社員への還元、そしてDX化。コロナ禍の逆境活路が見えた

株式会社シーラホールディングス

取締役会長 杉本宏之

1977年生まれ。神奈川県出身。高校卒業後、宅建主任者資格を取得し不動産会社に就職。2001年に独立し、エスグラントコーポレーションを設立。05年、業界史上最年少で上場。09年に民事再生を申請し、翌10年にSYホールディングス設立。以降、不動産関連事業を中心にワンストップソリューションを推進する。

DX化は収益を高め、会社の成長性も高める

コロナ禍で実施した「社員への還元」施策で見事V字回復を遂げた総合不動産デベロッパーの株式会社シーラホールディングス(東京都渋谷区)。前回より引き続き同社の取締役会長 杉本宏之氏にインタビューした。コロナ禍であっても収益性や会社の成長を高められるDX(デジタルトランスフォーメーション)化のポイントとは――。第2回はこちらから。

DX化は収益を高め、会社の成長性も高める

杉本氏

●DXの推進が収益性を高めたのですね

杉本氏:各部門がそれぞれIT化を進めたものをこれから統合しなくてはならない課題はまだ残っていますが、DXという意味では、その最たるものはクラウドファンディングですね。

ネットで気軽に買える不動産投資信託だと僕は考えていますが、例えば、堀江貴文さんがファウンダーである民間ロケットの運用会社「インターステラテクノロジズ株式会社(北海道広尾郡)」のロケット工場の設営を、クラウドファンディングで、みんなで応援する。あるいは地方創生の一翼を担う空き家再生プロジェクトをみんなで応援する。六本木ヒルズの一部を購入してクラウドファンディングで運用をするなど多様なプロジェクトをネットで販売していきます。

そこでもさらなるDX化が重要でした。例えば、あるお客様が投資をしたいと思っても本人確認のための手続きやその他の確認事項で時間が掛かり、1週間後にようやく投資スタートとなるケースも少なくありません。1~2万円の少額投資ならなおのこと、時間がかかった分ユーザーの意向が削がれることは往々にしてあります。ようするに離脱率が大きいのです。この問題を解決するために、本人確認は生体認証で、2時間以内に投資ができるようにしました。サービス開始は来年の2月ですが、今からワクワクしています。

もう一事例紹介しますと、シニア向けマンション「シニアテックマンション」の販売も11月から始まります。これは昨今のテクノロジーのチカラで介護負担を最小限に抑えて生活できるようになるというもの。一般的に高額な高齢者施設ともなれば、入居一時金に2000万円ほど必要になります。しかも施設はフル装備。食事付き、看護師・介護士も常駐。さらに月の負担が20数万円近く掛かります。これらを支払える世帯は日本の中においてもごくわずかな富裕層と純富裕層しかいません。一般的な方は、健康を害したら病院か、最終施設へ行くかの2択しかないのが現状です。

これを、これまたDX化の流れで簡素化できないかが発想の端でした。「年金+α」とちょっとの貯蓄でできることを商品化したのです。一 番のネックは一時入居金。本人が亡くなると消滅してしまいます。これでは何の資産価値にもならない。実は既存の介護事業者は 20%の介護保険で成り立っています。しかも売上利益も20%ですので事業計画は国の補助ありきになりがちです。一番の焦点はお客様の為に資産価値として残っていくものを作りたいという想いでした。自分で使うかもしれないし、親御さんが使うかもしれない。何より投資案件として魅力的なものにしたい。

実現には4年という時間が掛かりました。当該物件が中古マーケットなどへ二次流通する際、どのように金融機関が評価をするかで難航していたのです。そこで、26病院を経営するキャピタルメディカグループと業務提携し、シニアテックマンションの開発に着手したのです。資産価値を高めるため、施設にはパラマウント社製センシング機能付きベッドや、ソニーのマルチファンクションライトを導入して快適性や見守り機能を強化しました。また、何か異常があったら管理会社や医療機関など通知がいくシステムを構築したり、リビング、トイレ、お風呂にはナースコールも備えました。

そして最新のさまざまな機能とデザインを兼ね備え、資産価値も健康も担保できるシニアテックマンションが誕生しました。これらの課題解決は、金融機関にと高く評価をしてもらいました。特に介護施設はクラスター発生リスクなどで、売り案件が大量に出ている状態です。現在は、それを我々が回収してシニアテックマンションとしてリファインすることも検討しています。

DX化は収益を高め、会社の成長性も高める

●コロナ禍の逆境をうまくチャンスに変えたわけですね

杉本氏:当社はコロナ禍の中でも企業として成長できました。これまで描いてきた点と点がつながっていったような感覚です。まずは社員のためにという意思表示を明確にして、社員はそれに応えてくれた。これまで内部留保を貯めてきたのは何のためなのか。お客様のためであり、社員のためであり、会社のためでもある。しかし、現在さまざまな制限がある中、優先すべきは社員だと私は今回結論付けました。希望をもって働いている社員の姿を見れば、お客様だって元気が出ますからね。

さらに、今回はお客様にも還元していくことを決めました。実は今年、当社は設立10周年という節目を迎えます。まだ10月末のスタートで詳しくは発表出来ませんが、とにかく総額1億円をお客様に感謝して還元するキャンペーンです。それが実利にも結びつくとも考えています。

今回の決算は、コロナ禍で2回の上方修正をして、残り3カ月で過去最高益を目指している状況です。勝負事は負けるかもと思った瞬間に敗退するものです。絶対勝てると信じて努力することが大事です。もしかすると勝てないかもしれませんが、必ず道は開けると思います。先の読めない時代ではありますが、 自分たちなら絶対に乗り越えられるという自信を持てば、社員はついてきてくれます。なぜならこんな時こそ社員のみんなは、私たち経営者の一挙一動を見ているわけですから。危機の時こそ、リーダーは明確な姿勢を示すことが何より重要だと痛感させられた9カ月でした。

コロナ禍の逆境をうまくチャンスに変えたのですね

【取材後記】

「社員に還元」――。口で言うのはたやすいが実際に実践できている経営者や会社はどれほどいるのだろうか。リーマンショック時の経験を現在の会社運営に活かし、かつそのコアとなる要素を「社員」と位置付けている杉本氏には、自社の多くの仲間からの信頼を集めていることだろう。厚待遇の良さに話題が集まりがちだが、こうした社員との関係性の構築が、ニューノーマル時代を駆け抜けられる原動力となるのかもしれない。

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取材・文/鈴政 武尊、編集/鈴政 武尊