通年採用とは?新卒採用との違いやメリット・デメリットを解説

d’s JOURNAL編集部

労働人口の減少や働き方の多様化により、業種・職種によっては人手不足が大きな経営課題となる場合があります。従来の採用方法を見直すことで、安定的な人材確保の取り組みを進めていく必要があるでしょう。

新たな学卒者を一括で採用する新卒採用だけでは、採用予定者数を確保できないときには、通年採用を検討してみるのもよいといえます。この記事では、通年採用の基本的な捉え方や新卒採用との違い、メリット・デメリットを詳しく解説します。

通年採用とは


通年採用の導入を検討する際は、まず基本的な部分をきちんと把握しておくことが大切です。通年採用の状況や新卒採用との違いを含めて解説します。

通年採用の概要

通年採用とは文字通り、企業が年間を通じて採用活動を行うことを指します。企業によって取り組み方はさまざまですが、新卒採用だけでは十分に人材を確保できない場合に実施するケースが多いといえるでしょう。

人材が不足しているタイミングで臨時募集をかける企業もあれば、夏や冬といった季節ごとに複数回に分けて実施している企業もあります。新卒採用では応募可能な時期が限られていますが、通年採用の場合は柔軟にスケジュールを組むことができるため、多様な人材を集めやすくなるはずです。

留学生や既卒者、中途採用者なども対象となるので、新卒採用ではなかなか出会えない人材の確保につながるでしょう。

通年採用の状況

就職みらい研究所が公表している「就職白書2020 」によれば、2021年卒採用において通年採用を検討している企業が25.1%となっており、4社に1社の割合であるとされています。2020年卒採用においては、通年採用を実施していた企業は全体の17.5%であったため、増加傾向にあるといえるでしょう。

通年採用を導入する企業が増えてきたのは、少子化の影響によって若手人材の確保が年々難しくなっているため、新卒採用だけでは十分な採用数を得られないことが理由として挙げられます。

また、経済のグローバル化が進み、従来の発想だけにとらわれない多様な人材の確保が求められているともいえるでしょう。競合他社との激しい競争にさらされる企業において、新たな人材の確保は事業を安定させ、持続的な成長を遂げていくために欠かせないものです。

経営戦略の一環として、人材戦略を重視している企業は多くあるため、通年採用の導入が進んでいるといえます。

新卒採用との違い

通年採用は年間を通じて採用活動を行いますが、新卒採用では卒業予定の学生を対象として、一定の期間で採用活動を実施します。同じ時期に一括して採用することで、多くの人材の確保につながるほか、採用にかかる費用を抑えられるでしょう。

しかし、新卒採用の場合、認知度の高い企業でなければ多くの人材を確保するのが難しいケースも多いものです。特に人手不足が生じている業界であれば、中小企業にとって人材を確保するのが難しい場合もあるでしょう。

一方、通年採用であれば時期に関係なく募集をかけられるため、新卒採用ではなかなか出会えない人材との接点を持つことが可能です。既卒者や留学生など、多様な経験を備えた人材の確保につながるのは大きな利点だといえます。

また、採用選考にじっくりと時間をかけられるため、採用後のミスマッチを防ぐといった効果も期待できます。自社の採用状況に応じて、新卒採用と通年採用をうまく使い分ければ、人材の安定的な確保に結びつけられるでしょう。

新卒採用と中途採用について、さらに詳しく調べたい方は以下の記事も参考にしてみてください。

(参考:『新卒採用とは?メリットやデメリット、中途採用との違いを解説 』)

通年採用が注目されている理由


通年採用が注目されている理由として、具体的には「人手不足の深刻化」「事業活動のグローバル化」「採用選考のルール変更」などが挙げられます。それぞれの理由について、さらに詳しく見ていきましょう。

人手不足の深刻化

通年採用が注目されている理由の一つとして、さまざまな業界で人手不足が深刻な経営課題になっている点が挙げられます。少子化の影響によって、特に若手人材の確保が難しくなっており、人材確保を経営課題として挙げている企業は多くあります。

そのため、新卒採用以外にも採用活動を広げる必要性を感じている企業が増えており、通年採用に取り組む企業が多くなっているといえるでしょう。また、企業が持続的な成長を遂げていくには、自社に合った人材を採用する必要があります。

単に人材を集めればよいというものではなく、採用選考に十分な時間をかけて人材をよく見極め、長く働き続けてくれる人を採用することも大切です。新卒採用では多くの学生の選考を同時に進めなければならないため、選考に割ける時間が限られる部分があります。

せっかく採用しても、入社後にミスマッチが起こってしまえば、早期離職につながる可能性があるので注意しましょう。通年採用であれば、人材の見極めに十分な時間を充てられるため、採用後のミスマッチを防ぐことにつなげられます。

人手不足の課題について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。

(参考:『人手不足が課題になる日本の現状|原因と企業が取り組むべき対策を解説 』)

事業活動のグローバル化

業種や事業規模にもよりますが、企業が行う事業活動はグローバル化が進んでおり、さまざまな国々の取り組みを踏まえたうえで事業を行っていく必要があります。変化の激しいグローバル社会に対応していくには、従来の発想だけにとらわれない姿勢を持つことが、企業にも求められているといえるでしょう。

新卒採用は同時期に一括で採用活動を実施するため、同じスキルや能力を備えた人材を育成しやすいのが特徴です。しかし、過去の成功事例がそのまま通用しない場面も多くあり、変化に対して柔軟に対応できる組織をつくり上げていくには、多様な価値観や考えを持った人材を採用していくことが大事です。

通年採用を通じて、人材採用の間口を広げておけば、多彩なバックグラウンドを持った人材と巡り会えるチャンスも出てきます。さまざまな状況に対応できる組織を構築するといった視点で、通年採用に取り組む企業も多いといえます。

採用選考のルール変更

通年採用が注目されているのは、日本経済団体連合会(経団連)が掲げていた「採用選考に関する指針」の廃止が発表されたことも影響しています。経団連が採用選考に関する指針を策定しないことを受けて、政府主導で「就職・採用活動日程に関する考え方 」という方針が取りまとめられています。

2025年度卒業者・修了予定者においては、以下のような方針が示されていることを押さえておきましょう。

2025年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動日程
・広報活動開始  :卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降
・採用選考活動開始:卒業・修了年度の6月1日以降
・正式な内定日  :卒業・修了年度の10月1日以降

(引用:就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議『2025年度卒業・修了予定者の就職・採用活動日程に関する考え方 』)
ただし、上記の方針はあくまで政府から企業での要請であり、拘束力を持つものではありません。新卒採用から通年採用への移行やいつの時期から通年採用を実施するかは、それぞれの企業の判断に委ねられているといえます。

新卒採用と通年採用を並行して導入する企業もあり、より柔軟な姿勢で採用活動に取り組む企業が出てきています

通年採用を実施するメリット


通年採用を実施するメリットとして、次のような点が挙げられます。

通年採用を行う3つのメリット
・応募者数の増加が期待できる
・多様な人材の採用につながる
・人材をじっくりと見極められる

各メリットについて解説します。

応募者数の増加が期待できる

採用活動を通年とすることで、多くの応募者と接触を図れるのはメリットです。新卒採用のみを行う場合、認知度の高い企業でなければ、限られた期間のなかで人材を集めるのは難しい部分があるでしょう。

認知度の低い企業にとっては、大手企業ばかりに人材が集まり、自社の人材を思うように集められないケースがあります。通年採用は新卒採用のように短期間で多くの人材を集めるのには向いていませんが、時間をかけて自社の存在を多くの人に知ってもらうことで、徐々に応募者数の増加につなげていくことが期待できます。

求人広告などを活用してもなかなか人材が集まらないときは、新卒採用だけでなく通年採用の導入も検討してみましょう。同時に、自社のことを広く知ってもらうには、継続して情報発信を行っていくことも大切です。

多様な人材の採用につながる

通年採用ならではのメリットとして、多様な人材の採用につなげられる点が挙げられます。新卒採用では未経験の学生を多く集めることが重視されるため、どうしても人材が均質化しやすいところがあります。

安定的な組織を構築するには、自社が求める人材像に沿った人を集める必要はありますが、同じような属性の人材ばかりでは大きな変化に対応できない部分もあるものです。通年採用であれば、既卒者や留学生など多様な人材を集めることにつながるので、組織に新たな変化をもたらせるでしょう。

採用活動は、企業が掲げる経営戦略や事業戦略に沿ったものでなければなりません。自社の今後の事業展開を踏まえ、新たな分野で事業を展開するような場合に、さまざまなバックグラウンドを持つ人材が力を発揮してくれるはずです。

人材をじっくりと見極められる

新卒採用の場合、限られた期間内で多くの応募者の選考を行うことも珍しくありません。選考活動におけるリソースが不足していると、人材の見極めにしっかりと時間を割けない部分もあるでしょう。

人材を採用することだけが目的化してしまえば、選考が疎かになる可能性があります。自社が求める人材像に合わない人を採用すれば、採用のミスマッチが起こってしまい、思うように人材が定着しないといった事態を生み出しかねないでしょう。

通年採用であれば、自社の都合に応じて募集期間などを設定できるので、無理のない採用スケジュールを組むことができます。人材の適性や能力をじっくりと見極められる時間を得ることで、入社後の早期離職などを防いでいけるはずです。

通年採用のデメリット


通年採用には多くのメリットがある一方で、あらかじめ注意しておきたいデメリットも存在します。具体的には、以下の点が挙げられます。

通年採用の3つのデメリット
・採用活動が長期化する恐れがある
・採用にかかる費用が膨らむ場合がある
・認知度の低い企業は不利になるケースもある

それぞれのデメリットについて見ていきましょう。

採用活動が長期化する恐れがある

通年採用は年間を通じて採用活動を行うため、採用業務にかかる負担が大きくなる恐れがあります。採用活動が長期化すれば、その分だけ採用担当者の負担が増し、思うようにリソースを割けない部分も出てくるでしょう。

過度な負担が生じてしまわないように、募集時期やタイミングを見直すなどして、スムーズに採用活動を続けられる状態をつくることが大切です。企業によっては、夏や冬の一定期間のみ採用活動を行ったり、通年採用を行う職種を限定していたりします。

企業の状況によって、どの方法が適切であるかは違ってくるため、社内の意見も参考にしながら採用活動を進めていきましょう。

採用にかかる費用が膨らむ場合がある

新卒採用は一定期間に一括して採用を行うため、全体で見れば一人あたりにかかる採用費用の負担を軽減することが可能です。しかし、通年採用の場合は年間を通じての取り組みとなるため、トータルでの費用が膨らんでしまう可能性があります。

費用負担をできるだけ減らしたいときは、採用手法や募集のスケジュールを見直していくことも重要です。前年の採用実績などのデータを参考にしながら、自社に合った採用活動のあり方を探ってみましょう。

また、自社だけで採用活動を行おうとせず、必要に応じて外部のリソースを活用することも検討してみるとよいでしょう。費用対効果のバランスを考えながら、採用活動を進めていく体制を整えるのが大切です。

採用費用について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。

(参考:『採用費用が膨らみ過ぎてる?そんな時に考えたいこと 』)

認知度の低い企業は不利になるケースもある

通年採用を導入しても、始めたばかりの段階ではなかなか人材が集まらないこともあります。認知度不足が主な要因として挙げられますが、自社の認知度を高めていくためには、それなりに時間がかかる部分もあるでしょう。

しかし、いったん自社の魅力を知ってもらえば、徐々に応募者数が増えることを期待できるため、継続的な取り組みが必要です。応募者にとって有益な情報を継続して発信していけば、興味や関心を抱く人も増えてくるはずです。

競合他社との違いをアピールする機会にもなるので、前向きに取り組んでいくことが大切だといえます。自社だけの取り組みでどうしても成果が挙がらないときには、外部のリソースも活用するなどして取り組んでみましょう。

通年採用を実施するステップ


通年採用をスムーズに実施するには、基本的な手順を押さえておく必要があります。一般的なステップとしては、次の通りです。

通年採用の主なステップ
1.要員計画から採用計画を立てる
2.自社が求める人材像を明らかにする
3.採用活動に取り組む体制を整える
4.採用手法を決定する
5.選考フローや選考基準を定める
6.採用担当者を育成する

各ステップのポイントを解説します。

要員計画から採用計画を立てる

要員計画とは、事業を遂行する際に必要となる人数を見積もる計画を指します。経営計画を遂行するための一つの手段として、「必要な人材を確保するために、どの部署に何人採用すべきなのか」といった点を定めます。

要員計画の作成が終わったら、それをもとに「いつまでに」「どの部署に」「何人」必要なのか、年間の採用計画を詳細に立てていきましょう。採用予定者の配属先や職種が決まっている場合には、その部署で働く従業員の意見もヒアリングしておくことが大事です。

また、これまでに作成した要員計画や採用計画があるときは、それらも参考にしながら計画を練ってみましょう。後から変更することも考慮したうえで、ある程度の幅を持たせて作成するほうが無難です。

要員計画の立て方について、さらに詳しく調べたい方は以下の記事も参考にしてみてください。

(参考:『【フォーマット有】要員計画とは?立て方と作成手順・ポイントを解説 』)

自社が求める人材像を明らかにする

採用計画と同時に進めなければならないのが、「自社にどういった人材が必要なのか」という人材像の設定です。採用活動で失敗しやすいポイントとして、求める人材像が明確でないケースが挙げられます。

企業理念や事業方針などと照らし合わせて、自社が求める人材像を明らかにしてみましょう。単にスキルや経験、年齢だけでなく、「自社で活躍してほしい人」を具体的にイメージし、言語化することが重要です。

業務において高いパフォーマンスをあげている従業員を参考にして、コンピテンシーモデルを作成するのもよいでしょう。「企業の理念や方向性に合う理想像を分析する」「自社で活躍している人材を分析する」といった方法により、採用対象者を絞り込んでいけば、採用活動をよりスムーズに進められるはずです。

採用活動に取り組む体制を整える

採用対象者が決まったら、採用活動を専属で行う「採用チーム」を編成しましょう。通年採用を導入することでタスクやスケジュール管理の工数も増えるため、一人で担当するより複数人でチームをつくることが望ましいでしょう。

チームメンバーには、採用業務を行うことに加え、採用市場に関する情報収集や他社の動向分析などを意識的に行うことも求められます。各部署から適任者を選び、採用チームを編成してみてください。

採用手法を決定する

採用チームを編成した段階で、求職者に対してどのようなアプローチを行っていくのかを決めましょう。一口に採用活動といっても、求人サイトやダイレクトリクルーティングなどさまざまな採用手法があります。

それぞれの採用手法について、採用にかかる費用や工数、特徴などを把握したうえで、自社に合った方法を選んでいくことが大切です。実際に取り組んでみなければわからない部分もあるため、一つの手法に絞り込むというよりは、複数の手法を組み合わせながら採用活動を行っていきましょう。

採用手法ごとの成果を分析しながら、採用効率がより高いものを選んでいくことが大事だといえます。

採用手法について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。

(参考:『採用手法の変更が応募者獲得への第一歩 ~キャリア採用の成功事例に学ぶ~ 』)

選考フローや選考基準を定める

採用選考に時間がかかってしまえば、採用担当者の負担が増すだけでなく、応募者が他社に流れてしまう恐れがあります。スムーズに選考を行える環境を整えれば、内定承諾率などを高められるでしょう。

採用業務に関するフローを見直し、無駄な作業や重複する業務などが発生していないかを確認することが大事です。また、採用担当者によって選考基準にバラつきが出てしまわないように、事前研修などを行うことが重要です。

必要に応じてマニュアルを作成するなどして、公平・公正な選考が行えるようにしてみましょう。

採用担当者を育成する

通年採用の場合、入社時期にバラつきが生じることがあるため、研修担当や配属部署での受け入れ体制を整えることが重要です。研修や教育内容に差が生まれないよう、注意する必要があります。

また、新たに採用した人材が部署やチームにスムーズになじめるよう、コミュニケーション方法やフォロー体制なども検討しておくとよいでしょう。きめ細かなサポートが行えるように、採用担当者そのものを育成することも大切です。

人事や労務に関する法律を学んだり、他社の事例を参考にしたりして採用担当者のスキルアップを図ってみましょう。

通年採用に向いている企業の特徴


通年採用は多くの企業で取り組めるものではありますが、なかでも向いている企業の特徴というものがあります。具体的には、「即戦力を求めている企業」「多様な価値観を受け入れている企業」「柔軟な働き方ができる企業」などが挙げられるでしょう。

それぞれのポイントを解説します。

即戦力を求めている企業

事業を拡大したり、新たな分野への進出を検討していたりする企業においては、即戦力の人材が必要になる場面も多いでしょう。新卒採用の場合、一から人材を育成していかなければならないため、事業環境の変化などにうまく対応できないところがあります。

新たに取り組もうとする分野においてすでに経験があり、特定のスキルを持った人材を採用できれば、事業活動をスムーズに展開しているはずです。即戦力の人材を求めるのであれば、通年採用のほうが向いているので前向きに導入を検討してみましょう。

自社にはないスキルやノウハウを備えた人材を採用すれば、ほかの従業員にとってもスキルアップを図るよい機会になるでしょう。組織全体の強化にもつながるといえます。

即戦力の人材について、さらに詳しく調べたい方は以下の記事も参考にしてみてください。

(参考:『即戦力の定義とは?人材の見極め方や定着率向上のコツを紹介 』)

多様な価値観を受け入れている企業

さまざまなバックグラウンドを備えた人材を受け入れている企業であれば、通年採用を無理なく導入できるはずです。通年採用は自社の都合に応じて募集期間を設けられるので、新卒採用ではなかなか出会うことができない多様な人材と接することができます。

既卒者や留学生などさまざまな人材を受け入れれば、社内のコミュニケーションも活発になり、組織力を高めることにもなります。人材募集をかけても、思うように人が集まらない企業ほど、採用の間口を広げていくことが大事です。

他社の選考では漏れてしまうような人材も対象とすれば、採用活動を円滑に進めていくきっかけにもなるでしょう。ただし、多様な人材を受け入れることで、一時的に既存の従業員との間で摩擦が生じる恐れがあります。

採用活動を実施する前に、既存の従業員に対して丁寧な説明を行うと同時に、無理のない採用スケジュールを組むことが大切です。

柔軟な働き方ができる企業

通年採用の特徴の一つとして、自社の状況に応じて人材募集をかけられる点が挙げられます。人手不足による人員補充や事業拡大に伴う増員など、事業環境の変化に合わせて取り組めるので、うまく対応できるといえます。

日ごろから柔軟な働き方ができる企業であれば、通年採用を実施しても新たな人材を組織として受け入れやすいでしょう。時短勤務やリモートワークなどを含めて、さまざまな働き方ができる労働環境を提供すれば、多くの人材を集めることにつながります。

また、労働環境の改善は新たな人材のためだけでなく、すでに働いている従業員にとってもよい影響をもたらすはずです。従来の働き方だけにとらわれず、働く側のニーズに合わせて環境を整えてみましょう。

通年採用を成功に導くための10のポイント


通年採用の実施によって人材確保を成功させるには、以下のポイントを重視してみましょう。

通年採用を成功させるための10のポイント
・採用業務のフローを見直す
・応募者の目線に立って施策を実施する
・複数の採用手法を組み合わせる
・KPIを設定する
・ITツールやAIの活用を検討する
・採用活動の範囲を広げる
・入社時期を限定してみる
・応募条件を緩和する
・職種によって採用方法を分ける
・選考方法を工夫する

各ポイントについて解説します。

採用業務のフローを見直す

通年採用を円滑に実施するには、採用業務のフローを定期的に見直すことが重要です。通年採用では採用を行うタイミングにバラつきがあるため、そのままの状態では無駄な作業が発生してしまっている場合もあるでしょう。

選考などがスムーズに行えなければ、応募者に連絡をするタイミングが遅くなってしまい、他社に流れてしまう可能性があるので注意が必要です。採用業務のフローを見直す際は、採用にかかる工数をできるだけ減らしていくほうが、採用業務全体の流れをシンプルに組み立てやすくなります。

どうしても採用工数を減らせないときは、自社で取り組む業務の範囲を決めて、採用業務の一部を外部に任せてみるのも一つの方法です。無理のない形で採用業務を続けられる体制を構築すれば、採用力のアップにもつながっていくでしょう。

応募者の目線に立って施策を実施する

通年採用に限らず、人材を募集する際は応募者の目線に立って施策を実行していくことが大切です。例えば、応募者にとってどのタイミングが応募しやすいか、必要としている情報は何かを精査したうえで情報発信を行うようにしましょう。

応募者は自社以外の企業にも応募している可能性が高いため、採用活動に問題があれば、他社に取られてしまう恐れがあります。競合他社の動きなどに注意を払いつつ、応募者に興味や関心を抱いてもらえる情報を提供していくことが大事です。

また、実際に採用に至った人にヒアリングを行ったり、外部サービスを利用している場合は求職者の動向などを尋ねてみたりするのも有効な手段だといえます。SNSなどをこまめにチェックして、求職者の本音に触れてみるのも参考になるでしょう。

求職者のニーズをきちんと踏まえて、採用活動を進めていくことが大切です。

複数の採用手法を組み合わせる

採用手法はさまざまなものがあるため、自社に合った手法を選ぶことが重要です。また、短期的な成果が期待できるものがある一方で、中長期的にじっくりと取り組む必要があるものもあるため、複数の採用手法を組み合わせることも大事だといえます。

特に通年採用の場合は、一年を通じて求人情報が掲載されることになるため、時間の経過とともに、効果が薄れていく可能性があります。一定の採用数を確保する必要がある場合、求人広告に求人情報を掲載するだけでなく、ダイレクトリクルーティングやリファラル採用なども組み合わせてみると効果が期待できるでしょう。

ただし、必要以上に採用手法を広げてしまっては、かえって採用効率を下げる恐れがあるので注意しましょう。応募者の反応や採用実績などを踏まえて、より効果の高い組み合わせを見つけていくことが大切です。

KPIを設定する

通年採用は年間を通じた取り組みとなるため、途中で採用活動の目的を見失ってしまわないようにするために、KPIを設定しておくことが重要です。KPIとは重要業績評価指標とも呼ばれるもので、ゴールの達成までに向けた各プロセスの中間目標をいいます。

採用活動においては、具体的に面接実施率や内定承諾率などが挙げられるでしょう。具体的な数値目標を設定することで、採用活動の進捗状況を把握するだけでなく、課題や改善点などを洗い出せるようになります。

早めに課題を発見できることで、通年採用のデメリットである費用の増大を防ぐことにもつながるはずです。円滑に採用活動を進めていくために、過去の採用実績などをもとにして達成すべき目標を定めてみましょう。

ITツールやAIの活用を検討する

採用業務の工数が多ければ、リソース不足から応募者に対する連絡が遅れてしまう場合があります。採用活動を円滑に進めるための人員が確保できれば問題はないといえますが、すべての業務を人の手で行うのはかえって非効率になってしまう部分もあるでしょう。

採用業務を効率化・省力化するためには、ITツールの導入やAIの活用を検討してみることも重要です。面接や選考の実施においては属人化しやすいところがあるので、経験や感覚だけに頼らない仕組みづくりを行っていく必要があるでしょう。

近年では、ITツールやAIの進歩によって、人事領域でも積極的に導入され始めています。採用業務の効率化・省力化が進めば、余ったリソースを本来注力すべき人材の見極めなどの時間に充てられるため、採用活動の確度をより高められるはずです。

ただし、採用手法の違いによって適したツールやシステムなどは違ってくるため、比較・検討を行いながら自社に合ったものを選ぶことが大切だといえます。

採用活動の範囲を広げる

人材を募集しても、応募がなかなか集まらない場合は、採用活動を行うエリアを広げてみるのも有効な手段です。企業説明会や面接においてオンラインを活用してみると、これまでは遠方で参加できなかった人も参加しやすくなるでしょう。

オンラインを通じた採用活動は国内だけでなく、海外の人材ともやりとりできる機会を生むため、さまざまな人材とのコミュニケーションを活性化させるチャンスとなるはずです。

また、採用業務の一部をオンラインで対応することで業務の効率化にもつながり、きめ細かな対応を行えるようになります。応募者からのエントリーをただ待つだけでなく、企業側から積極的にアプローチしていくことも検討してみましょう。

入社時期を限定してみる

年間を通じて採用活動を行う場合、その都度対応していくことは採用担当者の負担になるケースがあります。特に入社時期がバラバラだと、新入社員に対する研修などをたびたび行わなければならず、かえって非効率になってしまう部分もあるでしょう。

通年採用における採用業務の負担を減らすには、入社時期を特定の時期に設定してみると効果的です。自社の状況に応じて、夏や冬など一定の時期に入社のタイミングを合わせることで、人材育成を円滑に進めていくことができます。

ただし、企業側の都合だけで入社時期を決めてしまうと、応募者にとって不都合になる部分が生じる恐れがあるでしょう。転職者であれば、前の会社を辞めるタイミングを考慮したり、留学生であれば日本に来る時期などを擦り合わせたりすることも大切です。

応募者のニーズを踏まえつつ、採用業務の負担軽減につながるタイミングをよく見極めてみましょう。

応募条件を緩和する

人材募集を積極的に打ち出しても、応募するための条件が厳しければ、応募をためらってしまう人が出てくるでしょう。応募にあたって資格やスキル、経験などの一定の基準を設けることは大切ですが、本当に必要なものであるかを精査することが大事です。

採用活動を円滑に進めるには、できるだけ多くの人材から応募が集まるように工夫することが肝心だといえます。そのため、応募条件を検討する際には、自社が求める人材像を明確にしておきましょう。

どのような人材を求めているかが応募者にきちんと伝わっていなければ、たとえ適した人材が見つかったとしても、ミスマッチが起こる可能性があります。逆にいえば、自社が求める人材像に合っていれば、応募条件を多少緩和しても大きな問題は起こりにくいといえるでしょう。

採用活動の進捗状況や採用実績などをチェックしながら、多くの人材を集められる応募条件となっているかを精査してみましょう。

職種によって採用方法を分ける

通年採用の特徴の一つとして、即戦力となる人材の募集に向いている点が挙げられます。豊富な経験やスキルを持った人材を募集するなら、通年採用の実施を検討してみることも大事です。

しかし、募集する職種によっては通年採用よりも新卒採用のほうが向いている場合もあります。それほど経験やスキルを必要とせず、かつ多くの人材を短期間で採用する必要がある職種であれば、新卒採用を重視するほうがスムーズです。

すでに自社で働いている従業員の意見や考えなども聞きながら、職種ごとに求められている能力を見極めて、応募条件などを設定することが大切だといえます。職種によって新卒採用と通年採用をうまく使い分けて、採用活動を活性化させてみましょう。

選考方法を工夫する

採用手法や求人情報などに問題が見られないのに、なかなか応募が集まらないときは、選考方法を見直してみる必要があります。必要以上に提出する書類が多かったり、面接の回数が多かったりすれば、応募者の負担が増してしまいます。

入社するまでのプロセスが長ければ、応募者が途中で就職活動をあきらめてしまう恐れがあるので注意が必要です。面接の実施率や内定の承諾率などの数値を精査し、低い状況にある場合は原因を特定してみましょう。

選考フローの見直しを図ることは、採用率を高めることにつながるだけでなく、採用業務そのものの負担を減らすことにもなります。また、通年採用を実施する企業が増える傾向が見られるため、ほかの業界も含めて募集をかける時期が適切であるかも、きちんとチェックしておくことが重要です。

通年採用で用いられる主な採用手法


通年採用と一口にいっても、採用手法の違いによって得られる成果は違ってきます。通年採用で用いられる主な採用手法を解説します。

ダイレクトリクルーティング

ダイレクトリクルーティングは、求人サイトなどを介さずに、自社で直接人材にアプローチをかける採用手法です。応募者からのエントリーを待つのが一般的な採用活動において、企業側からアプローチをかける攻めの採用手法であるのが特徴だといえるでしょう。

ダイレクトリクルーティングでは、求職者のプロフィールなどをしっかり見たうえでコンタクトを取ることになるため、採用のミスマッチを防ぎやすくなります。また、企業の認知度にかかわらず採用活動を進められるので、思うように人材を集められない企業に向いている部分があります。

リファラル採用

リファラル採用はダイレクトリクルーティングの一種ともいえますが、既存の従業員を通じて友人・知人などを候補者として紹介してもらう点に違いがあります。自社の従業員がリクルーターとなることで、候補者に対して自社が掲げる経営理念や働き方、職場の雰囲気などを理解してもらいやすくなるでしょう。

リファラル採用を成功させるには、採用担当者だけで進めるというより、組織全体として取り組んでいく必要があります。多くの従業員に協力してもらうことが成功のカギとなるので、丁寧な説明を心がけてみましょう。

また、紹介してくれた従業員に対するインセンティブの規程を整えたり、人事評価にどのように反映させるかを検討したりすることも重要です。リファラル採用は短期的な成果を見込むことは難しいですが、中長期的な取り組みとして行うことで、自社に合った人材を見つけられるでしょう。

リファラル採用について、さらに詳しく調べたい方は以下の記事も参考にしてみてください。

(参考:『リファラル採用とは?導入のメリット・デメリット、運用のポイントを紹介 』)

ソーシャルリクルーティング

ソーシャルリクルーティングとは、FacebookやX(旧・Twitter)などのSNSを通じて採用活動を行う手法です。単に求職者を募るだけでなく、継続して情報発信を行うことで自社のブランディングを強化することにもつながるでしょう。

どのような人材にアプローチをかけるか、プロフィールや投稿内容などから絞り込みが行えますし、ユーザーの行動履歴などを分析することで、より精度の高いアプローチをかけられるでしょう。ただし、SNSを利用しているユーザーのすべてが就職活動の目的で登録しているわけではないため、成果を出すまでに時間がかかるといったデメリットもあります。

自社のブランディングを行いつつ、採用活動も進めたいという場合に効果が期待できる手法です。

求人広告

求人広告は、数多くの登録者を抱える求人サイトに求人情報を掲載し、応募を待つのが基本的な仕組みです。母集団を形成しやすいのが特徴であり、なかなか応募者が集まらないときに有効な手段となるでしょう。

掲載料金はサービス提供会社によって異なりますが、一定の金額を支払えば採用人数が増えたとしても追加料金がかからないのがメリットです。そのため、多くの採用数を予定している場合には、一人あたりにかかる採用費用を下げられる可能性があります。

一方で、たとえ採用数がゼロの場合でも求人広告の掲載料金は支払う必要があるので注意しておきましょう。また、著名な求人サイトほど掲載している企業数も多いため、他社の求人情報に埋もれてしまうことも考えられます。

オプション料金を支払えば、求人サイト内で上位表示することもできますが、費用対効果をよく考えて利用してみましょう。

自社サイトの活用

自社で運営するWebサイトやブログなどのオウンドメディアを採用活動に活用することも可能です。求人情報やコンテンツを作成して投稿し続けるには、それなりの時間と労力がかかりますが、自社に合った人材を見つけられるといったメリットがあります。

また、求人サイトなどを介さずに情報発信を行うので、企業側の考えを求職者にそのまま伝えられるといった部分もよい点です。自社サイトなどを採用活動に役立てるには、継続して運営する体制をあらかじめ整えておくことが大切だといえます。

社内でリソースが不足していたり、ノウハウがなかったりする場合は自社サイトの活用で豊富な実績がある外部企業の力も借りてみましょう。継続して取り組むことで、自社に採用ノウハウの蓄積を図れるのがよい点です。

まとめ

通年採用は年間を通じて人材を募る方法です。新卒採用だけでは十分な人材を確保できない場合に、導入を検討してみるとよいでしょう。

ただし、採用活動の長期化や費用負担の増加といったデメリットもあるため、事前にどのような形で導入するかをきちんと検討しておく必要があります。また、採用効果を高めるために、自社に合った採用手法を選ぶことも大切です。

企業が安定的な事業活動を行い、持続的な成長を遂げるためには人材の確保は欠かせないものです。自社の採用状況を踏まえたうえで、さまざまな採用方法を組み合わせながら取り組んでみましょう。

(制作協力/株式会社STSデジタル、編集/d’s JOURNAL編集部)

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