ハイブリッドワークとは?導入するメリットや課題、生産性を向上させるコツを解説

d’s JOURNAL編集部

ハイブリッドワークとは、テレワークとオフィスワークを組み合わせた働き方のことです。

働き方や生活様式の変化によりテレワークが定着する中、対面で業務を行うことの重要性も改めて意識されており、その両方の特性を取り入れる働き方として注目を集めています。
この記事では、ハイブリッドワークを導入するメリットや課題、必要となる取り組みや各社の事例などを詳しく解説します。

ハイブリッドワークとは?

ハイブリッドワークは、テレワークとオフィスワークを組み合わせた働き方のことを指します。オフィスへの出社、在宅での業務のそれぞれを含め、従業員が柔軟に働き方を選択できる状態がハイブリッドワークです。

同じ部署に所属をしていても、個々の従業員によって仕事と家庭の状況は違っています。育児や介護などの事情により毎日出社するのが難しい従業員に対して、テレワークとオフィスワークを組み合わせた働き方を提案するのは意義のあることといえます。

また、部署全体や会社全体で導入しなくても、希望する従業員のみにハイブリッドワークを認めるのも方法の一つです。従業員によって抱えている事情や働き方に対する考えはさまざまなであるため、柔軟な仕組みづくりにより働きやすい職場環境の整備を図っていく必要があります。

テレワークとオフィスワークのどちらかだけを選ぶというより、従業員一人ひとりの考えによって働く場所を自由に選べるようにするのが、ハイブリッドワークの基本的な捉え方です。

ハイブリッドワークの重要性

ハイブリッドワークに対する考えが広まってきた背景には、新型コロナウイルスの感染拡大が挙げられます。感染症を予防する観点から、業種によってはテレワークによる働き方が一気に広まりました。

また、感染症の流行がある程度落ち着いてからも、そのままテレワークを継続する企業は増えています。従業員満足度を高めるため、従来のオフィスワークに戻すというよりテレワークと組み合わせたハイブリッドワークの導入を重視する企業もあります。

ハイブリッドワークは、テレワークとオフィスワークの両方の利点を活かすことができるため、多くの企業や業種で注目されているのです。

ハイブリッドワークの5つのメリット

ハイブリッドワークを導入することで、企業はさまざまなメリットを得られます。主なメリットとして、次の5つが挙げられます。

ハイブリッドワークを導入する5つのメリット

・ワークライフバランスが向上する
・多様な人材を確保しやすくなる
・オフィススペースにゆとりが生まれる
・生産性が向上する
・緊急時の対応が柔軟になる

各メリットについて以下の項目でさらに詳しく解説します。

ワークライフバランスが向上する

仕事は生活のために行う面がありますが、その負担が大きくなれば、家族と過ごす時間やリフレッシュのためにとれる時間が少なくなります。心身ともに健康な状態を保ちながら業務に取り組んでもらうには、従業員のプライベートな時間に対する配慮も必要です。

ハイブリッドワークの導入は、ワークライフバランスの実現に大きく貢献するものでもあります。従業員が家庭の事情などに合わせて、自由に働き方を選択できることで負担の軽減につながります。

また、育児や介護で長時間働くことが難しい従業員であっても、ハイブリッドワークであれば勤務時間をうまくコントロールしながら働き続けることが可能です。従業員満足度を高め、業務の負担を軽減できるため離職率の低下にもつながります。

多様な人材を確保しやすくなる

ダイバーシティやSDGsなどの考え方が広まるにつれて、多様な人材を活用していくことが有益であると捉える企業が増加しています。ハイブリッドワークを導入すれば、通勤圏外にある人や育児・介護中にある人材、高齢者や外国人などオフィスに出社するのが難しい人材を雇うことが可能です。

多様なバックグランドを持った人材を受け入れることで、組織全体を活性化させる流れを生み出せます。また、これまで活用が難しかった人材を確保できるようになると人材不足の解消にもつながります。

オフィススペースにゆとりが生まれる

テレワークを希望する従業員が多ければ自ずと出社をする人の数は少なくなるため、従来よりも少ないオフィススペースで業務を行うことも可能です。

オフィスの広さにこだわる必要がなくなり、利便性の高い土地に移転する選択肢も生まれてきます。また、オフィススペースの有効活用が可能となり、休憩室やパーソナルスペースを拡張させるといった柔軟な取り組みを実施できます。

生産性が向上する

業務はすべてを一律の方法で進めるのが必ずしもよいとは限りません。オフィスワークに適した業務がある一方で、テレワークのほうが適している業務もあります。

細かな打ち合わせや指導などが必要な業務に関しては、対面して行うほうが向いているのでオフィスワークが適しています。しかし、データ入力や各種リサーチなどの個人でも行える作業はテレワークでも特に問題ありません。

ハイブリッドワークを導入すれば、業務内容に応じて柔軟な対応をとりやすくなり、結果として生産性の向上につなげられます。通勤時間の軽減にもつながり、従業員の負担を減らせるためモチベーションアップに役立ちます。

緊急時の対応が柔軟になる

地震や台風といった自然災害の影響によって、公共交通機関が利用できない事態は少なくありません。公共交通機関が利用できなければ、物理的に出社できなくなるため、業務に支障が出てしまうこともあります。

しかし、あらかじめハイブリッドワークを導入していれば、たとえオフィスに出社できない場合でもテレワークやサテライトオフィスを活用することで、継続して業務に取り組むことが可能です。

緊急時に柔軟な対応ができるのも、ハイブリッドワークのメリットです。

ハイブリッドワークを導入する際に考えるべき課題

ハイブリッドワークを導入することで多くのメリットを得られますが、一方で課題となる部分もあります。主な課題としては、次の点が挙げられます。

ハイブリッドワークを導入したときに生じる課題

・勤怠管理の難しさ
・社内コミュニケーションの希薄化
・評価制度の不公平感
・予定外の事態への対応
・セキュリティ対策

ハイブリッドワークを導入する際は、テレワークを単に導入するとき以上に注意しなければならない点もあります。各ポイントについて気をつけておきたい点を以下の項目で解説します。

勤怠管理の難しさ

一般的に、テレワークを導入することで勤怠管理が難しくなるといわれています。ハイブリッドワークでは、テレワークとオフィスワークを組み合わせて行わなければならないため、さらに難易度が高くなることが予想されます。

ポイントとしては、すべてを手動で管理しようとするのではなく、勤怠管理ツールを活用してみることが一つの方法です。無料トライアル期間が設けられているツールもあるため、実際に操作性などを試しながら、自社に合ったものを選んでみましょう。

社内コミュニケーションの希薄化

ハイブリッドワークを導入すると、テレワーク中心で業務を行う従業員とオフィスワークが中心となる従業員が出てくるでしょう。各メンバーが直接顔を合わせる機会が少なくなり、社内のコミュニケーションが希薄化していると感じられる場面もあるかもしれません。

従業員同士の情報共有が円滑でなければ、思いがけないミスにつながることもあり、人間関係の悪化や顧客からの信頼喪失につながる恐れもあります。さらに、社内のコミュニケーションが希薄化することで、従業員の会社に対する帰属意識が薄れてしまう懸念もあります。

コミュニケーションの希薄化で生じる課題をクリアするには、定期的にミーティングを行ったり、チャットツールなどを上手に活用したりすることが重要です。社内のメンバー間でのやりとりに支障が出ない仕組みを整えてみましょう。

また、チャットツールや社内SNSなどを活用してみるのも効果的です。メールや電話のやりとりだけとするよりも、スムーズなコミュニケーションを実現できます。

評価制度の不公平感

ハイブリッドワークを実施すると、オフィスで働く従業員とテレワークで業務を行う従業員との間に不公平感が生じる懸念があります。特に、業務で緊急時の対応が必要になったときには、どうしてもオフィスで仕事をする従業員に頼まなければならない部分もあるでしょう。

そのため、オフィス勤務の従業員とテレワーク中心の従業員との間で、人事評価の差が生まれてしまう原因となり得ます。オフィス勤務の従業員ばかりが評価される人事制度では、テレワークを行う従業員が少なくなり、ハイブリッドワークそのものが形骸化する恐れがあります。

そのため、ハイブリッドワークを導入する際は、人事評価制度を含めて問題が生じないかをチェックしておくことが大切です。不公平感が生じづらい評価制度を採用することで、どのような勤務形態であっても業務に専念できる環境が整えられます。

予定外の事態への対応

データ入力や各種リサーチなど一定の決まった手順で作業を行うような業務であれば、テレワークでも特に支障は出ないでしょう。しかし、緊急で取り組まなければならない業務が発生したり、トラブルが生じて対応に迫られたりしたときに、オフィスで働く従業員が少ないと適切な対応がとれない場合があります。

いざというときに混乱が生じてしまわないように、Web会議ツールやチャットツールの導入、勤怠管理システムの運用などに取り組んでおく必要があります。どこで働いていても、必要なときにミーティングが行える環境を整備しておくことが重要です。

セキュリティ対策

ハイブリッドワークのデメリットとして、従業員の働き方が多様化することで、外部に社内情報が漏れてしまうリスクが高まります。個人情報が書かれた書類やデータの紛失、不正アクセスなどのサイバー攻撃など、情報流出に関するリスクは年々高まっているため、セキュリティ対策も並行して考えておく必要があります。

従業員の階層別に情報を閲覧する権限を付与したり、データ管理に関するマニュアルを整備したりすることが大事です。必要に応じて、外部の専門家のアドバイスを取り入れるなどして、情報のセキュリティに支障が出ないよう注意が必要です。

ハイブリッドワークの導入に必要なこと

ハイブリッドワークを円滑に推進するには、いくつか押さえておくべきポイントがあります。特に注目しておきたい点としては次の4つが挙げられます。

ハイブリッドワークを上手に進めるための4つのポイント
・オフィスの環境整備
・必要なツールの導入
・社内やチームにおけるルールの明確化
・セキュリティに関するリテラシー教育

それぞれのポイントについて、さらに詳しく見ていきましょう。

オフィスの環境整備

ハイブリッドワークの導入時はテレワークの従業員のことばかりに目が向きがちですが、オフィスで仕事をする従業員も一定数いるため、事前にオフィス環境を整えておくことが大事です。オフィスワークを円滑にする一つの方法として、フリーアドレスの採用が挙げられます。

フリーアドレスとは、従業員一人ひとりに与えている専用デスクを廃止し、着席場所を自由に選択できるスタイルのことを指します。業務内容や状況に応じて、その都度働く場所を選べるため、モチベーションのアップや生産性の向上につながるでしょう。

しかし、これまで専用デスクで仕事を行っていたにも関わらず、いきなりすべてを廃止してしまっては無用な混乱が生じます。従業員全体の出社率やテレワークの普及率などを見ながら、段階的に取り組んでいくことが大切です。

また、専用デスクの廃止によってオフィススペースにゆとりができたときは、コミュニケーションスペースを設けてみるのも効果的です。テレワークで働く従業員が多くなれば、メンバー間のコミュニケーションが不足する懸念があるため、意識的に改善していく方法を取り入れてみましょう。

業務の休憩時間中に自然と人が集まりやすい空間をつくるために、従業員の意見も聞きながら、少しずつ環境を整えていくことが大切です。

必要なツールの導入

オフィス以外で働く従業員の数が多くなれば、さまざまな働き方を可視化するためのツールの活用が欠かせません。誰がどのように働いているかをきちんと把握できなければ、的確な指示を出しづらくなるためです。

ハイブリッドワークに役立つツールとして以下のものが考えられます。

・Web会議システム
・チャットツール
・プロジェクト管理ツール
・グループウェア
・勤怠管理ツール
・リモートデスクトップ
・各種通信機器、VPN(特定の人だけがアクセスできる専用ネットワーク)など

業務内容や職種などによって、必要なツールは違ってくるため、現場の従業員の声も取り入れながら必要なものを導入してみましょう。

社内やチームにおけるルールの明確化

ハイブリッドワークを導入すれば従業員が異なる場所で業務に取り組むため、管理者の負担が増えてしまいがちです。連絡手段や緊急時の対応など、あらかじめルールを定めておくことで、無用な混乱を避けられます。

しかし、あまり細かな点まであれこれと決めてしまっては、せっかくハイブリッドワークを導入している意義が薄れてしまいます。本格的にハイブリッドワークを導入する前にテスト期間を設け、問題となりやすい部分を洗い出しておくことが大切です。

セキュリティに関するリテラシー教育

テレワークは自宅での作業の他に、モバイルワークや自宅外(サテライトオフィス・コワーキングスペース・シェアオフィス等)で業務を行うことも想定しておく必要があります。そのため、セキュリティソフトや管理ツールを搭載したデバイスを貸し出すだけでなく、従業員に対してセキュリティに関するリテラシー教育を行うことも不可欠です。

特に、テレワークに不慣れな従業員に対しては個別にサポートを行うなどして、業務を行ううえでセキュリティに支障が生じないよう注意しましょう。

ハイブリッドワークで生産性を向上させるためのポイント

ハイブリッドワークの導入は、従業員に対して多様な働き方を提供するだけでなく、企業の生産性を高める手段として取り入れることが重要です。以下の項目ではハイブリッドワークによって生産性を高めるためのポイントを解説します。

こまめな情報共有とフィードバックを心がける

テレワークが中心の従業員と意識的に情報共有を行わなければ、業務を任せきりにしてしまうこともしばしば起こります。報告・連絡・相談のサイクルや定期的なミーティングの実施などをルール化しておくことで、過剰なストレスが生じないように仕組みを整えておくことが大事です。

また、従業員が取り組んだ業務に対して、適切なフィードバックやフォローアップを行うようにしましょう。業務の進捗報告を受けるだけで、ほとんどフィードバックを行わないと、コミュニケーションが一方通行になりがちです。

そうした状態が続けば、従業員の不信感や孤立感が増してしまうため、事前に予防する仕組みを整えておきましょう。

見えない意思決定の共有

ハイブリッドワークの導入で出社する機会が少なくなった従業員にとって、オフィス内の様子は見えづらいものです。自分が参加していない場で重要な意思決定が行われ、突然連絡を受けても混乱や不安を招いてしまいます。

従業員全体にかかわることは、どのような意思決定を行う予定であるかをあらかじめ伝え、その結果を知らせる必要があります。不明な点は質問や相談を受け付けるなどして、きめ細かな対応を行っていくことが大切です。

意思決定プロセスの見える化

意思決定のプロセスについても、できるだけ可視化することが重要です。チャットツールやグループウェアなどを導入することで解決できる課題でもあるので、早い段階で仕組みを整えておくとよいでしょう。

どのようなやりとりのなかで意思決定が行われたかが明確になることで、従業員は安心して業務に取り組んでいけるはずです。また、何か意見を求められてもそれまでの流れがわかれば、積極的に発言してくれることも期待できます。

出社に関するルールは柔軟性を持たせる

出社に関するルールについては、柔軟性を持たせておくことが肝心です。出社回数などをあまり細かく縛ってしまうと、モチベーションの低下を招き、ハイブリッドワークを導入している意義が薄れる恐れがあります。

業務内容などに応じて、柔軟に出社できるルールにしておくことで、自発的に業務へ取り組んでもらいやすい環境を整えられます。また、全社一律でルール化するのではなく、各部署で運用しやすいルールを定めることも大切です。

業務の属人化を避ける

ハイブリッドワークを推進するうえで気をつけておきたい点は、業務の属人化をできるだけ避けることが挙げられます。たとえば、テレワーク中の従業員でしか対応できない業務があると、必要が生じたときにスピーディーな対応が難しくなります。

オフィスワーク・テレワークに関わらず、誰もが各業務に対応しやすいように、業務そのものを標準化する取り組みも必要です。また、どうしても属人性の強い業務であれば、多めに人材を確保しておくなどの対応が求められます。

ハイブリッドワークの導入事例


ハイブリッドワークの導入を検討する際は、すでに導入して一定の成果を生み出している企業の事例を参考にすると、具体的なイメージを持ちやすいでしょう。ハイブリッドワークの導入事例を3社紹介します。

NTTコミュニケーションズ株式会社

通信大手のNTTコミュニケーションズでは、新型コロナウイルスが感染拡大した2020年頃から、従業員に対してテレワークを推奨しています。その一方で、オフィスワークに関しても再定義を行い、個人ブースやコミュニケーションスペースの導入などを実施しました。

また、ハード面だけでなく、ソフト面での取り組みも同時並行で進めているのが特徴です。コアタイムを設けない「スーパーフレックス制度」の導入や業務の途中で家事などに取り組める「分断勤務制度」を採用するなど、従業員一人ひとりの状況に応じた柔軟な対応を行っています。

(参考:NTTコミュニケーションズ『ハイブリッドワークとは?テレワークとの違いやメリット、課題を解説』)

株式会社サイバーエージェント

IT大手のサイバーエージェントは、健康的に働ける職場づくりの一環として、全従業員を対象とした「リモデイ」を導入しました。これは特定の曜日をテレワークとする取り組みであり、業務内容などによって対面・非対面とするなど柔軟な運用を行っています。

移動を伴う社内ミーティングや大人数での会議などは、効率のよいビデオ会議に変更するなど、従業員の負担軽減に努めています。

(参考:株式会社サイバーエージェント『健康的な働き方』)

株式会社リコー

光学機器メーカーのリコーでは、従業員が職種や業務内容によって働く場所を自由に選択できる取り組みを行っています。対面が必要かどうかの判断を従業員に委ねており、自主性を尊重しているのが特徴的です。

また、テレワークにも幅を持たせ、自宅以外に帰省先や旅行先でのワーケーションに対応しやすい仕組みを導入するなど、独自の運用を行っているといえます。

(参考:株式会社リコー『リコー、対面・非対面を組み合わせたハイブリッドな働き方を促進』)

まとめ

ハイブリッドワークは、オフィスワークとテレワークのメリットをそれぞれ活かした働き方を指します。多様な働き方を推進することで、従業員のワークライフバランスを実現するだけでなく、さまざまな人材の確保や生産性の向上など企業側にとっても多くのメリットがあります。

しかし、円滑な運用を行っていくには、必要なツールの導入やルールづくりなど多岐にわたる取り組みが欠かせません。

はじめから完ぺきに運用しようとするのではなく、現場の従業員の意見なども取り入れながら、自社に合った形で徐々に実施していきましょう。

(制作協力/株式会社アクロスソリューションズ、編集/d’s JOURNAL編集部)

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