【テンプレあり】採用通知書とは|書き方や送付方法・法的効力を解説

d’s JOURNAL編集部

採用通知書を交付することで、企業は応募者に対して採用の意思を示すことになります。しかし、人事・採用担当者のなかには、採用通知書と内定通知書の違いがよくわからないという方もいるでしょう。

採用通知書は交付することで法的な効力を持つものであるため、取り扱いは慎重に行うべきものだといえます。

この記事では、採用通知書とその他の書類との違いや具体的な書き方、作成時の注意点などを詳しく解説します。

採用通知書とは


採用通知書とは、企業側が応募者に対して採用の意思を示した書面のことを指します。採用通知書を交付する目的を理解したうえで、その他の書類との違いを把握しておきましょう。

労働者と取り交わす書類については、採用通知書の他にも以下のようにさまざまな書類があります。

・内定通知書
・雇用契約書、労働契約書
・労働条件通知書
・採用証明書

それぞれの書類と採用通知書がどのように違うのかを解説します。

採用通知書を交付する目的

採用通知書を交付する目的は、応募者からの申し込みを企業側が承諾して、採用が決定したことを応募者に正確に伝えることです。労働基準法における取り扱いとしては、労働契約を締結する際に、「書面による労働条件の明示」については企業側に義務付けられていますが、採用通知書の交付は必ずしも法律上求められているわけではありません。

しかし、企業側と応募者側の認識のずれが起こるのを防ぐために、書面によって採用通知書を交付するほうが無用なトラブルを回避できるでしょう。採用通知書を交付することによって、応募者の入社の意思をきちんと確認することが大切です。

内定通知書との違い

採用通知書と似たような書類に、内定通知書があります。内定通知書は、企業が応募者に対して内定の意思を示した書類です。

内定とは、企業と応募者との間で労働契約に関する合意がなされた状態のことを指します。企業によって採用通知書と内定通知書を区別しているところもあれば、採用内定通知書として交付しているところもあります。

なお、内定の通知は新卒採用の場合であれば、「卒業・修了年度の10月1日以降 」と定められている点に注意しましょう。

雇用契約書・労働契約書との違い

雇用契約書や労働契約書は、民法・労働契約法で定められている事項を書面化した書類です。2つの書類は基本的に、企業と従業員との間で合意した労働条件が明記されています。

採用通知書が応募者の採用を決定し、労働契約を締結する意思を示す書類であるのに対して、雇用契約書や労働契約書は具体的な労働条件を示すために交付する書類だといえます。つまり、採用通知書や内定通知書を交付した後に、雇用契約書や労働契約書を交わすことになります。

労働条件通知書との違い

労働条件通知書は、労働基準法第15条1項によって定められている「労働条件の明示義務」を企業側が果たすために交付する書類です。

労働条件の明示
第15条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
引用:e-GOV「労働基準法 」

上記のように、労働条件通知書は法律上明示しなければならない事項(賃金・労働時間・契約期間・就業場所など)を明らかにするための書類だといえます。ただし、労働条件通知書は、採用通知書や雇用契約書・労働契約書と兼ねて、交付することもできます。

書類を兼用する場合には、労働条件通知書で記載すべき事項を漏れなく盛り込んで、労働者からの署名・押印をもらい、内容に合意があることを示す必要があります。

採用証明書との違い

採用証明書は、失業者が再就職したことを第三者に対して証明するための書類であり、採用通知書とは交付対象や目的が異なります。採用証明書が必要になる場面は、失業保険の受給停止や再就職手当を受給するときなどです。

ハローワークに提出が必要な際に交付するものであり、申請があったときに交付する書類となります。これまで解説したように、労務関係の書類は目的に応じて交付するものが異なるため、どのような場面でなんの書類が必要になるのかをしっかりと把握しておきましょう。

採用通知書の法的効力(取り消し可否について)


採用プロセスにおいて交付する書面の名称や内容は企業によって異なりますが、採用通知書は「採用プロセスにおいて企業から応募者へ採用決定を通知するための書面」と解されることが一般的です。

つまり、応募者による労働契約の申し込みに対して、企業が採用通知書を交付することにより、労働契約が成立することを意味するものと解されます。

一方で、「内定」は労働契約法第6条に定められている「労働契約の成立」に該当し、企業と応募者との間には「始期付解約権留保付労働契約」(契約の開始時期が決定しており、内定取り消し事由に基づく労働契約の解約権が企業に留保されていること)が成立すると解釈されています。

内定取消は既に成立した労働契約の解約となり、解雇に相当するため、正当な理由のない解約は解雇権の濫用に当たり、無効となります。

以上のことから、「採用通知書を交付している場合」「内定通知書を交付している場合」「採用内定通知書を交付している(採用通知書と内定通知書を兼用している)場合」などは、法的な拘束力があると判断される可能性が高く、取り消しは難しいでしょう。

ただし、具体的にいつのタイミングで労働契約が成立しているといえるかは、専門家でも評価が分かれ得る難しい判断を伴うので、労働契約の成立が問題になるようなケースでは、弁護士などの専門家に相談して対応を検討することをおすすめします。

なお、採用内定通知書や誓約書に内定取消の事由が記載されている他、企業と労働者との間で取消事由について合意があり、取消事由の内容が合理的といえる場合は、取消事由の存在を理由として内定を取り消すことが可能です。

内定取消事由として考えられる事由には、「学校を卒業できなかった場合」「履歴書や誓約書などに重大な虚偽記載がある場合」などが挙げられます。

(参考:日本労働組合総連合会『労働相談 』

不採用通知書の扱い


不 採用通知書は、書類選考や面接などの結果から、応募者に対して不採用を伝えるための書類ですが、伝えられる側にとってはあまりポジティブなものではありません。内容次第では、企業イメージを損なってしまう場合もあるので注意が必要です。

そのため、不採用通知書を作成するときは、できるだけ不採用によって生じるマイナスイメージを減らす努力を行うことが大切になります。結果としては不採用であっても、自社に応募をしてくれたことや時間を割いて面接に来てくれたことに対する感謝の気持ちを伝えることが大事です。

ただし、不採用理由については基本的に明示する必要はなく、選考結果のみを伝えれば問題ありません。応募者から不採用理由について尋ねられた際も、誠実に対応したうえで他の応募者にも開示していない旨を伝えるようにしましょう。

不採用通知書について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。

(参考:『【文例付】不採用通知の書き方完全版。不採用理由の伝え方や今後につながる応募者対応 』)

採用通知書を交付する際に気をつけるポイント


採用通知書を交付する際は、事前にいくつかの点で注意しておくべきポイントがあります。気をつけておきたい点としては、以下の点があげられます。

・採用通知書はできるだけ早めに送付する
・追跡サービスのある郵送方法を選択する
・メールでの送付も可能
・押印は行うほうが無難

各ポイントについて、詳しく見ていきましょう。

採用通知書はできるだけ早めに送付する

採用通知書の交付が遅くなってしまうと、応募者の入社意欲が低下してしまう恐れがあるので、採用を決定した段階で速やかに送付するようにしましょう。応募者は自社だけの選考を受けているとはかぎらないため、他社からの採用通知書を先に受け取ってしまう場合もあります。

応募者の心境からすれば、先に採用通知書が届いたほうを優先して考えたいという気持ちが働く部分もあるでしょう。内定辞退を防ぐためにも、採用通知書は早めに送るのが基本です。

追跡サービスのある郵送方法を選択する

採用通知書は、企業・応募者にとって重要な書類ですが、普通郵便で送付をすると他の郵便物と紛れてしまい、応募者に確認されないケースもあります。そのため、採用通知書を送るときは、書留郵便など追跡サービスのある郵送方法を使って送るようにしましょう。

また、採用通知書は信書 で郵送することが法律で定められているため、メール便などで送らないように気をつけましょう。郵送に関するルールをあらかじめ定めて、応募者によって対応が異ならないように注意してください。

メールでの送付も可能

採用通知書は、メールにデータを添付する形で送付することも可能です。複数の採用者がいる場合には、事務作業の簡素化のためにメールでの通知を検討してみましょう。

ただし、より丁寧な対応を心がけるのであれば、メールや電話で連絡をしたうえで書面での郵送も行ったほうがよいでしょう。状況に応じて柔軟に対応してみてください。

押印は行うほうが無難

採用通知書に企業側の押印がなかったとしても書類としては有効ですが、迷う場合は押印を行っておいたほうが無難です。特に、応募者に対して署名・押印を求める場合には、一般的なマナーとして押印をしておくのがよいでしょう。

また、企業側の押印があることで正式に発行した書類であることの証明になり、悪用される懸念などを避けられるはずです。

採用通知書のテンプレートをダウンロード


採用通知書はテンプレートを活用すると、スムーズに作成できます。多数の書類を作成する必要があるときには、ミスを無くすためにも事前に定められた書式を用いて作成するほうが無難です。

一定の書式を使うことで、確認作業も効率良く行えるでしょう。テンプレートは、こちらからダウンロードいただけますので、ぜひご活用ください。

採用通知書の書き方


採用通知書は企業が独自に交付するものであるため、決まった書式はありません。しかし、記載しておきたい項目などは決まっているので、基本的なポイントを押さえておくことが大切です。

ここでは、採用通知書に盛り込んでおくべき項目や送付する際に同封する書類について解説します。

採用通知書に記載する項目

採用通知書に記載しておきたい項目として、次のものが挙げられます。

・日付
・応募者の氏名
・社名
・代表取締役の氏名
・採用試験への応募のお礼
・採用決定のお知らせ
・提出書類の内容
・提出期限
・担当者、連絡先

特に書類に対する回答の提出期限などは、きちんと明記しておきましょう。採用通知書について不明な点があれば、いつでも質問してもらえるように、問い合わせ先の連絡先や担当者名なども記載しておくとよいといえます。

採用通知書の同封書類

採用通知書に同封する書類としては、添え状・内定通知書・雇用契約書・返信用封筒などが挙げられます。複数の書類を同時に送る場合には、添え状に送付した書類の名称を記載して、同封漏れがないかを確認してもらいましょう。

また、書類を受け取る側の負担を減らすために、内定通知書や雇用契約書も同封するほうが何度も送付する手間が省けます。そして、返信用封筒を同封しておけば、誤った住所に送付されるといった手違いを防ぐことができるでしょう。

まとめ

採用通知書は、企業が応募者に対して採用の意思を示すために交付する書類です。法的な効力を持つ書類であるため、応募者に正しく内容が伝わるように、書面で伝えるようにするほうが無難だといえます。

採用通知書に盛り込むべき内容や同封書類などをチェックしたうえで、漏れがないように書類の送付を行ってみましょう。また、テンプレートを活用して、採用通知書の送付に関する事務作業の負担を軽減することも大切です。

(制作協力/株式会社アクロスソリューションズ、編集/d’s JOURNAL編集部)

【Word版】採用通知書

資料をダウンロード