【アカデミア×ロート製薬】人的資本経営とウェルビーイング、人事と経営に求められる変革とは~未来の強い組織の在り方~

学習院大学

学習院大学 経済学部 経営学科 教授/一橋大学名誉教授
守島 基博

プロフィール
ロート製薬株式会社

ロート製薬株式会社 取締役 CHRO
髙倉 千春

プロフィール

人を資本と捉え、積極的な投資を行っていく「人的資本経営」。従業員エンゲージメントはもちろん、従業員の人生そのものの幸せを考え、実現していく「ウェルビーイング」。人事のやるべきこと、注目度は高まるばかりです。しかし一方で、これらの新しいトレンドに対して課題を抱えている人事、経営者も多いのではないでしょうか。

そこで、人材マネジメント・人事・組織論研究の第一人者である守島基博教授、人材版伊藤レポートに検討会委員として携わった経験もあるロート製薬 取締役 CHROの髙倉千春氏をお招きし、両氏の講演とディスカッションから「人的資本経営」「ウェルビーイング」を学んでいきたいと思います。


2023年に求められる「戦略人事」/学習院大学教授・一橋大学名誉教授 守島基博氏

2022年の人事の動きを振り返ると、「人的資本経営」がビッグワードであったと言えるでしょう。人的資本経営とは、人材を重要な経営資本だと捉え、投資の対象とし、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です。

なぜ、注目されるようになったのか。以前は経営に必要な要素が「カネ」であったのに対し、現在では「人」にシフトしているからです。特に、イノベーション、事業創造といった領域の業務は、ITやAIが発達したといっても、現時点では人にしかできない業務ですし、人がやるべきことだからです。

一方で、少子高齢化や働く人の多様化などにより、人材が確保できない状況も生まれており、企業の人材不足倒産、といった状況も見られます。

人的資本経営には大きく3つの要素があります。1つ目が「人的資本が最も重要であるという認識」、2つ目はいわゆる「戦略人事」、そして3つ目が「情報公開」です。私はこの中でも3番目の「情報公開」が重要だと捉えています。

公開すべき情報は企業が行う人事施策の内容や人材投資額といった、単なるインプット的な内容ではありません。株主が知りたがっているのは、適切な人材がきちんと経営戦略の中に位置付けられ、戦略の実現に貢献する仕事をしているかどうかということです。

端的に説明すれば、「人材の価値が最大限発揮されているか?」です。経営戦略に沿って最大限活用されているかどうかを公開してほしいと望んでいます。そのことを人事・経営者は理解する必要があるでしょう。

22年の大きな動き:人的資本経営

■「エンゲージメント」は人材の価値が最大限発揮されているかを知る指標

人材の価値が最大限発揮されているかどうかを知る指標のひとつが、「エンゲージメント」ですが、日本企業は海外と比べると低いとのデータが多くあります。

アメリカの調査会社が2017年に実施した内容によれば、アメリカには「熱意あふれる社員」の割合が32%いることが調査からわかったのですが、対して日本はわずか6%しかおらず、これは139カ国中132位という低さでした。

低迷する従業員エンゲージメント

このようなことから、日本企業は人材の価値を最大限発揮できていないのでは、と私は心配しています。そこで注目すべきが「ウェルビーイング経営」です。

ウェルビーイング経営とは、社員がプライベートも含め、安心で健康な状態で、やりがいを持ってイキイキと働いている状態のことを指し、このような環境を提供する経営が求められます。

昨今の働き方改革によって「ライフ」…、つまりノンワークの充実に注目が集まりがちです。しかし、チャレンジや成長、達成感、貢献感といった、ワークの充実も重要です。2023年に向けては、ワークとそれ以外のライフの両方を含んだ、本当の意味での社員のウェルビーイングを向上していく人事・人材戦略が求められると考えています。

■ 全員戦力化を目指し、人事はリーダー像を明確に規範化する

人材価値の最大化を実現するもう一つのポイントが、「全員戦力化(エンパワーメント)」です。個々が自分のミッションを自律的に担いながら、みんなで共通のゴール・パーパスへ向かう。サッカー・ラグビーのような、自律・分散・協働型の組織と言えます。

エンパワーメントは権限委譲と訳されることが多いですが、正確ではありません。またそれは働く人にドライブをかけて、極限まで使い尽くすことでもありません。一人一人が目標を実現できる状態にする。期待の伝達、能力開発、情報の共有などを通じて、現在はどういう位置付けなのかを明らかにすることです。

具体的に人事が行うべき取り組みは、個々のミッション(成果)、期待や役割の明確化です。というのも以前の日本企業では、この点があいまいだったからです。逆の言い方をすると、これらを明確にすることで、達成感、やりがいが醸成されていきます。足りない能力を補うことも重要です。

人事配属(アサイン)においても、以前のような適材適所ではなく、一人一人の仕事と戦略との連動が明確になる「適所適材」が大事となるのです。

適所適材

パフォーマンス・マネジメントにおいても、以前のような成果主義ではなく、現場上司による1on1などを通じた、丁寧な目標の共有、達成支援、評価、フィードバックといった取り組み、マネジメントが重要になってきます。当然、人材育成も個別化していきます。

さらに、ここまでは個人へのアプローチでしたが、組織への介入、マネジメントも重要です。一人一人が異なってくると、バラバラになってしまう可能性があるからです。そこで会社にとっての在りたい姿を示したビジョンと企業や仕事の存在意義を示したパーパスなどを共有するとともに、パーソナライズして一人一人に落とし込む取り組みも重要です。

専門性がそれぞれ異なるなど多様化も進みますから、インクルージョンのある組織を目指すことも忘れてはなりません。ただし、インクルージョンは単なる受容ではありません。多様なメンバーの経験や価値観、能力、考え方などが認められ、仕事に参画する機会を持っている状態であり、このような状態が「心理的安全性」の基盤にもなります。

こうした状態があることで、多様な人材が安心して高いエンゲージメントを持ち、組織に貢献できるのです。

インクルージョン・心理的安全性

また、リーダー像も以前のような上から目線なタイプではなく、個性的な人材の心に訴えかけることのできるタイプに変えていく必要があります。配慮やインクルーシブネス(多様性包括力)を持ち、情報公開、透明性、フランクといったことを意識する、オーセンティックなリーダーシップを持っている人材です。経営層だけでなく、中間管理職も変わる必要があるのです。

人は弱い生き物です。そのため変革が重要だと言われていても、なかなか動けないのが正直なところです。そこで今回話したような、社会で求められている、変化するために必要なリーダーシップ像などを、人事は明確に規範化することが重要です。

個人と会社が共に成長するWell-being経営の実践/ロート製薬 取締役 CHRO 髙倉 千春氏

■ 常に見直し、時代にマッチしたものにスピーディーに変えていく

まずは人材という言葉の意味、背景を整理したいと思います。今から25年ほど前、私が外資系企業で働いていたころは、人財は働き手であり、人件費をいかに最適コントロールするかが、求められていました。

1990年代に入ると、新規事業や事業継続といったテーマが経営課題となったことで、企業は投資要素として大きいと認識するようになります。そこでタレントマネジメント、サクセッションプランといった戦略人事が行われるようになりました。

最近では戦略ありきではなく、中心は人であり、ユニークな人がいなくては新規事業を起こせない、との考えにシフトしました。ほかの資本とはまったく異なる要素であり、守島先生の著書で示されているように、人的資本には心があります。このような考えがウェルビーイング経営の根底にあります。

エンゲージメントも時代と共に変わってきました。現在は大きく2つの要素があり、Workの方が大きいと考えています。ワークエンゲージメントの要素としては、そのエネルギーを支える「健康経営」、それをできるようになるための「キャリア支援」が必要です。

守島先生もご説明されていたように、日本のエンゲージメントが低い原因のひとつは、個の主体性だと私は考えています。自分はどうしたいのか、キャリアビジョン、自分自身のパーパスが大事になってきたからです。

ウェルビーイングは与えられるものではなく、主体的に歩いて取りに行くdoingの道のりが大事です。その道のりを企業がしっかり提示してリードできるかがポイントになります。

私は経産省の「人的資本経営実現に向けた検討会」のメンバーであり、同検討会での議論の場から、投資家がどういった目線で捉えているか、ポイントを抜粋して紹介したいと思います。

例えば、多様な人財をインクルージョンするのはもちろんですが、個人が多様な視点を持つことも重要です。

また「適所適材」という言葉は、実は私の前職時代のチームが作ったワードでもあります。一度決めたら終わりではなく、戦略と同じように適時見直す必要があり、世の中の変化に対応します。

これまでの日本の経営を支えた人事戦略であり、三種の神器ともいわれる「年功序列」「終身雇用」「業内組合」。当時の戦略としては正しかったのだろうと思いますが、現在は個に焦点を当てる「人財戦略」を行うことで、個人の経験価値に重きを置き、新規事業の創出などを通して、個人と組織が共に成長していくことが重要です。

■ “個人・会社両方の成長”を掲げたロート製薬の取り組み

ここからはロート製薬での取り組みを紹介していきます。当社は目薬や化粧品といった多様な製品を、海外28拠点、110カ国以上のさまざまな地域の、こちらも多様なお客さまに提供しています。現在はニーズも多様なため、社員が多様性を持つことで、さまざまなシーンに応えようとしています。

ロートの多様性を生かす遠心力と求心力

個と会社両方の成長がミッションであり、4年ほど前には若手が中心になって「Connect for Well-being」というワードを考え、経営ビジョンを作成しました。

経営ビジョン2023 Well-being経営に向けた指針

「ヘルス&ビューティー」「再生医療」「食」と3つの事業ドメインをコネクトしていくのがポイントです。例えば、ヘルス&ビューティーと再生医療がコネクトすることで、アンチエイジングの化粧品の開発などにつながっています。

製品だけではありません。開発された製品を事業柱とするために、社内はもちろん社内外の仲間も含めて、組織と組織をコネクトして“全員戦力化”していきます。

実現に向けては20年越しに人事制度を改定して、ドライバーとなる4つの施策を進めています。

1つ目は、どういった社員がいて、何を見ているのか――。つまり個に焦点をあてた動的人財マネジメントです。

2つ目は目標を決めて、アチーブメント(業績)だけで評価をせずに、一人一人が世の中に提供した価値で評価する「ロートバリューポイント(RVP)」という制度です。さらなる個人のウェルビーイングの向上を目指し「Well-being ポイント(WBP)」を導入したのが3つ目、そして4つ目は経験価値を高める複業・兼業です。

「動的人財マネジメントによる異動・組織構築」では、まずは個人に自分の志を書いてもらいます。そして、その志と企業の戦略がマッチングしたところが解だろうと考えています。

成長を促すのは仕事の経験が大きいとの考えから、気づきを促すトレーニングやコーチングも行います。ロートアカデミーという学びの場を設けることで、現場での経験と学びの好循環を生み出していきます。

「プロの仕事人」として成長し、本人のやりたいこと(WILL)と、会社や社会から必要とされること(NEED)、できること(CAN)が重なる部分を大きくしていくことが重要となります。その重なりである「仕事の価値」を評価するのがロートバリューポイント(RVP)です。そして成長の原動力となるのがWell-beingであり、Well-beingポイント(WBP)として自己評価をしてもらいます。

複業・兼業は2016年あたりから取り組んでいます。手挙げ制で本人のやりたいという意思を尊重しウェルビーイングの高まりや経験価値の促進により個人の自律した成長として成果がでております。座学では補えないような、多様な視点で本業を見直すことにもつながり、本業にもよい影響が出ています。

このように成長を促すのは仕事の経験が大きいとの考えから、気づきを促すトレーニングやコーチングも行います。ロートアカデミーという学びの場を設けることで、現場での経験と学びの好循環を生み出しています。

その学びを仕組みとして整備するため、複業による起業経験者が中心となり、社内起業家支援プロジェクトを立ち上げました。同プログラムでは本業に関係なく、社会課題に向き合い、自身の想いとアイデアのもとWell-beingにつながる事業領域であればエントリーできます。

社内起業家支援プロジェクト:「明日ニハ」

「明日ニハ」というプロジェクトになりますが、プレシード、シードフェーズでは新たな事業創出について、しっかりと学ぶことができます。最終的に経営層も含めた社員の前でピッチを行い、承認されれば事業としてスタートします。

社内通貨を活用したクラウドファンディングのような仕組みを取り入れており、エントリーした社員だけでなく、ほかの社員も応援や支援として参画することができます。そのような組織風土の醸成も考えています。

また、目薬容器の廃プラスチックからサングラスを作るというプロジェクトでは、国連からアワードをいただくなど、社外からの評価も得ています。

■ “コミュニケーション力”を磨くことがこれからの人事には求められている

石垣には大小さまざまな石が使われていますよね。同じサイズの石ばかりでは見た目の面白みにも欠けますし、構造上強固でもないでしょう。組織もまったく同じです。多様な個性を持つ石を見つけ出し、突き合わせていくのがリーダーの役割であり、ロート製薬の人事施策のど真ん中とも言えます。

このような考えを踏まえた上で、これからの人事の役割は、多様な個や顕在化していない価値を見いだすことだと考えています。経営・事業視点の半歩先を予測した上で、いずれ必要な人財を将来からバックキャストし、先ほど守島先生からもお話があったように人事側から提案していくのです。

組織や個の機微を見る繊細さと、マクロな視点で捉え、実行に移す大胆さといった両方が求められていて、実現するにはコミュニケーション力が重要だと私は考えています。

CEO、CFO、CHROと3つの軸で、組織は進化する必要があり、人事はその一旦を担う重要な役割を担っています。役割を遂行していくためには、単にガイドラインやメッセージを出すだけでなく、人に寄り添うコミュニケーション力を磨くことが大切です。

トークセッション【守島氏×髙倉氏】/Q&A

――「全員戦力化」と「ウェルビーイング経営」、似ているようで異なるものなのでしょうか。

守島氏:「人の視点」が大事という考えでは、ほぼイコールだと捉えってもらって構いません。

髙倉氏:当社も創業時からそうであったように、歴史のある会社の創業時には個を大事にしている日本企業は多いのではないでしょうか。そのような経営がウェルビーイング経営であり、今こそ立ち戻る時期なのではないか、と考えています。

――ウェルビーイングの推進活動、現状、ゴールなどを教えてください。

髙倉氏:最初は言葉の意味の理解、啓もう活動からスタートしました。次に、自分ごと化です。

当社ではトップ・経営層からの発信やセミナーの実施、社員全員のディスカッション機会をたびたびつくるなど、さまざまな取り組みを行ってきたことでウェルビーイングがどういったものかを全社員が理解するまでに進んでいます。ここからは先は、事業に反映していくステージだと考えており、今まさに議論の最中です。

――ウェルビーイングサーベイとの違いなど、エンゲージメントサーベイの活用方法について教えてください。

守島氏:実施したということが重要ではありません。フィードバックなど、サーベイの結果をどのように活用したのか、PDCAを回すことが重要です。そのため呼び名は何でも構いません。

重要なのは社員の心の状態を把握していること。サーベイを実施したことで何か変化が起きるのでは、との期待に応えることです。

髙倉氏:私も先生のお考えと同じですが、エンゲージメントサーベイの中に、ウェルビーイングサーベイが入っているとの感覚です。

一つ、外資系企業で多くの国のマネジメントを担当している方から聞いたエピソードをご紹介します。各国でサーベイを実施した後、経営者を集めてワークショップを行うそうです。そして、サーベイの結果が低かった拠点について、Whyを3回ほど深掘りして、理由を探っていくと。

そうして出た解決案を現場に下ろして実施する。それで改善すればOK。改善しない場合には経営陣が再度理由を探すそうです。

守島氏:しかしながら大企業には必要ですが、中小企業はサーベイをする必要はない、と考えています。社長、人事などが社内を歩いていけば、心と体両方の情報が入るからです。このような姿勢ならびに、実際に従業員の心を把握しておくことが重要であり、方法論はどうでもいいことだと、私は考えています。

――「全員戦力化」と「ウェルビーイング経営」の具体的な取り組みを改めてご提示ください。

髙倉氏:例えば、異動に関していうと、まずは全従業員に対して行った個人の「仕事の価値」の評価の結果を、全部門長で共有します。これだけの価値を生み出す人材をどのように組み合わせていくのかを考える。

部門長や経営陣が活発な議論を行っていますし、全員戦力化との考えが前提ですから、無駄な人は誰一人いない。必ずもっと価値が出る。そのための組織・異動案を経営層が一定期間缶詰になりながら検討します。

守島氏:全ての人はフィットするところがある、全員戦力化という思想でまずはアプローチします。仮にいま問題があるとすれば環境面であり、メンタルなどはまさにいい例でしょう。本人が原因の場合もありますが、環境を変える事を考えるべきです。

――理念を浸透させるための具体的な取り組みについて教えてください。

髙倉氏:採用の段階から意識しています。即戦力なキャリア人財は一部違うケースもありますが、新卒を含めて基本的には経営理念に共感しているかどうかを採用基準とし、それに併せて面接方法も変更しました。具体的には、経営理念に共感しているかどうかを、面接で必ず聞きます。これは、以前勤めていた会社の人事部長が話し、実践していた内容でもあります。

守島氏:理念やパーパスは暗記することが重要ではありません。企業のミッションを理解し、自分の持っているミッションやビジョンとの違いなどを、明らかにすることが大切だからです。

――やりがいを高めるための取り組みについて教えてください。

髙倉氏:セッションで紹介した「WILL・CAN・NEED」、これに金銭的評価という4つの軸が重なったときに、やりがいは生まれると考えています。例えば、サンゴに優しい日焼け止めを開発した社員がいますが、まさにいい例です。自身が社会・地球にとって重要と考える環境にも良いものを製品として生み出し、お客さまにも共感してもらい、ご購入いただき、対価が発生するからです。

守島氏:例えば、「自分の子どもが働きがいにつながる」と言った人が、ワーク・ライフバランスへ逃避して子どもに関連しないことだからやりたくないといったケースが生まれます。このような社員が出てこないよう、個々がやっている仕事に関する情報共有やコーチングはしっかりと行う必要があるでしょうね。

――「明日ニハ」プロジェクトが前向きに進んだ経緯、兼業についての見解など教えてください。

髙倉氏:週末に複業として地ビールを販売していた社員の活動を、トップも含め会社が応援したのが始まりです。セッションで紹介したとおり、本業にも良い効果が出ていると感じたからです。

守島氏:新規事業やイノベーションに投資するのは、企業にとってはリスクが伴います。そのため、小さく始めて大きくしていくことがポイントです。そして進める際には、個の意志をどこまで反映させるか。ポテンシャルのあるアイデアだと思ったら、会社が応援して成功へのプロセスに乗せてあげることが重要ですし、本人の学習にもつながります。

髙倉氏:上司や仲間が応援してくれないと、スムーズに進みません。逆の視点で見ると、うまくいっている人は仲間や上司との関係性が良好だと捉えています。

兼業については、人事部のメンバーでも、広報、事業部との業務を兼業している者がいますが、やはり本業にプラスになっています。ましてや経営視点を養うには、人事視点だけでは難しいからです。このような考えですから、兼業は積極的に進めていこうと、異動の際に議論などしています。

守島氏:経験の多様性を積める観点で言えば、良いと思います。そもそも日本企業は兼務や配置転換といったプロセスを踏まずに、自然に学んでいった感がありますからね。

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【編集後記】

今回は、守島氏に「人的資本経営」を、高倉氏に「Well-being(ウェルビーイング)経営」をテーマにお話ししていただきました。どちらのテーマにも共通することは、「人」が主であるということ。企業と人が互いに自立した関係性で、ともに成長していくことが望まれています。人材(人財)の価値が最大限発揮できる社会を実現するためのヒントを得たセミナーとなりました。

取材・文/杉山忠義、編集/鈴政武尊・d’s journal編集部

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