オフィス出社orリモート勤務、従業員の真のニーズとは?家具・家電サブスクのCLASに聞く「理想の働き方」

株式会社クラス

法人事業本部 プロジェクト推進部マネージャー 米沢悠(よねざわ・ゆう)

プロフィール
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  • 出社やリモート勤務を一律に強いるのは危険。働き方やオフィスの在り方は業務分解に基づいて設計すべき
  • 従業員が居住環境・リモート勤務環境を自由にアレンジできる福利厚生サービスが人気を呼んでいる
  • 自宅よりも生産性が上がる「出社の価値を感じるオフィス」が組織力を最大限に高める

コロナ禍を経て、オフィス出社とリモート勤務を組み合わせたハイブリッドワークを導入する企業が増えています。「週○日は出社必須」「状況によってリモート勤務可」など、制度の建て付けは各社さまざまな状況ですが、現在の働き方は本当に従業員のニーズに応え、生産性を高められる形になっているのでしょうか?

個人・法人向けに家具・家電が月額制でレンタルできるサブスクリプションサービスを手がける株式会社クラスの米沢氏は「業務の種類に応じて働き方を設計し、それぞれに最適な環境づくりを支援すべき」と指摘します。同社ではコロナ禍に入った直後から従業員の自宅環境整備の負担を軽減する福利厚生サービスを展開。現在でも多くの企業に導入されています。

ハイブリッドワーク時代に本当に求められている働き方と、それを実現するオフィスの在り方を聞きました。

「出社vsリモート」の結論は業務分解に基づいて考えるべき

——貴社ではコロナ禍に突入した直後の2020年3月から、従業員の自宅環境整備の負担を軽減する福利厚生サービスを提供しています。この背景についてお聞かせください。

米沢氏:当時は緊急事態宣言もあり、自宅で急に仕事をすることになった人が日本中にあふれかえりました。その影響で、クラスの個人向けサブスクリプションサービスには「チェア」や「オフィスチェア」の注文が殺到しました。自宅で仕事をする際に、最適なチェアがなくて困っている人が多かったわけですね。

チェア以外の部分でもリモート勤務環境を整えたいというニーズは大きいはず。そこで当社では、従業員個人がクラスの家具・家電レンタルを利用する際に、その費用の一部を企業が負担する福利厚生サービスを提案しました。これは開始直後から多くの企業から問い合わせをいただき、現在もさまざまな業界・業種のお客さまに利用していただいています。

 

たとえばある大手SIerでは、プロジェクトごとに顧客先に常駐する働き方が主流で、オフィス賃料の一部を顧客先に支払っていました。しかしコロナ禍でリモート勤務が必須となり、従業員一人ひとりに十分な業務環境が整っていないという課題に直面。そこで、オフィス賃料の支出を従業員サポートの費用に切り替えることに。チェアとディスプレイ、昇降デスク、カメラ、マイクなどリモート勤務用の家具・家電をセットにして、従業員がレンタルできるように支援しています。

——最近ではオフィス出社への回帰の動きも報じられていますが、米沢さんは働き方の潮流をどのように見ていますか?

米沢氏:多くの企業がハイブリッドワークを目指し、オフィス出社とリモート勤務を組み合わせるようになりました。以前は出社メインだった企業も、週の中で一定の時間をリモート勤務とし、クリエイティブな仕事や集中する時間に充ててもらおうと働きかけています。

週の中で出社日や時間帯を固定化するのか、自由に動いてもらうかなど、やり方は企業によって異なります。ただ、明確な理由なしに出社やリモート勤務を強要するのは避けるべきかもしれません。4年間のコロナ禍で働く人の労働に対する意識は大きく変わり、1人で集中作業をしたり、電話やWeb会議をしたりすることが当たり前になったからです。

例えば、オランダで創業したVeldhoen + Company(ヴェルデホーエンカンパニー)は、 “ABW”(Activity Based Working)つまり「活動に応じた働き方」として、オフィスや在宅での仕事を10の活動に分類しています。

10の活動とは「高集中」「コワーク」「電話/WEB会議」「二人作業」「対話」「アイデア出し」「情報整理」「知識共有」「リチャージ」「専門作業」で、オフィスもそれぞれの活動をしやすいデザインであることが重要です。このように仕事を分解すると、個々の業務にどんな特徴があり、どのような環境が最適なのかが見えてきます。出社やリモート勤務を一律に強いるのではなく、業務に必要なコミュニケーションなどに基づいて働き方を設計するべきでしょう。

グループでの対話や課題整理・改善に向けたアイデア出しなど、対面で実施した方がお互いの認識の擦り合わせや施策の合意が取りやすい業務については出社を前提とした方が良いでしょう。

——実際に働く個人の意識は変化しているのでしょうか。

米沢氏:出社回帰の動きを窮屈に感じる人は少なくないでしょうし、「オフィスに移動するコストを払ってまで行うべき業務なのか?」といった感覚が従業員側に芽生えているのも否定できません。

コロナ禍に、自宅を仕事がしやすい環境にするために投資した人も多いはず。企業側は、従業員個々の自宅が働きやすい場所へと変わっていることも考慮すべきだと思います。また、子どもの習いごとの送り迎えや家事の分担など、コロナ禍を経て夫婦や家族の中での役割や一人ひとりのライフスタイルがさらに多様化していると感じています。

居住環境に合わせて自分好みの家具・家電をレンタルで整える福利厚生サービスが拡大

——こうした現状を踏まえて、働く環境づくりの支援や従業員向けの福利厚生にはどのような変化が生まれているのでしょうか。

米沢氏:最近では、家具・家電レンタルを借り上げ社宅制度などと組み合わせて、従業員が居住環境や仕事環境を自由につくれるようサポートする企業も増えています。

従業員側の視点で考えれば、働き方や生活環境によって最適な住環境の在り方は大きく変わりますよね。ライフステージの変化や転勤などで引っ越しをする機会も多いでしょう。しかもそのサイクルは数年単位の短い期間で変化するケースも。家具・家電を一から買いそろえていくのは負担が大きいようです。そのため、レンタル費用を企業が補助する制度はとても好意的に受け止められています。

その中でも、ウェブカメラやモニター、カメラなど、ハイブリッドワーク用のレンタル需要は今も大きいです。外部に委託することで企業側としても自社で手配をして従業員に届け、備品を管理するなどの負担が軽減されますし、経費として計上することで会計の面でもメリットが大きいのではないでしょうか。

 

——サービスを利用している従業員側からの反響は?

米沢氏:ある会社では「自分で買っても(手当支給)、レンタルを利用してもいい」と従業員個人がどちらを選択するのか選べるようになっており、福利厚生を自己決定できることが高い満足につながっているようです。レンタルサービスの場合、必要なものを選びやすい仕様になっており、居住環境に合わなければ交換もできるため、利用率もサービス継続率も非常に高いですね。利用してみて気に入った家具・家電をそのまま買い取れる仕組みも取り入れており、実際に購入される方も少なくありません。

また他にも大手金融機関や大手メーカーに、家具・家電レンタルを福利厚生サービスとしてグループに導入いただいています。

両社では新卒入社者を中心に、年間100名ずつくらいが新たにこのサービスを活用。冷蔵庫や洗濯機、テレビ、ベッドなど生活に必須となる家具・家電に加え、リモート勤務環境を整えるためのアイテムも利用されており、1人あたり月額3万円ほどの利用額となっています。

生産性に配慮したオフィスが目的意識を高め、組織力を最大化する

——ハイブリッドワークが一般化しつつある中で、オフィスの在り方に悩む企業担当者も少なくありません。

米沢氏:どんなオフィスなら従業員が出社する価値を感じてくれるのか。これは難しい問題ですよね。

大企業ならお金をかけて素敵なオフィス環境を整えることができるかもしれませんが、大きな設備投資が難しい中堅・中小企業ではそうも言っていられません。また、成長フェーズにあるスタートアップなどではオフィス移転や増床などの頻度も多くなる傾向にあり、1台数十万から数百万してしまうような防音性の高いWeb会議用フォンブースなどを自社で購入するのはとてもハードルが高いと思います。

そこで、当社では法人向けにオフィス家具・家電のレンタルやオフィスづくりを提案する専門部署を設けており、最近では大きな設備投資が難しいスタートアップなどにも活用していただいています。レンタルの形態をとれば、従業員や部署の業務特性を踏まえて要望に応えることができますし、人員の増減やフロアの拡張・縮小に合わせた柔軟な対応も可能です。

従業員100人・出社率6割程度の企業を例に取ると、オフィス内にフォンブースを並べ、予約しなくてもすぐにクローズな1on1ミーティングができるようにしたり、ボックスソファなどを置いて打ち合わせや会議を気軽に展開できるようにしたり。こうした生産性に配慮したオフィスづくりが進んでいます。

オフィスイメージ図

スマートワーキングブースKOLO

リモート勤務の場合、業務をする場所が変わらないため、気持ちの切り替えが難しい一面があります。業務内容やその特徴によってスイッチを入れ替えられる環境がオフィスに整っていれば従業員個人、そして組織全体の生産性は高まります。

オフィスが「自宅よりも高い生産性を発揮できる場所」になっていれば、出社に対してネガティブな思いを抱く心配もありません。また、エントランス付近にローソファやグリーンを設置し、社内イベントなどに活用する企業も増えていますね。「こうしたスペースがあると遊んでしまうのではないか」と懸念する人もいますが、従業員がお互いのつながりを深め、エンゲージメントを高めるという意味では非常に効果的です。

 

——従業員に価値を感じてもらえる場所として、オフィスを再定義することに目を向けなければいけませんね。

米沢氏:はい。いかにして生産性を高めながら働きやすい環境を実現していくか。そこに投資していくことこそ重要なのだと思います。働く個人の価値観は間違いなく変化しました。一人ひとりに合った最適な働き方を実現するためにも、オフィスを柔軟に変化させ、あるべき形を追いかけられるようにしていくべきではないでしょうか。

資料提供:株式会社クラス

取材後記

取材の中で米沢さんは「場所の設計には、従業員の時間の使い方を会社がどのように考えているのかが表れる」と話していました。最近の転職市場では転職希望者の多くがリモート勤務可の企業を選んでいるとも聞きますが、ただ選ばれることだけを考えるのではなく、生産性や従業員満足度を継続的に高めていくことを重視してオフィス出社とリモート勤務を運用するべきだと感じました。

企画・編集/白水衛(d’s JOURNAL編集部)、野村英之(プレスラボ)、取材・文/多田慎介、撮影/中澤真央

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