東京電力が実践するハイクラス人材採用ノウハウ。「事業の意義と未来」への共感を得ることで迅速な採用決定へ

2023.01.25
東京電力ホールディングス株式会社

稼ぐ力創造ユニット 組織・労務人事室 人財・組織開発センター 採用グループ マネージャー 能勢 晃太朗(のせ・こうたろう)

2002年に新卒で技術系職として入社。鉄塔や送電線のメンテナンス業務を務めたあと、総務・法務室で防災対策の総括業務を経て、公益社団法人 福島相双復興推進機構へ出向。 2022年7月より現職。

社会の変化に対応すべくハイクラス人材を積極募集
大事なことは「事業の意義と未来」を深く理解いただくこと
スピード重視のハイクラス人材採用、採用決定まで2〜3週間の例も

採用市場での希少性が高く、人材獲得の難易度が高いハイクラス人材を採用するためには何が必要なのか。そのヒントを探るために東京電力ホールディングスの取り組みを取材しました。

同社では福島第一・第二原子力発電所の廃炉プロジェクト推進や新規事業創出など、長期的な事業計画を担うハイクラス人材の採用を強化しています。一方、その採用活動においては「採用候補者に事業の意義を知ってもらうこと」が大きな課題となっています。課題を乗り越えるための鍵となるのは、外部の人材紹介サービス各社とのコミュニケーション。その実践知を聞きました。

社会の変化に対応すべくハイクラス人材を積極募集

——貴社が採用を強化している背景についてお聞かせください。

 

能勢氏:東京電力ホールディングスでは従来の既存事業に加えて、当社の使命である福島第一・第二原子力発電所の廃炉プロジェクト、再生可能エネルギー事業の拡大、DX推進などに取り組んでいます。また長期的な成長に向けた新規事業創出も急務であり、社会の急激な変化に対応するための人材を積極的に募集しています。

——特に強く求めているポジションは。

能勢氏:ポジションとしては多岐にわたります。原子力や再生可能エネルギー関連など、当社の事業にダイレクトに活かせる経験を持つ人はもちろん、海外事業の経験を持つ人も有力な採用候補者です。こうした分野の事業会社や、コンサルティングファームからの転職も歓迎しています。

——ハイクラス人材に寄せる期待と、メンバークラス人材へ寄せる期待ではどのような違いがあるのでしょうか。

能勢氏:まずメンバークラス人材の場合は、これまでに経験してきた職種における仕事そのものの成果を重視しています。

それに対してハイクラス人材の場合は、マネジメント経験なども含めた「事業への貢献度」を丁寧に見極めたいと考えています。20代の、一般的には若手と見なされる年代の方であっても、これまでに事業貢献を成し遂げてきた人は当社にとってのハイクラス人材です。

ただ、過去に携わってきたプロジェクトの規模や予算を重視するわけではありません。「何に関わってきたのか」よりも、「そのプロジェクトでどんな役割を果たし、どんなふうに貢献してきたのか」が大切だと考えているからです。

また、ハイクラス人材候補の職務経歴書では「プロジェクトリーダーを経験し…」といった記載をよく見かけますが、リーダー経験があること自体を評価するのではなく、実際にどんなリーダーシップを発揮してきたのか、マネジメントの観点でどのように事業に貢献したのかを深掘りして聞かせていただいています。

実際に入社いただいているハイクラス人材の出身業界や業種はさまざまですし、前職企業の売上や従業員数などの規模感も幅広いです。

大事なことは「事業の意義と未来」を深く理解いただくこと

——こうしたハイクラス人材の採用活動に当たって、貴社が課題としている点があればお聞かせください。

 

能勢氏:率直に申し上げて、2011年の東日本大震災以降は当社へ応募してくださる方の数が全体的に減少傾向にあります。廃炉プロジェクトは当社にとって最重要の取り組みです。この業務に携わることの意義をどのように伝えていくかが大きな課題だと認識しています。

そもそも、廃炉プロジェクトや原子力関連事業に直結する経験を持つ人材は、労働市場全体を見ても非常に少ないのです。具体的には重電メーカーでの業務経験を有する人などが対象となりますが、この業界は人材の流動性が低いという特徴もあります。

——この課題を乗り越えるために、どのような取り組みを進めているのでしょうか。

能勢氏:採用活動に協力してくださる外部パートナーとのコミュニケーションを強化しています。特に採用候補者との接点になっていただく人材紹介サービス各社のキャリアアドバイザーの方々に向けては説明会を実施し、廃炉プロジェクトを中心に、当社の事業に携わる意義をご理解いただけるよう努めています。

「廃炉」と聞くと、いずれはクローズしていく事業だとイメージする人も多いかもしれません。しかし実際の現場では、日々世界の英知を集めて研究開発を進めています。数十年先までを見据えた長期的なロードマップの中で、新しい知見を蓄積していけるよう動いているのです。

廃炉プロジェクトは世界にも前例がない取り組みであり、将来的には当社が中心となって蓄積した知見を海外へ輸出できるようになるかもしれません。廃炉プロジェクトは大きな可能性を持つ事業であるとも言えます。

こうした業務に携わることの意義を、キャリアアドバイザーの方々を通じて採用候補者に伝えていただくべく、まずは私たちからの発信に注力しているところです。また、一方でどのような情報を開示すれば採用候補者となる人材が興味を持ってくれるのか。伝えるべき情報の質に関するコミュニケーションも大切にしています。

スピード重視のハイクラス人材採用、採用決定まで2〜3週間の例も

——直近でハイクラス人材の採用に成功した事例についてもお聞かせください。

能勢氏:プロジェクトマネジメント職として入社したHさんの例をご紹介します。

Hさんは学生時代からエネルギー分野を専攻し、重電メーカー2社でさまざまなプロジェクト推進を経験。原子力に関する案件にも従事してきました。これからはプロジェクト全体のマネジメントを司る元請けの立場で事業課題に挑戦したいという希望を持っており、入社後のキャリアイメージも明確だったので採用決定しました。

入社からまだ日は浅いのですが、Hさんは廃炉プロジェクトの目的や業務内容をしっかりと理解した上で、早速、福島第一原子力発電所の視察に赴くなど現場で活躍してくれています。

 

——Hさんを採用できたポイントは、どこにあったのでしょうか?

能勢氏:一つは先ほど申し上げたように、キャリアアドバイザーの方々と情報を密に共有し、廃炉プロジェクトの現状や可能性を理解していただいた点だと考えています。当社に応募いただいた段階からプロジェクトに挑戦する意欲が強く感じられました。

また、東京本社だけでなく原子力発電所の立地県で勤務する可能性もあるため、そうした拠点の職場環境や生活環境などについても詳細に伝えていただきました。また、当社の採用フローにおいては面接を2回実施していますが、1次面接から2週間以内に最終面接を行うなど素早い対応を心がけました。

丁寧なフォローをしていただくことで当社も迅速な対応ができるようになり、それがお互いの信頼関係を強め、Hさんの志望度を高めることにもつながったのではないかと思っています。

——かなりスピーディーな選考プロセスですね。

能勢氏:はい。引く手あまたのハイクラス人材採用では特にスピード重視で対応しています。人材紹介サービス各社の支援の下、選考フローの入り口から採用決定までの期間を極力短縮したいと考えています。早いケースでは、2〜3週間で採用決定に至ることもあります。

加えて重要なのが採用決定後のフォローです。廃炉プロジェクトについては、事業への理解を深めていただくため、職場見学などを実施して入社予定者の持つイメージのギャップなどをなくしていけるよう努めています。

——Hさんをはじめ、入社したハイクラス人材にはどのような動きを期待していますか?

能勢氏:Hさんには、ぜひ廃炉プロジェクトを引っ張る中心的存在になってもらいたいと思っています。

プロジェクトに加わったハイクラス人材が社内にはない知見や視点をもたらしてくれることは、新卒入社の若手人材にとっても大いに刺激となっているようです。ハイクラス人材の活躍は、組織全体にポジティブな影響を与えています。

事業成功の鍵は言うまでもなく人です。既存事業はもちろん、新規事業もけん引してもらえるよう、私たちもハイクラス人材が活躍できる環境づくりをさらに進めていきたいと考えています。

 

取材後記

採用市場において、事業の価値や企業としての思いを粘り強く伝えていくことがいかに重要なのか、東京電力ホールディングスの取り組みからまざまざと感じさせられました。事業の中心的存在となってもらうことを前提としたハイクラス人材の採用では殊更ではないでしょうか。日頃、人材紹介サービス各社とどのようにコミュニケーションを図っているのか。まずはここから振り返ってみるべきなのかもしれません。

企画・編集/白水衛(d’s JOURNAL編集部)、野村英之(プレスラボ)、取材・文/多田慎介、撮影/安井信介

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