地方創生、ワーケーション、KCS/AI活用が成長のカギ。新規事業の創出や組織デザインを学ぶ

パーソルワークスデザイン株式会社

代表取締役社長
平林 由義

広島県呉市出身。新卒で日本のITベンチャー企業草分けの存在であるコスモ・エイティに入社。経理部に所属しながら自由闊達な企業文化の中、大型汎用コンピュータを利用し、COBOL言語で原価計算システムを構築するなど、業務改革にも取り組む。この時にヘルプデスク・PCキッティング他ITサポートの重要性を実感。その後33歳でパーソルワークスデザインの前身となる、ITサポート企業の株式会社ハウコムを起業。

パーソルワークスデザイン株式会社

宮崎管理部 部長
平原 一弥

宮崎県宮崎市出身。2003年にコールセンター業界に入り、大手ISPを主とした大規模コールセンター運営に関わる。その後、センター全体の品質管理、人材育成業務を経験。株式会社ハウコム(現パーソルワークスデザイン株式会社)には2012年に入社。運用部門を経て、2020年からアウトソーシングセンターにおけるセンター管理部門の業務に従事。

パーソルワークスデザイン株式会社

人事ソリューション サービス開発部 部長
長野 和洋

鹿児島県生まれ宮崎県育ち。2005年横浜国立大学卒業後、パーソルキャリア株式会社(旧株式会社インテリジェンス)へ入社。以来、パーソルグループ内にて、営業、人事、新規事業開発を歴任。2021年から現職のパーソルワークスデザインに入社し、サービス開発の業務に従事。

自治体からメーカー、小売、飲食まで幅広い業界にBPOサービスを提供
宮崎県を選んだのは献身的な人柄など、県民のポテンシャルを感じたから
海が目の前に広がる日向のオフィスで働くことが仕事効率のアップに
【特別インタビュー】サービスインテグレターとしての未来、そして展望/代表取締役社長 平林由義氏

総務・経理・人事やコールセンターサービスといった、各種BPO(Business Process Outsourcing)サービスを手がけるパーソルワークスデザイン株式会社(本社:東京都豊島区、代表取締役社長:平林由義)(以下、PWD)。2018年、3社が統合して現在の体制へ。強みやシナジーを発揮、さまざまな事業やサービスを創造してきた。同時に、自社の組織デザインにも注力。その様子やノウハウを、各事業の担当者ならびにトップの声で紹介する。

自治体からメーカー、小売、飲食まで幅広い業界にBPOサービスを提供

パーソルグループにおけるアウトソーシング事業のコアカンパニーとして、多種多様なBPOサービスやヘルスケアサービスを提供しているのが、PWDである。

従来から手がけるBPOサービスでは、事務・経理・人事といったバックオフィス業務の代行を担う。具体的には、申込書の処理や契約者への資料配送やDM、経費や給与計算ならびに処理、支払い業務など。

メイン顧客は保険業界や検定試験業界といった、金融・教育業界だが、不動産、出版、商社、エンターテインメント業界にも顧客を持ち、自治体のバックオフィスも代行し住民サービスの一翼を担っている。

ITシステムや各種製品に関する、ユーザーからの問い合わせに対応するヘルプデスク、コールセンター業務では、自動車業界や酒類業界などのメーカー各社が主な顧客であり、外資系企業が多いのも特徴だ。

そのため英語や韓国語によるサポートにも対応し、後ほどで詳しく説明するが、人ではなくAIが対応するようなRPAやチャットボットなどシステムをいち早く導入することで、他社との差別化ならびに、さらなるサービス品質の向上に努めている。


 
一方、近年同社が注力しているのがヘルスケアサービスだ。企業が毎年実施している健康診断の企画から実施までをサポートする。また健康診断だけではなく、日々、従業員が健康的に働けるよう、管理栄養士による食のサポートや、心理面のサポートも担う。従業員が健康に働くことで、結果として企業の業績が向上する。健康経営促進のための各種施策やサービスを、商社、菓子メーカー、人材会社を中心に提供してきた。

さらに、パーソルグループならではの人材サービスもアウトソーシングしている。いわゆるRPO(Recruitment Process Outsourcing)だ。RPOにおいては単なる採用代行業務に留まらないのが、PWDの特徴であり強みとも言えるだろう。

具体的には、求人広告を出稿する前の段階から、企業をサポートしていく。どのような採用施策を行えばベストなのか。業界や職種はもちろん、その時々のトレンドも加味し、専門の担当者がマーケティングを行い、最適かつ効果的な採用施策を提案。その上で、求人広告の作成や面談・面接の実施、合否連絡など一連の採用フローをアウトソーシングしている。

また対象も幅広い。パート・アルバイトから新卒・中途まで。ポジションにおいても、工場の作業員から上場企業の幹部人材まで。顧客も多様だ。化粧品や食品メーカーから、ゲーム、ホテル業界など。企業のステージも同じく多様で、ベンチャー企業から歴史ある大企業まで多種多様に展開している。

では次項より、PWDの組織デザインについてより詳しく見ていこう。

宮崎県を選んだのは献身的な人柄など、県民のポテンシャルを感じたから

PWDの本社は東京・池袋にあるが、地方での雇用の創造(創出)に以前から取り組んでおり、実際、2002年に宮崎県にアウトソーシングセンターを設立している。以降、規模を拡大し続け、現在は全従業員約1800名のうち、3割近くになる約500名が宮崎オフィスに所属するまでに成長している。そもそもなぜ、宮崎だったのか。同社の平原一弥氏は、次のように説明する。

「一言で説明すれば、宮崎県人のポテンシャルの高さが魅力でした。当時立ち上げに関わった関係者が言っていましたが、接する県民の方々の人柄に、まずは感心していました。“おもてなし”の気持ちを備えた人が多く、誰に対しても分け隔てなく、親身になって接してくれたようですし、仕事に対しても献身的な姿勢で取り組んでいただける方が多いと感じているようでした」(平原氏)。


 
実際、各都道府県の県民性調査を見ても、平原氏が言うような親身な人柄は、如実にデータに現れているそうだ。宮崎県には大学も多く、人柄はもちろん、高いレベルの教育を受けている人材も多い。つまり、良き人材の宝庫だと言えるのだ。

「『県別性格診断』(河出書房新社編集部編)から引用すると、一生で一度しか嘘をつけない大らかで正直な県民性と言われるほど、正直で、素直な方が多いのも特徴です。気候が温暖で農業が盛ん。争いがほとんどない地域であったことが、このような人柄の素晴らしい県民性を生み出したのではないかとも言われています」(平原氏)。

企業に人材を紹介する際にも、スキルの高さはもちろん、宮崎県人ならではの人柄の良さもあわせて紹介することで、契約につながるケースが多いと、平原氏は説明した。

アクセスの良さも魅力だ。宮崎オフィスは、最寄りの宮崎空港から電車で10~15分の距離にある。また災害時にはこのアクセスの良さがBCP(Business Continuity Plan)の観点からも大きなアドバンテージがあるという。

「都市部とは異なり、こちらでは1人が一台自動車を保有するのが一般的です。そのため通勤においても、電車などの公共交通機関を使う人は少なく、マイカー出勤が多数を占めます。 そのため公共交通機関の運行の乱れに影響されることもありません。天気が荒れるなどの状況になっても、会社を遅刻・欠勤するメンバーはほとんどいないため、安定的なサービス提供ができるようになっています」(平原氏)。


感謝の気持ちを可視化する、フラットでアットホームな環境を醸成

優秀な人材がもともと多い土地柄のため、以前はそのような人材を迎え入れることが、採用におけるトレンドだったという。しかし、近年は変化が見られる。

「これまで採用段階においては優秀な人材を探すことに意識を向けていましたが、最近では、一人ひとりの人材の強みや特徴に注目し、そのメンバーが最も活躍できる業務や部署にアサインする。つまり、適材適所を意識するようになりました。また、高度な知識やスキルを持たない人でも活躍できるような組織にしようとの取り組みも行っています。つまり教育や育成制度の充実です」(平原氏)。

コールセンター業務では、どうしてもキャリアアップがイメージしづらい。その点では、パーソルグループの一員である強みを活かした取り組みを行っている。PWDではたらく社員は、パーソルグループ各社で展開しているさまざまな事業やサービスに、キャリアチャレンジできる制度がある

つまり、バックオフィスのアウトソーシング業務で入社した社員でも、やる気やがんばり次第では、HRの施策を考えているような部署や営業やコンサルタント、企画、エンジニアなどの業務に異動できるチャンスがある、というのだ。さらに平原氏は、組織デザイン、マネジメントについても言及した。

「当社は以前よりCS(Customer Satisfaction:顧客満足度)を上げるためには、ES(Employee Satisfaction:従業員満足度)が大事だと考えており、さまざまな施策を行っています。たとえば、成果を上げたりがんばっている社員を、定期的に表彰しています。表彰の際には本社の役員が宮崎オフィスを訪れ、社員に直接感謝の気持ちを伝えるようにしています。特別な場であることを演出するのはもちろんですが、役員と社員に直接コミュニケーションしてもらいたいとの想いからです」(平原氏)。

日常の職場環境において意識していることは、フラットでアットホームな組織であること。トップダウンではなく、ボトムアップはもちろん、どの社員でも部署や上下関係を気にすることなく意見が出せる環境だ。

このような環境の実現には、オウケイウェイヴが提供するコミュニケーションツール「OKWAVE GRATICA (オウケイウェイヴ グラティカ)」を活用している。同ツールにはサンクスカードを使って、オンラインで社員同士が日々の業務に対して、「ありがとう」「助かりました」といった感謝の気持ちを気軽に伝え合うことができる。やり取りはすべてデータにし、全メンバーが閲覧することも可能だ。

「実際、同ツールを使うことで、誰もが気軽に感謝の気持ちを誰に対してもコメントできるようになったと感じています。そのことが結果として、フラットで居心地の良い職場環境につながっていると思いますね」(平原氏)。

同ツールは、多くの企業で導入しているツールでもあり、無料で多くのサービスが利用できるのも特徴だ。リンクを貼っておくので、気になる人は参考にしてもらいたい。(OKWAVE GRATICA :https://gratica.jp/)

海が目の前に広がる日向のオフィスで働くことが仕事効率のアップに

コロナ禍となってから一層注目を浴びるようになった、はたらきながらバカンスも味わうことができるワーケーションにも、PWDは取り組んでいる。2020年9月から、宮崎県日向市が主催した「ワーケーションオフィス調査事業」に、グループ企業である、パーソルテクノロジースタッフ、パーソルイノベーションと共に参画した。

実施場所は、海が目の前に広がるオフィスで、サーフィンなどマリンスポーツ好きなエンジニアに、仕事とロケーションを提供。PWDが海沿いの施設兼オフィスを運営し、仕事はエンジニアの人材派遣を専門に手がけるパーソルテクノロジースタッフが、首都圏・東海・関西エリアから獲得する、との役割分担であった。

なぜ、同事業を日向市に起案したのか。起案者である長野和洋氏は次のように説明した。

「私は鹿児島県で生まれ、宮崎県で育ちました。大学入学を機に故郷を離れ上京しましたが、東京などの都市部にビジネスパーソンも仕事も過密化している一方で、鹿児島や宮崎などの地方が過疎化していくのを、寂しい気持ちで見ていました。私も含め、地方から東京に出てきて働いている人の多くは、本当であれば地元に戻りたいんです。でも、仕事がないから戻れない。であれば、地方で仕事を創出すればよいのではないか。そう思い、ワーケーション事業に取り組むようになりました」(長野氏)。


 
長野氏は個人的なビジョンについても触れ、「時間と場所を自由に選択できる働き方を創造したい」と説明。そのため、地方創生はもちろんだが、一人ひとりが望む場所で働くことのできる、その結果、幸せな人生を送ることができる。そのような世の中をつくることが望みであり、その一環としてのワーケーションだと、熱い想いも話してくれた。

実際、ワーケーションは成り立つのか。同事業に参加したエンジニアにアンケートを取ると、早く遊びたいために効率よく仕事を行うようになり、結果、労働時間は短くなった。それでいて、以前と変わらない業務量と質を保つことができていたことが分かった。つまり、生産効率が高まることが分かったのである。

そしてもちろん、浮いた時間をサーフィンなどに充てることでプライベートが充実し、健康にもつながる。結果、仕事に対してますます前向きになる。このような、プラスのサイクルが生まれているというのだ。

「日向市での実証実験は大成功でしたから、同事業をより拡大していく一方、他の魅力的な地域にも同じような事業を展開していくことを計画しています。そしてその際には、日向市はがキーワードでしたが、寒い地域であれば雪、温泉地であれば温泉といった具合に、それぞれの地域の特色をあわせてPRすることも考えています。

最終的には47都道府県のバカンス地域で、自由に働くことができる環境を実現すること。時間と場所を自由に選択できる働き方が定着しているような社会を実現することが目標です」(長野氏)。

【特別インタビュー】サービスインテグレターとしての未来、そして展望/代表取締役社長 平林由義氏

ここからは、平林由義代表にBPO業界のトレンドや今後のビジョン、具体的な施策について聞いた。


 
――BPO業界のトレンドも踏まえ、PWDが目指すべき姿やビジョンについてお聞かせください

平林:我々が行っているBPOサービスは、自社で行うよりも外注した方が安価で、かつ、質の高いサービスが得られるから価値があり、需要もあるわけです。そのため事業の効率化がより一層進む今後においても、BPO市場はまだまだ拡大すると見ています

一方で、これまでのアウトソーシング事業で培ったノウハウや経験をベースに、さらなる価値や新たなビジネスを創造し、顧客に提供していきます。我々はこのような動きを、中期経営計画で明確に打ち出しています

単に安価で高品質なアウトソーサーから次のステップへ、それがサービスインテグレターへの進化です。たとえば、我々がお客様のビジネスに加わることで、従来どおりコストダウンを実現することはもちろん、取り組んでいるDXが促進・加速するような付加価値の提供です。

新たなビジネスの創造についてキーとなるのが、「KCS」。ナレッジマネジメントにおけるベストプラクティスとされる方法論であり手法です。

――KCSとはどういったプラクティスなのですか

熟練者など特定の人が持つ経験や知識といった暗黙知を可視化し、メンバーならびに組織全体で共有することで、全メンバーが高いレベルのサービスを提供していこう、というもので、「Knowledge Centered Service」の頭文字を取った言葉です。特に、当社が得意とするコールセンター業務で力を発揮します

全メンバーが日々の業務で得るノウハウや知識も、同じように共有していくことで、組織全体のサービスレベルをさらにブラッシュアップしていくとの効果もあります。同プラクティスは顧客に対するサービスだけでなく、自社の従業員の満足度向上においても、力を発揮します。

たとえば、今後より一層注力していこうと考えているヘルスケア領域における、電子カルテシステムのヘルプデスク業務があります。同業務では医療事務の知見はもちろん、ITシステムの使い方など必要なスキルや知識が多い専門業務であることから、これまで従事するためには、事前に6カ月の研修を必要としていました。

さらに2年に一度、学び直しの機会を設ける必要もありました。しかしKCSを導入することにより、教育ならびに情報の共有がスムーズに行えるようになり、研修期間は1カ月に短縮されました。

KCSは、昨今注目されているヘルプデスク業務のAI化とも、親和性が高いと期待しています。たとえば、市役所に住民から「家の前のゴミをからすが荒らしていて困る」といった苦情があったとします。

このようなよくある問い合わせに対しては、人ではなくKCSとAIが連携することで、自動で対応するようなシステムを構築します。AIですから夜中でも24時間無休で稼働・対応することが可能ですし、ヘルスケア領域や自治体のヘルプデスク業務は定型的なやり取りが多いとの特徴もありますから、ひとつの良きケーススタディが出れば、横展開できると期待しています。

KCSのベースは、もともとは人のナレッジやノウハウですから、他社が真似できないのも強みです。実際、同プラクティスを正しく運用できているのは、当社も含め国内では3社ほどしかありません。競合が少ないという点でも、今後より注力していく領域だと考えています。

――今後のアウトソーサーの在り方について教えてください

さらに先のビジョンをお話しすれば、KCSやAIが得た顧客からの情報、つまりデータを蓄積し分析することで、別の新たな付加価値やサービスの創造につなげていきます。ヘルスケア領域であれば、お客様の健康に関するサービスの創造などです。

このように、従来のアウトソーシング業務だけでなく、KCSなどを活用し新たなサービスを生むことで、冒頭お話したとおり、誰もが認めるサービスインテグレターにシフトしていく。これが、当面の計画です。

サービスインテグレターへのシフトが実現した暁には、BPOサービスだけでは顧客企業よりも給与が低いとの業界課題がありましたが、そのようなネックならびに、イメージも打破できると期待しています。

つまり、アウトソーサーでも稼げるのです。それも、テクノロジーを活用することで、はたらく方の知識や経験、はたらく場所や時間の制約を軽減し、個人の希望にあった働き方をしながら――。このような健康経営の実現も、私たちが目指すところです。


【取材後記】

近年、コロナ禍においてBPOサービスの内容や質、在り方にも変革が生まれようとしている。その中において、ヘルスケア領域への注力、地方創生やワーケーションの拡充、そしてサービスインテグレターへと進化を遂げつつあるPWD。アウトソーサーとして未来の姿をひとつ示してくれたのではないだろうか。また、平林由義代表の「アウトソーサーで働く個人も、大きく収入を上げることができる。そのためのイメージも打破できる」と、いただいた力強いコメントは、業界に大きな希望と勇気を与えてくれるだろう。これからのPWDにも注目していきたい。

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取材・文/鈴政武尊・杉山忠義、編集/鈴政武尊