【チェックリスト付】選考・入社時に提出させてはいけないNG書類【弁護士監修】

西脇法律事務所(第二東京弁護士会所属)

西脇 威夫(にしわき たけお)弁護士【監修・寄稿】

企業法務中心。英語による対応が可能。ナイキジャパンでは、法務部長として企業内弁護士の経験もあり、労働問題や契約関連も当事者として処理。また、国内の取引に加え、日本企業の海外企業との取引、海外企業の日本への進出なども得意とする。お客様は、流通、アパレル、医薬、不動産、ITシステム会社、ジュエリーブランド、ファッションブランド、不動産、化粧品、薬品、病院、飲食店チェーン、イラストレーター、写真家、総合型地域スポーツクラブ(NPO法人、一般社団法人、一般財団法人その他)など、多岐に渡る。特長のある分野としては、自身が体育会出身の経緯から、プロスポーツ選手代理人、スポーツ事故訴訟、スポーツイベント、スポーツクラブにおけるリスクマネジメントに関するアドバイスも行う。また、化粧品会社の仕事も多く行っている。

面接・選考時に“提出させてはいけない書類”と“聞いてはいけない内容”
面接・選考時の注意点 ~公正な採用選考チェックポイントとは~
面接・選考時に提出してもらうべき書類とは?
雇用時に提出させてはいけない書類とは?

人事・採用担当者として、採用に携わった人が長期的に活躍してくれることはやりがいのひとつ。長期的に活躍してほしいからこそ自社とのマッチングを考えますし、その人の身元を知りたいが故、たくさんの書類を求めたくなるかもしれません。しかし、職業安定法(職安法)では、必要以上の個人情報の収集は禁止とされているため注意が必要です。そこで今回は、面接・選考時の提出書類にフォーカスし、法的な観点から注意しておくべき点をご紹介します。

面接・選考時に“提出させてはいけない書類”と“聞いてはいけない内容”

公正な採用選考を行うための基本的な考え方として、「応募者の基本的人権を尊重すること」「応募者の適性・能力のみを基準選考とすること」の2つを意識しておくことが大切です。また職業安定法においても、社会的差別の原因となるおそれのある個人情報の収集は禁止とされているため、面接時に家族に関することや生活環境、思想など、本人の適性や能力とは関係のない情報について質問することは法律違反となります(意図せず法律違反に…。面接で聞いてはいけないこと【弁護士監修】参照)。
これらは面接時の質問だけに適用されるわけではありません。例えば、エントリーシートや職務経歴書、提出課題などに本籍地や思想を記載してもらうことは禁止されています。また戸籍謄本や住民票を提出してもらうことも同様です。そのほか、身元調査や合理的に適正・能力の判断に必要性が認められない採用選考時の健康診断も違法と判断されますので、関連書類の提出に関しても注意が必要です。

面接・選考時の注意点 ~公正な採用選考チェックポイントとは~

自社の採用において、公正な選考ができているのか――。提出書類や質問の内容について、気になったとしても法律の条文からあたるのは、なかなか大変な作業です。この点については厚生労働省が作成しているチェックリストを参考にするとよいでしょう。下記16項目のうち、ひとつでも「B」に該当するものがあれば、法律違反となる可能性があります。もし該当の項目があった場合にはただちに運用の見直しが必要です。

公正な採用選考チェックポイント

No. チェックリスト A B
1 高卒予定者用の応募用紙は、全国高等学校統一応募用紙のみとしている。 はい いいえ
2 応募用紙(エントリーシートを含む)に、本籍の記入欄がある。 いいえ はい
3 応募用紙(エントリーシートを含む)に、家族構成・家族の職業の記入欄がある。 いいえ はい
4 応募者から戸籍謄(抄)本・住民票の写しを提出させている。 いいえ はい
5 応募者に現住所の略図を書かせている。 いいえ はい
6 応募者から、一律に健康診断書を提出させている。 いいえ はい
7 学科試験を行う場合、職務遂行に必要な適性・能力をもっているかどうかを判断するための内容としている。 はい いいえ
8 作文を行う場合、「私の生い立ち」や「私の家庭」等の本人の家庭環境や本人の思想・信条を確認するテーマとしている。 いいえ はい
9 適性検査を行う場合、専門的知識のある人が実施するようにし、結果を絶対視したりうのみにしていない。 はい いいえ
10 面接の実施に先だって、職務遂行のために必要となる適性・能力を評価する観点から、あらかじめ質問項目や評価基準を決めている。 はい いいえ
11 面接において、本人が生まれたところや家族構成・家族の職業などを尋ねることがある。 いいえ はい
12 面接において、人生観・生活信条・尊敬する人・愛読書などを尋ねることがある。 いいえ はい
13 面接は、応募者の基本的人権を尊重する姿勢、応募者の潜在的な可能性を見いだす姿勢で臨んでいる。 はい いいえ
14 面接は、応募者に対するできるだけ客観的かつ公平な評価を行うようにしている。 はい いいえ
15 家庭状況等の身元調査を実施している。 いいえ はい
16 内定者から、戸籍謄(抄)本等を一律に提出させている。 いいえ はい
※厚生労働省『公正な採用選考チェックポイント』より
※本チェックリストは提出書類に限らず、公正な採用選考を行うための確認すべき項目となっています。
11、12など面接で聞いてはいけないことを記載していますが、提出書類の中に記載させることも禁止です。

 

面接・選考時に提出してもらうべき書類とは?

書類
応募時に提出してもらう書類として、一般的に考えられるのは履歴書や職務経歴書の2つです。では、それ以外に提出してもらったほうがよい書類はないのでしょうか。法律的な観点からいうと、保有資格、転職歴、年収水増しといった経歴詐称を防ぐために書類の提出を求めるという方法があります。下記が一例となりますので、採用後のトラブルを防ぐためにも事前に提出を求めてみるとよいでしょう。

■経歴詐称対策で有効な書類
・保有資格:資格証明書など・転職歴:年金手帳、雇用保険の被保険者証など
・年収水増し:課税証明書、源泉徴収票

雇用時に提出させてはいけない書類とは?

面接・選考時以外に書類の提出を求める機会として挙げられるのが雇用契約のタイミングです。では雇用契約時に提出させてはいけない書類はあるのでしょうか。

実は雇用契約をする際に、求職者から提出させてはいけない書類というのは明確には定義されていません。したがって、求職者が自ら提出してきた書面などに本籍が記載されていても違法ではありません(保管については、もちろん注意が必要で、この点はまた別の配慮が必要になります)。しかし、面接・選考時に個人情報を取得することを制限しているのは、憲法で保障されている基本的人権を守るためという側面があります。雇用契約を締結する場合であっても、適性・能力とは関係ない事柄については必要以上に情報を収集しないことが求められるでしょう。

また雇用契約を締結する際に、銀行の通帳や印鑑、パスポートを提出させる会社もあります。これは通帳やパスポートを会社に保管されていることで、労働者が退職できなくなるという事情を生むため違法であると言えます。(神戸地裁姫路支部 H9.12.3)

(参考)提出可否一覧

提出OK|本人の適性や能力に関わる情報
・履歴書  ・職務経歴書  ・資格証明書  ・源泉徴収票  ・年金手帳
提出NG|本人の適性や能力と関係のない情報
・戸籍謄本  ・住民票  ・家庭環境や思想をテーマとした課題  ・健康診断書(合理的に必要性が認められない場合)
※雇用時は法律上の定義なし

【まとめ】

転職希望者の長期的な活躍を願うがゆえに、採用選考が慎重になり、必要以上に多くの情報を集めたくなる――。同じように考えてしまう人事・採用担当者もの多いではないでしょうか。採用選考段階で情報を集めることは非常に重要ではありますが、禁止されている質問や提出書類に関しての法的知識を持っておかないと、採用活動のレピュテーションに大きな影響を及ぼしてしまう可能性があります。必要な法律を理解したうえで、提出書類一覧やヒアリングシートを整備するなど仕組み化をしておくことが重要であると言えるでしょう。

【弁護士監修|法律マニュアル】
01. 試用期間の解雇は可能?本採用を見送る場合の注意点とは
02. 入社直後の無断欠勤!連絡が取れなくなった社員の対処法
03.途中で変更可能?求人票に記載した給与額を下げたい場合
04.試用期間中に残業のお願いは可能?残業代の支払いは?
05.炎上してからでは遅い!採用でSNSを使う際の注意点
06.求人票に最低限必要な項目と記載してはいけない項目
07.採用後に経歴詐称が発覚した場合の対応法。解雇は可能?
08.意図せず法律違反に…。面接で聞いてはいけないこと
09.身元保証とは?採用における意味と意義、企業が活用する方法について
10.根拠のない噂で会社の評判が…。人事が知っておくべき風評被害対策とは
11.【チェックリスト付】選考・入社時に提出させてはいけないNG書類
12.裁判でも使われる、採用面接時に応募者の嘘を見抜く方法
13.2018年問題はどう対応すべきか?派遣社員や契約社員への影響は?
14.働き方改革法施行でいつ何が変わる?企業が注意すべきことを簡単解説