メンバーから信頼され「一緒に働きたい!」と思われる上司の人物像とは【コラム】

まんまるキャリア

代表 佐藤やすよ

プロフィール

私がキャリアコンサルタントとして、若手の方々から相談を受ける際、よく聞かれるのが上司との関係性にまつわるお悩みです。「話を聴いてもらえない」「仕事を丸投げされるばかりで疲弊している」「考え方にジェネレーションギャップを感じる」など、仕事の進め方やコミュニケーションに関するお話がほとんどです。

今回は、そのような方々の声をベースに、メンバーが求めている上司からのコミュニケーションや人物像を考察します。

「一緒に働きたい!」と思われる上司の周りは、社員エンゲージメントが高まる

メンバーから信頼され「一緒に働きたい」と思われるような関係性ができると、メンバーはその上司の下で仕事をすることに対してポジティブなイメージを持てます。それにより、職場の雰囲気も前向きになります。いわゆる社員エンゲージメントが高い状態です。

「一緒に働きたい!」と思われる上司の人物像について触れる前に、逆にメンバーからネガティブな印象を持たれてしまう上司について考えてみましょう。一言でいうと、「忙しそうな人」です。会議の予定が常に埋まっていてほとんど席にいない人や、席にいたとしても眉間にしわを寄せてPCとにらめっこしている人をイメージしてみてください。そういった上司は、メンバーにとって「気軽に声もかけられない遠い存在」で、信頼関係の構築も難しくなります。要因として考えられるのが、上司自身がメンバーのケアを後回しにしてしまっていること。もちろん会社が存続するためには、お客様の期待に応えることや売上などの数字を追うことも不可欠です。しかし、そこに終始している上司と「一緒に働きたい!」メンバーは少ないのが事実です。

メンバーから信頼される前に、メンバーを信頼していますか?

上司の皆さんにとって、メンバーはどのような存在でしょうか。経験が浅い若手社員に対しては特に、未熟で支援が必要だという固定観念を拭えないかもしれません。つい自分の経験を元にしたやり方を求めてしまったり、資料の細かな表現を指摘したりといった、マイクロマネジメントをしてしまっていませんか?また、メンバーのミスでお客様に迷惑が掛かるのが心配で、ミスをしないようにお膳立てをしてしまっていませんか?このようなことが繰り返されると、メンバーは上司の顔色をうかがって萎縮してしまいます。そのような状態では、メンバーも最大限のパフォーマンスを発揮するのは難しいでしょう。信頼される上司でありたければ、まず自分からメンバーを信頼し、任せることが大切です。

「一緒に働きたい!」と思われる上司の人物像、4つのポイント

メンバーから「一緒に働きたい!」と思われるためには、信頼関係の構築が重要。そのためにはどう関わればよいのか、4つのポイントをお伝えします。

メンバーは「自分を気にかけてくれる人」と一緒に働きたい

一言でいうと、一人一人のメンバーを気にかけてくれる人。これが、一緒に働きたいと思われるポイントの第一条件です。上司の皆さんは、メンバーのことを複数で構成される集団(=業務を遂行するための兵隊)として捉えないように注意してください。特に社員数の多い企業では、扱う業務の規模も大きく、各メンバーの役割やタスクまで目を向けるのが難しくなるのも事実でしょう。それでも上司の皆さんには、一人一人に心を配っていただきたいです。報告を待つのではなく、上司自ら状況を把握しに行く姿勢が大切です。具体的には、日常的に一人一人に声をかけること。1on1のような取り組みも有効です。メンバーの置かれている状況を知ろうとする姿勢が、メンバーとの信頼関係構築につながります。

メンバーは「ヒーロー的上司」と一緒に働きたい

メンバーが日々の業務で壁にぶち当たったり、課題を抱えて悩んでいるとき、頼れるヒーローの存在が大きな支えになります。上司が心がけるべきは、「○○で困っている」「この部分が上手くいかない」といったメンバーの声を拾った後の、具体的で現実的なアドバイスです。一番避けていただきたいのは、せっかく声を挙げてくれたにも関わらず何の対処もしないことです。「あの人に言ってもムダだ」と感じさせてしまうと、一瞬で心の距離は遠く離れてしまい、その後は上司として把握しておくべき情報すら耳に入らなくなってしまう可能性があります。具体的には、メンバーの困りごとを解決に導く方法を一緒に考え、行動に移せるまでサポートをします。状況によっては、上司自らキーパーソンへの対応依頼や、関係者間の調整が必要な場面も出てくるかと思います。口を出すだけではなく、しっかりと手を差し伸べることで、メンバーにとっては、困ったときに助けてくれる「ヒーロー的な存在」になれます。

メンバーは「人として温かみのある人」と一緒に働きたい

上司という威厳のある立場を保ちながらも、「上司も一人の人間なのだな」と感じさせる温かみも時には必要です。上司の皆さんの中には「業務上の悩みがあっても自力で解決しなければならない」「メンバーには悩んでいる姿を見せてはいけない」と思い込んでいる方がいらっしゃいませんか?上司といえども、常に完璧である必要はありません。メンバーの意見を求めたり、助けてもらうタイミングもあってよいのです。家族や趣味の話など、プライベートな一面も見せると距離を縮めやすくなります。もしかしたら、若手社員に対して、職場でのプライベートな話は好まないイメージをお持ちかもしれません。確かに根掘り葉掘り聞かれることへの抵抗感はありますが、上司の側から弱みも含めたプライベートな話をすると、自然に若手社員からもプライベートな一面の話をしてくれるようになる場合があります。相手のことを知りたければ、まずは自分の話をする。それが、距離を縮めることにもつながります。

メンバーは「上司自身が言ったことを実行しているか」をみている

上司は立場上、様々な人に助言や思想を伝える機会が多いかと思います。メンバーは、上司が発した言葉と行動が一致しているかを、意外なほどにみています。例えば、口では「時間を守ることが大切だ」と言っている人が、約束の時刻に遅れてくる。「○○さんに伝えておくね」と言っていたはずなのに伝わっていなかった。このような事態が起きると、メンバーは不信感をもってしまいます。逆に言葉に行動が伴っている姿を見せられれば、メンバーはその上司を誠実で信頼できる方だと感じられるでしょう。

まとめ

これまでに挙げたポイントをまとめると下記のとおりです。

◆ 日常的に一人一人に声をかける
◆ メンバーの困りごとを解決に導く方法を一緒に考え、行動に移せるまでサポート
◆ 家族や趣味の話など、プライベートな一面も見せる
◆ 言葉に行動が伴っている姿を見せる

どれも簡単なように見えますが、確実に実行するのは難しいポイントです。上司の方は、さらに上の管理職・メンバー・お客様など、様々な方面から様々なことを求められがちな立場でもあり、時間の使い方や関わり方に難しさを感じる時もあるでしょう。メンバーのことを考え常に適切な対応を取れると、仕事をやりやすくなるに違いありません。若手メンバーとのコミュニケーションを恐れずに積極的に関わっていただけると、若手の方々を支援しているキャリアコンサルタントとしても嬉しく思います。