モチベーションマネジメントとは?従業員の意欲を引き出すポイントを紹介

d’s JOURNAL編集部

企業や組織の生産性を高めるためには、従業員がきちんと実力を発揮し、思う存分に活躍できる環境づくりが重要となります。そのためには、社内環境のように物理的な要素を改善するだけでなく、心理的要素にあたるモチベーションの管理に力を入れることも大切です。

この記事では、モチベーションマネジメントの考え方について、基本的な意味や重要性、成功させるためのポイントを解説します。

モチベーションマネジメントとは


「モチベーションマネジメント」とは、対象となる従業員の仕事に対するモチベーションを管理する手法のことです。具体的には、個々の従業員においてどのような点がモチベーションにつながっているのかを把握し、的確に働きかけながら意欲を引き出すためのマネジメント手法を指しています。

モチベーションマネジメントを適切に行うことで、従業員の離職防止や、意欲・能力の向上につながるとされています。モチベーションとは、一般的にはやる気や意欲と言い換えられること多いですが、学術的にはさまざまな定義づけが行われてきました。

たとえば、組織倫理学者のC.C.Pinderは、モチベーションを「個人の内部、もしくは外部から発生し、特定の行動の強度、方向、持続性を規定する活動力」と表現しています。モチベーションは大きく分けて「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」の2種類に分類することができます。

ここでは、それぞれの違いについて確認しておきましょう。

(参考:『【1分で解説】モチベーションアップには何が必要?従業員のモチベーションを上げる5つの方法』)

内発的動機づけ

内発的動機づけとは、物事に対する興味や探求心のように、対象者の内的な要因から生まれる欲求のことです。仕事に対する興味や関心、それによって生まれるやりがいなどが動機となり、純粋かつ持続性が高いのが特徴といえます。

「仕事にやりがいを感じる」「仕事を通じての成長実感がある」など、内的なエネルギーがモチベーションにつながっているため、長期間にわたって発揮されやすいのです。一方で、内発的動機づけが生まれるには、本人に仕事に対する好奇心や向上心があることが前提とされるため、誰に対しても効果を発揮する共通のアプローチはありません。

モチベーションマネジメントの観点でいえば、実施方法が明確でなく、短期的な効果を期待しにくいのはデメリットといえるでしょう。

外発的動機づけ

内発的動機づけが内側から生まれる欲求であるのに対して、外発的動機づけは評価や報酬といった外的要因から生まれるのが特徴です。具体的には、「上司や同僚からより高い評価を受けたい」「収入や役職を上げたい」といったものが該当し、比較的に誰でも共通する価値を持つものがモチベーションの源泉となります。

また、評価や報酬のようなプラス要因だけでなく、罰則や懲罰のようなマイナス要因も外発的動機づけに影響します。たとえば、「低い評価をつけられたくない」「収入の低下を避けたい」といった理由も、モチベーションの向上に寄与するということです。

外発的動機づけは、実施方法がシンプルでわかりやすいため、比較的に施策として具体化しやすいのが特徴です。一方、効果が長続きせず、施策をストップした途端にモチベーションが低下してしまうのはデメリットです。

また、もともと純粋な欲求で努力をしていた従業員に対しては、自主性を妨げてしまう可能性があります。こうした理由から、モチベーションマネジメントでは内発的動機づけを行うことを理想としています。

モチベーションマネジメントが注目される背景


ビジネスシーンにおいて、モチベーションマネジメントが注目を集めているのには、人材不足による組織力の低下が大きく関係しています。少子高齢化にともなう労働人口の減少により、企業は単に頭数を増やして組織力を強化する方法から、限られた人員で高いパフォーマンスを発揮する方法へとシフトせざるを得なくなっています。

現代のビジネス環境では、そうした課題を乗り越えるために、高性能のシステムや機械の導入やビジネスモデルの大幅な転換といった施策が注目を集めるようになりました。一方で、従業員一人ひとりが高い生産性を発揮するためには、システムのようなハード面の転換だけでなく、モチベーションのようなソフト面の転換も重要視され始めています。

そうしたなかで、従業員の最大限のパフォーマンスを引き出す方法として、モチベーションマネジメントの必要性が高まっているのです。

従業員のモチベーションが低下する原因


モチベーションマネジメントでは、従業員のモチベーションを向上させることと、モチベーションの低下を避けることの2方向のアプローチが重要となります。そのため、まずはどのような要因がモチベーションの低下につながってしまうのかを正しく認識しておくことが大切です。

ここでは、従業員のモチベーションを低下させてしまう主な原因について見ていきましょう。

評価・待遇に対する不満

「努力が正当に評価されていない」「成果に対する待遇の向上がともなわない」など、評価や待遇に関する不満はモチベーションの低下を招く主要な原因です。自身が残した業績や貢献の度合いによって、適切な評価が受けられていないと感じれば、企業に対する信用を失ってしまうのです。

また、適切な評価が行われていたとしても、昇給や昇格といった目に見える形で報われていない場合は、同じように会社への貢献意欲を失ってしまうでしょう。こうした傾向は、特に優秀でキャリア志向の強い人材に見られやすいといえます。

人間関係への不満

上司や同僚との人間関係は、仕事のモチベーションを左右する大きな要素の一つです。特に組織やチームで動くことが多い職種では、ともに働く仲間との関係性が、仕事を進めるうえで重要なポイントとなります。

人間関係が悪化している職場では、仕事がスムーズに進みにくくなるとともに、従業員それぞれがストレスを感じてしまいやすくなります。その結果、モチベーションが低下してますます生産性が下がっていくという悪循環に陥ってしまうのです。

業務内容への不満

業務内容に関する不満は、特に入社後間もないタイミングや配置転換が行われたタイミングで生じやすいといえます。具体的には「入社前に想定していた仕事と現実の業務にギャップがある」「スキルや経験を活かせていない」といったことが原因で、仕事に対するモチベーションが低下してしまうのです。

また、「十分な裁量権がない」「会社や社会への貢献を実感しにくい」といった原因によるモチベーションの低下は、管理職などの高度な人材にも起こり得る問題といえます。

将来に対する不安

会社の将来性に対する不安感も、モチベーションを低下させる原因となります。「業績が悪化しているにもかかわらず具体的な策が見いだせない」「公平な評価制度が導入されていない」といった状態では、従業員は安心して仕事をすることができなくなってしまうのです。

また、企業そのものの将来性には問題を感じていなくても、身近な先輩や上司のキャリア形成を通じて、希望を見いだせなくなってしまうパターンは少なくありません。お手本となるべき存在のキャリアが思わしくなく、収入などもなかなか向上していかない場合は、自分の将来と重ね合わせて悲観的になってしまうケースも多いです。

身体的な疲労の蓄積

身体的な疲労もモチベーションが維持できなくなってしまう要因の一つです。残業や休日出勤が続いているなど、身体的な疲労が溜まってくると前向きな気持ちを維持するのが難しくなり、モチベーションを保てなくなってしまいます。

あまりにも疲労が蓄積されていくと、少しばかり休みをとったとしてもなかなか状態が回復せず、モチベーションを取り戻すのが難しくなってしまうので注意が必要です。

モチベーションマネジメントに取り組むメリット


従業員のモチベーションの向上は、組織にさまざまなメリットをもたらします。ここでは、モチベーションマネジメントに取り組むメリットを見ていきましょう。

従業員の成長につなげられる

モチベーションマネジメントの大きな効果として、「従業員の自発的な成長を促せる」というポイントがあげられます。モチベーションマネジメントによって、高いモチベーションを維持している従業員は、自ら主体的に成長の機会を求められるようになります。

目標を達成してもそこで満足せず、自身の付加価値を高め、できることを増やすために自ら学習していくようになるのです。そのため、長期的に見れば、企業や組織の競争力を高めることにもつながります。

離職リスクを抑えられる

モチベーションマネジメントの取り組みが機能していれば、従業員の離職リスクも自然と低下していきます。高いモチベーションを持つ従業員は、自身の身の回りだけでなく事業成長や経営目標の達成も意識するようになるため、自社での長期的なキャリアを考えやすくなるのです。

生産性の向上が期待できる

モチベーションマネジメントの大きな目的は、生産性の向上にあります。モチベーションが高い従業員が増えていくと、組織は能動的に動けるようになり、指示を待たなくても目標に向かって自走できるようになります。

その結果、少ない人員でも高いパフォーマンスを発揮できるようになり、企業としての競争力が高められるのがメリットです。

モチベーションマネジメントを成功させるポイント


モチベーションマネジメントを成功させるためには、経営陣や管理職層が一方的なアプローチを行うのではなく、従業員との双方向的なやりとりを大事にする必要があります。ここでは、モチベーションマネジメントにおいて特に重要となるポイントを3つに分けてご紹介します。

従業員の意見に耳を傾ける

モチベーションマネジメントの第一歩は、従業員の声に耳を傾けることにあります。内発的な動機づけの実現を目指すためには、単に昇給や手当の支給といった施策を実行するだけでなく、個々人がどのような価値を重視しているかを知ったうえで手を打つ必要があるのです。

それには、マネジメントを行う担当者と従業員との双方向的のコミュニケーションが欠かせません。それぞれがどのようなキャリアを描いているか、どのような点に不満やストレスを感じているかなどを丁寧に把握することが重要です。

従業員への理解が進んでいれば、達成目標の設定や人員配置なども適切に行えるようになります。本人の能力や資質に合わせたキャリア形成の方向性を示せるため、企業に対する帰属意識も高まっていくでしょう。

モチベーションの状況を定期的に確認する

モチベーションは時間の経過や状況の変化に合わせて、絶えず変動していくものでもあります。そのため、1on1ミーティングなどを実施し、定期的に状況を把握できる機会を設けることも大切です。

1on1ミーティングは、一対一でじっくりとコミュニケーションを図れるため、管理職者と従業員の信頼関係を向上させることにもつながります。良質な人間関係が築かれれば、普段は表に出せないような不満や悩みも相談してもらえるようになるため、離職を未然に防ぐことも可能になります。

社内コミュニケーションを活性化させる

前述のように、人間関係の悪化はモチベーションの低下を招く主要な原因となります。反対に、良好な人間関係が築かれていれば、長期的なモチベーションの形成に大きく寄与するでしょう。

そのためには、従業員同士の自然発生的な関係づくりに任せるだけでなく、企業側からも社内コミュニケーションが活性化するような仕組みを導入することが大切です。たとえば、従業員同士でフィードバックを送り合う評価制度や仕組みの導入があげられます。

従業員同士がお互いの貢献を認め合い、称え合える風土をつくることで、組織全体に前向きな向上心が醸成されていきます。

まとめ

組織づくりや人材育成においては、モチベーションマネジメントの考え方を踏まえて戦略を立てることも重要です。従業員のモチベーションによって、組織のパフォーマンスや生産性は大きく変化してしまうため、適切に管理できる仕組みを整える必要があります。

モチベーションマネジメントがうまく機能している組織では、従業員の自発能動的な行動が見られるとともに、自社での前向きなキャリア形成を志向する人材が増えるのが特徴です。その結果、離職率の低下にもつながるため、人手不足が続く現代のビジネス環境においては特に重要性の高い施策といえるでしょう。

まずは、現状を的確に把握するために、従業員一人ひとりの意見に耳を傾けられる機会を設けることが大切です。個々人の価値観をしっかりと理解したうえで、どうすればモチベーション向上につながるのかを丁寧に考えていきましょう。

(制作協力/株式会社アクロスソリューションズ、編集/d’s JOURNAL編集部)

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