人材アセスメントとは?導入目的とメリットを活かして定着率を高める方法

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d’s JOURNAL編集部

終身雇用の慣習が薄れ、人材の流動性や労働力不足が深刻化する中、企業には適切な人材配置が求められています。そのような状況下で有効な手立てが、人材アセスメントの導入です。

本記事では、人材アセスメントの概要を詳しく解説します。導入時の流れを押さえて、「採用した人材の定着を目指したい」とお考えであれば、参考にしてください。

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人材アセスメントとは

人材アセスメントとは、第三者が人材のスキルや適性、能力などを客観的に分析・評価する手法のことです。従業員の持つ適性や能力を明確に把握することで、採用現場や人材配置などの課題解決に役立ちます。

従来の評価制度は、直属の上司や人事・採用担当者がスキルや成果を評価することが一般的です。しかし、評価者の主観や先入観が混ざってしまう可能性が拭いきれないために、客観的で公平な評価とはいえませんでした。

人材アセスメントを取り入れると、社外の第三者が評価するため、従来の方法よりもさらに客観的かつ公平に従業員のスキルや能力を把握できるのです。この評価を基に人員配置を行えば、従業員一人ひとりの生産性の向上、あるいは定着率の向上が見込めます。

人材アセスメントのトレンド|ジョブ型雇用・AI活用

従来は、新卒入社後に優れた成果を挙げた人材が、管理職に昇進するケースが一般的でした。しかし近年では、労働力人口の減少や人材の流動化を背景に、職務ベースで人材を育成・配置する「ジョブ型雇用」へとシフトする企業が増えています。

この流れの中で、職種と役職を組み合わせた人材要件を設計し、それに応じた評価基準の見直しが求められており、人材アセスメントの活用が注目されています。

また、飛躍的に進化するAIによるアセスメントにも注目が集まっています。例えば、自社に適したリーダーを見つけるための「リーダーシップ・アセスメント」でも、人材の能力開発の場面でAIが活用されています。AIによるアセスメントの活用は、成果向上に寄与する可能性がありますが、プライバシー保護の観点やブラックボックス化といった懸念が新たに浮上していることも事実です。

人材アセスメントを導入する企業・従業員のメリット

人材アセスメントを取り入れることには、企業と従業員の両者にメリットがあります。

企業側のメリットは人材の定着率向上とミスマッチ防止

企業が人材アセスメントを導入すると、より従業員の「個」に焦点を当てた施策を実行できるようになります。これにより期待できる成果を、以下にまとめました。

人材アセスメントを取り入れることで得られる成果
●適切な人員配置
●定着率の向上
●採用現場でのミスマッチの防止
●採用費の削減

人材アセスメントで適材適所の人員配置ができれば、従業員のモチベーションが高まり、定着率の向上が望めます。また、離職のリスクが高い人材の傾向がつかめると、以降の採用現場でのミスマッチ防止につながり、採用費の削減にもなるはずです。

従業員側のメリットは公平な評価とキャリア開発の促進

人材アセスメントによる客観的な評価は、公平性が担保されているため従業員が受け入れやすく、自身の強みや課題を知る機会となります。自身の新たな能力や適性が見つかることもあるため、キャリアパスの選択肢が広がるきっかけにもつながるはずです。

適材適所の人員配置で自身の能力を活かせると、モチベーションが高い状態で業務にも取り組めるでしょう。

人材アセスメントで評価される項目

人材アセスメントでは、「思考力」「行動特性」「姿勢・態度」の3つの観点から評価が行われます。

人材アセスメントで評価される項目
●思考力
●行動特性
●姿勢・態度

以下で詳細を確認しましょう。

思考力

まず挙げられる項目が、論理性や問題解決力などを評価する「思考力」です。

思考力の評価方法には、さまざまな手段が挙げられます。例えば「インバスケット演習」では、職場内で起こり得る未処理の事案に対して、限られた時間の中でどのように処理しているのかを確認します。在籍している組織の課題への対応力に関して、重要度と緊急度の2軸での評価が可能です。

また、自由記述式の論文によって、職場に対する問題意識の持ち方や、解決方法を評価する方法もあります。

行動特性

実際の職場を想定した場面を再現し、従業員同士のグループワークやロールプレイを実施すれば「言動」を確認できます。具体的には、グループワークの中で重要な発言をしている、あるいは周囲の意見を傾聴できているといった点での評価です。

部下を持つ上司の場合には、面談演習を行うことで部下への接し方を評価します。

姿勢・態度

上述の2つの項目を踏まえ、従業員がどのように思考し、行動しているのかを「姿勢・態度」の項目で評価します。思考と行動の背景にある価値観を含めて、総合的に判断する項目です。

人材アセスメント導入の流れと5つのステップ

企業と従業員の双方にメリットがある人材アセスメントですが、正しい順序で導入しなければ想定している成果は望めません。以下で紹介する5つのステップを押さえて、効果の最大化を図りましょう。

人材アセスメントを導入する流れ
●導入の目的と活用用途の明確化
●測定する領域と項目の設定
●アセスメント手法の決定と実施
●結果の分析と施策への反映
●定期的なモニタリングの実地

以下で各ステップの詳細を解説します。

①導入の目的と活用用途の明確化

まずは、なぜ人材アセスメントを導入するのか?その目的と活用用途を明確にします。目的が明らかでなければ適切な手法や測定項目は選定できません。また、目的と活用用途が不明瞭な状態で取り入れても、データが蓄積されるだけで本来得られる効果が発揮されないでしょう。

「まず試してみて、後から活用方法を考える」ではなく、「この課題を解決する目的で、人材アセスメントを導入しよう」と具体的に考えることが重要です。

②測定する領域と項目の設定

明確化した目的と併せて、現状の課題に対して測定しなければならない領域と項目を決めましょう。

人材アセスメントの実施では、「測定したいものが正確に測れるか」という点が重要です。例えば、自社が求める人材を採用するために活用する場合には、論理的思考力や基礎学力を測定できる項目がお勧めです。

人材アセスメントで測定できる項目の例
●創造性
●問題解決力
●リーダーシップ力
●チームワーク力
●主体性
●問題分析力
●適応力
●基礎学力
●行動特性
●ビジネスマナー
●部下育成力

測定項目は多いほうが良いと考える企業もあるかもしれませんが、数が膨大になると情報が判断しづらくなります。目的に対して必要な項目を限定しましょう。

③アセスメント手法の決定と実施

項目の設定後は、手法を決めてアセスメントを実施します。人材アセスメントの手法を以下にまとめました。

種類 概要
適性検査 ●テスト形式の問題への回答内容を踏まえ、その従業員の性格や特性、関心などを定量的に評価する
多面評価(360度評価) ●さまざまな立場の従業員が、1人の従業員を評価する
●従業員が自己評価を行った上で、上司、同僚、部下などが評価を受ける
コンピテンシー診断 ●オンライン診断によって、個人の行動特性や思考特性などを客観的に評価する
行動面接(STAR面接) ●行動・課題質問を通して、過去の具体的な行動を回答してもらい評価する
●対象となる従業員の価値観や行動特性などが把握できる
行動観察(アセスメント研修) ●対象となる従業員を集めて課題を与え、行動特性や考え方、立ち居振る舞いを評価する

このように、人材アセスメントにはさまざまな種類があるため、上述の目的や測定したい項目を基に手法を選定することが重要です。

④結果の分析と施策への反映

アセスメントによって出た結果を分析し、具体的な施策へと反映しましょう。
適切な人員配置の基準を目的に設定していた場合、この結果を判断材料の一つとして、従業員の異動先を検討するプロセスに取り入れます。

なお、アセスメントの実施結果を単に伝えるだけでは、従業員はどのように受け止めると良いのか迷ってしまいます。共有の際は、その内容に対するフィードバックも添えることが大切です。

⑤定期的なモニタリングの実地

人材アセスメントでは、最初に実施してからも定期的にアセスメントを行い、モニタリングを重ねましょう。従業員一人ひとりの新たな能力を開発するための判断材料として活用していた場合は、数年後に改めてアセスメントを実施することで、前回からの成長度合いが確認できます。

アセスメントの定期的な実施とモニタリングは、従業員の課題解決力やコミュニケーション力といった、個人の開発可能な領域を持続的に確認したい場合に有効です。

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人材アセスメントを活用する際の注意点

最後に、人材アセスメントの効果を最大限に発揮するために、押さえておきたい注意点をご紹介します。

アセスメント結果は目的に沿って柔軟に活用する

主に人事・採用分野で活用される人材アセスメントですが、使用用途はそれだけにとどまりません。例えばアセスメントの適性検査の結果は、プロジェクトメンバーの選抜基準や、従業員ごとの能力開発などにも活用できます。

評価結果の活用方法を押さえておくと、人材アセスメントの結果を最大限に活かせるでしょう。

アセスメント結果だけで評価を決めない

人材アセスメントは、あくまでも従業員のスキルや適性を評価する手法であり、その人材の良し悪しを決めるものではありません。実施結果のみで、従業員を評価することは控えてください。

具体例としては「コミュニケーション力が高いので優秀だ」「項目全体の評価が低いから優秀ではない」というように優劣を付けるケースです。これでは、従業員のモチベーションが下がるだけでなく、成長をも妨げてしまいます。

人材アセスメントの結果は、従業員の特性や能力を明らかにし、適切な人員配置やキャリア開発に役立てる判断材料の一つである点を忘れないように注意しましょう。

アセスメント対象者に目的を説明して透明性を確保する

人材アセスメントを実施する際は、事前に対象の従業員にデータの使用用途を説明しましょう。事前の説明がなければ必要性を理解してもらえず、データが集まらない可能性があります。また、「自分の評価に不利にはたらかないか」と不安を覚える従業員が出てくる可能性も拭いきれません。

このようなリスクを防ぐためにも、「結果を何に活用するのか」「従業員にはどのようなメリットがあるのか」といった点を説明しておくことが肝要です。従業員が納得していない状態で人材アセスメントを実施しても、率直な回答が得られずに精度が低くなってしまいます。

人材アセスメントが従業員にとって不利益になるものではなく、今後のキャリア開発や希望する業務の検討材料として活用することを明確に伝えるとよいでしょう。対象となる従業員が納得した上で透明性が担保できている状態であれば、積極的に参加してもらえるはずです。

人材アセスメントは従業員の能力やスキルなどを第三者が客観的に評価すること

今回は、人材アセスメントについて目的やメリットなどを解説しました。

人材アセスメントを導入すると、適切な人員配置によって従業員の定着率が向上する可能性があります。従業員にとっても、公平性が担保された第三者からの評価は受け入れやすく、この先のキャリアを考える上での判断材料の一つとなります。

はたらき方改革や労働力人口の減少が進む中で、従業員により長く在籍してもらうためには、人材アセスメントで一人ひとりのスキルや適性を、最大限に伸ばすことが欠かせません。
取り入れる目的と活用用途を明確にした上で、適切な手法を選択しましょう。

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(制作協力/株式会社eclore、編集/d’s JOURNAL編集部)

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