【弁護士監修】リファレンスチェックはミスマッチ防止に効果的?無理のない導入方法とは

弁護士法人あおば/あおば綜合社労士事務所

代表弁護士/代表社労士 相川 祐一朗弁護士【監修】

大阪と広島に事務所を持ち、法人顧問業務を中心に労務問題に取り組む。紛争が生じてからでは損害が拡大しがちな労務問題について、弁護士だけでなく社労士として、事前対応の視点で就業規則作成・変更から運用の指導、社内環境の整備を中心に行う。「とことん寄り添う弁護士」をモットーに、トラブルを未然に防ぐための中小企業のパートナーとして、日々活動を続けている。

リファレンスチェックとは?
リファレンスチェックの実施状況
リファレンスチェックの実施方法
リファレンスチェックを実施する際の質問例
リファレンスチェック実施時の注意点と聞いてはいけないこと
リファレンスチェックで、経歴詐称や懸念点が見つかった場合の対応方法
リファレンスチェックを代行してくれるサービス

企業と応募者双方の採用ミスマッチを防ぐために行われるリファレンスチェック。欧米や外資系企業では盛んに行われており、近年は日本でも関心が高まっています(導入企業事例:『社員全員で採用する – 「お試し入社」がミスマッチ・早期退職を防ぐ』。

今回は、リファレンスチェックの意味や実施のフロー、人事・採用担当者が注意すべきこと、応募者に経歴詐称や懸念点が見つかった場合の対応方法などをご紹介します。

リファレンスチェックとは?

リファレンスチェックとは、人事・採用担当者が中途採用を行う際に、応募者の前職での働き方や人物像などについて、前職の同僚や上司にヒアリングを行うこと。英語では「Reference Check」と表記し、「経歴照会」「推薦」などという意味があります。

リファレンスチェックを実施する目的

企業がリファレンスチェックを行う目的には、以下の4つがあります。

①応募者のスキルや経験のミスマッチを未然に防ぐ
②面接で確認し切れなかった応募者の経歴や人柄を確認する
③休職期間など、応募者が履歴書で報告していない事柄を知る
④信頼関係を構築する

応募者と一緒に働いた経験がある第三者からの意見を聞くことで、企業は応募者に関する客観的な情報を得ることができます。先入観にとらわれない、より正しい判断を下せる可能性が高くなるでしょう。また応募者としても、報告した経歴に嘘がないことの裏付けとなるため、採用段階での信頼関係を構築するのにも役立ちます。

バックグラウンドチェックとの違い

リファレンスチェックの類義語に「バックグラウンドチェック」があり、「採用調査」や「身元調査」を指す言葉として使われています。リファレンスチェックよりも、「履歴書や職務経歴書に偽りがないかを確認する」という意味合いが強いようです。

リファレンスチェックの実施状況

欧米や外資系企業では、リファレンスチェックが盛んに行われていますが、日本での導入実績はさほど多くありません。しかし、近年の採用難や早期離職といった背景から、採用のミスマッチを減らすための手段として、リファレンスチェックに注目が集まっています。特に「幹部候補」など経験値の高さが求められるポジションを採用する際に、リファレンスチェックを行う企業が増えているようです。
(参考:『離職率とは?計算方法や業種別平均離職率、離職率を下げる方法【計算用エクセル付】』)

リファレンスチェックの実施方法

リファレンスチェックは、以下のような流れで実施します。

①:選考フローにおいて、リファレンスチェックの実施タイミングを決める
②:応募者にリファレンスチェックの目的を伝え、実施について同意を得る
③:リファレンスチェック先を選定する
④:リファレンスチェックを実施する

リファレンスチェックを実施するタイミングは、「書類選考の段階」「選考中」「内定後」など、企業によってさまざまですが、一般的には「内定を出す直前の最終チェック」として実施されることが多いようです。応募者に目的を伝え、同意を得たら、リファレンス先を決定します。ここでは、リファレンス先の選定について、「応募者からリファレンス先を紹介してもらう方法」と「応募者には同意だけを得て、人事・採用担当者がリファレンス先を探す方法」の2つに分けて解説します。

①応募者からリファレンス先を紹介してもらう方法

応募者から人事・採用担当者にリファレンス先を紹介してもらう場合は、公平性を保つため、1人だけでなく複数人を紹介してもらうことが一般的です。リファレンスを依頼する相手は、同僚、上司、取引先企業などさまざまなケースがありますが、働きぶりや仕事内容を評価する立場にいた上司であることが多いようです。
応募者からリファレンス先を紹介してもらう方法

②応募者には同意だけを得て、人事・採用担当者がリファレンス先を探す方法

人事担当者がリファレンス先を探す場合は、前職や前々職の人事・採用担当者に直接問い合わせるケースや、調査会社を利用してリファレンス先を探すケースがあります。
応募者には同意だけを得て、人事・採用担当者がリファレンス先を探す方法

調査会社が行う理由

リファレンスチェックの依頼方法は?郵送?メール?電話?SNS?

リファレンスチェックの依頼方法は「電話」「メール」「郵送」で行われることが多いようです。電話の場合、リファレンスチェックを依頼する目的や経緯を説明した上で、答えられる範囲で質問に回答してもらう流れが一般的です。メールや郵送の場合は、記載した質問項目に沿って回答してもらいます。応募者に関してより詳細な情報を得たい場合には、リファレンス先を訪問し、直接話を聞くケースもあるようです。SNSは現在ではまだ一般的ではありません。ただし、businessでも使用されるFacebookやLinkedInなどが今後使われることも予想されます。

リファレンスチェックを実施する際の質問例

リファレンスチェックを行う際、リファレンス先にはどのような質問をするとよいのでしょうか。ここでは、「勤務状況」「コミュニケーション・人柄」「能力・スキル・実績」の3つの要素に分けて、よくある質問例をまとめました。実際に活用する際は、採用ポジションや職務内容によって内容を見直すことが大切です。

勤務状況 ●実際の在籍期間、役職、職務内容が、履歴書・職務経歴書に記載してある内容と相違がないか
●年収や給与について
●無断欠勤、遅刻はなかったか
●退職理由について
コミュニケーション・人柄 ●パーソナリティー、人間性について(長所、短所など)
●周囲とのコミュニケーションが良好であったか
●ストレス耐性について
●また一緒に働きたいと思うか
能力・スキル・実績 ●主な業務の実績、功績
●トラブルが生じたときの対応の仕方について
●リーダーシップについて
●懲戒などの実績がなかったか

リファレンスチェック実施時の注意点と聞いてはいけないこと

第三者を通じて「応募者の個人情報を得る行為」であるリファレンスチェック。実施方法を誤った場合、違法行為やトラブルにつながる可能性があります。ここではリファレンスチェックを実施する上で注意したいことや、聞いてはいけないことをご紹介します。

注意点①:応募者から必ず同意を得る

リファレンスチェックは、応募者の同意を得ることが必要です。2017年に改正された『個人情報の保護に関する法律』により、第三者が本人の同意なしに個人情報を提供することは、違法となります。リファレンスチェックの実施目的や実施方法を、書面などでまとめて応募者に通知し、十分な理解と同意を得ましょう。

注意点②:リファレンス先へ丁寧な説明を行う

応募者は、リファレンス先に依頼した背景を丁寧かつ正確に説明することが大切です。リファレンス先にとって、リファレンス依頼を引き受けることは、応募者の評価を左右し、責任を伴うことでもあります。正確な情報を思い出してもらうためにも、依頼書を作成し、電話などで事前に打ち合わせをするとよいでしょう。

聞いてはいけないこと

個人情報の保護に関する法律』によって、採用活動における応募者の個人情報の取り扱いには、注意が必要です。また、応募者が差別や偏見などの不利益な取り扱いを受けないよう、人種、信条、病歴など社会的差別の原因となる可能性がある質問は、原則として禁止されています。人事・採用担当者は、あくまで応募者の能力や経験、人物像について情報収集することを心掛けましょう。

リファレンスチェックで、経歴詐称や懸念点が見つかった場合の対応方法

リファレンスチェックを行うことにより、応募者から直接得た情報とは異なる事実が判明する可能性があります。経歴詐称や懸念点が出てきた場合、人事・採用担当者としてどのように対応することが適切なのでしょうか。ここでは、7つのケースに分けて対応方法をご紹介します。

ケース①:経歴詐称が判明した場合

リファレンスチェックによって、学歴や職歴の偽りが判明した場合、配属後の仕事内容や賃金に直接影響を及ぼす可能性があります。採用後に経歴詐称が判明すれば、懲戒解雇となるケースもあります。内定を出す前であれば、本人に事実確認を行い、経歴を偽った理由と正しい情報を確認した上で、採用の可否を判断する必要があるでしょう。内定後の取り消しについては、「合理的な理由」が必要とされていますので、自由にできるわけではありません。自社に与える影響や、詐称が採用に与えた影響など、取り消すことができるケースかどうかを慎重に判断する必要があります。
(参考:『【弁護士監修】採用後に経歴詐称が発覚した場合の対応法。解雇は可能?』)

ケース②:懲戒などの実績があった場合

リファレンスチェックの結果、戒告、減給、降格、懲戒解雇などの実績が判明する場合もあります。採用するか否かについては、応募先企業での業務や企業秩序にマイナスの影響を与える可能性があるため、慎重な検討が必要です。事実を確認する際は、応募者の心証を害さないよう、十分な配慮を行いましょう。
(参考:電子政府の総合窓口イーガブ『個人情報の保護に関する法律』)
(参考:『【弁護士監修】意図せず法律違反に…。面接で聞いてはいけないこと』)

ケース③:退職理由が本人の説明と異なる場合

リファレンス先からヒアリングした応募者の退職理由が、応募者から聞いた内容と異なる場合もあるかもしれません。応募者とリファレンス先の認識にズレがある可能性や、退職理由が複数ある可能性が考えられます。「キャリアアップしたい」「給与を上げたい」「新しい仕事にチャレンジしたい」など、応募者が伝えた退職理由をポジティブに捉えられるかどうかが、採用の可否を判断するポイントになるでしょう。

ケース④:年収や給与が大きく違う場合

リファレンスチェックによって、働いていた時の年収や給与が大きく異なることが判明した場合、「年収や給与を低く伝えていたのか、高く伝えていたのか」「故意に偽りの回答をしたのかどうか」によって、対応が変わる可能性があります。待遇面の決定に関わることでもあるので、応募者への事実確認を行いましょう。

ケース⑤:SNSによる不適切発言、違法行為を発見した場合

SNSは応募者の人物像や人柄、交友関係などがわかりやすく、経歴情報を確認できるツールでもあります。そのため、FacebookやTwitterなど応募者が公開しているSNSを、内定の前後に確認する人事・採用担当者も多いようです。「マナーやモラルに欠ける行動や発言」「コンプライアンス違反につながる行為」などを発見した場合は、応募者とコミュニケーションを取る中で、SNSについての考え方や発言の背景を確認するようにしましょう。会社の方針と合うのかどうかをチェックしておくことが大事です。

ケース⑥:カルチャーマッチなどの面で懸念が生じた場合

早期離職防止の観点から、カルチャーマッチをより一層重視する企業が増えています。リファレンス先から得た応募者の働き方や人物像が自社のカルチャーと一致しないと考えられる場合は、「応募者が自分自身の行動や価値観、企業理解を深める機会を設けること」で、お互いに適切な選択ができるように目指しましょう。

ケース⑦:リファレンスチェックを応募者に拒否されたら?

応募者の同意を得ることができなければ、リファレンスチェックを行うことはできません。現職の上司や同僚へ報告せずに転職活動を行っている応募者もいるでしょう。その場合、正式な入社が決まる前にリファレンスチェックを行うことは難しくなります。もし、それでもリファレンスチェックを実施したい場合は、応募者に「リファレンスチェックを拒否する理由」を話してもらうことが大切です。

リファレンスチェックを代行してくれるサービス

人事・採用担当者がリファレンス先を探したり、回答を得たりすることは、労力がかかることでもあります。そのため、近年ではリファレンスチェックを代行してくれるサービスが出てきています。
リファレンスチェックの平均価格は、10万円から20万円台であることが多いようです。2万円から3万円で利用できるものや、月々1,000円台の定額制でサービスを提供している会社もあり、価格設定はさまざまです。ここでは、リファレンスチェックの代行サービスをご紹介します。

代行サービス例①:back check

株式会社ROXXが運営する、オンラインで手軽にリファレンスチェックができるサービス。応募者の情報を登録すると、応募者に案内メールが届き、応募者自身からリファレンス先を指定してもらうため、人事・採用担当者は通常の業務が妨げられずに実施することが可能です。また回答結果が「勤怠」「コンプライアンス」「誠実性・責任感」「コミュニケーション・チームワーク」「ストレス耐性」の5要素でグラフ化され、その結果を面接で活かすこともできます。

代行サービス例②:oxalis

国内で初めてオンラインによる自動リファレンスチェックサービスを提供した、LIF株式会社が運営する「外国人雇用」に対応したサービスです。リファレンス対象者が外国人であった場合に、英語、中国語でリファレンスレターを依頼することができます。その際も人事採用担当者は、日本語で申し込みを行うことが可能です。リファレンスの依頼からお礼、フォローアップまで全てオンラインで完結するため、国際電話や外国語書面による対応が必要ありません。

【まとめ】

リファレンスチェックを行うことは、経歴詐称や懸念点などネガティブな側面を発見することだけでなく、面接だけでは聞けなかった応募者のポジティブな側面を引き出し、適性に合った仕事とのマッチングを実現させることにもつながります。違反行為とならないようにあらかじめ本人から同意を得て、個人情報の取り扱いに十分に注意し、正しく導入することを心掛けましょう。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、監修協力/unite株式会社、編集/d’s JOURNAL編集部)