子育て中の社員が求めているのは「特別扱い」ではない【コラム】

まんまるキャリア

代表 佐藤やすよ

大学卒業後、IT企業へ入社。現場でシステム開発に関わる傍ら、エンジニアとして新入社員研修講師を担当したことがきっかけで、育成の分野に興味を持ち人事職へ社内転職。延べ300名の新入社員を、入社直後からOJTまでサポート。 2度の産休育休や時短勤務を経て、自身のワークライフバランスに悩んだ結果、2019年2月からは、週2フリーランス×週3派遣社員というパラレルワークを開始。"無理"というカドのない【まんまる】な暮らしができる人を増やしたい、 という思いを胸に、個人に寄り添った支援を心がけています。国家資格キャリアコンサルタント。

子育て中の社員がいると大変、なんて言っていられない
特別扱いの先にあるのは、対立構造
仕事に対する考え方は、人それぞれ
すべての人が働き方を選べる社会へ
まとめ

企業で管理職を務めている方の中には、子育て中の社員をメンバーにもつ方も少なくないでしょう。近年では、男性の育休取得が話題に上ることも増え、子育て中の社員への”配慮”は、女性社員だけのものではなくなってきました。

今回は、私がキャリアコンサルタントとして、仕事と家庭の両立についての相談をお受けしてきた経験と、自身も子育てしながら働いている中で感じていることを踏まえた考察です。今後の働く環境の在り方や、子育て中の社員とのコミュニケーションについてお伝えします。

子育て中の社員がいると大変、なんて言っていられない

メンバーから、妊娠や出産の予定を聞いた時、どんな心境で受け止めますか?

個人としての「おめでとう!」という祝福に加え、管理職という立場での「業務アサインどうしよう…」という不安の両方が浮かび、複雑な気持ちを抱えるのが正直なところではないでしょうか。また、採用面接の場面でも、子育て中の方からの応募は、採否の判断に影響してしまうこともあるでしょう。

私は、そのような不安や懸念が浮かんでしまうことこそが、社会の課題なのではないかと考えています。「生活する上で最優先すべきなのは仕事であり、仕事の時間を確保した後で残った時間=プライベート」いう考えをお持ちの方もいらっしゃるようです。それは、意識的な場合もあれば、無意識の場合もあるでしょう。しかし、男性の家事・育児参加が当たり前になっていく将来を見据えると、職場を子育てをしている方にとって働きにくい環境にしてしまうことで、益々人材確保が難しくなると予想されます。

特別扱いの先にあるのは、対立構造

子育て中の社員をメンバーにもつ皆さんは、どんな対応を求められることが多いですか?

業務量を減らす。業務時間を短縮する。急な休みや早退を認める。時には、異動も視野に入れて検討が必要な職場もあるでしょう。

私からお伝えしたいのは、子育て中の社員だけを特別扱いするような対応は、総合的に見て望ましくないということです。子育て中の社員は、居心地が悪くなるような「特別扱い」をしてほしいわけではありません。よくあるのが、子育て中の社員が仕事をセーブしたり調整したりすることの影響を、その他のメンバーが受けている状況です。子育て中の社員だけが配慮を受けている場合、その他のメンバーは、「なぜ私ばかりが負担を被るのか」と不満を感じます。これでは、子育て中vsその他という対立構造になってしまいます。

子育て中の社員は申し訳なさを感じながら仕事をすることになりますし、フォローしているその他の社員は、負担を強いられている現状に理不尽さを感じることになります。その環境では、お互いがストレスを抱えながら仕事をすることになり、良好な人間関係を構築するのは難しいでしょう。良好な人間関係が構築できていないチームは、スムーズな情報伝達が機能せず、パフォーマンスも発揮しにくくなります。

管理職の役割は、マネジメントです。メンバーの能力やスキル、事情を勘案して、業務を適切に配分する役割があります。例えば、子育て中の社員が業務の調整を求めている場合。その社員のためだけに調整するのではなく、他のメンバーや組織に与えられたミッションも含めた全体最適を考慮して管理(マネジメント)することが必要です。本当の意味でのマネジメントが上手くいけば、子育て中ではない社員に負担が偏ることはないと考えられます。つまり、特定の人々だけを特別扱いをするわけではなく、個人個人の事情に“配慮”した対応が必要だということです。

仕事に対する考え方は、人それぞれ

メンバーから妊娠・出産の報告を受けた時、無条件に負担を減らす方向で検討を始めていませんか?

子育てする環境や、仕事にかけたい時間や熱量は、個々人で全く異なるものです。ある人は、できる限り子育ての時間を確保し、仕事をセーブしたいと考えます。しかし、ある人は子育てに関して家族や行政などの支援を受けることで、仕事には子どもが生まれる前と同じくらい打ち込みたいと考えます。子育てと仕事の両立はまさに千差万別であり、一律に対応することはできません。同様に、子育てをしているかいないかに関わらず、仕事にかけたい時間や熱量は異なることも当然と考える必要があるのではないでしょうか。

管理職の立場からは、まずメンバーの希望をしっかりと把握することが重要です。「子どもが生まれるなら、これまで通りに働くことは難しいよね」という固定観念を持つことの無いように留意します。「あなたは今後、どんな働き方をしたいと思っているのか」をフラットな目線で確認していただきたいと思います。繰り返しますが、これは子育て中の社員に限ったことではなく、その他の社員に対しても同様に対処できることが理想です。

すべての人が働き方を選べる社会へ

私は、子育て以外の理由でも、仕事を調整することが当たり前の世の中になってほしいと考えています。仕事をセーブできる事情が、子育てに限定されていることが問題だと考えています。すべての社員が、自分にとってベストなボリュームを実現出来ることが理想です。仕事をセーブする理由が「勉強するために学校に通いたい」「趣味などの娯楽に充てたい」「疲れすぎないようにしたい」などでも良いのです。

つまり、これまでの「正社員は週5日40時間働く」という一律の考え方を払拭し、柔軟な環境を提供することが社員のエンゲージメントを向上する時代になっていくと考えています。

それぞれの人が、それぞれの事情や志向に合わせて働き方を選ぶことができれば、子育て中の社員だけが“特別”ということはなくなります。旧来の対立構造から、各メンバーがそれぞれ自分らしい選択をしている環境に変わっていきます。

まとめ

子育て中の社員を特別扱いすることなく、すべての社員が働き方を選べる社会や仕組みを作ることは、多様性を認める組織になるために有効な対応策の一つです。組織に与えられているミッションや顧客からの期待もあるでしょうから、すべての社員が納得する完璧なマネジメントは難しいのも事実かと思います。それでも、一人一人に労いの言葉をかけることや、思いを受け止めることで、信頼関係を構築していくことは可能です。「すべての社員に、多かれ少なかれ事情がある」を根本に据えてコミュニケーションやマネジメント手法を見直すことが第一歩です。徐々にその思想が広がることで、会社としての文化醸成につながります。