システム領域トップと人事が連携し、「従来の銀行にはいなかった」ハイクラス層エンジニアを続々採用

株式会社みんなの銀行

エンプロイーサクセスグループ グループリーダー 花谷禎昭(はなたに・よしあき)

プロフィール
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エンプロイーサクセスグループ マネージングディレクター 永峰義之(ながみね・よしゆき)

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株式会社みんなの銀行

執行役員CIO 宮本昌明(みやもと・まさあき)

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2021年5月に国内初のデジタルバンクとして開業した「みんなの銀行」。地方銀行として長年の実績を持つ株式会社ふくおかフィナンシャルグループの一員として、新たな挑戦を続けています。その鍵を握るのはエンジニアを中心としたハイクラス人材の採用。現在では200人を超える規模へと拡大しているといいます。

競争が激化するエンジニア採用、それもハイクラス人材の獲得に向けて、同社はどのような取り組みを進めているのでしょうか。人事と現場トップの目線から語っていただきました。

ハイクラス層エンジニアの採用に向けて情報発信を強化

——「みんなの銀行」は開業から1年半余りで200人を超える組織になっています。まさに急成長の真っただ中ですね。

 

花谷氏:私たちはまだスタートしたばかりの段階だと認識しています。現在はローン商品などのサービスを順次リリースする準備を進めており、さらに持続的に成長していくため、みんなの銀行だけでなく、みんなの銀行のバンキングシステムを開発・運用するゼロバンク・デザインファクトリー株式会社の両社を合わせた体制づくりに注力しているところです。

永峰氏:その中核を担うハイクラス人材の採用にも力を入れています。長年にわたり銀行を営んできた当社グループには、もともとIT人材が豊富にいたわけではありませんでした。ご存じの通り、採用市場全体でエンジニアの獲得競争が激化しています。みんなの銀行は新しいデジタルバンクとはいえ、IT業界での認知度はまだまだ低いのが現状。そのため、まずは情報発信から強化しています。

——具体的にはどのような取り組みを進めているのでしょうか。

永峰氏:エンジニア向けイベントへの登壇やTechブログなどを通じて情報発信を行っています。訴えかけていくメッセージの中心は私たちのミッションやビジョンです。

みんなの銀行は「みんなに価値あるつながりを。」というミッションを掲げ、従来のお金のマッチング(金融仲介)を超えて、価値のコネクティビティ(価値仲介)を担うサービス業として新しい銀行の在り方を目指しています。こうした事業のやりがいに加えて、ハイクラス人材に期待することや、どんな環境で働けるのか、どんな経験が得られるのかといった情報も伝えています。

花谷氏:現在、執行役員CIOとしてみんなの銀行およびゼロバンク・デザインファクトリーのシステム部門を統括する宮本も、そうした採用活動を通して迎えた一人なんですよ。みんなの銀行を立ち上げるプロジェクトの初期段階に、システム領域の総責任者として入社してもらいました。

エグゼクティブ領域の人材が望んでいた「次の経験」

——宮本さんが現在のポジションに興味を持ったきっかけは?

宮本氏:私はコンサルティングファームのSEや金融業界のインフラ関連プロジェクトなどを経験してきました。前職時代には「いまの会社で積める経験はやり尽くした」と感じていて、新たなステージへ移りたいと考えていたんです。そんなときに、エグゼクティブサーチの担当者から「ふくおかフィナンシャルグループで面白い取り組みが始まろうとしている」と聞いたのがきっかけでした。

 

——これまでの職場にはない経験を積める場所として期待していたのですね。

宮本氏:はい。当時はみんなの銀行のリリース前だったため、選考段階ではプロジェクトの詳細まで聞けませんでしたが、次世代の勘定系システム構築やクラウド化を検討しているという話は聞いていました。私自身は、どんなテーマであっても対応していきたいと考えていましたね。

地方銀行はどこも巨大なホストのシステム構成で成り立っています。それをオープン化したりクラウド化したりするプロジェクトを成功させられれば、まだまだホストの多いこの業界、全国いろいろなところで通用する知見が得られるのではないかと期待していました。ふたを開けてみれば入社後にみんなの銀行が始動し、想定以上に大きなプロジェクトに携わらせてもらっています。

人事と現場が議論し、最適な採用手法を設定する

——採用活動の手法についてもお聞かせください。母集団形成では、どのような手段を活用しているのでしょうか。

永峰氏:エグゼクティブサーチなど外部のさまざまな人材サービスを利用しています。採用手法を設計する際には、事業や組織との親和性を意識していますね。ハイクラス層のエンジニア採用は、人事・採用担当者だけで完遂し切れるものではありません。現場のリーダー陣にも協力してもらい、「エンジニアがエンジニアを確保していく」体制をつくることが重要だと考えています。そのため現場のニーズを聞き、狙いを定めて個別にアプローチした方がいいのか、マス的にたくさんの人を集客する手法がいいのかといった議論を行いながら実際の採用活動につなげています。

宮本氏:私自身も、エグゼクティブサーチや人材紹介サービスの担当者と頻繁にやり取りし、不足しているポジションについて議論しています。たとえば私は当初、それぞれのエンジニアが自律的に働くフラットな組織を目指していたので、マネージャーは必要ないと考えていました。しかし事業・組織が拡大していく中で、マネージャーのいない組織がメンバーにとっての負担になっていったんです。メンバーからは「チームをまとめてくれる人が誰もいない」といった声を上がっていました。そこで方針を転換し、マネジメントのスキルに長けた人材を採用していきました。

現在では、リーダー陣に「自分がマネジメントする人材を自分が採用する」という形で採用活動も委ねています。書類選考と1次面接は現場に任せて、それぞれのニーズに合致する人材を見つけてもらえるようにしているんです。とはいえ、マネジメントもエンジニアも同じ専門職として、互いにリスペクトするフラットな関係でいたいと思っています。

多くの関係者が採用活動に関わるようになったため、現在では月に2回、各グループのリーダー陣と人事が集まり、目線合わせをする場も設けています。

カジュアル面談で「ハイクラス人材が求める深い情報」を提供

——現状の手応えや、今後の展望についてもお聞かせください。

花谷氏:みんなの銀行の組織は、プロジェクト始動から数えて4年間で着実に成長してきました。最初は私が1人で採用活動をスタートし、そこに永峰や宮本が加わってくれて、今では採用チームと現場が連携するまでになっています。以前はできなかったことを実現できるようになってきたんです。今後も柔軟に手法を議論し、ハイクラス人材の採用を強化していきたいですね。

 

永峰氏:そのためには、引き続き発信力強化が課題になると思っています。人材紹介サービスとの連携もさらに強化して、エージェントの方々が転職希望者へ当社をご紹介いただく際には、さらに魅力的な情報が伝わるようにしていきたいと思います。

宮本氏:最近では、正式な面接の前にカジュアル面談を行うことも多いんですよ。ハイクラス人材になればなるほど、転職に踏み切る際には深いレベルの情報が必要になると思います。そうした情報を、私とカジュアルに話せる場で提供していきたいと考えています。そうして当社の目指す未来を共有できれば、入社後の活躍や定着にも好影響をもたらしてくれるはずです。

取材後記

システム領域の総責任者として自らカジュアル面談に参加する宮本さんは、「新しい成長環境を求め続けているハイクラス人材だからこそ、カジュアル面談での会話が重要」とも話していました。人事・採用担当者が頑張り続けるだけではなく、いかに現場に本気になってもらうか。その重要性を再認識した取材でした。

企画・編集/白水衛(d’s JOURNAL編集部)、野村英之(プレスラボ)、取材・文/多田慎介、撮影/内藤正美

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