【正攻法付き】“圧迫”と捉えられて辞退につながっているかも…。面接官が気を付けるべき態度と言動
パーソルキャリア株式会社
国家資格キャリアコンサルタント 武田 雄
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95.3%が、面接官や人事・採用担当者の印象により志望度が左右されると回答。「圧迫面接された」も無視できない回答数となっている
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威圧的・高圧的な態度でレジリエンスを見極めるのではなく、ストレスを自覚し、逃がす方法を持っているかを質問すればよい
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「否定」と捉えられないような聞き方、切り返し方が大切。「コンピテンシー面接」や「STAR面接」を通して応募者を深掘りするのがよい
採用難が続き人材の確保が難しくなっている中、採用戦略の見直しや、さまざまな採用手法を用いた母集団形成を試みている企業も多いのではないでしょうか。
一方で、d’s JOURNAL編集部が行った調査では、「面接官や人事・採用担当者の印象によって志望度が左右されるか」という質問に対し、95.3%が「志望度を左右する」と回答。「面接官の態度が丁寧でこの職場で働きたいと思った」「圧迫面接をされて志望度が下がった」とのコメントもあることから、面接官としての総合的な力(面接官力)を向上させることも採用を成功させるポイントの一つと言えるでしょう。
そこで今回は、応募者にネガティブな印象を与えがちな「圧迫面接」に注目。「HRアナリスト」チームでさまざまな企業の採用・面接改革をサポートしている武田氏に、圧迫面接と捉えられがちな面接官の態度や言動、望ましい対応について聞きました。
(参考:『面接の印象は志望度を左右する?転職での「面接の印象」に関する20代・30代の本音調査』)
面接に参加した応募者の7.9%が面接官に「ネガティブな印象」を持つ
――武田さんがさまざまな企業や応募者とのやり取りの中で感じる、面接・面接官の課題にはどのようなものがありますか。
武田氏:私たちはd’s JOURNAL編集部の調査とは別に、doda転職支援サービスをご利用いただき、面接に参加していただく応募者には、面接についてのアンケートをお願いしています。2021年5月から2年間でご回答いただいた約200万件のアンケートを集計してみると、面接官の印象に関する質問の回答比率は以下のようになりました。
■面接官の印象に関するアンケート結果(アンケート総数約200万件)
この結果から、全体の7.9%、件数にすると約15万8,000件の面接官が応募者からネガティブな評価を受けていることがわかります。割合では1割にもなりませんが、件数に注目すると、「面接時の自分の印象は悪くないだろうか」「自社の面接官の態度・言動は大丈夫だろうか」と不安になる方もいるのではないでしょうか。
――約15万8,000件というのはインパクトのある数字ですね。アンケートの回答から、武田さんが気になった点はありますか。
武田氏:アンケートのフリーコメント欄では、ネガティブな印象の理由として、「面接で圧迫されました」「圧迫面接のように感じました」というように、「圧迫」というキーワードが多数挙げられていました。回答から「圧迫」という言葉を抽出してみると、約1000件存在していたんです。
また、圧迫という直接的な表現を用いていなくても、「なぜそのような質問をするのかと怒られました」など、いわゆる「圧迫面接」と認識しているようなコメントも多くあったことが印象的でした。
――「圧迫面接」が面接のネガティブな印象につながっているということでしょうか。
武田氏:面接官の印象が志望度を左右するという調査結果やアンケートのコメント、実際の応募者の進退からしても、圧迫面接が面接、ひいては企業のマイナスイメージにつながるケースは多いと思います。
そもそも「圧迫面接」は、あえて意地悪な質問や威圧的な態度を取ることで、応募者のストレス耐性や柔軟性、対応力などを図ろうとする面接手法でもあります。ですので、面接官によってはストレス耐性などを把握するために、意図的にプレッシャーをかける人もいるかもしれません。もしくは、面接官自身に圧迫面接をしているという自覚がなく、応募者がそう感じてしまっているケースもあるでしょう。
いずれにしても、面接はコミュニケーションの場です。コミュニケーションは受け手がどう捉えるかが全てであり、応募者が「圧迫面接をされた」と認識してしまえば、その面接は圧迫面接だった、ということになります。同じ採用条件で面接官の印象がよかった企業とよくなかった企業があったとしたら、当然前者を選びますよね。
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圧迫面接が採用活動に与える影響とは
――では、応募者に「圧迫面接」と捉えられてしまうことが採用活動にどのように影響するのか、詳しく教えてください。
武田氏:「応募者からの印象」と「採用活動全般」の2つの面からお話しします。まず、応募者の観点では、シンプルに「企業の印象が悪化し、志望度が下がり、辞退につながる」ということです。面接官を務めるのは、基本的に入社後に上司になる人、もしくはその企業の人事・採用担当者になります。その立場にある方が初めて会う面接の場で圧迫をしてくれば、応募者は「入社してからも、強いストレスをかけてくる人」「何かあったら責めてくる人」と認識するでしょう。「そういう人がいる企業に入社したいと思えない」「辞退しよう」と考えるのは自然な流れだと思います。
また、採用活動全般で話をすると、昨今はインターネット検索やSNSなどを通して、あっという間に情報が拡散する時代です。「●●会社の面接を受けたら圧迫面接だった」という情報が拡散すれば企業の印象は悪化しますし、そのような企業に応募しようという求職者も少なくなるでしょう。
圧迫面接と捉えられがちな【態度】
――ここからは、どのような行為が「圧迫面接」と捉えられてしまうのか、具体的に聞いていきたいと思います。初めに、【態度】ではどのようなことが挙げられるでしょうか。
武田氏:まずは、威圧的・高圧的な態度です。具体的には、「腕組みをする」「椅子にふんぞり返って座る」「口調が荒い」などが挙げられます。もし、それらの態度の理由が応募者のストレス耐性を把握するためなのであれば、ストレスに関して「どのようなときにたまるか」「たまるとどうなるのか」「どのように解消するか」と、その人がストレスを自覚し、逃がす方法を持っているかを質問すればよいのであって、威圧的・高圧的な態度で責める必要はありません。
また、ストレス耐性の把握には、適性検査やストレスチェックの結果を見つつ、面接のやり取りを通して自責思考・他責思考を確認するのもよいと思います。一般論としては他責思考があまりよくないと思われがちですが、激しい議論やフィードバックが飛び交う企業では、自責思考が強すぎると体調を崩してしまう可能性もあります。自社の環境と照らし合わせて、どのような適性が合っているかを見極めることが大切です。
――目的を達成するための手段は「圧迫」以外にもあるということですね。他にはどのような態度があるでしょうか。
武田氏:「応募者が質問に答えても反応しない」「応募者を理解しようとする姿勢が見られない」など、無反応であることです。これには、面接官がもともとそのような性格であったり、面接に慣れていなかったりすることも考えられます。もしかすると「うんうん」とうなづいているのかもしれませんが、動きや声量が小さかったり物理的な距離が離れていたりするせいで、応募者に届いていないことも多いんです。
応募者の立場からすると「自分に興味がないのかな」と心に負荷がかかり、本来のパフォーマンスを発揮できなくなります。興味を持ってもらえないのであれば話をしようと思えないですし、「話を続けていいのかな」と不安になってしまっては会話が進みません。結果、応募者と面接官の相互理解も進まなくなります。
先ほどの威圧的な態度の話にも通じますが、応募者に「きちんと話を聞いてもらっている」「自分に向き合ってくれている」と思ってもらえるような態度をとること、「話を理解した」という反応を返すことが大切です。ちなみに私が担当している面接官研修では、「椅子に座る際は背もたれから離れて、上体を相手に傾けましょう」ということも伝えています。
――近年はオンラインで面接を行っている企業も多いと思います。オンライン面接ならではの注意点はありますか?
武田氏:応募者に伝わるリアクションをすることです。オンライン面接では、相づちであってもしっかり声を出さないと、マイクが音声を拾わない可能性があります。うなづく動作も、表示されている画面が小さいと伝わらないこともあるでしょう。
大切なのは、リアクションそのものではなく、リアクションによって相手とのコミュニケーションを円滑にし、相互理解を深めることです。対面であれば、応募者も雰囲気を感じ取り、適宜修正しながら回答できますが、オンラインで反応がわからないと、面接官に対する理解が進まないんですよね。
特に注意したいのが、複数人の面接官が会議室などを使用して、1台のカメラで対応しているケースです。応募者はどの面接官が話しているのかを把握しにくいですし、表情・反応もわかりません。できる限り、一人1台パソコンを用意し、応募者と向き合っていただきたいと思います。
圧迫面接と捉えられがちな【言動】
――続いて、「圧迫面接」と捉えられてしまう可能性のある、面接官の【言動】を教えてください。
武田氏:応募者の「こう考えた」「こんな取り組みをした」という回答に対し「それは違うんじゃないの?」と答えたり、パーソナリティを否定する発言をしたりすることが挙げられます。ありがちなのは「スポーツばかりしていたのであれば、勉強は得意じゃないでしょう」というような、パーソナリティを否定する発言です。その他には、ビジネスもしくは採用上の競合や自社のメンバーを否定するケースもあります。
面接官としては、発言を否定されたときの反応からストレス耐性や対応力を見たい、一緒に働く時のイメージをつかみたいといった意図もあるかもしれません。しかし、人を否定する発言を聞くのは気分のよいものではないですよね。「一緒に仕事をする際も否定される」「知らないところで自分の悪口を言われる」と捉えられ、信用を得られませんし、面接官・企業の印象を悪化させることにつながります。
――ストレス耐性や対応力、柔軟性を把握したい場合は、どのような対応をするとよいでしょうか。
武田氏:「否定」と捉えられないような聞き方、切り返し方をすることが大切です。先述の通り、ストレス耐性を見たい場合は、ストレスを逃す方法を質問すればよいと思います。対応力や柔軟性を見たい場合は、成果につながるかという視点で応募者を評価する「コンピテンシー面接」や、過去の出来事から行動・思考の特性を探る「STAR面接」を通して、応募者を深掘りするのもよいでしょう。
また、「Aの他にはBという課題設定もできたと思いますが、その選択肢はありましたか」「Bも選択肢に挙がったとすれば、なぜAを選んだのですか」というような聞き方であれば、応募者も不快になりにくいですし、面接官は応募者が入社後にどのような立ち振る舞いをするのかを把握できます。
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――言い方一つで「見極めができる」か「辞退につなげることになる」かが変わりますね。他にも注意すべき言動はありますか。
武田氏:ネガティブなフィードバックです。例えば質疑応答で、応募者からの質問に対して「なんでそんなこと聞くの」と答える。応募者としては残業時間や年収など、「聞いたら印象が悪くなるかもしれない」と考えながら勇気を出して質問している場合もあると思いますし、何より、そこで出される質問は「入社したい企業の選択肢に入れるか」「自分のキャリアを形成する企業として適切か」を判断する重要なものです。
それに対する「なんで?」という返答は、そもそもの質問に答えておらず、コミュニケーションが成立していません。応募者としては、何を聞いても同じように返されそうと考え、質問しようという気を損なう要因になるでしょう。無反応な態度と同様、相互理解が実現しないため、辞退につながる可能性が高まります。
面接官は質疑応答の時間が「応募者が何でも聞いてよい時間」「応募者の志望度を高めるための時間」であることを改めて認識し、質問に対して誠実に回答すべきだと思います。
――他にはどのような言動がネガティブなフィードバックに該当するでしょうか。
武田氏:「年収が下がりますが大丈夫ですか」「当社では通用しないと思います」といった発言も、ネガティブに映るフィードバックです。年収に関しては、業界やその企業ならではの給与水準があるので、応募者の現在の年収より下がることもあるでしょう。大切なのは、ただ事実を述べるだけではなく、その理由も併せて丁寧にお伝えすることです。理由が明確であれば、現職よりも年収を下げて転職する人はたくさんいます。
「目の前にいる応募者は将来の仲間か将来のお客さま」という考えを持つ
――改めて、面接官を務めるうえで気を付けるべきポイントや念頭に置くべき事項を教えてください。
武田氏:私たちがいつもお話しするのは、「応募者は将来の仲間かお客さま」ということです。入社すれば当然一緒に仕事をする仲間になりますし、採用がかなわなかった場合でも、いずれビジネスパートナーや一般の消費者として自社と関わることがあるかもしれません。この前提に立てば、あえて印象が悪くなるような態度や言動をすることもなくなるのではないでしょうか。
コミュニケーションの正解は、相手にしかないものです。しかし、「こうすれば誰にとっても印象がよいだろう」「少なくとも印象が悪くなることはないだろう」という態度や言動はあるはずです。
最近の採用活動では、「CX(Candidate Experience:応募者が採用活動を通して得られる体験)をよくすることが、選ばれる企業になるために必要である」という考え方が主流になってきていますが、圧迫面接はこのCXを悪化させる可能性を高める要因にもなり得ます。改めてCXという考え方を前提に、面接官と応募者のコミュニケーションの場である面接を大切にしてもらいたいですし、面接官が質問を通して応募者を理解することはもちろん、理解した情報に基づいて応募者が求める情報を提供し、応募者が企業・仕事を理解する。そうして、より深い相互理解につなげていただきたいと思います。
面接官研修サービスのご案内
パーソルキャリア株式会社では、応募者をひきつける「面接官研修サービス」を提供しています。
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取材後記
面接官の印象が志望度を左右することや、圧迫面接が応募者の入社意欲を下げ、辞退につなげてしまう可能性のある面接手法であることがわかりました。武田さんのお話にもあったように、自社の求める人材の採用につなげるには、「応募者に向き合う態度」や「否定と捉えられないような言動」を心がけ、相互理解を深めることが大切です。企業・応募者双方にとって望ましい面接となるよう、面接官のあるべき姿を再確認してはいかがでしょうか。
(企画・編集/海野奈央(d’s JOURNAL編集部)、制作協力/株式会社mojiwows)
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