ジョハリの窓とは|具体的な意味やワークのやり方を解説【テンプレ有】

d’s JOURNAL編集部

ジョハリの窓は、自己分析を行うことで他者との関係性を知り、コミュニケーションを模索する心理学モデルをいいます。組織の活性化につなげられるので、ビジネス領域においても積極的に活用することが可能です。

集団における自己理解を深める手法として、グループワークなどを通じて取り入れられています。この記事では、ジョハリの窓の意味や具体例、実施方法などを解説します。

ジョハリの窓とは?


ジョハリの窓の定義

ジョハリの窓は、自己分析を通じて他者との関係を知り、コミュニケーションを向上させる方法を模索する心理学モデルです。具体的には4つの視点(窓)から自己分析を行い、自分と他者の認識のズレを発見するためのツールです。

集団における自己理解を深める手法として、グループワークなどでよく利用されています。

ジョハリの窓が自己分析に役立つ理由

ジョハリの窓では、主に「自分から見た自分」と「他者から見た自分」の認識の差異を知ることができます。たとえば、秘密主義で自分のことをあまり表に出さない人が利用すれば、周りから抱かれるイメージと自己イメージとの差にさまざまな気づきが得られるはずです。

また、自己評価が不当に低く、いま一つ自信が持てていないメンバーにとっては、周りからの意外な高評価を知るきっかけになる場合もあります。このように、自己を深く理解したうえで、対人コミュニケーションを円滑にする方法を模索できるのがジョハリの窓が自己分析に役立つとされる理由です。

ジョハリの4つの窓と具体例

ジョハリの窓では、自分に対する理解や自己の特性を以下の4つの領域に分けて分析していきます。

・開放の窓
・盲点の窓
・秘密の窓
・未知の窓


開放の窓

「開放の窓」は英語で「open self」と訳され、自分も他人も知っている自己のことを指します。「自分にはこんな一面がある」という認識と、「周りから○○と思われている」という認識が一致している部分のことであり、誰もが認める自己の性格などが当てはまります。

一般的には、開放の窓が広がるほど周囲との信頼関係が深まり、コミュニケーションを円滑に図りやすくなるとされています。

盲点の窓

「盲点の窓」とは、英語で「blind self」と訳され、他人は知っていても自分では気づいていない自己のことを指します。自分では気づかないクセや考え方の傾向など、他者の視点だからこそ発見できる側面のことです。

盲点の窓に該当する欠点は、知らず知らずのうちに周りを不快にさせたり、相手にネガティブな印象を与えたりする可能性があります。そのため、基本的にはできるだけ縮小させていくのが理想です。

ただし、盲点の窓には自分でも知らない長所が隠されていることもあり、思いがけない成長のきっかけにつながる可能性も秘めています。フィードバックを受ける際には、盲点の窓を意識して受け止めるようにすると、自身の成長を促すきっかけをつくりやすくなるでしょう。

秘密の窓

「秘密の窓」は英語で「hidden self」と訳され、自分だけが知っていて、他人にはまだ知られていない自己のことです。周囲には隠している欠点やコンプレックス、トラウマなどが秘密の窓に該当します。

秘密の窓が大きい場合、周囲に対する隠しごとが多いため、コミュニケーションには支障をきたしやすくなると考えられます。基本的には秘密の窓を縮小させ、開放の窓を広げるほうが、周囲とは円満な関係を築きやすくなるでしょう。

また、ジョハリの窓を用いて分析を行うと、秘密の窓だと自覚していた部分が他者にバレていることに気づくケースもあります。「意外に人の意見を受け入れられない」「苦手な相手には態度や表情が冷たくなる」など、自分では隠しているはずだった一面を指摘されて驚くこともあるでしょう。

反対に、そうした欠点やコンプレックスを理解したうえで周囲に受け入れられているという点に気づき、安心する場合もあります。このように、気づきや発見が多いのも秘密の窓の特徴です。

未知の窓

「未知の窓」は英語で「unknown self」と訳され、自分も含めて誰からもまだ知られていない自己のことです。具体的には秘められた才能や能力などを指し、新たな可能性や自己成長のチャンスをもたらす分野といえます。

盲点の窓と秘密の窓を小さくして、開放の窓を大きく広げることで、未知の窓に気づけるようになるとされています。

ジョハリの窓の実施方法


ジョハリの窓の実施方法には、主に3つの種類があります。ここでは、それぞれのやり方についてご紹介します。

紙やペンを使って自由に記述する手法

もっともシンプルなのは、紙とペンを使い、自由なフォーマットで分析を進めていく手法です。自己や他人に対する認識を自由に書き出し、4つの窓のどれに当てはまるのかを振り分けていくのが一般的なやり方です。

準備がほとんど不要であり、手軽に始められる方法ではありますが、グループワークで行う場合は事前にある程度のルールは決めておくほうがよいでしょう。記述する内容の量や質が統一されるように、チーム内で共通認識を持っておくことが大切です。

一般的な性格・能力の項目から当てはまるものを選ぶ方法

自由に記述するスタイルでは評価が難しいという場合は、一般的な性格・能力を選択肢として用意しておき、それをもとに進めていくのも一つの方法です。具体的には、「話し上手」「発想力がある」「リーダーの資質がある」「自信家」など、あらかじめ選択肢が提案されている状態で、個人の特性に合わせて項目を選択していく形式です。

この方法であれば、自由記述よりもスムーズに評価を進めやすくなり、準備もより手軽になります。ただし、評価内容の幅はどうしても狭くなるため、分析結果もある程度の型にはまってしまうのが難点です。

無料の診断アプリなどを利用する手法

ジョハリの窓を用いたグループワークが普及するにつれて、ジョハリの窓に関連するアプリやWebサイトのサービスも提供されており、無料で活用できるものも多くあります。これらを利用すれば、案内に沿って入力を進めていくだけで、スムーズに自己分析が行えます。

ジョハリの窓の進め方


それでは、実際にジョハリの窓を実践する際には、どのように進めていくのでしょうか。ここでは、「一般的な性格・能力の項目から当てはまるものを選ぶ方法」をもとに、具体的な流れをご紹介します。

事前準備

事前に準備するのは2種類の用紙と筆記用具のみです。用紙のうちの1枚は、最終的に4つの窓に分析結果を記載するための完成用です。

もう1枚は自分や他人の性格や能力を記入するための用紙であり、一般的な性格・能力などの項目を20個程度記載しておきます。主な項目例としては、次のようなものがあげられます。

・頭がよい
・発想力がある
・段取りを組むのが得意
・粘り強い
・向上心が強い
・行動力がある
・慎重派
・親切
・リーダーシップがある
・空気が読める
・責任感がある
・聞き上手
・話し上手
・自信家
・頑固
・表情が豊か

基本的な流れ

1枚目の用紙は格子状に4つに区切り、左上から時計回りに開放の窓、盲点の窓、未知の窓、秘密の窓と分けます。2枚目には、記載された性格・能力のなかから自分に当てはまっていると思われるものを複数選び、その番号を書き出します。

グループワークでのやり方

グループワークで行う場合には、参加者全員に1枚目の用紙を1枚、2枚目の用紙を参加人数分用意します。たとえば、5人で行うなら、2枚目は自己分析の分と、一緒に取り組む4人の分で合わせて5枚の用紙が必要となります。

全員に用紙が行きわたったら、2枚目の用紙に記載された項目をもとに、自分と他の参加者の性格や能力を分析して、当てはまるものに「〇」をつけていきましょう。5人で行う場合は、全メンバーが自分とその他の4人を合わせた計5人分の評価を行うということです。

その後、2枚目の用紙については、それぞれ自分が評価した対象者に渡します。そして、全員が自分で評価した用紙と周りの4人から評価された用紙を計5枚そろえたら、結果を集計します。

集計結果は、以下のルールに基づいて4つの窓に振り分け、1枚目の用紙に記入していきましょう。

・開放の窓:自分も他人も選んだ項目
・盲点の窓:自分は選んでいないが、他人が選んだ項目
・秘密の窓:自分は選んだが、他人は選ばなかった項目
・未知の窓:自分も他人も選ばなかった項目

このように振り分けを行うと、それぞれの性格・能力について、自分と他者の評価の一致・ズレを簡単に見極めることができます。1枚目の用紙が完成したら、参加者全員で結果を共有しながらフリートークを行うと、お互いへの理解をより深めやすくなるでしょう。

実施する際の注意点


ジョハリの窓はうまく活用することで自己理解を高める手法となりますが、導入するにあたっては気をつけておきたい点もあります。どのような点に気をつければよいかを解説します。

人間性を否定しない

まず気をつけておきたい点は、ジョハリの窓で使う言葉について「ネガティブなもの」や「相手の人間性を否定するもの」は入れないよう注意することがあげられます。たとえば、「後ろ向きだ」というような項目があるときには「用心深い」といったようにポジティブな言葉に切り替えるのが大切です。

「雰囲気が暗い」という項目がある場合は、「雰囲気が明るい」という項目に変更して逆説的に判断するのが大事だといえます。ただし、いくら細心の注意を払ったとしても、自己肯定感が低い人にとってはネガティブな表現に映ってしまうケースもあるでしょう。

他者からどのように見られているかという極めて繊細な部分でもあるため、あまり深刻な雰囲気にならないように場を取り仕切っていくことが大事です。研修やグループワークの一環として楽しむ雰囲気を生み出すことを心がけてみましょう。

向き不向きをきちんと見極める

たくさんの人が参加するほど、なかには自己分析や相手の分析が苦手なタイプの人もいます。また、自己分析そのものが過去の嫌な思い出と結びついて、本人が抱えているコンプレックスに触れてしまう部分もあるでしょう。

ジョハリの窓は用い方次第で、人間関係を円滑にするのに役立ちますが、全員に無理強いしてはなりません。どうしても参加するのが負担に感じるという人に対しては、本人の意思を尊重しましょう。

実施後の活用方法


ジョハリの窓はあくまで心理学の一つのモデルであり、診断結果が出てからどのように活用するかが大切です。ここでは、ジョハリの窓を役立てる方法を解説します。

コミュニケーションを活発化できる

ジョハリの窓の結果をコミュニケーションに活かしていくなら、「開放の窓」の領域を広げるようにしましょう。開放の窓には、自分と相手の両方の認識が一致した特徴が記入されているはずです。

つまり、開放の窓に書かれた項目が多いほど、自分を開示している部分が多いということになります。自らのスキルや能力をうまく発揮している人ほど、開放の窓の項目が特に多い傾向が見られます。

逆にいえば、項目が少ない人は周りから理解しづらい人だと思われているか、自分自身をよく分析できていないと判断できるでしょう。開放の窓を広げて秘密の窓を減らせば、これまで隠れていた自分を開放することができ、相手からの認知がより高まるでしょう。

ありのままの素直な自分を見せていけば、コミュニケーションは自ずと活発になるものです。秘密の窓にカテゴライズされている部分をうまくシフトすれば、ポジティブな印象を与えていけます。

もとから積極性を備えているのに、それが周りに伝わっていないときは、積極性を実際の行動で表現することでありのままの自分を表せるはずです。

自分の長所や短所を把握できる

開放の窓を広げていくには、盲点の窓を減らしていくことも大切です。自分自身に対する素直な評価を下すのは、社会のなかで自らの役割を果たすために欠かせないといえるでしょう。

盲点の窓は、自分が認識していない意外な才能がある点を教えてくれます。たとえば、自分では特に意識をしていなくても、周りからは「仕事の段取りがよい」と評価されている場合もあり、これまで気づかなかった長所を発見する機会になります。

ただし、ジョハリの窓では思いもよらない長所を見つけられる一方で、思いがけない短所を指摘されるケースもあります。なかにはフィードバックを受けることで、怒りを感じてしまう人もいるでしょう。

しかし、自分自身の成長のために、感謝の気持ちでフィードバックを受けることが重要です。アドバイスやフィードバックを素直に受け止められる人は、周りの人も見守りたい、手助けをしたいと感じやすくなり多くのサポートを受けられるため、結果として成長の機会を得やすくなるでしょう。

長所や短所というものは、自分ではなかなか気づかないものです。周りからの指摘はどのようなものであれ、感謝の気持ちで受け止めてみましょう。

キャリア開発につなげられる

自分も他人も認知していないものは未知の窓であり、開放の窓とは正反対に位置するものです。人間は年齢を重ねるほど、新たなことに挑戦するのをためらってしまいがちで、これまでどおりでよいと消極的になりがちな面があります。

しかし、未知の窓は言葉どおり「自らの可能性」を秘めた窓であり、今までの自分を変えたい、新しい自分を見つけたいという人にとっては大きな気づきとなります。そして、新たに発見された才能は、未知の窓以外の窓にカテゴライズされ、自己開発につなげられるのです。

新たな自分の可能性を知ることが、キャリア開発への足がかりであり、前向きに成長する力を高めていくことになるでしょう。

(参照:『キャリア開発が企業にとって必要な3つの理由と、その手法・取り組み事例について』

まとめ

ジョハリの窓は非常にシンプルな方法で取り組めるものであり、同僚や上司・部下といったさまざまな人間関係に応用できます。同じ組織の人とはいっても、普段は上下関係などから素直な自分をさらけ出せないと感じている人は多いでしょう。

一方で、上司や同僚が自分をどのように評価しているのか気になる人も多いはずです。ジョハリの窓を活用すれば、手軽に前向きな形で周囲からの評価や期待度を把握できます。お互いに隠しごとをせず、無理をしなくても向き合える人間関係の構築は、コミュニケーションを円滑化し、各自が成長するきっかけを生み出します。

個人のキャリア開発にもつながっていけば、中長期的にも組織の力を高められるでしょう。ジョハリの窓を活用して、人材育成や組織の活性化を実現してみてください。

(制作協力/株式会社アクロスソリューションズ、編集/d’s JOURNAL編集部)

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