ社)

売り手市場の昨今、社員がリクルーターとなり最適な人材を組織に紹介する「リファラル採用(リファラルリクルーティング)」を導入されている企業も多いようです。とはいえ、「懸念事項があってなかなか導入まで進めることができない」「導入しても社員が積極的に紹介してくれないのではないか」など、不安に感じている人事・採用担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回のセミナーでは、リファラルを導入・推進されている富士通株式会社 黒川和真氏、freee株式会社 栗林由季氏のお二人が登壇。導入の経緯や成果、運用方法について共有いただきました。また、ファシリテーターに株式会社ビジネスリサーチラボ 伊達洋駆氏を交え、どのような試行錯誤があったのか、導入に当たっての懸念点とそれをどう払拭したのかなどについて、ディスカッションを実施。大手企業・ベンチャー企業それぞれの立場から、実態についてお話しいただきました。

(本記事はdodaが主催したセミナーの内容を編集・要約した上で構成しています)

「従来と異なる人材の獲得」を可能にした、富士通の事例(黒川氏)

前半では、各社のリファラルについての採用事例を紹介。まず富士通株式会社の黒川氏に導入の経緯やそのメリットなどを語っていただきました。

「従来と異なる人材の獲得」を可能にした、富士通の事例

黒川氏:富士通では5:1の割合で新卒採用が中心です。2015年より中途採用を強化していくことを決定し、現在その取り組みを行っています。ご存じの通り、IT業界の転職求人倍率は6.79倍と言われているほど、非常に厳しい状態です。かつ、IT業界だけではなく金融やメーカーなど業界外も積極的にエンジニア募集を行っていますから、獲得競争は激化しているわけです。今まで人材紹介サービスを利用していましたが、それだけでは補えなくなっているのは事実でした。これからは違う形で市場にアプローチしていかないと、良い人材が確保できない。そのためダイレクト型採用を強化する方針にしました。その1つがリファラル採用です。

リファラル採用では以下のような方とつながることが可能です。富士通には33,000人の社員がおり、この人脈を有効利用すれば強大な採用力になるのではと考えています。

リファラル採用の事例

(富士通株式会社 登壇資料より)

リファラル採用のメリットは4つあると思っています。「1:マッチング精度の向上」「2:転職潜在層、ニッチで専門性の高い人材の確保」「3:入社後定着率の向上」「4:採用コストの削減」があり、中でも2のメリットが高いと考えています。エンジニアの場合、転職顕在層は獲得競争が激しく、特に専門性の高い人材は採用に結びつく確率は低い。そこで、採用をまだ考えていない方たちにも早い段階で接点を持つことで、富士通への転職を想起させられるように試みたいと思いました。

では、どのようにリファラル制度を導入していったのかについて、お話いたします。

当社ではまず、2017年上期に制度設計の検討を開始し、人事の制度を企画している部門や労働組合との調整を重ねました。実は私は2年前、人事企画部門におりまして、リファラル制度についての制度を検討する側にいました。そのときに「実に良い施策だ」と思ったことを覚えております。リファラル制度の設計に当たって、さまざまなことを決めなければなりません。たとえば「活動対象者はどこまでにするのか」「応募先(応募対象)はどこまでを範囲にするのか」「インセンティブは発生させるのか、いくらにするのか」などです。インセンティブについては規定も作成し、まずは土台固めを行いました。そして同年下期に、数百人を対象にトライアルを実施しました。導入にあたって心配の声も上がったことから、まずは一度トライアルを行ってみることにしたのです。「社員が業務に専念できなくなるのではないか」など懸念事項も想定していたのですが、特に問題なかったことから2018年4月の正式導入に至りました。スモールスタートでまず試してみるのは重要ですね。不安の声もうまく解消できたと思います。

正式導入に際しては、役員から採用に対してポジティブなメッセージを発信してもらいました。そして「いざ、リファラル採用をやろう!」と思った社員が迷わないよう、リファラル専用サイトを用意しインフラも整えましたし、リファラル経由の選考プロセスも検討・構築していきました。選考プロセスに関しては、実は他経由と何も変えておらず、「紹介者は推薦コメントを入れる以上のことを関与できない」「選考に携わらせない」ということを徹底しています。導入以降は、ずっとリファラル採用の啓発活動を続けております。会議に出向いての広報活動や社内報への掲載、ポスターの掲示、研修での周知、採用イベントでの周知などさまざまなプロモーションを実施。富士通に興味のある人が逆にリファラルを持ちかけてくれるように、社外向けのHPも制作しています。

まだ導入して1年ほどですが、初年度は2,000人ほどのリクルーターが積極的に活動してくれました。約20名が採用に至り、マッチング率も人材紹介サービス経由と比べて約10倍という成果があらわれています。通常の採用ではなかなか出会うことができない、インドのエンジニアを紹介されたこともあります。そのように貴重なスキルを持っている人材とのつながりができ、良い成果も出るようになりました。すべてのポジションをオープンにしていますが、エンジニア職がリファラル経由から採用に結び付きやすい傾向にあるようです。当社はまだ始まったばかりですが、将来的にはリファラル採用比率を50%まで引き上げていきたいですね。

リファラル採用比率を50%

リファラル採用を通じて、日本の採用市場が変化していくと考えています。社員がリファラル採用に積極的に取り組むことで、「自社の魅力は何か」考える機会になりますし、それが結果的に組織開発やエンゲージメント向上につながっていくのではないでしょうか。「富士通で働きたい」「富士通で頑張りたい」と、社内外の方に思ってもらえるような環境を整えていく。そして、良い人材が富士通に集まってくる。リファラル採用が、その環境づくりのきっかけになればと思っています。

「知人を紹介したくなる組織をつくることが大切」freeeのリファラル戦略(栗林氏)

次に登壇したfreee株式会社の栗林氏は、実施に当たって意識しているポイントや、その成功の秘訣に触れました。

「知人を紹介したくなる組織をつくることが大切」freeeのリファラル戦略(栗林氏)

栗林氏:freeeでは、日本の中小企業に向けて会計・人事・労務など7つのプロダクトを提供し、バックオフィス業務の効率化を促進しています。資金調達累計額は161億円、従業員数は506名と、未上場のベンチャーとしてはかなり大型な組織ではないでしょうか。採用チームは新卒採用、キャリア採用を主業務としているメンバーの他、数字の分析を行うメンバーや採用の広報として記事を作成するメンバー、そして面接設定を行う採用サポートチームから構成されています。

本日はリファラル採用についてお話させていただきますが、リファラル採用は強制するものだと思っていません。「必ず1Q(3カ月)で▲▲名紹介してください!」と発信したところで、誰も主体的にやってくれないのではないでしょうか。私たちは「知人を紹介したくなる」そんな組織をつくることが第一だと考えております。

当社の特徴として、9割が自社採用という点が挙げられます。そのうち7割はダイレクトリクルーティングでこちらが声をかけていく方法。残り2割がリファラル採用です。今年もすでに多くの方の入社が決まっており、リファラル採用を取り入れていないポジションはありません。 創業当初は当社は知名度がなく、人材確保が難しい状態でした。人材紹介サービスを利用しても推薦が挙がってこないことからダイレクト型採用は必然だったんです。そしてリファラル採用は立ち上げきの私達にとって当たり前の採用でした。しかし組織が大きくなりだすと採用数が減少。そこで「リファラル採用をもう一度会社の文化として動かそう」と決めました。

9割が自社採用

リファラル採用促進のために意識していることが3つあります。1つは「友達を呼ぶことのハードルを下げる」。当社には夕食を無料で食べられる「お弁当制度」がありますが、その場に社外の友人を呼んでもよいとしています。人事の許可が一切不要で誰でも招待できるようにしました。freeeへの転職意思にかかわらず、会社の雰囲気を知っていただくためです。とはいえ「友達を自由に呼んでいい」といっても誰を呼べばいいのかわからないと気が進まないもの。そこで、どういう人材を採用しているかを細かく公表し、随時アップデートするようにしました。それを始めてから、紹介数が2倍ほどに増えましたね。2つめが「採用の重要性、必要性をしっかり伝える」ということ。社内のネットワーク上で配信したり、社内SNS上に代表自らリファラル依頼をしたり、全社ミーティングで伝えたりしています。また全体発信だけではなく、1on1の際にもリファラルについてのお話を直接行うこともあります。普段からも積極的に社員に声をかけておりまして、「こういう人探してるんだよ」「こういう人が必要だと思うんだけどどう思う?」など、現場社員に私たちから意見を聞くこともありますね。このようなコミュニケーションを通じて、リファラル採用促進はもちろんですが、「こういう人は紹介していいの?」と気軽に相談してもらえる環境づくりを心掛けています。3つめは、「協力者への感謝の気持ちと称賛」です。当社では「リクルーティングアワード」を設け、称賛する場を必ずつくるようにしています。リファラルだけのために作ったfreeeのロゴがはいったTシャツをプレゼントするなど、より「リファラルを頑張ろう!」と思ってもらえるように意識しています。

ロゴT

(freee株式会社提供)

大切な友達を紹介するには、社員自身が満足して働いていることが重要です。トップダウンではなく社員が一人ひとり真剣に組織やカルチャーを考えることを意識しています。「カルチャー推進室」というチームがあるほど、会社としては組織文化を大切にし、代表や役員陣とともに全社員で組織づくりを行っています。最初にもお伝えしましたが、リファラル採用は社員に強制するものではありません。「友達を紹介したくなる組織」をつくることが大切なのです。

リファラル採用を成功に導くために、2社が実践している細やかな工夫とは(パネルディスカッション)

イベント後半では伊達氏を交えたパネルディスカッションが行われ、各社の事例をより深く掘り下げました。

リファラル採用を成功に導くために、2社が実践している細やかな工夫

Q.リファラル採用を行う社員のモチベーションとはどのようなものなのでしょうか。

黒川氏:本当は「富士通で一緒に働きたい仲間を紹介したい」というモチベーションであってほしいのですが、まだ至っていません。ヒアリングしてみると、「知人が仕事を探しているから、自社を紹介してみた」という友人が困っているから友人の力になりたいといったケースが一番多いですね。逆に少ないのが「インセンティブが欲しいから」。インセンティブありきでリファラルをやろうという社員は多くないように感じています。やはり友人が困っているという内発的なモチベーションが強いのではないでしょうか。

栗林氏:黒川さんと逆でうちは「友人が仕事を探しているから」というのは少ないです。当社は、「(転職意欲の有無にかかわらず)友達を連れてきて」という軸があるためです。リファラル促進のためのキャンペーンでインセンティブを打ち出して紹介数が増えるのは事実です。ただインセンティブよりも、「皆で取り組むのは当然」というメッセージを代表が発信する方が効果的ですね。それが強いパワーになってうまく動き出したように思います。

Q.リファラルを社員に促進していくに当たり、協力的な社員のタイプ、逆に非協力的なタイプなどありますか。

黒川氏:協力的なのは20代の社員。内定につながりやすいのは管理職からの紹介です。管理職の場合は自社や組織のことをよく理解していますから、「その人が会社や組織に合うのか」という理由で慎重に選んでいるからではないでしょうか。とは言え、当社でも「社員の工数を増やすのは嫌だ」と言われたことがあります。栗林さんもおっしゃっていましたが、リファラル採用は強制しても誰も幸せにならない。良い人材を欲している部署とともに成功事例を積み上げていくことが大切だと思います。

栗林氏:タイプということではありませんが、入社すぐの方は友人や知人を紹介していただくケースが多くあります。

Q.freeeさんは転職を未検討の人材にも積極的に会っているとのことですが、その方たちとどのようにつながっているのでしょうか。

栗林氏:イベントへの招待や社員を紹介するなどして時間をかけて口説き、転職への意欲を少しずつ醸成していくようにしています。決定するまでに1~2カ月、長くて1~2年かかることもあります。すぐに転職しなくても、採用の候補としてfreeeを入れてもらうことが大事ですから、定期的にコンタクトをとり続けることも重要です。飲みにいく関係性になることもあります。ご紹介いただいた方や選考途中で採用に至らなかった方も、タレントプール化していつでも声をかけられるようにしております。

Q.ここが一番、人事の方が気にされるポイントだと思うのですが、採用を見送った場合、紹介してくれた方(協力者)にはどのように対応しているのでしょうか。

気になるポイント

黒川氏:当社の場合、協力者は選考に一切関与できないことになっていますので、不採用の可能性もある前提で紹介してもらっています。選考の結果は紹介者に共有しますが、メールで行っています。3万人以上がいる会社なので、不採用の理由をひとりずつ丁寧に説明するのは難しいですね。もちろん、個別に聞かれた場合はお伝えするようにしています。「二度と紹介しづらくなってしまうのでは?」という懸念はありますが、今のところトラブルはほぼありませんね。

栗林氏:われわれの規模ですと、協力者への説明は可能です。都度「こういう動きをしている」と通知し、不採用の理由についても対面で伝えています。お見送りする際は、まず紹介者である社員に伝えてから、その方へ連絡するようにしています。過去にオペレーションミスによって紹介してくれた社員に迷惑を掛けてしまったことがあったんです。そのときはきちんとミスがあったことを全社に伝え、今後の徹底を約束しました。紹介者へのフォローは徹底し、選考途中の情報共有もするようにしていますね。

Q.リファラル採用と他の採用に何か違いはありますか。

黒川氏:始めたばかりなので違いは把握できていません。ただ、評判が良いという実感はあります。現場から「今まで採用できなかった人材を確保できた」という声もあり、やっと手応えを感じ始めたところです。ずっと埋まらなかった求人がリファラル採用で埋まったこともありますし、現場からの期待も高まってきたように感じています。

Q.では最後に。お二人の発表で「紹介したいと思う組織をつくることの重要性」について触れられていました。では、知人に紹介したくなる組織とはどういうものだとお考えでしょうか。

黒川氏:難しい質問ですね…(笑)。組織開発やエンゲージメントの向上は力を入れていますが、まだこれからですね。ICTを活用した働き方改革にも力を入れていますが、最近特に力を入れているのが、「仕事そのものの面白さや働き方」を社内外にアピールすることです。富士通ではどのように働き方を変えているのか、社内で実践していることを社内外に発信していく。それによって社内からも「あの部署はそういうことをやっているんだ」と刺激になりますよね。私は自分達のミッションは「日本の働き方を変えていくこと」だと思っていまして、リファラル採用に限ったことではありませんが、まずは社内の取り組みや魅力を世の中に広めていけるよう、取り組んでいます。

栗林氏:正直、これが良い組織だというゴールは見えていません。当社では、社員の声や動きによって組織をより良くしていくことがまだできると思っています。どれだけの規模になったとしても組織というのは変化できるものではないでしょうか。組織の変化に社員ひとりひとりが関与し、それを継続していければ「一緒に会社をつくろう」と知人を誘うことにもつながると思っています。

【まとめ】

社員が採用に携わるリファラル採用。そのモチベーションには、インセンティブではなく知人のため・会社のためという思いがあるのは興味深い点です。また、黒川さんが「リファラル採用への取り組みが組織開発やエンゲージメントの向上につながる」、栗林さんが「友達を紹介したくなる組織づくりが大切」と、採用手法の1つにとどまらないリファラル採用の可能性を示唆していたことも印象的でした。「新たなアプローチで人材を確保したい」といった理由で導入を検討する前に、「人を呼びたくなる組織とは?」というテーマを掘り下げていくことが採用成功の秘訣なのかもしれません。

(文/株式会社ぷれす、齋藤 裕美子、撮影/石山 慎治、編集/齋藤 裕美子)

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