doda編集長が徹底解説!2024年の中途採用トレンド、人事・採用担当者が押さえるべきポイントとは?
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2023年の求人倍率は過去最高値レベルをマークし続ける売り手市場
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成功のポイントは「採用条件におけるMUSTとWANTの切り分け」「報酬条件の見直し」「最適な採用手法を選択」
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新入社員や若手はオフィスで同僚と共に働きたい――?求職者ニーズはしっかり把握する
新型コロナウイルスの影響による変化など、採用市場は社会環境によって大きく変更します。そのため、社会環境を把握した上で適切な採用戦略を立案し、採用を進めることが企業の人事や採用担当者には求められます。
一方で、絶えず変化する採用市場、特に中途採用市場の全体像を捉えることは簡単ではありません。そこで、業界最大級の転職サイトである 「doda」で編集長を務める加々美祐介が、dodaで得た情報を基に、採用市場の動向や押さえておくべきポイントを解説します。
求人倍率は上昇を続け、過去最高値レベルをマーク
まずは中途採用市場の動向について説明します。グラフを見るとわかるように、データを取り始めた2019年1月から求人数、転職希望者数とも増加傾向にありますが、求人数の増加度合いの方が大きいため、求人倍率は上昇。2023年11月の求人倍率2.76倍は、過去最高値(※セミナー開催当時)となっています。
続いて業種ごとの求人倍率です。こちらも表を見ていただくと分かりやすいですが、最も高かったのは「人材サービス」で8.04倍。次いで「IT・通信」が7.62倍、「コンサルティング」、「メディア」、「建設・不動産」といった業種が続きます。
前年同月比で求人数の増加率が最も大きかったのは「エネルギー」で、次いで「レジャー・外食」です。なお「エネルギー」では、カーボンニュートラルに代表されるような次世代エネルギーの開発関連の求人が増えています。
「レジャー・外食」では、新型コロナウイルス感染症が5類に移行したことで、日本経済ではインバウンド需要が増加しています。現状はまだ1倍以下ですが、去年と比べて高くなってきています。
職種ごとの転職求人倍率では、最も大きかったのは「エンジニア(IT・通信)」で11.51倍。 次いで「専門職(コンサル・金融)」で 7.35倍でした。エンジニアにおいては10倍を超えることも珍しくありませんが、11.51倍は記録を取り始めてから 2番目に高い数字(※セミナー開催当時)です。
エンジニア、コンサルタント領域、この2つは常に高い状況が続いています。また、エンジニアの機械・電気、専門職の建設・不動産など、専門職系ならびに、企画・管理職なども継続して高い傾向にあります。
そして前年同月比で求人数の増加率が最も大きかったのは「事務・アシスタント」、次いで「販売・サービス」となっています。特に「販売・サービス」は先の業種と同様、インバウンド需要の高まりにより、1~2年前と比べると回復傾向にあります。
続いて、求職者の動向を紹介します。転職理由を尋ねたアンケート結果では、複数回答でも1つしか選べないアンケートでも、引き続き「給与が低い・昇給が見込めない」が高い傾向にあります。
またグラフの最下部、20名未満の企業においても「採用は行わない」と回答した企業の割合が大きく低下していることがわかりました。このような調査結果から、今季と同水準、あるいは少し増える企業が多いと言えるでしょう。
2024年の業績予測。採用人数や予算は今季と同水準あるいは微増傾向へ
続いては、今後の採用見通しについて解説します。まずは、業績予測です。全体的にこれまでと同様「プラス傾向」が高く、従業員数が多くなるほどさらに増します。エリア別では近畿がプラス傾向に。さらに業種別では、「外食」「IT・通信」「エネルギー」「メーカー(機械・電気)」などが高い傾向にあります。
採用人数・予算では引き続き、「今期と同水準・現状維持」と答えた企業が3~5割と最も多く、どの従業員規模においても「増える・増えそう」が「減る・減りそう」よりも多い状況です。
またグラフの最下部、20名未満の企業においても「採用は行わない」と回答した企業の割合が大きく低下していることが分かりました。このような調査結果から、今季と同水準、あるいは少し増える企業が多いと言えるでしょう。
職種別による採用人数の増減では、「営業職」「IT系エンジニア」が前回と同様増加傾向にあり、昨期よりもさらに採用を増加する企業が多いと捉えています。
採用領域でチャレンジしたいことを聞いた結果では、従業員数での偏りはありますが、全体的に以下の3つを答える企業が高い傾向にあることがわかりました。
・採用時に提示する条件の見直し
・採用時に求める要件(経験・スキル)の緩和
・自社の給与形態の見直し
従業員数ごとでは、1000名以上の規模の企業が「ダイレクトリクルーティングの拡大」「無料サービスの新規利用」を選択しています。また一方で、100~1000名未満の企業では、有料手法における「既存手法の拡大」に当たる回答率が、2023年度上期の調査と比べ全体的に2~3%低下傾向にあることもわかりました。
今後1年間を掛けて取り組む予定の課題項目では、「採用手法の見直し・変更」「採用要件の見直し・変更」が多いことがわかります。また、正社員採用と非正規雇用の配分調整、つまりポジションごとに正規・非正規採用を見極めて、採用に取り組む企業も増えていることが見て取れました。
採用活動状況、人事全般に関する興味・関心を聞くと、「戦略的な人材配置・人事異動」という、つまりタレントマネジメントのような領域や、先の報酬条件の見直しに関連する「人事制度の変更・改善」の要望が多い傾向にあることが分かりました。
また「シニアの活用・再雇用」に取り組みたいと答える企業や従業員数が多い企業では、「DX人材の採用・育成」が注目されており、先のITエンジニア採用を増やすという内容と相関していると捉えています。
就業スタイルを選べる求人の増加に合わせ、職種や人材に適した採用手法を選択する
ここからは2024年度の採用に向けて、押さえておきたいポイントを紹介します。各メディアでも大きく取り上げられましたが、賃上げ(ベースアップ)に踏み切る企業が増加していて、すでに実施した企業のほか、具体的な実施予定や内容まで決まっている企業を合わせると、その数は70%弱にも上ります。
また従業員の賃上げに関しては、人事制度の改定に取り組む企業が多く、基本給や賞与の見直し、営業手当の増額など、評価制度や賃金制度の見直しが進んでいます。
さらに先ほども紹介したように、テレワーク、リモートワークを導入する企業が増えており、テレワーク導入率はコロナ禍前の2019年には20.2%であったのが、2022年は51.7%程度に拡大しています。
コロナ禍が落ち着いた現在でも、ハイブリッドワークを求めている方が41.5%と多いことからも、良い人材を採用するためには働き方を柔軟に選べる環境や体制を整えておくのが良い、と言えるでしょう。
これまで説明してきたように、売り手市場に拍車がかかっている状況で、企業はどのように採用を進めれば、成功に導けるのか。それには大きく分けると3つのポイントがあります。
1つ目は、採用条件におけるMUSTとWANTの切り分けです。絶対に譲れない条件(MUST)、あればなおよい条件(WANT)を、今の転職市場の状況と照らし合わせ、設定していきます。
2つ目は、報酬条件の見直しです。先ほど紹介したチャレンジしたい項目であったように、人事制度の改訂、報酬条件アップに取り組む企業が増えているため、採用競合も増えていると言えるでしょう。そのため自社の報酬水準や労働条件を転職エージェントに確認するなどして、アップデートすることが重要です。
3つ目は、職種、人材に適した採用手法を選択することです。求める人材によって適した採用方法が異なるからです。求人広告や転職エージェントといった従来の手法に加え、ダイレクトリクルーティングやヘッドハンティングなども選択肢に加えるなどして、柔軟に実施していくことが大事です。
【Q&A】オンライン参加者からの質問に登壇者が回答
■ 正規・非正規採用のトレンドを教えてください。
2つポイントがあります。1つ目は、正社員として採用する人材の競争倍率が高く、採用が難しい場合に、経験やスキル面の要件のレベルを下げることです。同時に、正社員ではなく契約社員として採用するパターンも考えられます。
もう1つは、全ての企業に該当するわけではありませんが、サービス業、ホテル業界、小売り、外食といった業界ではまずはアルバイトで採用して、そこから契約社員や正社員へステップアップさせるというルートです。現状でもこのような採用手法を採る企業も増えています。
■ 昇給を毎年行っている企業は、訴求ポイントになるでしょうか。
行っていない企業と比べれば、確実にあると言えます。一方で、昇給額はどの程度なのか。また、全従業員に対して実施していると安定志向の方には響きますが、ベンチャー志向の方には響かないケースもありますので、採用したい人材や職種により、訴求ポイントも変わります。
■ 全体として効果的な採用手法を教えてください。
当社が実際に中途採用の際に意識していることをお伝えします。まずは、未経験でもチャレンジできるようなケースです。幅広く母集団を集めたいですから、求人広告や人材紹介サービスを両方、もしくはどちらか利用します。
一方、WebディレクターやITエンジニア、UXデザイナーといった専門職で年収も高い職種の場合は、いわゆる一本釣り。ダイレクトリクルーティングやヘッドハンティングといった採用で、こちらから直接口説きにいく事例が多いですね。
■ 年齢による動きの傾向はあるでしょうか。
以前は35歳が転職の限界だと言われていましたが、今は関係ありません。全ての年代で転職や採用は活発で、実際50代、60代を採用する企業もあります。特にハイクラス、専門職領域では年齢層の高い採用が増えています。事実、ハイクラス転職サービス「doda X」の転職決定ユーザーの平均年齢は40代です。
■ 会社が定める場所で働きたいとの層も多かったですが、どのような理由からでしょう。
あくまで私の感覚ですが、新入社員や若手はオフィスで同僚と共に働きたい、と回答する人が多い傾向にあると思います。一方で家庭を持っている方やエンジニアなどデスクワークが可能な方は、リモートワークで働きたいと考えている――。このような違いが出ているのだと思います。
■ オンライン面接の実施有無による内定承諾率の差はあるでしょうか。
内定承諾率の詳しい数字はわかりませんが、面接の応募率では影響が大きく出ると考えています。最終的には対面で面接を行いたいと考える企業も少なくありませんが、まずはオンラインで面接を行う企業が多く、このような企業に募集は集まりやすいです。そのため選考の途中まではオンラインで進めた方がプラスに働くかと思います。
■ 若手の短期離職が多い理由と、離職を防ぎ定着させるためのポイントを教えてください。
1つの会社で長く働く人。転職を頻繁に行う人。両極化していると感じます。
一方で、転職を考えていない志向の人でも、「doda」に登録する人の割合が以前と比べて増えています。実際、こうした登録のみ行っている潜在的な求職者の中にはスカウトメールなどには目を通しているケースも少なくありません。このような背景から、若手の離職が高まっているのではないでしょうか。
また若手に限ったことではありませんが、長く定着してもらうには先ほど紹介したように、働き方に柔軟性を持たせたり、その人材やポジションに合わせた給与体系での待遇など、人事制度や環境を整備したりすることは大事だと思います。
■ 給与やテレワークといった要素以外で、企業の強みが出せるポイントを教えてください。
たとえばスカウトメールを送る際、人事からではなく、社長や役員、事業責任者から送ると求職者の反応率は変わるというデータがあります。
実際、私も自分でスカウトメールを書き、自分の名前で送ることがありますが、そのほうが人事から送るよりも反応率も高いです。そしてその際、メールの送り手が普段ビジネスや採用で心掛けていることや、自身のプロフィールを記載して、読み手に親近感を持ってもらうような工夫をすることもポイントです。
もう1つは、こちらもスカウトメールでの工夫ですが、テキストばかりではなく、会社や社長、従業員、職場環境などが分かる画像、あるいはそのような画像が掲載されたホームページのリンクを貼っておくことです。
自社が求める人材像に近い経歴や職種の従業員がいる場合は、その方を前面に出し、「入社のきっかけは何なのか」「どのようなところに引かれたのか」といった内容をアプローチすることで訴求につながると思います。
【取材後記】
採用市場は社会環境の変化によって大きく影響を受けるため、企業の人事や採用担当者は社会環境を把握した上で適切な採用戦略を立案する必要があります。中途採用市場の動向を把握するのは簡単ではないため、転職サイト「doda」などの人材サービスの活用は大変有効です。
2024年の採用見通しでは、業績予測がプラス傾向であり、採用人数を増やす傾向も顕著です。このような流動的な市場においては各職種や人材に適した採用手法を選択することが重要です。そのほか賃上げやテレワークの導入などの柔軟な働き方を提供すること、採用条件の設定や報酬条件の見直し、適切な採用手法の選択も成功につながるポイントです。
2024年の採用市場もトレンドをうまくキャッチアップして採用成功していきましょう。
取材・文/杉山忠義、編集/鈴政武尊・d’s journal編集部
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