多分野でハイクラス人材の採用を進めるコニカミノルタの採用戦略 -まずは人材紹介会社の担当者をファンにする

コニカミノルタ株式会社

人事部 人財採用グループリーダー 築澤 孝治(つきざわ・こうじ)

プロフィール

Imaging技術でお客様の「みたい」に応え、インダストリー、ヘルスケアなどへ事業ポートフォリオ転換を進め、2023年の「世界で最もサステナブルな企業100社」(※)に日本企業トップで選出されるなど、グローバル規模で存在感を増しているコニカミノルタ。加速する事業転換に合わせ、多岐にわたるポジションでハイクラス人材の採用を強化しています。

引く手あまたであるハイクラス人材の採用に向け、同社では人材紹介会社との関係性を強化し、「まずは自社のファンになってもらう」ことを重視しているといいます。また、人材紹介会社の担当者の協力の下で大規模な面接官トレーニングを実施し、重要ポジションの採用に成功しているのです。

ハイクラス人材の大規模採用はいかにして進められているのか。同社の秘訣を聞きました。

(※)グローバル100インデックス。カナダのメディア・投資調査会社コーポレート・ナイツが2023年1月18日に発表。

インダストリーやヘルスケアにも事業拡大。多岐にわたるポジションでハイクラス人材を採用

——貴社は現在、多岐にわたるポジションでハイクラス人材の採用を進めていますね。

 

築澤氏:コニカミノルタは2023年で創業150年を迎えますが、事業は大きな変化を続けています。20年前に電気機器業界では初の大型経営統合を実現し、デジタルカメラやスマートフォンが登場する中で、2006年に創業以来の主力であったカメラ事業やフォト事業から撤退。ここから多角化がスタートし、インダストリーやヘルスケア、画像IoTソリューション事業などへ事業ポートフォリオの転換を加速しているところです。

こうした拡大中の事業全てで募集をかけているため、採用ポジションは広範囲にわたります。国内外の営業やマーケティング、ソリューション開発、生産技術、画像認識のAI技術者、データサイエンティスト、セキュリティのスペシャリスト、新規事業インキュベーターなど、ハイクラス人材の採用を積極的に進めています。

——採用活動において課題視していることはありますか?

築澤氏:当社事業の認知度を高めることです。ベテラン層にはかつてのカメラ事業のイメージが根強く、若年層には何をやっている会社なのかあまり理解されていない現状があると思っています。当社の売上の8割以上が海外となっていることもあり、国内よりもむしろ海外の方が認知度が高いほどです。

例えば複合機の事業について知っていても、コニカミノルタが医療などの分野にも取り組んでいることを知ってくださっている方は多くはありません。いかに当社を正しく認知していただき、強みを伝えていくか。広報とも連動してオウンドメディアなどでの発信を強化していますが即効性はなかなか求められないので、長期的な取り組みが必要だと考えています。

コミュニケーションは当社のことをまだ知らない前提で。部長クラス対象の面接官トレーニングにも注力

——足元の採用活動で、母集団形成の対策はどのように行っているのでしょうか。

 

築澤氏:採用手法は主に人材紹介サービスを活用しています。重要だと考えているのは、まず人材紹介会社の担当者の皆さんに当社のファンになってもらうこと。当社の採用活動に協力してくださる皆さんとの信頼関係がなければ、その先にいる採用候補者に自社の魅力を伝えることはできません。

そのために徹底しているのがオープンなコミュニケーションです。採用候補者に向けて当社をPRできる情報を、当社のことを知らない前提で丁寧に情報共有しています。そうすることで私たちの事業に対する理解が深まり、当社への質問も増え、採用成功に向けて必要な情報が蓄積され、結果として採用候補者とのコミュニケーションの質を強化することができます。

当社の採用に関わる皆さんの立場からすると、事業の変遷が大きく、多数のポジションを募集している私たちのことを理解するのは相当大変だと思うんですよね。だから、「こちら側が客だから」と上から目線で構えるようなことは絶対にあってはならないと思っています。

——選考で工夫していることはありますか?

築澤氏:面接は「見極める場ではなく動機付けの場」であるという考えの下、募集している部門の部長を全員集め、現在の採用市場についての理解を深めるための面接官トレーニングを実施しています。

ここには人材紹介会社の担当者にも入っていただき、市場観の共有や面接官に求められる役割、どんな情報を提供すべきかなどをコンテンツとしているんです。これまで約200人の部長陣に研修を実施しており、「面接では自分たちから積極的に情報提供していかなければいけない」という共通認識が広がっていると感じます。

こうした準備を経て、面接では1次も2次も人事・採用担当者と部門側が一緒に動いています。どんな質問に対しても具体的かつ的確に回答できるようにすることで、採用候補者への安心にもつながっていると感じていますね。

 

——面接官トレーニングはもちろん大切だと思うのですが、丁寧に進めている分だけ選考スピードが落ちてしまう懸念はありませんか?

築澤氏:私たちは、拙速に選考を進めたり、結果を出したりするべきではないと考えています。採用候補者の理解度に合わせて通常の選考フローに加えてカジュアル面談を実施することもあります。

引く手あまたのハイクラス人材の採用にあっては、最初の接点を持つ現場の人間も人事・採用担当者も、そして経営層も含めて同じ価値観を持っていることを採用候補者に伝えることが必要だと思うんです。それが他社との差別化につながり、入社動機を高めることにもつながっていくのではないでしょうか。

もちろん、選考のスピードを早める努力を同時に行わなければなりません。当社の場合、人事・採用担当者と配属予定部門の担当者、事業責任者が別の拠点にいるケースも少なくないため、コロナ禍以前は面接調整が非常に難航し、人事・採用担当者が年中全国を飛び回っている状況でした。

現在は、オンラインで面接を実施するようになり、日程調整がスムーズになったことに加え、上記で触れたカジュアル面談についても数日で調整できるなど、柔軟に対応できるようにしています。

入社まもない段階での「組織長就任」も。ハイクラス人材が早期に活躍できる理由とは

——実際の採用事例についてもお聞かせください。

築澤氏:インダストリー事業の領域では、センシングや機能材料、光学コンポーネント、インクジェットなどの事業に横串を通し、新たな価値を生む事業開発ポジションの採用に成功しました。採用に至ったのは、前職で外資系メーカーに勤め、事業開発の最前線で活躍していた方です。2023年度からは組織長に就任してもらう予定です。この方の選考でも、丁寧にカジュアル面談を行って情報提供してきました。

他には自動車外観検査ソリューションのエンジニアやヘルスケア事業の海外マーケティング担当、インクジェットの産業用途拡大に向けた回路設計エンジニアなど、直近でもさまざまなポジションの採用が進んでいます。

——入社後まもないタイミングで重要な役割をオファーしているのですね。

築澤氏:はい。当社にはキャリア入社の方が早い段階で成果を出せる風土があります。

背景には、20年前に旧コニカと旧ミノルタが合併して新会社となった際、互いの出身母体による派閥が生まれず、スムーズに融合できたことがあると思っています。当時は人事制度の全てを刷新し、ゼロからコニカミノルタとしての評価制度を作り上げました。出身母体によって優遇されることなく、公平にスタートできたのです。

現在では外部出身者を受け入れる風土が醸成されており、ハイクラス人材とプロパー社員との間にハレーションが起きることもありません。どこの部署も当たり前のようにキャリア入社の人がいて、カジュアル面談などの場で「リアルなキャリア入社ストーリー」を語ってもらえることも強みになっています。

 

——お話ありがとうございます。今後はどのような採用戦略を描いていますか?

築澤氏:会社としては2025年をひとつの目標到達点として事業ポートフォリオ転換を進めています。人事としては社内の人財シフトにも取り組みつつ、引き続き外部からのハイクラス人材採用を強化していく計画です。同時に、次世代のリーダー人財をグローバル規模で人選し、育成も加速していきたいと考えています。

取材後記

人材紹介会社の担当者との関係性を強化する取り組みに関連して、築澤氏は「採用においても企業の説明責任が求められる時代だと思う」とも話していました。採用候補者の書類通過率が低く、なかなか選考が進まないポジションがある場合、築澤氏は「自分たちが必要な情報を伝えきれていない」と考え、コミュニケーションを見直していくそうです。この姿勢があるからこそ、同社の採用に関わる担当者の皆さんがコニカミノルタのファンになり、採用候補者へ熱意を持ってコニカミノルタを勧める好循環につながっていくのだと感じました。

企画・編集/白水衛(d’s JOURNAL編集部)、野村英之(プレスラボ)、取材・文/多田慎介、撮影/塩川雄也

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