【最新版】有効求人倍率とは?推移グラフから何がわかる?計算方法や傾向を簡単解説

d’s JOURNAL編集部
有効求人倍率とは?
有効求人倍率の計算方法は<企業の求人数>÷<求職者>
有効求人倍率が高いときと低いとき、それぞれどんなメリット・デメリットがある?
有効求人倍率の推移-数値をグラフで振り返る
【最新】2020年有効求人倍率の状況(2021年2月発表分)
有効求人倍率と完全失業率はどう関係がある?
有効求人倍率の今後の予測

「求職者1人につき、何件の求人があるか」を表す有効求人倍率。厚生労働省が全国のハローワークのデータを集計し、毎月発表している景気動向指数の1つです。有効求人倍率の推移を知ることで、現在の景気状況や、今後の企業活動の予測に役立てたいと考える方もいるのではないでしょうか。今回は、有効求人倍率の意味や求め方、最新データに基づく現在までの推移などについて解説します。

有効求人倍率とは?

有効求人倍率とは、厚生労働省が毎月発表している「求職者1人につき、何件の求人があるか」を表す数値のこと。ハローワークの「有効求人数」と「有効求職者数」を基に算出されます。景気状況と連動して数値が変わることから「景気動向指数」とされ、企業経営において重視されている指標の1つです。

一般的に、有効求人倍率が1倍を上回り「求職者よりも求人数が多い」状況を「売り手市場」、1倍を下回り「求人数より求職者の方が多い」状況を「買い手市場」と呼びます。英語では「Active job openings-to-applicants ratio 」や「Jobs to applicants ratio」などと表記されるようです。

有効求人倍率などの「有効」の意味

「有効求人倍率」「有効求人数」「有効求職者数」などの用語で使われている「有効」という言葉は、「ハローワークでの求人数や求職者数が有効期間内にあること」を意味しています。ハローワークでは、求人、求職のいずれも「有効期間を2カ月間(翌々月の末日まで)」と定めており、期限内にある「求職者数」と「求人数」を基に有効求人倍率を算出しています。

有効求人倍率と新規求人倍率の違い

有効求人倍率と新規求人倍率は、どちらも「どれだけの人が職を求めており、それに対して何件の求人があるか」を示しています。計算対象となる範囲が、それぞれ異なります。

「新規求人倍率」は、「その月に申し込まれた求職者数」と「その月に受け付けられた求人数」を基に算出。一方、「有効求人倍率」は、両者に「前月から繰り越された求職者数と求人数」を加えて算出します。そのため新規求人倍率は、より直近の景気や雇用動向を示す指標とされています。

有効求人倍率の計算方法は<企業の求人数>÷<求職者>

有効求人倍率は、以下の式に当てはめて求めます。

有効求人倍率=有効求人件数÷有効求職者数

例を挙げて見ていきましょう。

有効求人数(件) 有効求職者数(人) 有効求人倍率(倍)
100 100 1
50 100 0.5
100 50 2

たとえば、100件の求人に対し100人の求職者がいるとすると、有効求人倍率は100÷100で「1倍」。求職者1人につき、1件の募集がある状態です。一方、求人数50件に対し求職者数が100人になると、有効求人倍率は50÷100で「0.5倍」。求職者2人につき募集が1件と、求職者が余る「買い手市場」の状態です。また、求人数100件に対し求職者数が50人の場合、有効求人倍率は100÷50で「2倍」。求職者1人に2件の募集がある「売り手市場」の状態となります。

有効求人倍率にはアルバイト・派遣・契約社員などの非正規雇用も含まれる

有効求人倍率の計算対象となる母数には、「正規」と「非正規」のどちらも含まれます。正社員などのいわゆる正規雇用労働者だけでなく、パート・派遣社員・契約社員などのいわゆる非正規雇用労働者の数も、有効求人倍率として公開される数値に含まれます。

なお、厚生労働省では、正規雇用と非正規雇用の全てを含む有効求人倍率の発表と同時に、「正社員の有効求人数」と「パートタイムを除く常用の月間有効求職者数」を母数にして算出した有効求人倍率も発表しています。ただし、派遣社員や契約社員を希望する人の求職者数も有効求人倍率の計算に含まれるため、正社員だけの有効求人倍率ではないことに注意が必要です。

季節調整値とは?

季節調整値とは、定年退職や雇用契約の満了など、企業における年間を通じた人事異動の傾向や業界による繁閑など、一時的に受ける季節変動の影響をあらかじめ差し引いて計算した値のこと。厚生労働省では、原数値の他に、季節調整値としてのデータも公表しています。前年度の同時期との比較ではなく、前月からの変化を正確に捉えたいときに有効なデータです。

(参考:総務省統計局『労働力調査の結果を見る際のポイント No.4 原数値と季節調整値』)

有効求人倍率が高いときと低いとき、それぞれどんなメリット・デメリットがある?

有効求人倍率が高いときや低いとき、企業と求職者はそれぞれどのような状況に置かれるのでしょうか。下の表を基に説明します。

高いとき 低いとき
企業

【デメリット】
・マッチング難易度が上がる
・より好条件を提示する必要がある

【メリット】
・求職者を集めやすい
・企業側に有利な条件で雇用しやすい

求職者

【メリット】
・選択肢が広がる
・好条件で就職しやすい
・ポテンシャル採用が多くなる

【デメリット】
・競争が激しくなる
・条件が良いとは限らない
・即戦力人材に注目が集まりやすい

有効求人倍率が高い状態では、求職者に対するメリットが大きく、「選択肢が広がる」「企業が提示する条件がより好条件となる」など、就職先を見つけやすい状況になります。それに対し、企業は「応募者を確保しづらい」「求職者とのマッチングが難しくなる」「より良い条件を提示する必要がある」といった状況に置かれるでしょう。

一方、有効求人倍率が低ければ、企業が「求職者を集めやすい」「有利な条件で雇用しやすい」など、企業にとって有利な状況になります。一方、求職者は「競争が激しくなる」「企業から提示される条件が好条件とは限らない」といった状況になりやすいでしょう。

有効求人倍率の推移-数値をグラフで振り返る

有効求人倍率の変動を見ることで、経済の動向を確認することができます。バブル期以降の日本経済の状況を、有効求人倍率の変化と併せて解説します。

バブル期とその後の推移と日本経済の状況

下の図は、独立行政法人労働政策研究・研修機構が発表した、バブル期前後における、有効求人倍率の推移を示したものです。

バブル期とその後の推移と日本経済の状況

1985年以降の「バブル経済」において、有効求人倍率は急激に上昇し、一時1.4倍を記録しました。しかし、バブル経済の崩壊に伴い、1991年を境に求人倍率は急降下。1999年には0.48倍にまで下落。この数値が上昇に転じたのは、バブル崩壊から10年以上が過ぎた、2003年前後のことです。その後、有効求人倍率は2007年にかけて上昇しており、経済が回復していったことがわかります。しかし、2008年に起きた「リーマンショック」の影響を受け、有効求人倍率は再び大きく低下。一時、バブル崩壊後最低の有効求人倍率を下回る、0.44倍を記録しました。

(参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構『図1 完全失業率、有効求人倍率|早わかり グラフでみる長期労働統計|労働政策研究・研修機構(JILPT)』)

2018年の推移と日本経済の状況―リーマンショックの不況から脱却

下の図は、厚生労働省が『一般職業紹介状況(平成30年12月分及び平成30年分)について』で発表した、2018年における求職および有効求人倍率の推移を示したものです。

2018年の推移と日本経済の状況―リーマンショックの不況から脱却

(参考:厚生労働省『一般職業紹介状況(平成30年12月分及び平成30年分)について』)

2018年における年間の有効求人倍率(季節調整値・折れ線グラフ)は、バブル期を超える1.6倍付近を維持しており、年間平均有効求人倍率は1.61倍(前年度比+0.11ポイント)でした。2008年のリーマンショックに端を発する不況から脱却し、日本経済が景気の拡張期であったことがうかがえます。これは、アベノミクスと呼ばれる経済政策により、大規模な金融緩和や民間投資を喚起する成長戦略などが功を奏した結果と言えるでしょう。また、この景気回復とともに、外国人労働者の受け入れがより活発化しています。
(参考:『【最新版】外国人労働者の受け入れ数はどう変化した?グラフで読み解く日本の現状と課題』)

2019年の推移と日本経済状況―2018年に続き、安定的に推移

下の図は、厚生労働省が『一般職業紹介状況(令和元年12月分及び令和元年分)について』で発表した、2019年における年間有効求人倍率の推移などを示したものです。

2019年の推移と日本経済状況―2018年に続き、安定的に推移

(参考:厚生労働省『一般職業紹介状況(令和元年12月分及び令和元年分)について』)

2019年度の各月間有効求人倍率(季節調整値・折れ線グラフ)は、年間を通じて1.6倍付近を安定的に推移。2018年度からほぼ横ばいとなっていました。2019年度年間平均値は1.60倍(前年度比-0.01ポイント)で、経済状況が安定していたことがうかがえます。

【最新】2020年有効求人倍率の状況(2021年2月発表分)

新型コロナウイルス感染症が流行した2020年の有効求人倍率は、どのような状況だったのでしょうか。厚生労働省の『報道発表資料 一般職業紹介状況(令和3年2月分)について』を基に、2020年~21年2月における有効求人倍率の状況をさまざまな視点からご紹介します。

2020年有効求人倍率の状況(2021年2月発表分)

2021年2月時点の有効求人倍率(季節調整値・折れ線グラフ)は、1.09倍(前月比-0.01ポイント)でした。2020年~21年2月にかけての推移を見ると、2020年2月時点では1.45倍だったものの、それ以降は毎月低下。2020年9月に1.03倍まで下落した後、2021年2月にかけて若干の回復傾向が見られるものの、ほぼ横ばいとなっています。2020年の年間平均での有効求人倍率は1.18倍(季節調整値)で、前年度比-0.42ポイントという結果に。新型コロナウイルスの感染状況による影響がうかがえる結果となりました。
(参考:厚生労働省『報道発表資料 一般職業紹介状況(令和3年2月分)について』、『一般職業紹介状況(令和2年12月分及び令和2年分)』)

業種別の新規求人数の推移

同資料を基に、業種別の新規求人件数の推移をご紹介します。

業種別の新規求人数の推移

2021年2月における新規求人(原数値)の合計値は、前年同月比-14.6%に。前月の2021年1月の数値は-11.6%と、他の月と比べて下げ幅が小さくなったものの、2月になって再び悪化しています。2020年3月以降、年間を通じて新規求人件数が前年同月よりも減少しており、特に新型コロナの流行を受けて、初めて緊急事態宣言が出された2020年4~5月は、3割を超える下げ幅となりました。

産業別で見ると、東京五輪・パラリンピックを見据えた公共事業などの下支えを受ける「建設業」は、前年同月を上回る月も見られます。一方、新型コロナの影響を大きく受けた「宿泊業・飲食サービス業」「卸売業・小売業」「生活関連サービス業・娯楽業」「運輸業・郵便業」などでは、年間を通じて前年同月から数値が減少しています。
(参考:厚生労働省『一般職業紹介状況(令和3年2月分)』)

なお、パーソルキャリアが運営する転職サービス「doda」では、転職市場の最新状況として「転職求人倍率レポート」を3カ月ごとに発表しています。転職求人倍率の動向について知りたい方は、こちらのレポートをご確認ください。

都道府県別の有効求人倍率の推移

同資料によると、2021年2月時点での都道府県別(就業地別)の有効求人倍率(季節調整値)が最も高かったのは、「福井県」で1.64倍。以下、「香川県」(1.46倍)、「島根県」(1.43倍)と続きます。一方、有効求人倍率が低かった県ワースト3は、「沖縄県」(0.75倍)、「北海道」(0.87倍)、「神奈川県」(0.89倍)でした。最も高い福井県と最も低い沖縄県では、0.89倍の差が見られます。新型コロナの感染者や、感染拡大による休業要請などが多い地域ほど、有効求人倍率も低下していると推測できます。全体を見ると、前月よりも有効求人倍率が低下したのは13道府県、残り34都府県は変化なしか、微増となりました。
(参考:厚生労働省『一般職業紹介状況(令和3年2月分)』)

高校・中学新卒者の求人倍率

厚生労働省の『令和2年度「高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・就職内定状況」』によると、2021年3月に高校および中学校を卒業する学生の、2020年10月末時点でのハローワーク求人における求人・求職状況は、次のようになっています。

●高校新卒者の状況

○ 求人数    約37万人(前年同期比-20.7%)
○ 求職者数   約15万2,000人(同-10.1%)
求人倍率   2.43倍(同-0.32ポイント)

●中学新卒者の状況

○ 求人数    933人(前年同期比-23.7%)
○ 求職者数   866人(同-9.2%)
求人倍率   1.08倍(同-0.20ポイント)

高校および中学卒業予定者の求人件数は、いずれも前年同月に比べて20%以上低下しました。新型コロナウイルスの流行などにより、企業が新規採用を控えている状況であることがわかります。一方、求職者数も約10%減っており、就職に慎重な姿勢を見せる学生が多いこともうかがえます。この結果、求人倍率は高卒予定者では2.43倍、中卒予定者では1.08倍と、いずれも前年同月比で0.2~0.3%程度低下しました。
(参考:厚生労働省『令和2年度「高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・就職内定状況」』)

有効求人倍率と完全失業率はどう関係がある?

完全失業率とは、15歳以上の人口のうち、就業者と完全失業者を合計した「労働力人口」に占める失業者の割合を示すもので、有効求人倍率と同じ「景気動向指数」の1つです。雇用数は景気状況に応じて変動し、景気が悪いときは減少する傾向にあります。この結果、失業者数が増えて完全失業率が上昇し、雇用数を減らすために有効求人倍率は低下。逆に、景気が良いときは企業は雇用数を増やすため、完全失業率は低下し、有効求人倍率は高くなります。このように、有効求人倍率と完全失業率の動向は、反比例しながら推移しています。

ただし、有効求人倍率は景気の状況にほぼ一致して推移する「一致係数」であるのに対し、完全失業率は実際の景気状況にやや遅れて変動する「遅行指数」です。そのため、有効求人倍率の推移からやや遅れる形で、完全失業率は推移します。
(参考:『【2020年】完全失業率とは?計算方法は?グラフの推移で読み解く上昇の原因と影響』)

有効求人倍率の今後の予測

有効求人倍率は、今後どのように変化すると予測されるのでしょうか。短期的には、2020年初頭から流行が続く新型コロナウイルス感染症の影響により、先行きが見通せないことで企業が雇用を控える動きが、さまざまな業界で見られています。一方、新型コロナ対策としてさまざまな経済政策が行われたり、ワクチンの流通が始まったりしたことを受け、「2008年のリーマンショックほど不況は長引かない」という見方もあります。

次に、長期的な見通しを見てみましょう。パーソル総合研究所と中央大学の共同研究『労働市場の未来推計2030』(2018年10月発表、2020年12月改定)によると、2030年時点での労働需要が7,073万人であるのに対し、労働供給は6,429万人と、644万人の不足。こうした状況を受けて、政府は女性や外国人労働者、シニア世代の3分野から活躍人口を増やそうと、法律の改正などのさまざまな施策を実施しています。しかし、これらの施策をもってしても、不足する労働需要を全て補うことが困難なため、長期的に見ると有効求人倍率は高まっていくだろうと予測できます。

このように、今後の有効求人倍率は、短期的には新型コロナの影響を受けて上下すると予想されるものの、長期的には上昇していくと考えられるでしょう。

まとめ

   
有効求人倍率は、景気の動向を反映する数値として、人事戦略や経営戦略を決定する上で知っておくべき指標の1つです。2008年のリーマンショック以降に低下していた有効求人倍率は、2018年から2019年にかけて一時かなり回復していましたが、2020年以降は低下に転じています。今後も、経済的インパクトの大きい出来事により、数値が変化していくことが予測されます。企業には、有効求人倍率の短期的推移を確認しつつ、業界や業種ごとの状況や長期的な目線を持ちながら、経営戦略を練ることが求められるでしょう。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、編集/d’s JOURNAL編集部)