採用広報とは?7つの手法と成功させるためのポイントを解説

d's JOURNAL
編集部

従来の採用活動では、求人広告を掲載して転職希望者からの応募を受ける「待ち」の手法が主流でした。しかし、採用市場が売り手市場となっている昨今、待ちの姿勢では他社との採用競争に勝てないため、早期に手を打つ必要があります。

そこで本記事では、「攻め」の採用手法である採用広報に焦点を当てて、その具体的な方法や成功の秘訣をお伝えします。
自社の魅力を打ち出し、採用成功のためにお役立てください。

採用広報とは


採用広報とは、自社の採用要件にマッチした人材を採用するために、企業自らが行う広報活動のことを指します。SNSをはじめとする各種媒体を用いて、基本的な募集要項の他、自社の魅力や職場の雰囲気、企業文化などを広くアピールし、転職希望者に関心を持ってもらうことが目的です。

中には、自社のコーポレートサイトとは別に、採用に特化したサイトを制作する企業もあります。広報活動では、自社の情報を包み隠さず発信することで、転職希望者からの信頼を得られるでしょう。

採用広報を通じて、自社に興味を持ってもらい、応募、選考、採用、入社へと進んでもらうことが基本的な流れです。認知度の向上を図る採用広報によって、転職希望者に興味を持ってもらい、応募につなげ、採用へと進むプロセスが、商品・サービスのマーケティングのプロセスと似ています。そのため、「採用マーケティング」と呼ばれることもあります。

採用広報を行う部門

採用広報を実施するに当たっては、「人事担当者」と「広報担当者」がそれぞれの知見とノウハウを共有した上、協力しながら進めるのが理想です。

例えば転職希望者に発信するコンテンツは、転職希望者のニーズや社内制度、採用情報などを熟知している人事担当者が担います。そのコンテンツの発信方法は、広報戦略に精通した広報担当者の知識を活かすとよいでしょう。

コンテンツの制作に際しては、内容と自社の実態に乖離があってはならないため、現場の社員への聞き取りが欠かせません。人材採用は全社的な課題でもあるので、人事と広報の担当者を中心に、社内のあらゆる部署に協力を仰ぎながら取り組むことが重要です。

採用広報を行う目的

採用広報を行う主要な目的は、「エントリー数の拡大」にあります。国内における現代の経営環境は、労働人口の減少にともなう深刻な人手不足が続いており、新規採用の難化が課題となっています。

こうした状況にあっては、求職者からの応募を受けるだけの「待ち」の求人手法では、企業もなかなか人を集めることができません。十分な母集団を形成するためには、積極的に自社の情報を発信し、転職潜在層にも認知を拡大する必要があるのです。

また、採用広報には、「採用におけるミスマッチの予防」という目的もあります。自社の業務内容や社内の雰囲気をオープンに伝えることで、求職者には自社の正しい情報が伝わるため、イメージと入社後の実情にギャップを感じるリスクが軽減されます。

経営理念や社風を理解した候補者からのエントリーが増えれば、母集団の質も自然と向上していくでしょう。このように、採用活動全体の効率性が高まることで、採用コストの低減にもつながります。

(参考:『母集団形成とは?重要性と実践の手順、効果を上げるためのポイントを解説』)

採用ブランディングとの違い

採用広報と似た言葉に「採用ブランディング」がありますが、両者は活動そのものにおける目的が異なります。

先述した通り、採用広報の目的としては、応募数の拡大や採用時のミスマッチ防止です。一方の採用ブランディングは、採用市場における自社ブランドの価値を向上させて、ファンを作ることが目的です。つまり採用活動を通じて、採用要件に適した人材を獲得するための土台作りとも言えるのが、採用ブランディングというわけです。

採用広報を成功させるためには、採用ブランディングを取り入れて採用活動の基盤を作った後、人材採用のための施策を打ち出すとよいでしょう。

採用広報が注目される理由

ここまで、採用広報の詳細とその目的、また採用ブランディングとの違いについてお伝えしました。では、なぜいま採用広報が注目されているのでしょうか?

ここからは、その理由について解説していきます。

人手不足による売り手市場

近年は、少子高齢化の影響を受け、転職希望者が減少し、採用市場では売り手市場が続いているのが現状です。そのため、自社が求める人材を採用する際には、採用広報に力を入れる必要があります。

売り手市場の影響を受けて、企業同士の採用競争は激化しており、採用要件に適した人材を複数の企業が取り合うというケースも見受けられます。従来のように一つの採用手法に頼った「待ちの採用活動」では、自社の競争優位性が確立されず、人材の採用が難しくなるわけです。

そのため、自社の魅力を打ち出した攻めの採用広報を展開することで、最適な人材の採用につなげることが不可欠なのです。

転職潜在層の増加

転職潜在層が増加していることも、採用広報が注目されている理由の一つとして挙げられます。いまや、一つの会社に長く勤めるという価値観は、一般的ではなくなってきています。

転職によってキャリアアップを図る、あるいは異業種に挑戦して新たな経験を積むといった、前向きな理由で退職する方もいるでしょう。転職に対する考え方が変わったことによって、転職潜在層の数が増加しているため、企業も中途採用に力を入れる必要が出てきました。

売り手市場の状況で採用要件に適した人材を採用するためには、こうした転職潜在層にも積極的に採用広報を展開する必要があります。

デジタルメディアの普及

デジタル化の波によって、情報を伝える媒体の多様化が進んでいる点も、採用広報が注目されている要因として挙げられます。

企業においては、従来の紙媒体だけでなく、さまざまなWeb媒体を利用した採用活動への取り組みが急務となっています。転職希望者に向けて、自社の魅力や企業文化を効果的に発信するためには、コーポレートサイトやSNSなどのデジタルメディアを活用した採用広報が欠かせません。

採用広報を行うメリット

採用広報が注目される理由は、採用の売り手市場化や転職潜在層の増加、デジタルメディアの普及にあることをお伝えしました。

続いて、採用広報を行う3つのメリットを紹介します。
採用広報に踏み出すかどうかを迷っている人事・採用担当者は、以下の内容を判断材料としてお役立てください。

メリット①知名度が向上する

採用広報を積極的に打ち出すことで、転職希望者による会社の知名度や認知度が上がります。

企業が採用活動を行う際、「知名度が低く、思うように転職希望者まで自社の魅力が伝わらない…」という課題に直面するケースがあります。特にBtoB企業の場合は、転職希望者に社名や事業内容を認知されていないことが多く、応募候補に挙がりにくいようです。

しかし、採用広報に取り組むことで、これまで十分にアプローチできていなかった層に対しても情報を届けられるため、知名度が上がり、応募につながる可能性が高くなります。
知名度が高い企業においても、情報のアップデートや、さらなる認知度向上のために採用広報は欠かせません。

自社の知名度を向上できれば、応募数の増加も見込めるため、この点は採用広報を行うメリットの一つと言えるでしょう。

メリット②自社への理解度が向上する

採用広報に取り組むメリットとして、自社への理解を深めてもらえる点も挙げられます。
ただし、これには自社のありのままの姿を伝える情報を発信する必要があります。
例えば、企業風土や実際の仕事風景はもちろん、自社の良い部分だけでなく、課題点も含めて包み隠さず発信するのがポイントです。自社への理解度を向上させることで、採用後のミスマッチや早期離職のリスク回避にもつながるためです。

採用後のミスマッチが起こると、せっかく採用に至っても「社風が合わなかった…」「仕事内容がイメージと違った…」などといった理由で、すぐに離職してしまうかもしれません。
しかし採用広報を通じて、自社の実情を発信することで、企業側と転職希望者側の認識のズレを解消できます。このように、採用に関わる企業側の懸念点を払拭できるのは、採用広報の大きなメリットです。

メリット③企業イメージが向上する

転職希望者は、応募候補として挙げている企業について余すところなく調べています。
そのため、採用広報で自社の魅力的な情報を発信することができれば、企業イメージの向上につながります。

採用広報で発信する情報は、転職希望者が応募先を選ぶ際の貴重な判断材料です。
そのため、企業の良い面も悪い面も包み隠さず公開することで、転職希望者からの信頼につながります。ありのままの情報に加えて、仕事内容や必要なスキルの他に、法定外福利厚生の有無や過去の事業実績、独自のプロジェクトなど、自社ならではの魅力をアピールするとよいでしょう。

これが結果的に、採用のミスマッチの防止になるだけではなく、転職希望者の入社意欲を促進させることにも結び付きます。

採用広報のおもな手法7つ


採用広報の手法には、おもに費用を払って認知を広げたり人材紹介を利用したりする「ペイドメディア」、SNSの運用などで認知を広げる「アーンドメディア」、自社でメディアの構築から運用までを行う「オウンドメディア」の3つがあります。ここでは、それぞれの具体的な手法について見ていきましょう。

①コーポレートサイト

採用広報でコーポレートサイトを活用する際のポイント

・企業情報を提供することが目的のため、個別の商品・サービスの情報は掲載しない
・企業のビジョンや経営理念などを漏れなく掲載する
・読者は投資家やパートナー企業なども想定する

②広告

採用広報で広告を活用する際のポイント

・広告にはさまざまな形式があるため、自社に合ったものを選ぶ
・採用要件に合致する層に閲覧してもらえる可能性がある広告を用いる
・場合によっては高額な費用が発生することを考慮する

③イベント

採用広報でイベントを実施する際のポイント

・イベントの目的やターゲットを明確にしておく
・転職希望者とのコミュニケーションに備え、自社の魅力を伝えられるよう準備しておく
・担当者は、転職希望者に対して丁寧な受け答えを心掛ける

④SNS

採用広報でSNSを活用する際のポイント

・炎上対策を行い、ユーザーからの信頼や支持を獲得する目的で運用する
・ユーザーによる拡散効果を狙うため、ユニークなコンテンツを発信する
・質問や相談への対応ができる体制を整えておく

(参考:『【弁護士監修】炎上してからでは遅い!採用でSNSを使う際の注意点』)

⑤口コミサイト

採用広報で口コミサイトを活用する際のポイント

・企業が主体で発信するわけではないことを念頭に置く必要がある
・書かれている内容や評価には、ある程度気を配る必要がある
・更新時期や口コミの偏りに注意する

⑥ブログ

採用広報でブログを活用する際のポイント

・転職希望者を意識して、自社の情報や採用情報を紹介する
・社内行事や取り組みなどの様子を具体的に記載する
・実際に従業員が働いている様子や、キャリア形成の事例などを掲載する

⑦自社の採用サイト

採用広報で自社の採用サイトを活用する際のポイント

・Web上から直接応募できるフォームを設置する
・自社で働くことの魅力や、先輩従業員へのインタビュー記事などを掲載する
・中長期的な成果を目指して運用する

採用広報の具体的な進め方


採用広報に取り組む際には、手順に沿って精度の高い実施計画を立てることが大切です。ここでは、採用広報の進め方を6つのステップに分けて解説します。

採用広報の目的を明確にする

ブレのない計画を立てるためには、採用広報を行う目的を明確にしておく必要があります。実施にあたってさまざまな関係者が携わるため、メンバー全員で共通認識を持てなければ、効果的な広報を行うことはできません。

たとえば、「認知度の拡大」と「採用におけるミスマッチの減少」のどちらを重視するかによって、ふさわしい広報の手法や内容は大きく変わってきます。また、「短期で目標の人員を確保する」のと「中長期的に採用力を高める」のとでも、取り組みの方向性は大きく異なります。

そのため、まずは現状における採用課題をしっかりと分析し、採用広報を行う目的を丁寧に固めましょう。

採用したい人物像を決める

続いて、自社が採用したい人物像を定める必要があります。まずは、採用目的に沿って、おおまかな人物像を確認しましょう。

たとえば、十分な母集団形成を目的とするのであれば、自社のことを知らない求職者が主な対象となります。一方で、採用のミスマッチ低減が目的の場合は、自社のことを知っている求職者も対象に含まれるため、アプローチの方法も少し異なります。

また、自社が求める人材について、実在する人物像のように具体的なキャラクターを描いて明確化することも大切です。このキャラクター像は「採用ペルソナ」と呼ばれており、年齢や性別、スキル、経験だけでなく希望の年収やキャリア形成、仕事への価値観、ワークライフバランスの要求といった細かな点まで設定するのが特徴です。

採用ペルソナを決めることで、チーム内での基準が明確になり、スムーズな採用・選考が行えるようになります。採用ペルソナについては、以下の記事で詳しく解説されているので参考にしてみてください。

(参考:『採用ペルソナとは?重要性や設定ノウハウ・具体例をまとめて紹介【シート付】 』)

発信する情報を整理する

続いて、採用広報で発信する情報を整理しましょう。具体的なコンテンツは運用しながら作成していくこととなりますが、おおまかな方向性は計画を立案する段階で固めておけるとスムーズです。

コンテンツの方向性についても、基本的には採用目的に立ち返って考えることが大切です。たとえば、エントリー数拡大を目指すのであれば、自社のことを知らない求職者へ認知を広げられるような内容が求められます。

それに対して、採用のミスマッチ低減を実現させたい場合は、経営理念やビジョン、社風、企業文化などを中心にアピールする必要があります。

採用広報の手法を決定する

続いて、採用目的や扱うコンテンツに沿って、適した採用広報の手法を選定していきます。基本的には、エントリー数拡大にはペイドメディアが、採用のミスマッチ低減や中長期的な採用力強化に対しては、オウンドメディアやアーンドメディアが有効とされています。

そのうえで、予算や目標の期間、チームの現状などを踏まえて自社にマッチした手法を見極めましょう。

KPIを設定する

採用広報の目的は、「認知度の向上」や「採用ミスマッチの回避」などであるため、そのままでは目標も定性的なものになってしまいがちです。そのため、採用広報を具体的な成果につなげるには、計画を立案する段階でKPIを設定することが大切となります。

まずは、採用活動全体におけるKPIを設定しましょう。これは、たとえば「応募者数」や「内定承諾率」「入社後の〇年以内定着率」といった指標が該当します。

その後、採用広報の個別の手法についてもKPIを設定するのがポイントです。具体的には「SNSのエンゲージメント」「採用サイトのPV数」「採用イベントの来場者数」などが挙げられます。

効果検証を行い、改善に取り組む

計画が固まったら、実際に採用広報を実施していきます。このときには、運用のデータを正確に収集しておき、事前に設定したKPIに基づいて定期的に効果測定を行うことが大切です。

そのうえで、必要があれば施策の見直しを行いましょう。採用広報を一度で成功させるのは難しい面もあるため、PDCAサイクルを回しながら精度を高めていくことを前提に、無理のない計画を立てることが重要です。

採用広報の戦略設計のポイント


採用広報の進め方を押さえたところで、次は採用活動を成功に導くための戦略設計のポイントをお伝えします。採用活動を実施する際は、具体的な施策に移る前に、綿密な計画を練ることが重要です。

以下で、基本となる4つのポイントを紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

一貫性を持たせた情報を発信する

採用広報で発信する情報には、矛盾が生じないように一貫性を持たせることが大切です。場合によっては、複数の採用メディアを用いるケースもありますが、それぞれの発信内容に一貫性を持たせることで、自社のメッセージが求職者に届きやすくなります。

また、発信する内容については、実際の現状と乖離しないように注意することも重要です。求職者に与える印象をよくするために、背伸びをした表現や誇張があれば、結局のところは採用後のミスマッチによって人材の定着率が低下してしまいます。

外部に向けたメッセージと社内の実情があまりにもかけ離れていれば、自社の従業員からの信用を失ってしまうことにもつながります。たとえば、業務内容や業種上の問題でリモートワークが実現しにくい状況であるにもかかわらず、外部向けには可能であると誤認させるようなメッセージを発信すれば、社内にも混乱を招いてしまうでしょう。

そのため、情報発信は何よりも正確性と誠実さを重視して行うことが大切です。

中長期的な目標を設定する

採用広報の計画を立てる際には、ある程度の中長期的な視点を持つことが大切です。比較的に短期で成果が得やすいペイドメディアであっても、広告を打ち出してから具体的な反応が得られるまでには、やはり一定の時間がかかってしまいます。

さらに、オウンドメディアの立ち上げやアーンドメディアの運用で成果を得るには、年単位の時間がかかるのが一般的です。そのため、短期での実施を前提にして計画を進めると、予算や人員の不足によって継続できなくなってしまう可能性もあります。

中長期的なプロジェクトになることが前提であると考えると、採用広報は人事だけで取り組むのではなく、経営層との連携を図りながら進めていくことが重要といえるでしょう。そして、「〇年度中にエントリー数を□%アップさせる」といった明確な目標をもとに、十分な予算と人員を確保することが大切です。

現場の従業員の意見も取り入れながら進める

効果的なコンテンツを作成するためには、人事部だけでなくさまざまな現場、世代の従業員にも協力をあおぐことが大切です。たとえば、仕事の魅力について発信するのであれば、現場で働くメンバーのリアルな声をインタビュー形式などで掲載するのが効果的です。

また、子育てをする女性従業員の働きやすさについてフォーカスするのであれば、実際に自社で働くワーキングマザーの様子を取材するのが近道となります。それ以外にも、新入社員が働く様子や、先輩従業員のキャリア形成など、広報に活用できる素材は社内のさまざまな箇所に眠っています。

そのため、まずはスムーズな協力が得られるように、採用広報の実施を全社的な取り組みとして扱ってもらうことが大切です。

トレンドを取り入れてわかりやすく伝える

さまざまなデジタルメディアを活用する採用広報では、トレンドを押さえたメディア選定も大切です。

近年は、SNSやブログ記事といったテキストコンテンツの他、動画コンテンツも採用広報のツールとして活用されています。企業においては、これらを駆使して、転職希望者にわかりやすく自社の情報を提供することが求められます。
以下で、それぞれの活用方法をお伝えしますのでご参照ください。

SNSの活用

SNSは老若男女を問わず多くの方が利用しており、特に若年層を転職希望者に設定している場合は高い効果を発揮できるかもしれません。

ただし、ひと口にSNSと言ってもさまざまな種類があるため、自社の求める人材に合った適切なプラットフォームを選ぶことが成功のカギを握ります。例えば、若年層にアプローチするのであれば、ビジュアル重視のプラットフォームであるInstagramやTikTokが、専門職の採用ならビジネス特化型のLinkedInが適しているでしょう。

(参考:『「社員タレント化」によるX運用で母集団形成→入社承諾率100%!予算・専門人材なしでも始められる“自然体のSNS活用術”』)

テキストコンテンツの活用

ブログ記事やnoteなどの文字媒体は、採用広報には欠かせないメディアの一つです。
社内での出来事や社員の様子を逐一発信することで、転職希望者に企業風土や職場の雰囲気といった情報を詳細に伝えられます。これにより、転職希望者はよりリアルに働くイメージをつかめるため、入社後のミスマッチや入社承諾前辞の防止につながります。

また、自社の最新情報や業界のトレンド、社員のインタビューなどを掲載して、転職希望者の興味を引くことも可能です。

(参考:『定着率90%以上の優良企業なのに応募が来ない!?認知拡大に悩むBtoB企業の動画広告活用術』)

動画・音声コンテンツの活用

写真やテキストだけでは伝えきれない情報は、動画・音声コンテンツとして発信するのも一案です。

動画であれば、視覚的な情報を通じて自社の雰囲気を直感的に届けられます。
YouTubeやTikTok、Instagram Reelsなどを活用した社員インタビューや、イベントの様子を映したコンテンツが人気です。

また、音声コンテンツなら、テキストでは表現できない温度感を声に乗せられるため、聞き手に人柄や親しみやすさを伝えることが可能です。
近年は、VoicyやPodcastを活用する企業も増えています。
音声コンテンツは動画を製作するよりも費用を抑えられる他、意欲的な転職希望者にアプローチしやすいという特徴があります。

採用広報の5つの取り組み事例


採用広報の計画を立てる際には、すでに実施している企業の事例を参考にするのもおすすめです。ここでは、5つの企業の取り組み事例と、実際に得られた効果についてご紹介します。

株式会社ミラティブ:会社説明会資料のWeb公開

会社説明会用の資料を「採用候補者様への手紙」としてWeb上に公開。一般的にあまり開示されない給与などの情報も積極的に公開した結果、直接応募の増加につながっています。

また、採用広報のタイミングも工夫しており、総額35億円の資金調達の報告と共に、社長が採用情報についてもX(旧・Twitter)に投稿したことで注目を浴びました。その他にも、社員が自身のSNSでシェアしやすいようにコミュニケーションを取ったり、説明会で求職者の応募をサポートしたりと、社員を巻き込んだ採用を行っています。

株式会社ミラティブでは、社員全員がリクルーターとしての意識を持ち、応募者に対しオープンでフラットなコミュニケーションを取りながら採用につなげています。

(参考:『SNSで「採用候補者様への手紙」を公開した企業が目指す、理想の組織と採用のあり方ー株式会社ミラティブ 』)

株式会社メルカリ:オウンドメディア『メルカン』を運用

優秀な人材が次々と入社しており、採用業界で「人材のブラックホール」と呼ばれているメルカリ。会社が掲げる「世界観」に、一人ひとりに共感してもらったうえで、自分に何ができるかを考え、意識を高めてからの入社を促しているようです。

求人情報は出さず、人材紹介サービスやオウンドメディアの「メルカン」を使い、さまざまな職種の「メルカリではたらく人」の情報発信をすることで、求職者の目を引いています。採用ペルソナが何に価値を求め、どこに引かれるのかをしっかりと捉え、全社員で積極的に企業が目指す姿を伝える姿勢を持っていることも、メルカリの採用広報がうまくいっているポイントといえそうです。

(参考:『「読者は何を知りたいのか」を考え抜く。メルカリ採用ブランディングのメソッド 』)

LINE株式会社(現LINEヤフー株式会社):社員による自発的な情報発信

「世界中の人と人、人と情報・サービスとの距離を縮めること」をミッションに、コミュニケーションアプリ「LINE」を展開するLINE株式会社。社員のアウトプット思考が高く、仕事に対する考え方や企画書の書き方といったノウハウを、noteなどのWebサービスを使って積極的に公開しているようです。

また、LINEでは自社でのリアルイベントを積極的に行っており、その内容を会社ブログにまとめ発信しています。イベントは開催してしまったらそれで終わりですが、このように記録を残しておくことで、イベントに参加できなかった人でも情報を取得することが可能となります。

株式会社ベーシック:社員のX(旧・Twitter)継続の仕組みづくり

株式会社ベーシックでは、情報の拡散性が高いTwitterに注目し、積極的・継続的に情報を発信しています。2019年4月から全社的な取り組みとして運用をスタートさせ、役員を含めた社員の約3分の1が個人アカウントを取得。

社員のフォロワー数を合算すると約6万人にも上ります。投稿内容や頻度には制限を設けず、個々が自由に発信しながらも、目的や得られた成果、メリットについては定期的に共有する時間を設定しているそうです。

社内の雰囲気や理念などを含めたカルチャーを発信することで、「知名度が上がり、会社名とサービス名がセットで認知されるようになった」「内定承諾率が大幅に改善した」「離職率が最高値の3分の1まで低下した」などの効果がありました。

(参考:『採用広報の決定版。社員のフォロワー数は合算6万人、内定承諾率と離職率を大幅改善するSNS活用法 』)

ピクスタ株式会社:自社を”盛らない”情報配信

ピクスタ株式会社は、2017年に広報と人事部が共同運営するオウンドメディア『ピクスタ+』を立ち上げました。話題になることを狙うのではなく、「正々堂々」「公明正大」の姿勢を重視。自社にマッチした応募者を増やせるよう、データで表せない「カルチャー」や「社員の想い」などを自然体で表現する記事づくりを意識しています。

毎週編集会議を開き、求職者のニーズを踏まえたコンテンツを企画する一方で、イベント情報などの時事ネタは素早く発信するよう心がけているそうです。そうした取り組みは、採用力の向上に寄与しています。

実際、応募者は『ピクスタ+』を読んだうえで面談に臨むことも多いため、「入社後のギャップがない」という声がよく聞かれるそうです。

(参考:『盛らずに、ありのままの自社を伝える。自律した個のつながりを生むピクスタの採用広報 』)

まとめ

企業間での採用競争が激化する現代では、求職者から興味を持ってもらうために、採用広報に力を入れることが特に重要とされています。採用広報には、十分な母集団を形成するとともに、採用時のミスマッチを回避するという目的もあります。

ミスマッチが予防されれば、人材の定着率も向上していくため、中長期的には組織全体の力を高めることにもつながるでしょう。そのうえで、採用広報にはさまざまな手法があるため、自社に合ったものを適切に選ぶことが大切です。

まずは、自社が抱えている採用課題を徹底的に分析し、採用広報を取り入れる目的やKPIを明確にしたうえで、どのような方法が適しているのかを丁寧に見極めましょう。

(制作協力/株式会社STSデジタル、編集/d’s JOURNAL編集部)

自社の魅力を効果的に整理するのに役立つ採用広報の『4P』ワークシート

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