給与9万円増にボーナス前倒しも。社員への”姿勢”が結束を強める

株式会社シーラホールディングス

取締役会長 杉本宏之

1977年生まれ。神奈川県出身。高校卒業後、宅建主任者資格を取得し不動産会社に就職。2001年に独立し、エスグラントコーポレーションを設立。05年、業界史上最年少で上場。09年に民事再生を申請し、翌10年にSYホールディングス設立。以降、不動産関連事業を中心にワンストップソリューションを推進する。

「第一に考える」、その対象は誰だ
次のリーマンショックをシミュレートしていた
コロナを機にDX化を徹底

株式会社シーラホールディングス(東京都渋谷区)の不動産事業が昨対比130%(8月現在)で好調だ。依然、新型コロナウイルスの感染拡大における日本経済への影響が深刻化する中で、同社は組織体制を抜本的に改革し、かつDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を行った。なにより「社員への還元」を重視したという、同社の成功の要因に迫ってみた。

「第一に考える」、その対象は誰だ

「第一に考える」、その対象は誰だ

2020年7月29日、ある投稿がtwitter上で拡散され大きな話題となった。それはシーラホールディングス取締役会長 杉本宏之氏(以下、杉本氏)による、社員への待遇について触れた内容である。同ツイートは「何があっても社員を守りたいという、決意を表しました。」という一文で締め括られていた。

不動産の売買、賃貸、管理及び仲介業を展開し、自己資本比率40%、保有物件の稼働率99.9%という数値で年商200億をたたき出す総合不動産デベロッパーのシーラホールディングス。前身であるエスグラントコーポレーション(以下、エスグラント)は2008年のリーマンショックの影響を受け、2009年に民事再生を申請。2010年、新たにシーラホールディングスを設立し、そこから驚異的な復活と成長を遂げた会社だ。

同社は今年3月、新型コロナウイルス感染症の第一波を抑え込むための防疫措置が、政府主導により本格化する中。数多くの企業がそうであるように、例に漏れず経済的損失の煽りをまともにくらっていた。その渦中において打ち出した施策、それが「社員への還元」であった。具体的には、「3カ月で全社員の給料を9万円アップ」「ボーナスを一部前倒しで全社員へ支給」「マスク2万枚、消毒ジェル500本を全社員支給」「PCR・抗体検査を全社員に実施」「病院と提携して社員専用の医療相談ダイヤルを開設」などである。

一般的に会社が業績不振や経営危機に陥った場合、資金調達や人的コストの見直しを考える経営者は少なくない。しかし杉本氏はそうしなかった。真っ先に「社員への還元」、つまり福利厚生を考えたそうだ。「当社は”会社は家であり、社員は家族である。”を理念に掲げています。会社が危機に陥った時、まず社員を安心させて信頼感を高めるため姿勢を示さなければという想いがありました。社員は私たちのことをしっかりと見ていますから」と杉本氏は語る。

4月の売上高は昨対比で50%まで激減した同社であったが、同時に社内体制の再構築やDX推進などによるテコ入れを推進して、月平均20%増ペースで回復。8月には昨対比130%という実績でV字復活を遂げた。年内には同社として過去最高益を更新するのは確実という。

次のリーマンショックをシミュレートしていた

さて話しは12年前に遡る。アメリカの投資銀行「リーマン・ブラザーズ・ホールディングス」が2008年に経営破綻したことに端を発した世界的金融恐慌、通称リーマンショック。その影響を受け、同社の前身であったエスグラントを失った苦い経験を持つ杉本氏は、再起を図るとともに、新会社では経営理念や行動指針、組織体系の強化が必要だと感じた。さらにはBS(Balance Sheet/貸借対照表)重視の運営や販管費5年分の積み上げ、自己資本比率を高めるなどの基礎作りを固める一方で、リーマンショックのような金融恐慌、あるいは業界におけるゲームチェンジが起こる事態を想定したシミュレーション(資金繰りや組織、運営の在り方など)も怠らなかったという。

そして現在、新型コロナウイルス感染症拡大が日本や世界経済にとって影響を及ぼす時代が到来した。経済的損失は先のリーマンショックを超えると予測する声も上がる。しかしながら杉本氏にとって今回の事態は10年前から備えていた「あらかじめ起こると予測していた事態」のひとつだったのである。エスグラント経営破たんの際、社員が会社を去っていくこと、逆に意外な社員が残って活躍してくれた経験を持つ杉本氏にとって、社員との信頼関係への注力が今後の自社の命運を握るキーポイントであることを強く実感していた。だから「社員を第一に考える」行動というのは、杉本氏にとって至極当然の選択だったといえる。

そしてコロナ禍で社会が停滞した4月以降、その選択の答えが先述の「社員への還元」につながる。この厚待遇施策に、約5,000万円ほどを注いだという。さらに当期の売り上げ目標を上方修正。目標を達成した際は全社員のボーナス支給額を50%アップすると公約した。これらの施策に全社員が応え、信頼関係やモチベーションの高まりに貢献したことは想像に難くない。

コロナを機にDX化を徹底

一方で、減収にあえいでばかりもいられない。収益向上のため従来のやり方を変えた。同社の展開する各商材やサービス、システムのDX化だ。例えば、不動産購入などに関してお客様とのやりとりはすべてオンラインで終了するようシステムを再編。契約も電子契約をメインとし、オンラインで重要事項説明も可能にした。その結果、省力の工数にもかかわらず従来よりリーチ数が3.5倍に伸長したという。

またOEM開発により不動産情報アプリをリリース。不動産投資に必要な情報収集を徹底サポートするだけでなく、同社の物件を利用するお客様のために、収支や建物管理費などの明細管理、家電のリモコン機能や提携サービス・店舗のクーポンシステムなども搭載したすべてのライフスタイルをオンラインでサポートできるようにした。

さらには、国内最大のクラウドファンディング「CAMPFIRE (キャンプファイヤー)」出身のCTOを招き、多様な不動産商品を展開できるクラファンプラットフォームを構築中。ほかにもテクノロジーのチカラで生活に係る負担を最小限に抑えられるシニア向けマンションで、資産性価値の高い商品を販売(11月予定)する。

これらの施策は、コロナショックをきっかけに、「生き残る為に何をすべきかを考えた」という杉本氏の考えを次々に具現化したものだ。同社設立以来、10年間の危機管理シミュレートをしてきた杉本氏の構想が見事にハマり、結果、過去最高収益を導くこととなった。厚待遇制度の実施は社員を第一に考え、DX化はお客様を第一に考えた。その「第一」となる対象に対して何ができるかを考えぬいた末、同社は大きな成長という結果を手に入れたのだった。

さて、次回は杉本氏による各施策についての振り返りを大いに語っていただこう。

株式会社シーラホールディングス

第2回はこちらから。
社員にお金を還元すること――。それは社員に試されていると感じた使命感から

取材・文/鈴政武尊、編集/鈴政武尊