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企業と応募者の双方が、お互いの理解を深めるために気軽に情報交換する場である「カジュアル面談」。
通常の採用面接のように求職者に対して一方的に質問するのではなく、お互いに質問をし合うという双方向のコミュニケーションが企業には求められます。
この記事では、カジュアル面談の概要や導入メリット、会話の流れ、実施する際の注意事項などを紹介します。カジュアル面談時に活用できる質問集もダウンロードできますので、ご活用ください。
カジュアル面談とは、企業と応募者がお互いをよく知るために、気軽に対等な立場で話し合うことです。選考の前段階として、基本的に人事・採用担当者と応募者の1対1で行います。あくまでお互いの情報交換が目的のため、カジュアル面談では企業は合否を決定しません。
また、カジュアル面談は就職・転職の意思が固まっていない求職者に対して、企業側がリアルな情報を提供し、選考に進んでもらうためのアピールの場でもあります。
人材確保が難しい現在の採用市場では、企業側からのアプローチが必要になってきていることを背景に、カジュアル面談が注目されています。
カジュアル面談と採用面接とではどのような違いがあるのでしょうか。以下では3つの違いを紹介します。
カジュアル面談と採用面接では、そもそも目的が違います。採用面接の一番の目的が「合否を決めること」であるのに対し、カジュアル面談の目的は「お互いの理解を深めること」です。
カジュアル面談は、あくまで選考に進んでもらう前のコミュニケーションの場であるため、合否には関係ありません。
カジュアル面談は選考が目的ではないため、履歴書や職務経歴書の提出を求めないケースが一般的です。書類提出が必要だと企業側が判断した際は、書類を準備してもらうよう事前に応募者に伝えておきましょう。
応募者にリラックスした状態で対話してもらえるよう、カジュアル面談では、「スーツ着用」というような服装の指定をしないケースが多いです。ただ、企業によってはカジュアル推奨とするケースもあるようです。
企業がカジュアル面談を取り入れることで、どのような効果が期待できるのでしょうか。カジュアル面談により期待できる2つの効果について紹介します。
カジュアル面談の最大のメリットは、就職・転職の意向が固まっていない就職・転職潜在層の人材と接点が持てることです。「新卒で採用内定をもらっているが、他に良い企業があれば選考を受けよう」「今の会社に大きな不満はないが、より良い条件の企業があれば転職しよう」と考えている人もいるでしょう。
カジュアル面談という形であれば、こうした就職・転職潜在層とも接点が持てるため、採用活動においてより多くの人たちにアプローチをかけられるようになります。
また、カジュアル面談は企業のアピールの場でもあります。企業の魅力や今後の方針などを就職・転職潜在層に訴えかけ、企業のファンになってもらうことで、就職・転職潜在層が将来的に転職を考えた際、真っ先に自社が転職先候補に上がる効果も期待できるでしょう。
カジュアル面談では、応募者と企業の双方で情報交換を行い、自社の事業内容やビジョン、業務について直接伝えることができます。そのため、求人サイトや企業サイトだけではわかりにくい社内の雰囲気も伝えやすく、ミスマッチを防ぎやすくなるのもメリットと言えます。
また、自社への興味・関心が高まった状態で応募してもらえることから、選考辞退の防止にも有効です。
カジュアル面談は、「ダイレクト・ソーシング」や「リファラル採用」と相性が良いとされます。これらの採用手法において、カジュアル面談がどのように活用されているかを解説します。
ダイレクト・ソーシングとは、企業の人事・採用担当者が自ら採用候補者を探し、直接スカウトする採用手法のこと。従来の「待つ」採用方法とは異なり、企業側から採用候補者にアプローチするため、興味を持ってもらえるように自社や求人の魅力を伝える努力が求められます。
企業側からアプローチするため、アプローチした時点での採用候補者の企業理解は浅く、志望度も低い状態です。採用に向けて、まずは自社の魅力を伝えて志望度を上げる必要があるため、その最初のステップとしてカジュアル面談が活用されています。
(参考:『自社に最適な人材採用を。ダイレクト・ソーシングの活用方法』)
リファラル採用とは、自社の社員から友人や知人を候補者として紹介してもらう採用手法のこと。「企業の採用活動における母集団形成」や「組織の強化」を目的としており、求める能力やスキルが候補者に備わっているかを見極めた上で採用するのが特徴です。
社員を通して「潜在的な転職意識のある人材」「現在は転職の意向がない人材」にも声をかけることができますが、将来転職を考えた際に自社の選考を受けてもらうためには、企業側からのアプローチが欠かせません。お互いの理解を深め、応募につなげるために、リファラル採用でもカジュアル面談が活用されています。
(参考:『リファラル採用とは|メリット・デメリットや導入方法と成功事例を紹介』)
カジュアル面談は応募の前段階に当たるため、企業側が主導して会話するのが一般的です。スムーズな対話となるよう、カジュアル面談での会話の流れを紹介します。
カジュアル面談で応募者の本音を引き出すには、開始時に緊張を和らげ、話しやすい雰囲気をつくることが重要です。まずはアイスブレイクを兼ねて、自己紹介をすることから始めましょう。双方向コミュニケーションの取れた自己紹介は親近感を抱くきっかけとなり、応募者のパーソナリティーを知ることにもつながります。
また、お互いに緊張している状態や採用担当者のパーソナルな部分が見えない状況では、応募者も自己開示できません。自己紹介の際は部署名や名前だけではなく、出身地や趣味など仕事とは関わりのないことも紹介するとよいでしょう。
(参考:『【面接官必見!】知らないと失敗しちゃうかも?有意義な面接のためのアイスブレイクとは~質問例付き~』)
自己紹介が終わったら、面談を実施する目的を共有します。応募者がカジュアル面談に慣れていない場合、「この面談は選考の一部ではないか」と不安に思い、聞きたいことを話せなくなる可能性があります。
応募者の緊張や不安を取り除くため、話に入る前に改めて「合否とは関係のない面談であること」を伝えましょう。加えて、相互理解が目的であることを伝え、「当社のこともよく知ってもらいたい」と一言添えるのも有効です。
次に、応募者の「就職活動の軸」や「現在の状態」を確認します。併せて、自社についてどのようなことを聞きたいか「応募者の知りたい情報のニーズ」をヒアリングすることも重要です。
「このカジュアル面談でどのようなことが聞けると期待していましたか」「自社に対してどのようなイメージがありますか」といった確認をしっかりすることで、応募者とのギャップも解消できるでしょう。
続いて、ニーズ確認で得た情報を基に企業説明をしていきましょう。応募者が知りたい情報は、企業風土や事業展開、働き方、仕事内容など多岐にわたります。応募者ごとにどのような情報が最も効果的か、応募者の反応を見ながら柔軟に話を展開させるのがポイントです。
また、途中で「ここまでで何かご不明な点はありますか」と確認を挟んだり、事業規模や最新トピックに関するクイズを盛り込んだりすると、一方的な企業説明という印象を与えず、「面談らしさ」を演出できます。現場社員が同席する場合は、実際に働いている様子がわかるエピソードや職場環境などを積極的に話してもらうのも良いでしょう。
その際に、「どのような人材が活躍しているか」「自社が大切にしている価値観」を伝えられると、ミスマッチの防止にもつながります。
双方の情報交換が終わった後、最後に質疑応答の時間を設けます。「他に聞きたいことや気になることはありますか」と聞き、応募者からの質問に答えていきましょう。
なお、企業への関心が最も高いのは面談後のため、「ぜひ採用したい」と感じた応募者にはその思いを伝え、その場で選考について案内することをおすすめします。時間が経つにつれ自社への興味・関心は薄れてしまうため、遅くとも当日中にはアプローチしましょう。
また、カジュアル面談の参加者を対象とした、特別な選考フローを用意しておくのも一つの方法です。
カジュアル面談を実施する際に押さえておきたい、3つの注意事項を紹介します。
カジュアル面談の段階では、応募者はまだ選考に進むか検討している状態です。そのため、志望動機など面接で聞かれるような質問への返答を用意していないケースがほとんどです。
応募者が緊張してしまったり、選考の要素が強くなったりしないよう、カジュアル面談では志望動機など、面接時によくある質問は避けるのが望ましいとされています。
カジュアル面談の目的は面談者を見極めることではありません。企業が一方的に質問をして、応募者はそれに淡々と答えるという形にならないよう注意が必要です。その上で、面談が終わってから「あれも聞いておけばよかった」と後悔しないよう、応募者への質問事項は事前にリスト化しておきましょう。
カジュアル面談だからこそ聞いておきたい質問としては、転職理由や転勤の可否などが挙げられます。合否に関係のない面談だからこそ、本音ベースで聞くことができるでしょう。ざっくばらんに情報交換を行うことで、有意義なカジュアル面談になります。
関連部署の社員がカジュアル面談の担当になるケースが多いため、部署内の業務が細分化している場合には応募者からの質問に答えられない事態も起こり得ます。そのため、カジュアル面談に向けて、事前に社内情報を整理しておくことが大切です。各チームの体制や業務内容などについて、情報を整理・共有しておきましょう。
なお、企業サイトに公開している情報などは、事前に応募者にURLを送付し、面談前に見てもらうようお願いしておくことをおすすめします。そのようにすることで、応募者がすでに知っている内容をカジュアル面談で改めて伝えずに済むため、双方にとってより有意義な時間になるでしょう。
カジュアルな場だからといって、プライベートに踏み込む質問はふさわしくありません。選考時の面接と同様に、宗教や家庭環境、恋人の有無など、個人情報や私生活に関する質問はしないように注意しましょう。
ここからは、カジュアル面談で効果を発揮する質問例をピックアップして紹介します。
●導入時の質問例
「就職活動はいつから始めましたか?」
「業界についてどのような印象を持っていますか?」 など
●企業(自社)関連の質問例
「弊社のイメージをお聞かせください」
「どうして面談に応じていただいたのでしょうか?」 など
●面談者関連の質問例
「どんな軸で就職活動を行っていますか?」
「今後どのようなキャリアを希望していますか?」 など
●面談後の質問例
「またコンタクトを取ってもよいでしょうか?」
「この機会に聞いておきたいことはありませんか?」 など
下記より「カジュアル面談質問集」もダウンロードできますので、ぜひご活用ください。
実際の企業では、どのようなカジュアル面談を実施しているのでしょうか。カジュアル面談を実施している企業事例やカジュアル面談を推進するプラットフォームを運営している企業事例を紹介します。
モバイルサービスを主とした受託開発などを手掛ける株式会社ゆめみでは、安定した採用と内定承諾率の向上、入社後のギャップによる離職防止という点でカジュアル面談に注目しています。
同社では、1カ月以内で終了するというスピード選考を実施していますが、選考前に行っているのがカジュアル面談です。カジュアル面談をファーストタッチとし、応募者に対して「企業の魅力付け」と「評価」をバランス良く行っていると言います。
若手社員や少し年上の先輩社員が対応するのも、同社のカジュアル面談のポイントです。面談に当たる社員を「勉強会後の懇親会のつもりで行ってきて」と送り出すことで、気軽な雰囲気を醸成。カジュアル面談で自社の魅力付けを行うことにより、自社を好きになってもらうきっかけにしています。
(参考:『入社したくなる会社は「魅力付け」に注力する【事例:株式会社ゆめみ】』)
カジュアル面談プラットフォーム「Meety」を運営する株式会社Meetyでは、エンジニア採用におけるカジュアル面談の活用を推進しています。現在、ITエンジニアは売り手市場が加速し、自分から求人サイトに登録しなくても、SNSのDMでスカウトが来るような時代です。
その結果、企業が求人サイトで募集をかけても、候補者に情報が届かない状況になっています。そうした中、「企業と転職潜在層がライトにつながる接点」として活用されているのがカジュアル面談です。
「Meety」では、人事・採用担当者へのガイドラインとして、「志望動機を聞くことはNG」「会話を主導するのはカジュアル面談を実施する方」「あなたが質問する場ではなく、参加者の質問に答える場」といったルールを設定。候補者が安心して面談を申し込めるようにすることで、企業とITエンジニアとのマッチングに効果を発揮しています。
(参考:『【成功体験談付】エンジニア採用にも有効!「カジュアル面談」活用術』)
企業と応募者の双方が相互理解を深めることを目的としたカジュアル面談をすることにより、「就職・転職潜在層の人材との接点が持てる」「ミスマッチを防ぎやすくなる」といったメリットが期待できます。
カジュアル面談は企業が主導して会話するのが一般的ですが、応募者に面接のような印象を与えないよう、「志望動機は聞かない」「面談者を質問攻めにしない」といったことを意識しましょう。
今回の記事で紹介している会話の流れや質問例などを参考にカジュアル面談を実施し、自社にマッチした人材の獲得につなげてみてはいかがでしょうか。
(制作協力/株式会社はたらクリエイト、編集/d’s JOURNAL編集部)
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d's JOURNAL編集部
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社会保険労務士法人クラシコ 代表 柴垣 和也(しばがき かずや)【監修】
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社会保険労務士法人クラシコ 代表 柴垣 和也(しばがき かずや)【監修】