ジョハリの窓とは?4つの領域の意味・具体例と企業研修でのやり方を解説【テンプレ付】

ジョハリの窓とは、自己分析と他者からの評価を4つの領域に分け、自己理解を深めるフレームワークです。自身やチームメンバーへの理解を深める手法として、企業研修やチームビルディングなどに用いられることがあります。
しかし、「自己分析がなぜチームビルディングにつながるのかがわからない」「研修の実施方法がイメージできない」という方も多いでしょう。
そこで本記事では、ジョハリの窓について解説するとともに、企業研修での取り入れ方などもテンプレート付きでわかりやすく解説します。研修や日々のコミュニケーションをより良くするためのヒントとして、ぜひご覧ください。
研修でジョハリの窓を活用したい方は、記入例付きのPPTテンプレートもあわせてご活用ください。
ジョハリの窓とは?

ジョハリの窓とは、自己分析を通じて他人との関係性を把握した上で、コミュニケーションを円滑に進める方法を模索する心理モデルのことです。
「自分が知っている自分」「他者が知っている自分」をかけ合わせて4領域に分類し、それぞれに当てはまる要素を言語化していくことで自己理解を深めます。
このジョハリの窓を活用することで自己分析を効率的に進めやすくなるため、企業研修で用いられることがあります。
なお、ジョハリの窓は1955年にアメリカの心理学者であるジョセフ・ルフトとハリー・インガムが発表した、「対人関係における気付きのグラフモデル」が基となっています。後に両者の名前を組み合わせて、「ジョハリの窓」と呼ばれるようになりました。
ジョハリの窓が企業研修で注目される理由
ジョハリの窓は心理学モデルの一つですが、近年では、企業研修の場で活用されるケースも見られます。
なぜなら、ジョハリの窓を活用すれば、自己認識のずれを話し合い、メンバー間の相互理解を深めるきっかけになり得るためです。
例えば、ある従業員が「自分では話しかけやすい雰囲気を出しているつもりなのに、部署内でのコミュニケーションがぎこちない」と感じているとします。その場合は、自分と他者の間で認識のずれが生じている可能性があります。
このようなときに、ジョハリの窓を用いたフレームワークを行うことで、自分では気付かなかった自身の一面を知り、コミュニケーションの改善点を理解できるようになるのです。
結果、チーム内のコミュニケーションが円滑になり、信頼感の向上が期待できます。
企業研修でジョハリの窓を活用する目的
ジョハリの窓を活用する主な目的は、自己認識と他者認識のギャップを理解し、内省だけでなく対話を通じて自己理解を深めることです。
研修を通じて、自分自身についても他者のほうがよく見えている部分があると理解できれば、職場でのコミュニケーションや信頼関係の向上につながります。
研修では、例えば以下のようなゴールを目指せます。
企業研修でジョハリの窓を活用する目的
| 主な目的 | 研修で目指すゴールの例 |
|---|---|
| 自己理解を進める | ●自分自身のことでも、他者のほうがよく見えている部分があると理解する ●内省だけでなく対話によって自己理解が深まることを体感する |
| 他者から見た自分の姿を理解する | ●他者からのフィードバックは評価ではなく、自分を映す鏡であると理解する ●成長機会は自分の外側にも存在することを理解する |
| チーム内の信頼関係を強化する | ●信頼は一緒にはたらく時間の長さだけでなく、お互いを知る深さによって生まれることを理解する ●自分を隠すより、適切に共有することがチーム力の向上につながると理解する |
ジョハリの4つの窓の意味と具体例

ジョハリの窓では、自分の認識と他者から見た認識をかけ合わせて、「開放の窓」「盲点の窓」「秘密の窓」「未知の窓」の4つの窓に分類します。
それぞれの意味や、職場での具体例を以下の表にまとめました。
【ジョハリの4つの窓】
| 領域 | 自分の認識 | 他者の認識 | 職場での具体例 |
|---|---|---|---|
| 開放の窓 | 知っている | 知っている | 本人も周囲も「説明がわかりやすい」と認識している |
| 盲点の窓 | 知らない | 知っている | 本人は普通に進めているつもりだが、周囲からは「段取りが丁寧」と評価されている |
| 秘密の窓 | 知っている | 知らない | 本人は新しい仕事に挑戦したい意欲があるが、上司には伝えていない |
| 未知の窓 | 知らない | 知らない | 未経験の役割で初めて発揮される調整力やリーダーシップがある |
開放の窓
「開放の窓(open self)」は、自分も他人も知っている自己を指します。「開放領域」とも呼ばれるこの窓は、「自分にはこんな一面がある」という認識と、「周りからこんなふうに思われている」という外部からの評価が一致している部分です。
趣味や職歴、基本的な個人情報などがこの領域に当てはまります。一般的に、開放の窓が広がるほど周囲との信頼関係が深まり、コミュニケーションを円滑に図れるようになるとされています。
盲点の窓
「盲点の窓(blind self)」とは、他人は知っていても自分では気付いていない自己のことです。別名「盲点領域」としても知られています。
コミュニケーションの取り方や行動、考え方の傾向、周囲に与える印象など、他人の視点だからこそ発見できる自己がこれに該当します。
盲点の窓に該当する特性や行動の中には、知らないうちに周囲にネガティブな印象を与えてしまうものもあります。そのため、フィードバックを通じて理解を深め、盲点の窓を小さくしていくことが望ましいとされています。
また、盲点の窓には自分でも認識していない長所が含まれている場合もあります。フィードバックを行う際は、改善点だけでなく強みについても伝えることで、本人の気付きや成長につながることが期待できます。
秘密の窓
自分だけが知っていて、他人にはまだ知られていない自己が「秘密の窓(hidden self)」です。「隠蔽(いんぺい)領域」の別名の通り、周囲には隠しているコンプレックスやトラウマなどが秘密の窓に該当します。
秘密の窓が大きい、つまり周囲に対する隠し事が多い場合は、コミュニケーションに支障を来しやすくなる傾向があります。従って、基本的には秘密の窓を縮小させることで、周囲と円満な関係を築けるようになるでしょう。
ただし、秘密の窓を小さくするということは自己開示を行うということです。自己開示は強制しないことが望ましいため、共有範囲は本人が決めることを原則としてください。
またジョハリの窓を用いたフレームワークを行うと、秘密の窓だと自覚していた部分が、実は周囲にも認識されていたことに気付くケースもあります。
「他人の意見を素直に受け入れられない」「苦手な相手には態度や表情が冷たくなる」など、自分では隠しているはずだった一面を指摘されて、驚くこともあるかもしれません。
反対に、そういった欠点やコンプレックスが周囲に受け入れられていると気付き、安心する場合もあるでしょう。
このように、気付きや発見が多い点も秘密の窓の特徴です。
未知の窓
「未知の窓(unknown self)」は、その性質から「未知領域」とも呼ばれる、自分も含めて誰からもまだ知られていない自己のことです。
新たな可能性や自己成長のチャンスをもたらす才能・能力を指します。これを正しく認識するためには、盲点の窓と秘密の窓を小さくして、開放の窓を大きく広げる必要がある、とされています。
ジョハリの窓を企業研修で活用するメリットと場面
ジョハリの窓のフレームワークを企業研修で実践することで、組織内ではさまざまなメリットが期待できます。
【場面別・ジョハリの窓を企業研修で活用するメリット】
●新入社員・若手研修で自己理解を深める
●管理職研修で部下理解とフィードバック力を高める
●チームビルディングで相互理解を深める
●1on1や面談で認識のずれを整理する
●オンボーディングや定着支援で関係構築を促す
以下では、ジョハリの窓が活きる場面とそのメリットを解説します。
新入社員・若手研修で自己理解を深める
ジョハリの窓を活用した研修を通じて、「周囲は自分をどう捉えているのか」がわかることで、従業員の自己理解を深めることにつながります。自己評価と周囲からの評価を比較し、自分では気付かなかった強みや、改善が必要な点が明確になるためです。
従業員が自身を見つめ直す機会が生まれて、それが業務に活かされることで、業務がより円滑に進むようになることも期待できます。
管理職研修で部下理解とフィードバック力を高める
ジョハリの窓は、管理職研修において、部下とのコミュニケーションやマネジメントについて考えるためのワークとして活用できます。
研修では、まず管理職自身が自分の強みや価値観、他者からどのように見られているかを振り返り、自己理解を深めます。その上で、部下とのコミュニケーションや関わり方について考えることで、日頃のマネジメントを見直すきっかけになります。
また、部下と一緒にワークを行うことで、管理職は部下の強みや価値観を把握できるようになります。これまで知らなかった部下の強みを知ることで、個人の得意分野に応じて役割分担ができるようになるでしょう。
部下に対する誤解や思い込みを減らすきっかけとなり、部下のことを以前よりも深く理解することにもつながります。
さらに、ジョハリの窓では、お互いの印象や強みを伝え合うため、フィードバック力の向上も期待できます。相手の行動や特徴を客観的に捉え、それを具体的かつ建設的に伝えることで、部下の成長を促すフィードバック力を身に付けられるでしょう。
相手の強みや改善点を具体的に伝える方法は、下記の記事で確認してください。
(参考:『フィードバックとは?意味や目的、期待できる効果と5つの手法を解説』)
チームビルディングで相互理解を深める
同じ部署・チームのメンバーでジョハリの窓を活用したワークに取り組むことで、メンバー間の相互理解が深まり、組織の結束力を高められます。
「相手はどのような価値観なのか」「どんな一面があるのか」を理解することで、一人ひとりが業務上のコミュニケーションやフィードバックの際に、相手に合った伝え方を意識できるようになるでしょう。
また、一人ひとりが開放の窓を広げることによって話しやすい関係性を構築でき、意見交換や相談が活発に行える環境となることも期待できます。
相互理解をチームづくりにつなげる進め方は、下記の記事で確認してください。
(参考:『チームビルディングとは?目的や具体的なやり方、手法例を解説』)
1on1や面談で認識のずれを整理する
1on1や面談の場でジョハリの窓を活用すれば、部下一人ひとりに対して適切な育成・フィードバックを行えるようになります。
部下は自己開示を通じて「気さくに話しかけてほしい」あるいは「心配なとき以外は見守っていてほしい」といったように、自身が希望する関わり方を共有できます。それを参考にすれば、管理職は個別に最適化したマネジメントを行えるでしょう。
また、ジョハリの窓を用いたワークを通じて、管理職が部下の強みに気付くことがあれば、それをそのまま伝えることで部下のモチベーションの向上が期待できます。
さらに、得られた結果を持ち帰れば、今後の1on1の実施方法や育成方針を考える材料にもなります。
研修で見えた認識のずれを1on1で振り返る際の進め方は、下記の記事で確認してください。
(参考:『1on1ミーティングとは?目的や効果、導入する方法と進め方を解説』)
オンボーディングや定着支援で関係構築を促す
新人が組織に定着するための支援である「オンボーディング」を行う際にも、ジョハリの窓は有効です。
新入社員は、入社後一定の期間が経過した段階でも、社内での自分の役割や課題にまだ気付いていない可能性があります。そのようなときにジョハリの窓を用いた研修を行えば、自身の強みや、それによって会社から期待されている役割、今後の課題などが言語化されるでしょう。
結果、新入社員の自己理解やチームメンバーとの関係性の構築などにつながります。また、研修結果を管理職が把握することで、キャリア面談や今後の配置検討の際に参考にできます。
新人との相互理解を受け入れ・定着支援につなげる方法は、下記の記事で確認してください。
(参考:『オンボーディングとは?5つのメリットと2つの導入事例【施策シート付き】』)
ジョハリの窓を企業研修で実施する前の準備

上記で紹介したようなメリットを実感するには、企業研修でジョハリの窓を実施する前に、以下のステップに従ってしっかりと準備を進める必要があります。
【ジョハリの窓を企業研修で実施する前の準備】
1.研修の目的とゴールを明確にする
2.対象者と実施タイミングを決める
3.参加人数・所要時間・グループ編成を決める
4.ワークシートと評価項目を準備する
5.研修前に共有するルールを決める
STEP1.研修の目的とゴールを明確にする
まずは、研修の目的を明確にします。先述の通り、ジョハリの窓を活用することで企業はさまざまなメリットを得られますが、研修を成功させるためには「その中でも今回は何を目的とするのか」を決めることが大切です。
なお、目的はできるだけ具体的な内容を決められると良いでしょう。以下の例をご覧ください。
【目的の設定例】
| 悪い例 | 良い例 |
|---|---|
| 従業員同士の仲を良くする | 研修後1カ月以内に、全参加者が自身の強みと今後の行動目標を一つずつ言語化できるようになる |
「この研修を通じて、自社はどのようになりたいのか」という組織単位でのビジョンを設定し、それを基に目標を考えられると理想的です。
STEP2.対象者と実施タイミングを決める
続いて、先ほど設定した目的に応じて、「誰を対象とするのか」「研修はいつ実施するのか」を決めます。
ポイントは、より多角的な視点が得られるような環境とすることです。例えば、新人研修で自己理解を深めることが目的だとしても、新人のみで行うのではなく、中堅メンバーも数人参加させると良いでしょう。
また、中堅メンバー向けに研修を行う場合は、特定の部署のみを対象とする方法もあれば、複数の部署を横断する方法もあります。
特定の部署のみで実施する場合は、普段の仕事ぶりを把握しているメンバー同士でフィードバックできるため、内容の具体性や精度が高まりやすい点がメリットです。チームビルディングや信頼関係の強化を目的とする場合にも適しています。
一方で、日常的に一緒にはたらいている関係だからこそ、本音を伝えにくい可能性がある点には注意が必要です。
部署を横断して実施する場合は、普段接点の少ない相手からフィードバックを得られるため、意外な強みや新たな一面に気付きやすい点がメリットです。部署間連携の強化を目的とする場合にも有効でしょう。
ただし、相手の普段の業務姿勢を十分に知らない場合は、フィードバックの具体性や信頼性が下がる可能性もあります。
STEP3.参加人数・所要時間・グループ編成を決める
大まかな対象者が決まったら、より詳細に参加人数や所要時間、グループ編成も考えていきます。参加人数は5~10人程度が理想的ですが、1グループ5人程度に分けて、大人数で同時に実施しても良いでしょう。
ここで決める条件の具体例は、以下をご覧ください。
【ジョハリの窓を実施する際のモデル例】
| 参加人数 | 1グループ5~10人程度 |
|---|---|
| 所要時間 | 60~90分前後 |
| ファシリテーター | 1名 |
| 実施対象 | 一定期間一緒にはたらいているメンバー |
| 事後フォロー | 1on1、または個人での振り返り |
なお、ジョハリの窓は自己分析や自己開示を行うワークである関係上、人によっては精神的な負担が生じる可能性がある点には注意が必要です。メンタルヘルスに不安を抱えている従業員や、自己開示に抵抗のある従業員に配慮しましょう。
状況に応じて、希望者のみ参加する形態とする、あるいは信頼関係を構築できているメンバーのみとするといった方法も検討してください。
STEP4.ワークシートと評価項目を準備する
続いて、当日使用するワークシートを2種類用意します。
一つは、特性をリストアップした用紙です。一般的な性格・能力などに関する項目を20個程度記載しておきましょう。
具体例は以下をご覧ください。
【ジョハリの窓のワークシートに記載する項目の例】
●聡明である
●発想力がある
●段取りを組むことが得意
●粘り強い
●向上心が強い
●行動力がある
●慎重派
●親切
●リーダーシップがある
●空気が読める
●責任感がある
●聞き上手
●話し上手
●自信家
●裏表がない
●表情が豊か
●相手の立場に立って話せる
●質問のタイミングが適切
●本質的な課題を見抜ける
●感謝の気持ちを表現できる
ポイントは、ポジティブな内容を記載することです。
なお、この用紙は、一人ひとりにグループの人数分の枚数が行き渡るように用意しましょう。例えば1グループ5人で実施するのであれば、合計25枚用意し、1人5枚ずつ配ります。
もう一つ用意するワークシートは、ジョハリの窓を記載した空白の用紙です。「開放の窓」「盲点の窓」「秘密の窓」「未知の窓」の枠のみを印刷した用紙を人数分用意します。
STEP5.研修前に共有するルールを決める
研修を有意義なものとし、後のトラブルを防ぐためには、ルールをあらかじめ決めておく必要があります。例えば、以下のようなルールが挙げられます。
【禁止ルールの例】
●人事評価や優劣の判定を目的としない
●回答や自己開示を強制しない など
●相手を否定したり、誹謗(ひぼう)中傷や相手を傷つける表現を用いたりしない
●研修内で共有された内容を、本人の許可なく外部に話さない
●フィードバックに正解を求め過ぎず、対話のきっかけとして扱う
本記事後半で解説する「ジョハリの窓を実施する際の注意点」も参考にしつつ、参加者が安心して自己開示し、相互理解を深められるようなルールを事前に決めて周知しておきましょう。
ジョハリの窓のやり方|企業研修で使える6ステップ
ジョハリの窓を企業研修で取り入れる際は、以下を参考に6つのステップに分けてワークを進めると良いでしょう。
【企業研修での実施例】
| ステップ | 内容 | 時間の目安 |
|---|---|---|
| 1 | 目的とルールを説明する | 10分 |
| 2 | 自分に当てはまる項目を記入する | 5~10分 |
| 3 | ほかの参加者に当てはまる項目を記入する | 10~20分 |
| 4 | 結果を4つの窓に分類する | 10分 |
| 5 | フィードバックを共有し対話する | 20~30分 |
| 6 | 振り返りと行動目標を設定する | 10~15分 |
ここからは、それぞれのステップについて解説します。
STEP1:目的とルールを説明する
ワークを始める前に、参加者全員に前提を共有します。「ジョハリの窓とはどういったものなのか」「何のためにこのワークを行うのか」を説明した上で、禁止ルールについても伝えましょう。
研修を滞りなく進めて、期待している効果を十分に得るためには、適切な前提説明が必要です。特にジョハリの窓を用いた研修は、参加者が安心して自己開示を行える環境でなければ適切に実施できません。
心理的安全性を確保するために、最初の説明が何よりも大切なのです。
(参考:『心理的安全性とは|組織を活性化させるポイントを解説』)
STEP2:自分に当てはまる項目を記入する
参加者全員が研修の目的とルールを理解したら、いよいよワークに取り組みます。
あらかじめ用意していた2種類の用紙を配布し、まずは特性をリストアップした用紙を一枚机の上に出してもらいましょう。紙の上に自分の名前を書き、自分に当てはまると思う項目に丸をつけてもらいます。
この段階ではまだ、丸をつけた内容をほかの参加者に共有する必要はありません。また、ジョハリの窓の枠が印刷された用紙はSTEP4まで使用せず置いておきます。
STEP3:ほかの参加者に当てはまる項目を記入する
続いて、ほかの参加者の能力を分析するフェーズに進みます。
特性をリストアップした用紙の残りを机の上に出し、それぞれほかの参加者の名前を1人ずつ記入した上で、自分がその人に当てはまると思う項目に丸をつけてもらいます。
全員分の記入が終わったら、それぞれ本人に渡してもらいましょう。
ここまでのステップを終えたら、各参加者の手元には「自分の特性を自分で記入した用紙」「ほかの参加者に自分の特性を記入してもらった用紙」「ジョハリの窓の枠が印刷された用紙」の3種類がある状態となります。
STEP4:結果を4つの窓に分類する
各参加者が記入した内容を基に、ジョハリの窓の枠が印刷された用紙に自身の特性を分類していきます。以下の手順で進めましょう。
【ジョハリの窓への分類手順】
1.自分もほかの参加者も選んだ項目を「開放の窓」に記入する
2.誰も選んでいない項目を「未知の窓」に記入する
3.自分は選んでおらず、ほかの参加者が選んだ項目を「盲点の窓」に記入する
4.残りの項目(自分だけが選んだ項目)を「秘密の窓」に記入する
以降のステップでは、この用紙のみを使います。
なお、上記手順はジョハリの窓を簡単に分類するための方法です。特に2.について、本来、「未知の窓」とは自分も周囲も認識していない特徴を指します。
そのため、誰も選ばなかったからといって必ずしも未知の窓に当てはまるとは限りません。あくまでも「未知の窓の候補」として扱い、「今後の経験や挑戦を通じて新たな一面が発見される可能性がある領域」と考えると良いでしょう。
明後4つの窓への分類を進める際は、記入例付きのPPTテンプレートをお役立てください。
STEP5:フィードバックを共有し対話する
参加者全員が、4つの窓への振り分けを終えたら、ディスカッションの時間を設けてください。
まず、それぞれの「盲点の窓」について、「なぜその項目を選んだのか」を各参加者から伝えてもらいましょう。
ポイントは、具体的なエピソードを交えて伝えることです。本人が自覚していなかったとしても、具体的なエピソードを基に周囲から見えている事実がわかることで、新たな気付きが生まれるきっかけとなる可能性があります。
また、強みや良い点に関するフィードバックであっても、課題や改善点を見つけることにつながります。例えば、「責任感が強い」という評価を受けた場合、その強みをより伸ばせる一方で、「責任を抱え込み過ぎてしまうことがあるのではないか」と、自分の行動を振り返るきっかけになります。
なお、個々人が安心してフィードバックを受け止められるよう、参加者には「なるべくポジティブな表現で伝えること」を促しましょう。
続いて、「秘密の窓」について、各自が共有できる範囲で共有します。秘密の窓から、一つでも周囲に共有できれば、それは開放の窓を広げることになります。結果、本人の自己開示が進み、参加者間の信頼関係の構築につながるでしょう。
なお、中には自らのことを共有することに抵抗のある参加者もいるかもしれません。そのため「どの項目なら共有できるか」「どう表現すれば良いのか」は各自の判断に委ねましょう。
STEP6:振り返りと行動目標を設定する
最後に、参加者各自で自身の特性について見つめ直し、今後の目標を設定してもらいます。
フィードバックの内容を基に、自身の認識と他者から見た姿のギャップを認識した上で、「伸ばすべき長所はどこか」「何を改善すれば良いのか」を考えてもらいましょう。今後の具体的な行動目標にまで落とし込めれば理想的です。
ジョハリの窓を実施する際の注意点

企業研修でジョハリの窓を取り入れる際には、以下の6つの点をよく確認しておきましょう。研修のメリットを最大化させるためにも、懸念点や注意事項を把握することが大切です。
【ジョハリの窓を実施する際の注意点】
●心理的安全性を確保する
●自己開示を強制しない
●ネガティブ表現をポジティブに言い換える
●結果を人事評価や査定に使わない
●上司と部下を同じグループにする場合は配慮する
●結果をうのみにせず対話の材料として扱う
心理的安全性を確保する
ジョハリの窓を用いた研修を成功させるには、心理的安全性を確保する、つまり誰もが安心して発言できる環境をつくることが非常に重要です。
なぜなら、心理的安全性が低い状態では、「参加者がワークに積極的に参加してくれない」「自己開示が行えない」といった状態になってしまう可能性があるためです。
各自が安心して参加できる雰囲気をつくった上で、以下で紹介する注意点に関してもよく意識しましょう。
自己開示を強制しない
ジョハリの窓を用いた研修は、適切に行えば有意義なものとなりますが、人によっては抵抗を感じることもあります。
質問への回答や自己開示を強制されると、参加者が強いストレスを感じてしまう恐れがあるため、「あくまでも自分の意思で、抵抗のない範囲で参加する」ことを基本としましょう。
ネガティブ表現をポジティブに言い換える
参加者同士でフィードバックを行う際は、ポジティブな言葉を用いることを原則としてください。
ジョハリの窓の目的は悪い点を洗い出すことではなく、良い点や改善点に気付くことであるためです。参加者がネガティブなフィードバックを受けると、先述した心理的安全性が下がってしまう恐れがあります。
たとえネガティブな内容に触れざるを得ない場面となったとしても、ポジティブな表現に言い換えることを参加者に伝えましょう。また、ファシリテーターが都度フィードバックの様子を確認し、必要に応じて言い換えの助言を行うことも有効です。
強みや改善点を伝えるときの表現例は、下記の記事で確認してください。
(参考:『ポジティブフィードバックとは|やり方や具体例・4つのメリットを解説』)
結果を人事評価や査定に使わない
ジョハリの窓は、あくまでも個人の価値観や強みを言語化することを目的としたワークです。ワークを通じて得られた情報は参加者に備わっている個性であるため、その内容を人事評価に反映したり、自己開示の内容に優劣をつけたりすることは厳禁です。
ワークを始める際に、「今回の内容が人事評価や査定とひもづくことはない」と全体に周知すると、参加者が安心して取り組めるようになります。
(参考:『人事評価とは?意味や目的、実施するメリットと手順・注意点を解説』)
上司と部下を同じグループにする場合は配慮する
研修を行う上で、上司と部下を同じグループに配置すること自体が直ちに問題となるわけではありません。
しかし条件によっては、部下が心理的な抵抗を感じてしまう可能性もあるため、配慮した上でグループ構成を考えましょう。
例えば、信頼関係が十分に構築されていない関係性のまま上司と部下を組ませると、部下が警戒心や不信感を抱いて適切に自己開示できないことが起こり得ます。また、入社したばかり、あるいは異動したばかりの状態ではジョハリの窓が適切に機能しないことも考えられます。
そのような場合は、プロジェクトの中盤など、一定の関係性が構築されたタイミングで研修を実施すると良いでしょう。
結果をうのみにせず対話の材料として扱う
前提として、そもそもジョハリの窓を用いたとしても、結果が必ずしも正しいとは限りません。
例えば、先輩や後輩、同僚など、関係性によって見せている姿が変わることはよくあるでしょう。同じ人物でも、評価者によって「開放の窓」「盲点の窓」などの内容が異なる可能性があるということです。
そのため、参加者自身も上司も、結果をうのみにせず参考程度に活用しましょう。結果を基に強みや改善点を分析し、目標設定の参考とする程度にとどめることが大切です。
ジョハリの窓が向いているケース・向いていないケース
ジョハリの窓による企業研修は、全ての組織で必ず良い効果を生むとは限りません。ジョハリの窓が向いているケースと向いていないケースがあるため、あらかじめ確認した上で、自社はどちらに当てはまるのかを判断しましょう。
ジョハリの窓が向いているケース
以下のケースに当てはまる組織であれば、ジョハリの窓を用いた研修が向いているといえます。
【ジョハリの窓が向いているケース】
●一定期間一緒にはたらいており、互いの言動を把握できている
●一定程度の信頼関係がある
●研修を行う目的が明確である
●各自がフィードバックを受ける準備ができている
●実施後に1on1や振り返りを行える
ジョハリの窓を成立させるには、そもそも「お互いに相手をどのような人間だと思っているのか」を共有できなければなりません。そのため、一定期間一緒にはたらいている間柄のメンバーでグループを組む必要があります。
また、すでに言及しているように、参加者同士の信頼関係が構築されており、フィードバックに大きな抵抗がないことが大前提です。
さらに、研修のみを実施して終わりではなく、その後振り返りの1on1を行える環境だとより良いでしょう。
実施を避ける、または延期したほうが良いケース
反対に、以下の条件に当てはまる場合は、ジョハリの窓をすぐに用いずに、問題が解決してから実施することをお勧めします。
【ジョハリの窓の実施を避ける、または延期したほうが良いケース】
●初対面のメンバーが多い
●深刻な対立やハラスメント問題が起きている
●参加拒否や回答拒否が認められていない
●人事評価や昇進判断と同時に実施する
お互いのことをよく知らない状態で実施すると、十分なフィードバックが集まらないことが考えられます。
また、組織内の人間関係で深刻な問題が起きている場合や、参加・回答を実質的に拒否できない環境となっている場合は、心理的安全性が確保されていないため、ジョハリの窓の実施に適していません。
なお、上記のような状況ではなくとも、人事評価や昇進判断の時期は避けることをお勧めします。前提として、ジョハリの窓の実施結果は査定に影響するものではありません。
しかし、その旨を周知していたとしても、タイミングが重なっていると「研修の結果が評価に関係している」という誤解を招く恐れがあるためです。
ジョハリの窓の実施後の活用方法
ジョハリの窓のフレームワークを実施することで、さまざまなことがわかるでしょう。そこで得られた気付きは、具体的に以下のように活用すると、組織のさらなる成長につなげられます。
【ジョハリの窓の実施後の活用方法】
●開放の窓を広げる
●盲点の窓を強みや改善点に変える
●秘密の窓は本人が共有範囲を決める
●未知の窓は新しい挑戦で広げる
●1on1で具体的な行動目標を設定する
開放の窓を広げる
従業員個々人が開放の窓を広げることで、お互いの強みや価値観が共有される環境となり、円滑なコミュニケーションが実現できます。
積極的に自己開示し、フィードバックを受け入れる環境となれば、風通しの良いチームとなるでしょう。その結果、従業員のエンゲージメントやモチベーションの向上につながることも期待できます。
盲点の窓を強みや改善点に変える
盲点の窓に改善点があった場合は自身の課題として意識することで、今後の成長につながります。また、これまで自分で気付いていなかった強みがわかった場合は、その強みを発揮できる業務にチャレンジすると成果を上げられる可能性があるでしょう。
盲点の窓に入っていた項目を自分が認識することで、その項目は開放の窓に移動します。開放の窓を広げることが、大きな成長につながるのです。
秘密の窓は本人が共有範囲を決める
秘密の窓は、自分で共有範囲を決めて、抵抗のないものは少しずつ開放していくことがポイントです。
例えば「自身が希望する今後のキャリア」「パフォーマンスを発揮しやすいはたらき方」「好きな業務・抵抗感のある業務」など、仕事に直接関係する内容で、チームメンバーや上長に共有することにより具体的な検討や目標設定につながりそうなものは共有すると良いでしょう。
また、個々人が秘密の窓を開放すると、信頼関係が強化され、組織の心理的安全性が高まります。その結果、自分の意見を言いやすい環境となり、一人ひとりがはたらきやすい職場となることも期待できます。
未知の窓は新しい挑戦で広げる
未知の窓に該当する項目には、これまでに気付かなかった強みやスキルが隠れている可能性があります。「新しいスキルを開発したい」と考えている従業員がいる場合は、未知の窓を参考に必要なサポートを行うと良いでしょう。
スキルの開発が順調に進めば、開放の窓がより広がることとなります。
1on1で具体的な行動目標を設定する
ジョハリの窓の実施結果を1on1で振り返り、今後の行動目標を設定することも有効です。
また、1on1の場でジョハリの窓を書き出すという方法もあります。上司が認識している部下の強みを伝えれば盲点の窓は縮小し、部下が自身で抱えている課題を共有すれば秘密の窓が縮小するでしょう。
このやりとりを定期的に実施すると、効果的なフィードバックを行えるだけでなく、信頼関係の構築にもつながります。
ジョハリの窓の活用が多い場面
ジョハリの窓は、自己理解と相互理解を深めたい場面で活用されることが多いフレームワークです。企業では、チームビルディングのほか、新入社員や異動社員の受け入れ、管理職研修などで用いられることがあります。
特にチームビルディングでは、メンバー同士が互いの強みや価値観を知ることで、相談しやすい関係づくりやコミュニケーションの円滑化につながります。
新入社員や異動社員の受け入れ時に活用する場合は、既存メンバーとの相互理解を促し、早期に関係性を築くきっかけになります。入社・異動直後ではなく、一定期間一緒にはたらき、互いの様子がある程度わかるタイミングで実施すると良いでしょう。
また、管理職研修では、部下やメンバーの見え方を理解し、思い込みを減らす材料として活用できます。相手の強みを具体的に伝える練習にもなるため、フィードバック力の向上にもつながるでしょう。
【無料】ジョハリの窓で使えるテンプレート
ジョハリの窓を研修や1on1に取り入れてみたい担当者は、以下のテンプレートを活用してください。記入例付きなので、ジョハリの窓をこれまで知らなかった方でも、簡単に自己分析を行えます。
ジョハリの窓に関連するよくある質問
最後に、ジョハリの窓に関するよくある疑問にお答えします。
【ジョハリの窓に関連するよくある質問】
Q1:ジョハリの窓は一人でも実施できますか?
Q2:ジョハリの窓は何人程度で実施すると良いですか?
Q3:ジョハリの窓の所要時間はどのくらいですか?
Q 4:ジョハリの窓はオンラインでも実施できますか?
Q 5:ジョハリの窓は匿名で実施したほうが良いですか?
Q 6:ジョハリの窓を人事評価に使っても良いですか?
Q 7:ジョハリの窓の診断アプリは企業研修で使えますか?
Q1:ジョハリの窓は一人でも実施できますか?
はい。オンライン上で公開されているツールを使えば、一人でも実施が可能です。
ただし、ジョハリの窓は本来、自分と他者の認識の違いを把握する手法です。
一人で行う場合は他者からのフィードバックを得られないため、自己理解を深める簡易的な方法として活用しましょう。より実態に即した結果を得るには、周囲からのフィードバックを取り入れることが重要です。
Q2:ジョハリの窓は何人程度で実施すると良いですか?
5~10人程度が理想的です。これより人数が多くなる場合は、いくつかのグループに分けましょう。
Q3:ジョハリの窓の所要時間はどのくらいですか?
前提説明なども含めた研修全体では60~90分程度、ワーク自体は30~60分程度です。
Q4:ジョハリの窓はオンラインでも実施できますか?
はい。オンライン会議ツールを使用すれば、オフラインと同じ方法で実施できます。
Q5:ジョハリの窓は匿名で実施したほうが良いですか?
匿名で実施すると率直なフィードバックを集めやすい一方で、過度にネガティブな内容が書かれたり、書かれた側が「誰にそう思われているのか」と不安を感じたりするリスクもあります。
そのため、匿名で行う場合でも、相手を否定する表現や誹謗(ひぼう)中傷、相手を傷つける内容は禁止することを事前に明確に伝えましょう。チームビルディングやメンバー同士の関係性構築を重視する場合は、心理的安全性を確保した上で記名式にする方法もあります。
Q6:ジョハリの窓を人事評価に使っても良いですか?
いいえ、ジョハリの窓で得られた結果は必ずしも絶対に正しいとは限りません。
結果はあくまでも今後の目標や課題設定、能力開発を行うための自己分析として活用し、人事評価に反映させることは控えましょう。
Q7:ジョハリの窓の診断アプリは企業研修で使えますか?
はい。企業研修での利用を前提としているアプリもあるため、記入用紙の用意が難しい場合には、アプリを活用する方法もあります。
まとめ
ジョハリの窓は非常にシンプルな方法で取り組めるものであり、同僚や上司・部下といったさまざまな人間関係に応用できます。同じ組織の人とはいっても、普段は上下関係などから素直な自分をさらけ出せないと感じている人は多いでしょう。
一方で、上司や同僚が自分をどのように評価しているのか気になる人も多いはずです。ジョハリの窓を活用すれば、手軽に前向きな形で周囲からの評価や期待度を把握できます。
負担とならない範囲で自己開示を行いつつ、無理をしなくても向き合える人間関係の構築は、コミュニケーションを円滑化し、各自が成長するきっかけを生み出します。
個人のキャリア開発にもつながっていけば、中長期的にも組織の力を高められるでしょう。ジョハリの窓を活用して、人材育成や組織の活性化を実現してみてください。
研修の実施に向けて、記入例付きのPPTテンプレートをダウンロードしてご活用ください。
(制作協力/株式会社eclore、編集/doda人事ジャーナル編集部)
人材育成に活用できる!「ジョハリの窓」テンプレート【PPT版】
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