【面接質問付き】実績を盛られるのは当たり前!?「事実を見抜く面接官」になる方法

株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ

コンサルタント 酒井利昌(さかい・としまさ)

人材サービスの会社において、営業およびコーディネーターとして1000社の採用支援、3,000人の学生の就業支援に携わった後、アタックス・セールス・アソシエイツ入社。組織営業力強化支援をベースに、採用コンサルティングから新入社員研修、管理職研修まで幅広い支援を展開している。著書に『いい人財が集まる会社の採用の思考法』(フォレスト出版)。

「意見を盛る」ことは日常的に発生している
要注意!面接官が陥りがちな「確証バイアス」
結果を出すための「アプローチ」を深掘りする
できる面接官になるための、3つのトレーニング法
採用力強化は「採用の責任」と向き合うことから始まる

「社会人の66%が“履歴書を盛った”経験あり」――。ベースメントアップス社が2019年に実施したアンケート調査の結果です。面接に臨む採用候補者の大半が、実績を盛って(誇張して)いると言います。

自身の面接にいまいち自信が持てないまま面接官を務めている人や、新たに面接官を任されることになった人にとって、この数字は脅威ではないでしょうか。データだけではありません。採用コンサルタントとして豊富な実績を持つ酒井利昌氏も、実感値を基に「面接で自分の実績を盛らない人のほうがマイノリティーだと考えるべきだ」と指摘します。

採用候補者の本質を見極め、自社にマッチする人材として入社してもらうために、面接官はどのようなスキルを鍛えるべきなのか。具体的な面接の進め方や面接官トレーニングの方法を酒井氏に聞きました。

「意見を盛る」ことは日常的に発生している

――選考書類や面接においては、どのような項目が「盛られやすい」のでしょうか。

酒井氏:私の実体験から、盛られやすい項目を以下のように分類しました。

 

こうして見ると、さまざまな項目に盛られるリスクがあります。面接官として意識しておくべきなのは、採用候補者の「事実」と「意見」を切り分けて見抜くことでしょう。「事実」とは客観的に確認できること。対して「意見」とは個人的な見解や推論を指します。

今や盛らない人の方が少ないとは言え、「事実を盛る」のはあり得ないことですし、面接官として許容できませんよね。場合によっては、採用候補者が軽犯罪法違反や私文書偽造の罪に問われる可能性もあります。

一方で、「意見を盛る」のは面接の場で日常的に発生していると言えます。上記の分類では、③の「実績」に関わる誇張が圧倒的に多いと感じます。

採用候補者の第一の目標は面接を突破することですから、自身の実績を「できるだけ良く見せたい」と思うのは当然でしょう。自社のサービスを売り込む営業パーソンと同じですね。

その意味では、そもそも選考書類の内容だけで採用候補者を正しく理解できるとは考えない方がいいのかもしれません。書類だけで判断していると、「経歴はいまいちだけど中身が立派」な人は、いつまでたっても採用できないでしょう。

要注意!面接官が陥りがちな「確証バイアス」

――「事実」が盛られている場合でも、面接での質問を通じて、ある程度は見抜けるものではないでしょうか?

酒井氏:そうとは言い切れません。面接官は確証バイアスに陥りがちだからです。

確証バイアスは、履歴書類に書かれた実績や経歴を見て「この人、すごい!」と思った瞬間に始まります。「すごい人材が面接に来てくれた」と思い込んでいると、その裏づけを得ようとして、「前職では大活躍していたんですね」「この年齢で役職に就いていたんですね」などと、書類に書かれている内容を表面的に確認するような質問にとどまってしまうことが多いんですよ。

――事実を見極めようとせずに書類の内容をそのまま受け止めてしまうのですね。客観的に確認するためにはどうすればいいのでしょうか。

酒井氏:最近では、採用候補者のSNSでの発信内容を見て、面接で感じた印象と重ね合わせて人となりを見極める企業も多いです。

「そこまでやるのか」と思う人もいるかもしれませんが、最適な人材を採用してしっかり育てていきたいと考えるなら、できる限り慎重を期すべきではないでしょうか。

結果を出すための「アプローチ」を深掘りする

――事実を見極める面接では、どのような質問が有効なのでしょうか。

酒井氏:過去の成果を聞くだけで終わらず、成果を生んだ思考や行動の事実について質問することが大切です。履歴書などに書いてある情報や採用候補者本人が口にする内容は、基本的には「リターン情報」です。売上実績や目標達成率、表彰履歴などはリターンとしての事実ですよね。

では、なぜそのリターンを生むことができたのか?結果を出すための「アプローチ」について話してもらえるかどうかが、事実を見極める面接では重要なのです。さらに深掘りするなら、「上司から言われてやった」「他の人のまねをした」「自分なりに考えて動いた」などのアプローチの入り口がわかれば、採用候補者の実績は再現性のあるものなのか、リアルに見えてくるでしょう。

面接でアプローチの部分を突っ込まれると、答えに詰まってしまう採用候補者が多いんですよ。ものすごい実績を残しているけど、「実は環境に助けられていただけ」というケースも少なくありませんから。

 

――ただ、しっかりと面接対策をしている人なら、こうした「アプローチを問う質問」への回答も準備しているかもしれません。

酒井氏:その場合は「状況質問」を投げ掛けてみることをおすすめします。「こんなシチュエーションに置かれたらどうしますか?」「当社にはこんな課題があるのですが、あなたならどうしますか?」といった、事前に想定できない質問です。

できる面接官になるための、3つのトレーニング法

――面接官としての経験が浅い方へ向けて、有効なトレーニング方法があればアドバイスをお願いします。

酒井氏:3つの方法をご紹介します。

まずは、自身の面接を客観的に見て振り返ることが大切です。採用候補者を見極めるために必要な情報を聞けているか。採用候補者の意見ばかりを聞いていないか。また、面接は動機づけの場でもあるので、話しやすい雰囲気を作れているかどうかも振り返りたいですね。

最近では、面接の場で録画や録音をすることも一般的になってきました。「面接内容を見て厳正に選考させていただきたい」など、何のためにとるのかを採用候補者へ明確に伝え、同意を得た上で進めてください。

次に、普段から「事実をしつこく聞く」習慣を付けること。職場内の何げない会話でも「4W2H」(いつ?どこで?誰と?何を?どれくらい?どうやって?)を意識し、具体的な事実をつかむ質問を繰り返していくことで面接力が磨かれます。

「確認のための質問」を普段から意識することも重要だと思います。私の場合、誰かと会話していてしっくりこないときには「この解釈で合っていますか?」と必ず質問するようにしています。面接官は高い感度で、「相手がどんな意図でその言葉を発しているのか」を見ていかなければいけません。

そしてもう一つ大切なのが「面接評価の基準をそろえる」ことです。これは自分だけではなく、採用活動に関わる担当者同士で行う取り組みですね。採用候補者から得た情報を共有し、アセスメントワード(人を表現し評価する言葉)をそろえて正しく理解することが、見極めの精度向上につながります。

これを進めていくことで、「言葉の抽象度が高い」「そもそも採用基準がそろっていない」などの採用チームの課題も明らかになるはずです。

採用力強化は「採用の責任」と向き合うことから始まる

――現状では、採用候補者とミスマッチの状態で入社させ、「想定していた成果を発揮してもらえない」「短期間で離職されてしまった」といった事態に陥っている職場も少なくありません。この状況を改善するには、人事・採用担当者はどのように動いていくべきでしょうか。

酒井氏:面接官や人事・採用担当者はまず、「採用の責任」と向き合ってほしいですね。

ミスマッチによって期待通りの結果が得られなかった場合でも、面接官や人事・採用担当者は「現場の指導方法が悪いのでは」「体制に問題があるのでは」と、採用後のプロセスへ責任転嫁しがちな傾向にありませんか?

面接官や人事・採用担当者は、現場のマネージャーとしっかりコミュニケーションを取れているでしょうか。どんな人がハイパフォーマーになり得るかを現場と一緒に分析し、共有できているでしょうか。

もちろん、そうした基準を持って面接・採用しても、望んだ通りの結果が得られないことはあると思います。だからこそ採用の責任を認識し、PDCAサイクルを回し、採用力を強化していくことが欠かせないと思うのです。採用のミスマッチは会社にとってのリスクであると同時に、採用候補者の人生も大きく左右するわけですから。

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取材後記

採用候補者にも自社にも大きな責任を持つ面接官という役割。その立場では、「選考書類や自己PRを盛るのは勘弁してほしい…」と思うのが正直なところかもしれません。一方では酒井氏が営業パーソンにたとえたように、採用候補者の立場になってみれば「できるだけ自分を良く見せたい」と考えるのは当然でしょう。まずは両者の間のギャップを事実として冷静に捉えることが大切なのではないでしょうか。人は、誇張するもの。その認識からスタートすることが、良い面接官になるためのトレーニングの第一歩だと感じました。

企画・編集/海野奈央(d’s JOURNAL編集部)、野村英之(プレスラボ)、取材・文/多田慎介