【弁護士監修】どこからセクハラ?事例や裁判例と共に職場で取り組むべき対策をご紹介【対策チェックシート付き】

2021.12.28

第一東京弁護士会労働法制委員会、日本CSR普及協会(雇用労働専門委員)、経営法曹会議等に所属。経営者側労働法を多く取り扱い、労働審判・労働訴訟等の係争案件、団体交渉(組合・労働委員会)、労災(行政・被災者対応)、労務DD対応を得意とする。
経営課題を抽出し、依頼者のニーズを踏まえたベストプラクティスの提案を心掛ける。
主著に『労働行政対応の法律実務』(中央経済社 共著)、『「働き方改革実行計画」を読む』(月刊人事労務実務のQ&A 2017年7月号 日本労務研究会 共著)など。

セクハラの定義について
どこからセクハラ?セクハラの判断基準とは?
セクハラで訴えられた裁判例とは?
職場のセクハラ問題を放置するリスクは?
会社が取り組むべきセクハラ対策とは?
セクハラの相談があったら行うべきこととは?

「相手の意に反する性的言動」を意味する、「セクハラ」。2020年の男女雇用機会均等法改正によりセクハラ防止対策が強化されたことを受け、セクハラ対策に乗り出そうとしている企業も少なくありません。「セクハラとは具体的にどのようなことなのか」「どこからがセクハラに該当するのか」などを知りたい担当者も多いでしょう。今回は、セクハラの定義や判断基準、企業として取り組むべき対策・対処法などについて紹介します。

セクハラの定義について

「セクハラ」とは、セクシャルハラスメントの略で、「相手の意に反する性的言動」を意味します。

セクハラという言葉が国内に登場してから既に30年あまりたっていますが、依然として、セクハラは社会問題として存在しています。そうした状況の中、2019年6月に、女性の職業生活における活躍の推進等に関する法律等の一部を改正する法律が公布。2020年6月に男女雇用機会均等法が改正され、セクハラ防止対策が強化されました。具体的には、「セクシュアルハラスメント等に関する国、事業主及び労働者の責務の明確化」や「事業主に相談等をした労働者に対する不利益取扱いの禁止」などが新たに定められています。セクハラ防止に向けた、企業としての責任が増してきていると言えるでしょう。
(参考:厚生労働省『女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年6月5日公布)の概要』)

男女雇用機会均等法におけるセクハラの定義

男女雇用機会均等法では、セクハラは「『職場』において⾏われる、『労働者』の意に反する『性的な⾔動』に対する労働者の対応により労働条件について不利益を受けたり、『性的な⾔動』により就業環境が害されること」と定義されています。

男女雇用機会均等法におけるセクハラの定義を正しく理解するためには、「職場」「労働者」「性的な言動」の意味を知っておく必要があります。
(参考:厚生労働省『事業主の皆さん 職場のセクシュアルハラスメント対策はあなたの義務です!!』『職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました︕セクシュアルハラスメント対策や妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策とともに対応をお願いします』)

「職場」とは

職場とは、事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所のこと。労働者が通常就業している場所以外であっても、労働者が業務を遂行する場所であれば「職場」に該当します。例として、会社や取引先の事務所、取引先との打ち合わせ・接待で使用する飲食店、顧客の自宅、取材先、出張先、業務で使用する車の中などが挙げられます。

また、勤務時間外の「宴会」などの席であっても、実質上職務の延長と考えられるものは「職場」に該当します。職務の延長かどうかは、「職務との関連性」や「参加者」「任意参加か強制参加か」といったことを考慮した上で、判断されます。

「労働者」とは

労働者とは、事業主が雇用する全ての労働者を指します。正規労働者のみならず、パートや契約社員といった非正規労働者も対象です。なお、派遣社員の場合には、派遣会社(派遣元)においてだけでなく、派遣社員を受け入れる会社(派遣先)においても派遣社員へのセクハラ防止対策を講じなければならないとされています。

「性的な言動」とは

性的な言動とは、「性的な内容の発言」および「性的な行動」のこと。「性的な内容の発言」の例としては、「性的な事実関係を尋ねる」「性的な内容の情報・うわさを流す」「性的な冗談・からかい」「食事やデートなどへの執拗(しつよう)な誘い」などが挙げられます。性的な行動には、「性的な関係を強要する」「必要なく⾝体を触る」「わいせつな図画を配布・掲示する」といった行動が該当します。

セクハラの行為者・被害者

セクハラの行為者(被害者に対して、セクハラを行う者)には、会社の「上司」や「同僚」のみならず、「取引先」や「派遣先」などの従業員、「顧客」などもなり得ます。

「セクハラ」というと、行為者が男性、被害者が女性というイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、実際には、男女とも、行為者にも被害者にもなり得ます。「異性」に対してだけでなく、「同性」に対して性的な言動が行われた場合にも、セクハラに該当します。同様に、被害者の「性的指向」や「性自認」にかかわらず、性的な言動であれば、セクハラに該当するとされています。

セクハラの種類について

厚生労働省では、セクハラの種類として「対価型セクハラ」「環境型セクハラ」の二つを挙げています。また、厚生労働省の資料では触れられていないものの、この他に、相手が自分に好意があると決め付けた上で性的な言動をする「妄想型セクハラ」や、異性に対して圧力をかける「制裁型セクハラ」といった表現が取られることもあります。

ここでは、「対価型セクハラ」と「環境型セクハラ」について、紹介します。
(参考:厚生労働省『事業主の皆さん 職場のセクシュアルハラスメント対策はあなたの義務です!!』)

「対価型セクハラ」と「環境型セクハラ」

対価型セクハラ

対価型セクハラとは、労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応(拒否や抵抗)により、「解雇」「降格」「減給」「労働契約の更新拒否」「昇進・昇格対象からの除外」「客観的に見て不利益な配置転換」などの不利益を受けることを指します。

対価型セクハラの典型的な例

・事務所内において事業主が労働者に対して性的な関係を要求したが、拒否されたため、その労働者を解雇
・出張中の車中において上司が労働者の腰、胸などに触ったが、抵抗されたため、その労働者について不利益な配置転換を実施。
・営業所内において事業主が日ごろから労働者にかかわる性的な事柄について公然と発言していたが、抗議されたため、その労働者を降格

環境型セクハラ

環境型セクハラとは、労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなり、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、就業する上で看過できない程度の支障が労働者に生じることを言います。

環境型セクハラの典型的な例

・上司が労働者へ何度も「彼女(または彼氏)はいないのか」「結婚はしないのか」と執拗に質問をすることに対して、労働者が苦痛に感じ就業意欲が低下
・同僚が労働者へ何度もみだらな話を持ち掛けてくることに対し、労働者が苦痛を感じて業務に専念できない

どこからセクハラ?セクハラの判断基準とは?

どこからがセクハラなのかについては、「この行為をしたら、セクハラになる」というような明確な基準はありません。性的な言動を受けた本人が「セクハラを受けた」と感じた場合には、セクハラとなります。

なお、セクシャルハラスメントの状況は多様なため、実際に「セクハラに該当するか」を判断する際には、個別の状況を考慮する必要があります。また、「労働者の意に反する性的な言動」および「就業環境を害される」かどうかを判断する際には、事業主のセクハラ防止措置義務の対象となることを考慮し、労働者の主観を重視しつつも、一定の客観性が必要とされます。厚生労働省の資料では、「労働者の意に反する性的な言動」および「就業環境を害される」かどうかの判断基準として、以下のような内容を示しています。

「労働者の意に反する性的な言動」および「就業環境を害される」かどうかの判断基準(一部抜粋)

・一般的には意に反する身体的接触によって強い精神的苦痛を被る場合には、一回でも就業環境を害することとなり得ます
・継続性または繰り返しが要件となるものであっても、「明確に抗議しているにもかかわらず放置された状態」または「心身に重大な影響を受けていることが明らかな場合」には、就業環境が害されていると判断し得ます
・男女の認識の違いにより生じている面があることを考慮すると、被害を受けた労働者が女性である場合には「平均的な女性労働者の感じ方」を基準とし、被害を受けた労働者が男性である場合には「平均的な男性労働者の感じ方」を基準とすることが適当です。

(参考:厚生労働省『事業主の皆さん 職場のセクシュアルハラスメント対策はあなたの義務です!!』)

セクハラの認定は難しく、個別の状況を考慮した上でセクハラと認定されるかどうかが決まるため、企業としては「どこからがセクハラなのか」という受け身の姿勢ではなく、社内研修などによりセクハラに該当する事例を適切に周知説明した上で、「社内で、セクハラと疑わしい性的な言動が起きていないか」という観点でセクハラ対策を進めていくことが望ましいでしょう。

セクハラで訴えられた裁判例とは?

どのようなセクハラが訴訟対象となるのでしょうか。セクハラの訴訟事例を紹介します。

女性従業員の異性関係が乱れているかのように非難し、退職に至らしめた事件

事件の概要

出版社の編集長が、社内外の関係者に対し、対立関係にある部下の女性従業員の異性関係が乱れているかのように非難。女性の評価を低下させ、退職に至らしめた事件。

判決の概要

編集長の行為が不法行為に当たると判断。「使用者は、労務遂行に関連して被用者の人格的尊厳を侵し、その労務提供に重大な支障をきたす事由が発生することを防ぎ、又はこれに適切に対処して、職場が被用者にとって働きやすい環境を保つよう、配慮する注意義務もあると解される」とした。編集長と原告の確執を認識していながら、原告が退職することで事態収拾することを是認した会社専務の行為も、注意義務に反するとし、編集長及び会社に対して、損害賠償として165万円の支払いを命じた。

セクハラ発言をした行為者に対する懲戒処分の有効性が争われた事件

事件の概要
※今回の事件の原告(セクハラ行為者)は2名。うち、原告2である「営業部課長代理」についてのみ説明

原告2である「営業部課長代理」は、同僚女性らに対して、「いくつになったん。」「もうそんな歳になったん。結婚もせんでこんな所で何してんの。親泣くで。」「30歳は、22、23歳の子から見たら、おばさんやで。」などとセクハラ発言を繰り返した。それを受け、会社は原告2を出勤停止10日の「懲戒処分」および「降格」に。会社が行った処分の有効性が争われた事件。

判決の概要

「懲戒処分」および「降格」は有効。原告2らの行為は、職場における同僚女性らに対する言動として極めて不適切なものであり、企業秩序や職場規律に及ぼした有害な影響は看過し難いものというべきである。原告2らに対する「懲戒処分」は、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合には該当せず、懲戒権の濫用に当たらないため、有効。「降格」については、会社の就業規則には降格事由の一つとして「懲戒処分」が規定されていることから人事権の濫用に当たらず、有効。

セクハラ行為をあおる言動などをしていた被害者らが、損害賠償を請求した事件

事件の概要

忘年会において、生命保険会社の上司3名は、部下である保険外交員の原告7名に対し、「抱きつく」「押し倒す」「顔をなめる」などのセクハラ行為を行った。一方で、原告の中には、セクハラ行為をあおったり、悪ふざけしたりしている者もいた。セクハラ行為によって生じた通院治療費・営業成績低下に伴う逸失利益・精神的苦痛に対する慰謝料の損害賠償および、セクハラ行為後の事後的対応により生じた精神的苦痛に対する損害賠償を、会社に対して求めた事件。

判決の概要

上司3名の行った行為は、原告である保険外交員の身体的自由、性的自由及び人格権を侵害するものとして、不法行為に当たるため、会社には損害賠償義務がある。ただし、原告の行為に落ち度があったことから、過失相殺の法理を類推適用し、損害賠償額を2割を限度に減ずる。(損害賠償額の減額
一方で、セクハラ行為発生後の会社の対応については、問題なく行われており、債務不履行はない。

職場のセクハラ問題を放置するリスクは?

「セクハラ」や「セクハラと疑わしい言動」は放置してはいけません。そうした言動を放置した場合、さまざまなリスクが生じる可能性があるためです。

職場の士気を低下させるリスク

セクハラは、被害者だけでなく、周囲で働くメンバーにも、大きな影響を与えます。たとえ、セクハラの当事者でなくても、セクハラを放置する会社の姿勢に落胆し、職場の士気が低下する可能性があります。士気の低下は、「生産性の低下」や「離職者の増加」にもつながり、企業の業績にも悪影響をもたらすでしょう。

被害者のメンタルヘルス疾患を招くリスク

長期間、セクハラが継続的に行われることにより、被害者のメンタルヘルス疾患を招く可能性があります。メンタルヘルス疾患の治療には長期間の休職が必要となるケースも少なくありません。業務量は変わらずに人員だけが減ってしまうと、特に小規模の企業にとっては、大きな痛手となるでしょう。休職中も社会保険料は免除されず、通常どおり社会保険料の会社負担が発生することも、リスクの一つに挙げられます。

男女雇用機会均等法の制裁を受けるリスク

男女雇用機会均等法では、企業がセクハラ対策のために「雇用管理上講ずべき措置」を定めています。必要な措置を実施していないと判断された場合、男女雇用機会均等法第29条に基づき、厚生労働大臣または都道府県労働局長から「報告」を求められたり、「助言」「指導」「勧告」を受けたりすることがあります。なお、勧告に従わなかった場合には、男女雇用機会均等法第30条により、企業名が公表されることもあるため、注意が必要です。

損害賠償リスク

重大性・悪質性の高いセクハラが行われた場合、民法第709条に基づき、行為者は「不法行為」に対する損害賠償責任を負います。また、重大性・悪質性の高いセクハラに対する必要な措置を企業が講じていなかった場合には、民法715条に基づき、企業が「使用者責任」に対する損害賠償責任を負う可能性があります。実際、過去の裁判では、高額の損害賠償を加害者・企業が負担することになったケースもあります。

企業イメージの低下リスク

損害賠償請求を求める裁判が行われたり、新聞・テレビなどのメディアなどでセクハラ事件が報道されたりした場合には、企業イメージの低下が懸念されます。企業に対する社会的信頼が失墜し、「商品・サービスが売れなくなる」「取引先から、取引の中止を求められる」「求人を募集しても、人が集まらなくなる」といったことが起こる可能性があります。

こうした、さまざまなリスクを避けるためにも、セクハラやそれと疑わしい言動が発覚した場合には、直ちに対応を検討・実施しましょう。

会社が取り組むべきセクハラ対策とは?

セクハラ防止のため、男女雇用機会均等法において企業に求められている「雇用管理上講ずべき措置」について、厚生労働省では「10項目」からなる指針を示しています。厚生労働省の指針を基に、セクハラ防止に向け、企業として「何に」「どのように」取り組むべきかを紹介します。
(参考:厚生労働省『事業主の皆さん 職場のセクシュアルハラスメント対策はあなたの義務です!!』『職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました︕セクシュアルハラスメント対策や妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策とともに対応をお願いします』)

職場におけるハラスメントを防止するために講ずべき措置

事業主の方針の明確化およびその周知・啓発

まず行う必要があるのが、事業主の方針の明確化およびその周知・啓発です。そのためには、「①セクハラの内容、あってはならない旨の方針の明確化と周知・啓発」「②行為者への厳正な対処方針、内容の規定化と周知・啓発」を行う必要があります。具体的には「就業規則にセクハラの内容やその禁止について規定し、全従業員に配布する」「就業規則にセクハラ行為者への懲戒規定を定め、全従業員に配布する」といったことをするとよいでしょう。
また、経営者や役員がセクハラに対して厳正に対処する旨の意向を表明し、企業風土や従業員の意識を改革することも非常に有効です。

相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

セクハラ防止のためには、相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備も必要です。「③相談窓口の設置と周知」「④相談に対する適切な対応」を実施しましょう。具体的には、「相談室を設置し、相談に対応する担当者をあらかじめ定める」「相談の内容や状況に応じて、相談窓口の担当者と人事部門とが連携を図ることができる仕組みを構築する」といったことが挙げられます。

職場におけるセクシャルハラスメントに関わる事後の適切な対応

セクハラ防止のためには、職場におけるセクシャルハラスメントに関わる事後の適切な対応も必要です。「⑤事実関係の迅速かつ正確な確認」「⑥被害者に対する適正な配慮の措置の実施」「⑦行為者に対する適正な措置の実施」「⑧再発防止措置の実施」を行いましょう。具体的には、「相談窓口の担当者が事実関係を確認する」「被害者と行為者を引き離すために人事上の配慮をする」「就業規則に基づき、行為者に対して一定の制裁を科す」「セクハラに関する意識啓発のための研修・講習を改めて実施する」といったことが挙げられます。

上記の措置と併せて講ずべき措置

上記8つの措置と併せて、「⑨当事者等のプライバシー保護のための措置の実施と周知」や「⑩相談、協力等を理由に不利益な取扱いを行ってはならない旨の定めと周知・啓発」も必要です。具体的には、「相談者・行為者のプライバシーや名誉を尊重し、知り得た事実の秘密の厳守を徹底する」「就業規則に、相談したことや事実確認に協力したことなどを理由とする解雇などの不利益取り扱いがない旨を規定し、従業員に周知・啓発する」といったことを実施するとよいでしょう。

これら「雇用管理上講ずべき措置」を確実に実施できているかどうか確認するためには、チェックリストの活用をおすすめします。「雇用管理上講ずべき措置」のチェックリストは、こちらからダウンロードできます。

セクハラの相談があったら行うべきこととは?

セクハラ防止策を講じていても、セクハラ問題は発生する可能性があります。セクハラ問題が発生したときの企業の対応について、紹介します。

相談があった際に行うこと

社内の相談窓口に、セクハラに関する相談が寄せられた場合には、まずは相談者の話をじっくり聞いた上で、事実関係を確認します。

相談者の話を聞く際に意識すること

従業員の本音を引き出せるよう、プライバシーの確保ができる部屋を用意します。秘密が守られることを伝えた上で、ゆっくりと時間をかけて、相談者の話を傾聴することが重要です。心身に重大な支障を来している可能性がある場合には、産業医に協力を仰ぎましょう。

事実関係を確認する際に意識すること

セクハラの相談者とセクハラ行為を行ったとされる相手との間に、認識のずれがあるケースもあります。そのため、まず必要となるのが、セクハラ行為を行ったとされる相手への事実確認です。相談者の了解を得た上で、事実確認を進めましょう。その際は、「中立的な立場で話を聞くこと」を意識する必要があります。相談者とセクハラ行為を行ったとされる相手の意見に相違が見られた場合には、現場に同席した人や行為を目撃した人など、第三者に事実確認を行います。守秘義務について十分に伝えた上で、事実確認に協力してもらいましょう。その上で、相談者とセクハラ行為を行ったとされる相手、第三者の意見を総合的に判断し、事実関係を見極めます。

セクハラを行った社員への対応方法について

事実関係を把握したら、就業規則の規定を確認した上で、企業としての対応方法を考えましょう。取るべき措置として、セクハラ行為を行ったとされる相手への注意・指導、相談者への謝罪、人事異動、懲戒処分などが挙げられます。ここでは、「懲戒処分」や「解雇処分」の判断基準の一例を紹介しますが、判断に迷う場合には、顧問弁護士や社会保険労務士などに相談するとよいでしょう。
(参考:『【弁護士監修】懲戒処分とは?種類と基準―どんなときに、どんな処分をすればいいのか―』)

懲戒処分まで行うかどうか

就業規則の規定を確認した上で、「戒告」「減給」「降格」といった懲戒処分を行うかどうかを検討します。以下のような基準で、「懲戒処分とするかどうか」や「どの懲戒処分とするか」などを考えましょう。

懲戒処分の判断基準の例

・セクハラの具体的な内容
・セクハラを行った回数
・被害者の受けた被害の程度
・セクハラに至った経緯
・行為者と被害者の職場における地位や関係性
・業務への影響
・行為者の反省する姿勢や、被害者への謝罪の有無 など

解雇処分まで行うかどうか

「諭旨解雇」や「懲戒解雇」といった解雇処分まで行うかどうかは、セクハラの「悪質性」や「継続性」をもとに、総合的に判断するとよいでしょう。

解雇処分の判断基準の例

・「強姦(ごうかん)」や「強制わいせつ」といった犯罪行為が行われていた場合
・執拗な身体的接触を、日常的に繰り返していた場合
・セクハラ発言を何度も繰り返していた場合 など

再発防止に向けて取り組むべきこととは

社内で二度とセクハラ問題が起きないように、再発防止策を考えることも重要です。「行為者が同様の問題を起こす可能性」や「別の従業員がセクハラ問題を起こす可能性」を排除できるような、再発防止策を実施するとよいでしょう。具体的には、「行為者に対し、継続的なフォローアップを行う」「全社的に、セクハラ防止を目的とした研修・教育を実施する」「社内報やパンフレットで、セクハラ防止を啓蒙する」「経営者のメッセージを伝える」といったことが挙げられます。

万が一、セクハラ問題が起きた際には、上記の一連の対応を「速やかに」かつ「確実」に実行することが重要です。対応が不十分な場合、セクハラ問題が解決しないだけではなく、被害者の「セクハラ行為者への怒り」や「会社への不信感」を増幅させる結果につながることもあります。適切な措置を怠ったことにより、法的責任を問われることのないよう、万が一の場合に備え、事前に対応マニュアルなどを策定しておくとよいでしょう。

まとめ

セクハラを放置すると、「職場の士気の低下」や「損害賠償」など、さまざまなリスクが発生する可能性があります。そうしたリスクを避けるためにも、セクハラ防止のために企業に求められている10項目の「雇用管理上講ずべき措置」を、確実に実行しましょう。併せて、セクハラ問題が起こった場合の対応や、セクハラ再発防止策などを事前に策定しておくことも重要です。必要な措置・対応を確実に実施し、セクハラのない、従業員にとって安心して働ける職場をつくりましょう。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、監修協力/弁護士 藥師寺正典、編集/d’s JOURNAL編集部)

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