レコグニションとは?効果的な導入方法や事例を紹介

d’s JOURNAL編集部

レコグニションとは本来「認識」を意味する単語ですが、ビジネスシーンにおいては、メンバーの活躍をきちんと認め合う取り組み、あるいは制度を指します。

適切な形で導入できれば、組織の活性化や従業員エンゲージメントの向上、さらには生産性の向上にもつながります。

この記事ではレコグニションの基本的な意味や導入方法、活用に成功している企業の事例などを詳しく見ていきましょう。

レコグニションとは

レコグニション(Recognition)とは、「認識」や「承認」、「認定」を意味する言葉です。ここでは、ビジネスにおいて使用されるレコグニションの意味合いについて、類似する言葉との違いにも触れながら見ていきましょう。

レコグニションの定義


レコグニションとは認識を意味する一般的な単語ですが、ビジネスシーンで使われる際には、「従業員の功績や活躍を認め合い、称賛し合う制度」を指します。主な目的は従業員が取り組んでいる業務の価値を認め、モチベーションや人間関係の向上を図ることにあります。

レコグニションの具体的な方法にはさまざまなパターンがあり、賞与などの金銭的な評価だけでなく、永年勤続表彰や業績表彰といった非金銭報酬によって行われることも多い傾向です。

リワードとの違い

レコグニションと同じく、個人の業績や働きへの対価として与えられるものに「リワード」があります。リワードは「褒美」という意味であり、金銭が必ず伴うインセンティブを指す言葉です。

具体的にあげれば賞与や昇給などが該当し、従業員の成果に対して金銭で評価がなされる制度にあたります。それに対して、レコグニションは前述のように、必ずしも金銭による対価を条件とするわけではありません。

「認識」という言葉のとおり、業績や貢献度に光を当て、正しく理解することに重きを置いているのが特徴です。

ソーシャルレコグニションとの違い

レコグニションのなかでも、特に身近な従業員同士で称賛し合うやり取りを「ソーシャルレコグニション」と呼びます。レコグニションという考え方においては、社員表彰制度や永年勤続表彰制度のように、どちらかといえば企業が主体となって行う取り組みが一般的でした。

対して、ソーシャルレコグニションは報酬を前提とせず、従業員同士が称賛し合う制度を意味するものです。たとえば、社内SNSでお互いを称え合ったり、感謝の気持ちをちょっとしたプレゼントで表現したりなど、より自然な形で行われるのが特徴です。

レコグニションが注目されている理由

レコグニションに含まれる取り組みには、国内の企業において古くから導入されてきたものも多くあります。社内表彰制度などは、その代表的な例といえるでしょう。

そのうえで、レコグニションという概念そのものが強く注目されるようになった背景には、人手不足と人材流出という課題があります。特に、人材の離職理由で多く挙げられるのが「職場の人間関係が悪い」という点であることもあり、社内の人間関係向上は多くの企業にとって重要なテーマとなっているのです。

特にソーシャルレコグニションを適切に行えれば、社内メンバーのお互いに対する意識が強くなり、自然とコミュニケーションが活発化していきます。また、個人の貢献度や働きぶりを多くのメンバーで前向きに共有し合えるため、それぞれのモチベーションが高まり、離職率の低下にもつながるのです。

レコグニションの3つのメリット


レコグニションを導入することにはさまざまなメリットがあります。ここでは、3つの視点に分けて見ていきましょう。

従業員エンゲージメントが高くなる

レコグニションのメリットは、自社の従業員エンゲージメントが向上することにあります。従業員エンゲージメントとは、会社に対する貢献度や愛着の度合いのことであり、離職率を低下させるうえでは重要な指標です。

従業員エンゲージメントを高めるためには、昇格や昇給といった金銭的な報酬を充実させることももちろん重要ですが、自社への帰属意識を持ってもらううえではあくまでも一時的な効果しかありません。安定的かつ永続的に愛社精神を持ってもらうためには、社内の人間関係を向上させ、上司に認められたり同僚と切磋琢磨し合ったりできる仕組みをつくることが大切です。

そのため、レコグニションはエンゲージメントの安定的な向上を図るのに効果的な取り組みとなります。

優秀な人材を流出させない

適切なレコグニションの導入は、優秀な人材の離職を防ぐ効果があります。優れた能力を持つ人材は、周りと比べて突出した成果をあげるだけでなく、自身の評価に対しても人一倍敏感な面があります。

レコグニションによって「自分の働きがみんなから評価されている」という実感が得られれば、職場の評価システムに対する信頼感が強まり、自然と帰属意識も高まる効果があるのです。

組織の活性化につながる

レコグニションはお互いの役割や業績に関心を持たせ、組織全体にポジティブな雰囲気を生み出す効果があります。それぞれが互いの成果を称賛し合う企業風土が生まれれば、従業員同士で自然とモチベーションを引き出し合うようになり、組織としての力が強固になっていくのです。

また、優れた取り組みを行うメンバーがいれば、レコグニションによって注目が集まり、ほかの従業員も積極的に真似しようと考えます。その結果、よりよいルーティンやマインドが自然と共有されていき、生産性の向上にもつながります。

レコグニションを導入する4つのポイント

レコグニションの導入自体は決して難しくありません。特に意識しなくても、社内組織を活性化するうえで、レコグニションに該当する取り組みを行ってきたという場合も多いでしょう。

しかし、意識的に効果を高めるうえでは、いくつか押さえておきたい注意点があります。ここでは、導入のポイントを4つに分けて見ていきましょう。

対象範囲を明確にする

確かな効果を得るためには、あらかじめレコグニションの対象範囲を決めておくことが大切です。ルールがあいまいになるのを避けるためにも、運用側はある程度明確に適用される組織やメンバーを把握しておくとよいでしょう。

そのうえで、特に明確な理由がないのであれば、正社員だけでなく契約社員やアルバイトなどにも対象を広げることも重要です。全従業員を分け隔てなく対象とすることで、レコグニションの目的の一つでもある「雰囲気のよい組織づくり」に一歩近づきます。

また、評価対象の幅を広げれば、それに伴って従業員の視野も広がり、業務のプロセスを細かく把握できるようになるのもメリットです。

運用のルールを策定する

導入の効果を高めるためには、あらかじめ運用ルールを固めておくことも大切です。策定にあたっては、次の項目を押さえながら検討してみましょう。

・レコグニションを与えるメンバー、組織
・レコグニションの表現方法
・レコグニションのタイミング
・レコグニションを与える規準

レコグニションの表現方法には、SNSや直接的なやり取り、表彰などのさまざまなパターンがあります。状況によって組み合わせるのも効果的なため、自社の組織風土に合った方法を選ぶことが大切です。

そのうえで、ルールの策定にあたっては、「どこまで明確化するか」が難しいポイントになります。たとえば、評価の規準を細かく決めすぎてしまうと、従業員同士の素直な感覚が反映されにくく、システムが形骸化するリスクが生じます。

そのため、ルールを決める際には、レコグニションを取り入れる本来の目的を見失わないように注意することが大切です。

従業員に周知を行う

ルールが明確になったら、スムーズな導入を目指すためにも従業員全員に周知を徹底することが大切です。必要に応じて説明会などの機会を設け、導入する目的や狙い、具体的な方法をきちんと浸透させましょう。

効果検証とフィードバック

新しい制度を導入するうえで、初めから完璧なシステムを構築できるケースは稀です。レコグニションも例外ではなく、初めのうちは現場にうまく馴染まなかったり、思ったような効果が見られなかったりすることは多いでしょう。

そのため、実際に運用がスタートしてからは、適切なタイミングで効果検証を行うことが大切です。得られた結果からフィードバックを行い、PDCAサイクルを回しながら施策の質を高めていきましょう。

また、レコグニションの取り組みは、基本的に主体も客体も従業員になるのが特徴です。従業員視点での感覚やとらえ方が重要になるため、匿名で現在の施策に対するアンケートを実施するなど、現場の意見を吸い上げられる仕組みを用いるのも一つの方法といえます。

まとめ

レコグニションは組織を活性化させたり、従業員の満足度や帰属意識を高めたりするうえで効果的な取り組みです。すでにレコグニションに該当する取り組みを行っているという場合でも、改めて目的や導入方法を確認しながら、よりよい施策がないか検討してみるのがおすすめです。

ユニークな取り組みで大きな効果をあげている企業もあるため、事例を参考にしてみるのも一つの方法です。従業員が気持ちよく前向きに働ける仕組みづくりの一環として、自社に合ったレコグニションの施策を探ってみましょう。

(制作協力/株式会社アクロスソリューションズ、編集/d’s JOURNAL編集部)

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