リファレンスチェックとは?実施する目的や質問事項、チェックポイント

d’s JOURNAL編集部

リファレンスチェックとは、採用活動において応募者の過去の職場にヒアリングを行い、働き方や人物像などを確かめるプロセスのことです。もともとは外資系企業などで用いられてきた手続きですが、国内企業で導入されるケースも少しずつ増えています。

この記事では、リファレンスチェックの目的や具体的な内容、トラブルを予防するための注意点などを解説します。

リファレンスチェックとは


人材採用においては、入社後のミスマッチを防ぐためのプロセスとして、「リファレンスチェック」に対する関心が高まっています。ここではまず、リファレンスチェックの基本的な定義や実施の目的について見ていきましょう。

リファレンスチェックの定義

リファレンスチェックとは、応募者の働き方や人柄について、前職の同僚や上司にヒアリングをする行為を指します。基本的には中途採用を行う際に用いられ、もともとは海外の企業や国内の外資系企業で取り入れられてきた方法です。

現在では幅広い業種の企業で導入されるケースが存在し、応募者の身元照会のために用いられる場合が多いです。

実施する目的

リファレンスチェックの目的としては、大きく分けて次の4つがあげられます。

・応募者のスキルや経験のミスマッチを未然に防ぐ
・面接で確認が難しい応募者の経歴や人柄をチェックする
・信頼関係を構築する
・企業側にとってどのようなメリットがあるのかを把握する

通常の採用面接のプロセスでは、応募者の緊張を完全に解きほぐすことができず、どうしても本質を見極めるのが難しい面もあります。リファレンスチェックはこうした前提を踏まえ、応募者と一緒に働いた経験のある第三者に意見を求めることで、より客観性のある情報を得ようとするのが目的です。

また、応募者としても自身の報告した経歴に嘘がないことの裏付けになるため、信頼関係を築くのにも役立ちます。

バックグラウンドチェックとの違い

リファレンスチェックと類似した言葉に、「バックグラウンドチェック」があります。バックグラウンドチェックは「採用調査」や「身元調査」を意味する言葉であり、どちらかといえば履歴書や職務経歴書に偽りがないかを確認することに重きを置いたプロセスです。

たとえば、休職期間の有無のように、応募者が履歴書で報告していない不都合な情報をチェックすることが目的とされています。また、具体的な調査については、第三者の調査機関が担うのが一般的です。

それに対して、リファレンスチェックは、応募者を採用することで自社にどのようなメリットがあるのかを把握することに目的があります。そのため、調査内容は人間性や適性に関するものが中心であり、基本的には採用担当者が調査を行います。

企業がリファレンスチェックを行う理由

前述のように、リファレンスチェックは欧米や外資系企業で行われてきた手続きであり、日本での導入実績はそれほど多くありませんでした。しかし、近年では少しずつリファレンスチェックを重視する企業が増加する傾向にあります。

それには、転職の一般化が大きく関係しているといえるでしょう。従来のように終身雇用制度が前提として機能しなくなったことで、1つの企業に定年まで勤め上げるといったケースは減少しており、優秀な人材ほど転職を志すというパターンが増えています。

その結果、企業としては中途採用における採用活動の質を高める必要性が高まり、リファレンスチェックが注目されるようになっていったのです。

リファレンスチェックを行う企業側のメリット


リファレンスチェックを行うことで、企業側にはどのようなメリットが生まれるのでしょうか。ここでは、2つのポイントに分けて整理してみましょう。

書類や面接だけではわからない点を把握できる

リファレンスチェックは、書類や面接だけではわからない「強みや苦手なこと」「周囲との関わり方」といった細かなポイントまで把握することができます。このように、採用における判断材料が増えるのが大きなメリットです。

応募者に対する理解が深まる

リファレンスチェックは、採用すべきかどうかを見極めるだけでなく、入社後の適性を見極めるのにも役立ちます。中途採用では、新卒採用以上に即戦力としての働きが期待されるため、できるだけスムーズに配属先を固められるのが理想です。

リファレンスチェックで応募者への理解が深まれば、入社後のプロセスが円滑に進んでいくでしょう。

リファレンスチェックを行うときの注意点


リファレンスチェックの実施方法を誤った場合、違法行為となってしまうリスクがあるので注意が必要です。また、違法行為には該当しなかったとしても、トラブルに発展してしまうケースはあるので、慎重な判断が求められます。

ここでは、リファレンスチェックを実施するうえで注意すべきポイントをご紹介します。

応募者からの同意を事前に得る

リファレンスチェックを行う場合は、必ず応募者からの同意を得てから実施しましょう。なぜなら、2017年に改正された「個人情報の保護に関する法律」により、第三者が本人の同意なしに個人情報を提供することが禁じられているためです。

そのため、基本的に本人の同意なしで前職の勤務先に情報提供を依頼したとしても、守秘義務を守るために断られてしまうでしょう。そして、何より無許可で前職や関係者に連絡を入れれば、応募者に与える心象も著しく悪化してしまいます。

企業と応募者のトラブルを避けるためにも、事前の許可を得ることが大切です。

リファレンス先に丁寧な説明を行う

リファレンスチェックは少しずつ注目を集め始めているとはいえ、国内ではまだそれほど一般的な取り組みではありません。応募者本人の許可を得たとしても、いきなり前職の勤務先に連絡を取ろうとすれば、無用な不信感や摩擦を生んでしまう可能性があります。

スムーズに目的を達成するためには、リファレンス先にも依頼した背景を丁寧に伝え、目的を正確に説明することが大切です。リファレンス先にとって、リファレンスの依頼を引き受けることは応募者の人生にも関わるため、大きな責任がともなう行為となります。

正確な情報を思い出してもらうためにも、事前に細かな依頼書を作成し、打ち合わせを済ませておくとよいでしょう。また、可能であれば、応募者本人から推薦者を指定してもらうと、やりとりがスムーズに進みやすくなります。

質問事項に留意する

リファレンスチェックを行ううえでは、個人情報の取り扱いに細心の注意を払う必要があります。そのうえで、厚生労働省の指針 では、以下のような項目の把握については就職差別につながる恐れがあると示され、注意が呼びかけられています。

本人に責任のない事柄の把握
・本籍・出生地に関すること
・家族に関すること(職業、続柄、健康、資産、学歴など)
・住宅状況に関すること
・生活環境、家庭環境に関すること

本来自由であるべき事項の把握
・宗教に関すること
・支持政党に関すること
・人生観、生活信条に関すること
・尊敬する人物に関すること
・思想に関すること
・社会運動に関すること(労働組合、学生運動の活動歴など)
・購読新聞、愛読書に関すること

上記のように不要な質問内容を投げかければ、リファレンス先にも迷惑をかけてしまうことになりかねないため、十分に注意が必要です。人事・採用担当者はあくまで応募者の能力や経験、人物像のみについて情報収集することを心がけましょう。

リファレンスチェックの質問事項


それでは、リファレンスチェックの際には、具体的にどのような質問を用意するのが有効なのでしょうか。ここでは、質問の具体例と問題があった場合の対処方法について見ていきましょう。

質問事項の具体例

質問内容については、次のようなものがあげられます。

勤務状況に関するもの
・前職または現職の在籍期間
・職務経歴
・前職または現職での勤務態度
・退職理由

コミュニケーション・人柄に関するもの
・仕事に対する姿勢
・周囲との関わり
・ストレス耐性

能力・スキル・実績に関するもの
・リーダーシップ
・業務における実績
・トラブルへの対処の仕方

実際に活用する際には、採用ポジションや職務内容に応じて質問事項の絞り込みを行い、簡潔にまとめることが大切です。

問題があった場合の対応方法

リファレンスチェックを行うことで、応募者に何らかの懸念点が見つかった場合には、内定を出す前に細かく事実確認を行うことが大切です。たとえば、経歴詐称などの虚偽が判明した場合には、本人に事実と事情の確認を行い、そのうえで採用の可否を判断する必要があります。

また、応募者の人柄や価値観と自社の企業風土がマッチしないと感じた場合には、いきなり不採用を決めるのではなく、改めて自社の企業理解を深める機会を設けるのも一つの方法です。その結果、より適切な選択が見つかるケースも少なくありません。

リファレンスチェックを行う手順


最後に、リファレンスチェックの具体的な手順について、全体の流れから詳しく見ていきましょう。

全体的なフロー

リファレンスチェックは、基本的に以下のような流れで実施します。

1.選考フローにおいて、リファレンスチェックの実施タイミングを決める
2.応募者にリファレンスチェックの目的を伝え、実施について同意を得る
3.リファレンスチェック先を選定する
4.リファレンスチェックを実施する

リファレンスチェックのタイミングは、「書類選考の段階」「選考中」「内定後」など、企業の採用方針によっても異なります。ただ、基本的には採用後のミスマッチを防ぐことを目的として、「内定を出す直前の最終チェック」として実施されるケースが多いです。

リファレンスチェックの実行タイミングを決めたら、応募者にその目的を伝え、同意を得る必要があります。その後、リファレンス先を選定し、協力の依頼や日程の調整を済ませて、準備を進めていきます。

リファレンスチェックの実施手段は電話やメール、Web上のやりとり、郵送などがあるので、相手先の企業に合わせた方法を選ぶことが大切です。そして、リファレンスチェックを行ったら、結果の確認と分析を行って採用結果に反映させましょう。

なお、リファレンス先の選定については、「応募者から紹介してもらう方法」と「人事・採用担当者が自らリファレンス先を探す方法」の2通りのパターンがあります。ここからは、それぞれの具体的な進め方について解説します。

応募者からリファレンス先を紹介してもらう

応募者からリファレンス先を紹介してもらう方法は、依頼先の協力が得やすくなり、スムーズにチェックを進められるのがメリットです。基本的には、以下の手順で進めていくこととなります。

1. 応募者に同意を得る
2. 応募者が自らリファレンス先にチェックを依頼する
3. リファレンス先から承諾を得る
4. 企業に対して応募者がリファレンス先の情報を提出する
5. 企業からリファレンス先に連絡を入れる
6. リファレンス先からの回答を得る

リファレンス先の窓口としては、同僚、上司といったさまざまな選択肢が考えられますが、前職で応募者を評価する立場にいた上司が務めるケースが多いようです。なお、応募者がリファレンス先を選ぶこととなるため、公平性を保つためにも、1人ではなく複数人を紹介してもらうのが一般的です。

応募者の同意を得た上で人事担当者がリファレンス先を探す

もう一つのパターンは、人事担当者が自らリファレンス先を探す方法です。具体的には前職や前々職の人事・採用担当者に直接問い合わせるケースや、調査会社を利用してリファレンス先を探すケースがあります。

なお、繰り返しにはなりますが、こちらの方法を選ぶ場合でも事前に応募者の同意を得る必要がある点には注意しましょう。

まとめ

リファレンスチェックは応募者の虚偽の報告や懸念点といったネガティブな側面を発見するだけでなく、面接だけでは得られないポジティブな側面を引き出すことも目的としています。

採用後のミスマッチを防いだり、適切な配属先を見極めたりするうえでも、重要な役割を果たすプロセスといえるでしょう。

一方、実施方法を誤ればトラブルに発展してしまうリスクもあるため、ルールや注意点は正しく理解しておくことが大切です。個人情報の取り扱いにも十分に注意し、適切な活用を心がけましょう。

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