スカウトメール活用ガイド|例文付きで反応率を高める書き方を解説

d’s JOURNAL編集部

自社が求める人材に対して企業が直接アプローチする際に用いられる、スカウトメール。「どのような書き方だと、求職者の心に響くのか」「返信率を上げるにはどうしたらよいか」などを知りたい人事・採用担当者も多いでしょう。

この記事では、スカウトメールの活用ステップや作成時のコツ、返信率を上げるテクニックなどを紹介します。例文も掲載していますので、参考にしてください。

スカウトメールとは

スカウトメールとは、自社の求人への応募を促すことを目的に、企業が求職者に対して送信するメールのこと。求職者が登録している転職サイトのデータベースから自社が求める人材を見つけ出し、そこからスカウトメールを送るという方法が一般的です。

求職者から返事があった場合には、企業側と求職者で連絡を取り合いながら、採用プロセスを進めていきます。

スカウトの仕組み

スカウトメールが注目される背景

スカウトメールが注目される背景には、「求人を出し、求職者からの応募を待つ」という従来の「待ちの採用」では人材獲得が困難になっているという状況があります。

近年、少子高齢化による労働人口の減少に伴い、有効求人倍率が高い状況が続いています。企業間での採用競争が激化しているため、「待ちの採用」では自社にとって必要な人材を他社に獲得されてしまう可能性があるのです。

こうした状況を受け、「待ちの採用」に代わって「攻めの採用」が注目されるようになってきています。「攻めの採用」とは、企業から求職者に連絡を取り、応募を促すという採用手法のこと。スカウトメールも「攻めの採用」の一つであるため、関心が高まっています。

ダイレクト・ソーシングとの違い

スカウトメールと混同されがちなのが、「ダイレクト・ソーシング(ダイレクトリクルーティング)」です。ダイレクト・ソーシングとは、企業の経営者、事業責任者、人事・採用担当者が、その企業にマッチした人材を自ら探し、直接アプローチする採用手法のこと。

スカウトメールもダイレクト・ソーシングの一つです。その他、SNSを利用した採用手法である「ソーシャルリクルーティング」や、自社の従業員から友人・知人を紹介してもらう「リファラル採用」も広義の意味ではダイレクト・ソーシングに含まれます。

このように、ダイレクト・ソーシングではさまざまなチャネルを活用しますが、中でも、最も主流な方法とされているのが、スカウトメールです。
(参考:『攻めの採用「ダイレクト・ソーシング(ダイレクトリクルーティング)」とは?』『リファラル採用とは?導入のメリット・デメリット、運用のポイントを紹介』)

スカウトメールの種類

スカウトメールの種類は、「不特定多数」に送るものと「特定求職者」に送るものとがあります。それぞれの特徴について、紹介します。

不特定多数への配信メール

「不特定多数への配信メール」は、年齢、経験職種、取得している資格など一定の条件で絞り込んだ求職者に対して送信するものです。転職サイトに登録している求職者のうち、一定の条件を満たす方たちに対し、広くアプローチすることを目的としています。

「不特定多数への配信メール」では、一度に大勢にアプローチできるため、「母集団形成」に有効です。また、ターゲット群ごとに、メール文面をカスタマイズすることもできます。一方で、不特定多数を対象としているため、「画一的な内容になりやすく、特別感を演出できない」「メールの開封率・返信率が低い傾向にある」という課題もあります。

特定求職者への配信メール

「特定求職者への配信メール」は、「自社にぜひ入社してほしい」という特定の求職者に対し、個人ごとに文章を作成し送信するものです。企業が本当に求める人材に、個別で直接アプローチをかけることを目的としています。

「企業が求める条件を全て満たす人材は限られる」「メールの文面を個別に考える必要があるため、手間がかかる」という課題はあるものの、どうしても話してみたい候補者がいる場合にはとても有効です。

また、「全候補者には公開していない情報を、特定の候補者にのみ伝える」「特定の候補者の経歴・職歴を意識した文面を作成する」といったことが可能で、「特別感」を演出できます。そのため、「不特定多数への配信メール」に比べ、返信率が高い傾向にあります。

スカウトメールが有効な3つの場面

スカウトメールの活用が有効な場面としては、「高度なスキルのある専門職を採用したい場合」「企業や職種の認知度が低い場合」「少しでも早く人材を補充する必要がある場合」の3つが挙げられます。それぞれについて、見ていきましょう。

高度なスキルのある専門職を採用したい場合

まず挙げられるのが、IT関連職種や医療関係、建築関係の職種といった高度なスキルのある専門職を採用したい場合です。こうした職種は総じて求人倍率が高く、なかなか応募が集まりません。職種によっては、求人を出しても反響がまったくないということも珍しくないでしょう。

このような職種を採用したい場合、スカウトメールを送って求職者に直接アピールすることで、応募につながる可能性を高めていくことができます。

企業や職種の認知度が低い場合

企業や職種の認知度が低い場合にも、スカウトメールが効果的です。中小企業やBtoB事業がメインの企業の場合、求人を出しても自社を検索する求職者が少なく、応募が集まりにくい傾向があります。

また、求職者は「自分が働きたい職種」でも検索をかけるため、職種の認知度が低い場合も検索されにくく、応募があまり見込めません。例えば、「営業」と検索する人に比べ、「インサイドセールス」「アウトサイドセールス」「カスタマーサクセス」と検索する人は少ないでしょう。

このような場合でも、スカウトメールを送ることにより、「自社の求人は、あなたの条件に合致している」「あなたの職歴は、自社の募集職種で活かすことができる」といったメッセージを直接伝えられます。それにより、応募につながる可能性を高められるでしょう。

少しでも早く人材を補充する必要がある場合

少しでも早く人材を補充する必要がある場合にも、スカウトメールは有効です。急ぎで人材を獲得したいときに応募をただ待っていては、必要とする期日までに十分な人数を採用できない可能性があります。

人材を急募したい場合、スカウトメールで直接連絡を取ることで、迅速に採用プロセスを進められます。企業からアプローチをしなかった場合に比べ、必要とする期日までに十分な人数を確保できる可能性が高まるでしょう。

スカウトメール活用のステップ

スカウトメールを活用するにはどういったステップが必要かを、順を追って紹介します。

スカウトメール活用のステップ

ターゲットの人物像を明確化する

スカウトメールは、一定の条件を満たす特定個人に対するアプローチ手法であるため、まずはターゲットの人物像を明確化する必要があります。これをしないと、その後のステップがうまくいかないため、確実に行いましょう。スカウトメールを送る相手の年齢、職種、これまでの業務経験、保有するスキル、希望職種などを詳細に設定しておくことが重要です。

ターゲットにとっての自社の魅力を考える

次に、「ターゲットにとっての自社の魅力は何か」を考えます。自社の「給与・賞与」や「休日・休暇」「募集ポジション」「仕事内容」「社風」に、ターゲットにとって魅力となるものがないか洗い出しましょう。何を魅力と感じるかは人それぞれですが、以下のようなことを魅力と感じる方が多いと考えられます。

ターゲットにとって魅力となりうるもの

給与・賞与:業界平均よりも高月給である、高年収が見込める、毎年賞与を安定して支給している実績がある など
休日・休暇:完全週休2日制、土日祝日休み、連続5日間以上の休暇が取得可能 など
募集ポジション:幹部候補採用、将来のポジションアップを見据えた採用 など
仕事内容:仕事の意義、やりがい、規模感・影響力 など
社風:風通しの良さ、雰囲気の良さ など

自社の魅力を洗い出した上で、ターゲットごとに伝えるべき魅力をピックアップすることで、効果的なスカウトメールが作成しやすくなるでしょう。

ターゲットへの伝え方を決める

「伝えたい人物」と「伝えたい内容」が決まったら、最後に「どのように伝えれば、応募を促すことができるか」を考えましょう。メールの件名・本文の書き方を工夫することで、自社の魅力が伝わりやすくなります。なお、スカウトメール作成時の具体的なコツは後ほど紹介しますので、そちらを参考にしてください。

上述の通り、「誰に」「何を」「どのように」伝えるのかを明確にした上で、スカウトメールを送りましょう

スカウトメールではカジュアル面談を案内

求職者の目線で考えると、スカウトメールが届いた段階ではまだ志望度が低く、企業理解もできていません。そうした状態でいきなり選考に進んでもらおうとすると、「選考に進む心理的ハードルが高く、断られてしまう」「企業と求職者の間でミスマッチが生じやすくなる」といった事態に陥る可能性があります。

そこでおすすめしたいのが、「カジュアル面談」の案内です。カジュアル面談とは、企業と応募者がお互いをよく知るため、気軽に対等な立場で話し合う場のこと。選考の前段階として人事・採用担当者と求職者の1対1で行うのが基本で、その場で合否を決定することはありません。そのため、通常の選考プロセスを案内するよりも、求職者の心理的ハードルを下げられます。

スカウトメールの最後の方に、「●●について、15分程度ざっくばらんにお話ししませんか?」というような文面を記載し、カジュアル面談を提案するとよいでしょう。
(参考:『カジュアル面談とは|導入メリットや面談の流れを解説【質問集付き】』)

【例文あり】スカウトメール作成のコツ

スカウトメールの作成に当たって最も重要なのは、「あなただけにお伝えしています」「あなたにだからこそ伝えたいと思いました」といった「特別感」を持って、1対1でやり取りすることです。どのようにスカウトメールを作成したらよいのか、メールの「件名」および「本文」の書き方の例を見ていきましょう。

メール件名の書き方の例

メール件名については、相手の名前や業務経験などを入れることで、「あなたのプロフィールをしっかり確認した」「あなたにだけ送っている」という印象を与えるようにしましょう。

良いスカウトメールの例文

(例1)
【限定案内|(社名)】●●様のプロフィールを拝見しました

(例2)
【▲▲の経験をお持ちの●●様への特別オファー】新規事業の立ち上げメンバーとして活躍しませんか?

悪いスカウトメールの例文

(例1)
残業少なめ!ノルマなし!営業職を募集

(例2)
●●様の経験を当社でぜひ活かしてください!

「悪いスカウトメール」の1つ目の例文では、「他の人にも同様のメールを送っている」ということが伝わってしまいます。また、同じく2つ目の例文では、業務経験に関する具体的な記載がないため、「本当にプロフィールを確認しているのか」と疑念を持たれてしまう可能性があります。こうした件名にならないよう、注意しましょう。

メール本文の書き方の例

親近感を持ってもらえるよう、メール本文にも相手の名前を記載しましょう。また、メールを最後まで読んでもらうために、会社から伝えたいことについては端的に伝えるよう意識することも大切です。

良いスカウトメールの例文

●●様、はじめまして。
○○社の採用担当をしております■■と申します。

●●様のご経歴を拝見し、ぜひ一度お話をさせていただきたいと思い、ご連絡させていただきました。理由としては、●●様の▲▲のご経験から、弊社が募集している△△のメンバーとしてご活躍いただきたいと考えているためです。

今回△△の職種をご希望されているとのことですが、●●様のご期待に沿える環境がご提供できると思っております。

(※どのような環境を提供できるかを、端的に記載)

今回の募集は広く公開しておらず、弊社が選考にお呼びしたいと思った方だけに特別にご連絡しております。今回の募集に関して、●●様にご興味をお持ちいただけるとうれしいです。

弊社は、◆◆な社風で、◇◇という目標の下、社員同士で切磋琢磨している会社です。

もし、具体的な業務内容や会社の詳細についてお知りになりたい場合は、求人票と弊社ホームページをご覧いただけると幸いです。

(会社HPのURLリンクを載せる)

他にもお伝えしたいことがありますが、まずは一度直接お話しさせていただければと思っています。

お返事いただければ、こちらからカジュアル面談の日程調整のご案内をお送りします。もし、「すぐにでも選考に進みたい」というご要望がありましたら、ご遠慮なくその旨をお伝えください。

それでは、●●様からのお返事を心よりお待ちしております!

悪いスカウトメールの例文

はじめまして。○○社の採用担当です。

弊社は、▲▲事業をメインに、さまざまな商品・サービスを展開しています。また、業界トップクラスの規模を誇り、年間売上は◆億円を達成。社長の■■は多くの新聞、雑誌に取り上げられています。社員数は年々増えており、会社の成長も著しいため、今後も新規事業を立ち上げていく予定です。

今回の募集職種は、経験不問です。明るく楽しく働いてくださる方であれば、歓迎します。

ご興味をお持ちいただけましたら、当社HPの求人ページより、詳細情報をご覧ください。

それでは、あなたのご応募お待ちしております。

「良いスカウトメール」の例文では、「あなただけに送っている」という特別感が伝わります。また、「会社や募集職種などの紹介をできるだけ端的にしている」「会社HPのURLを載せている」「今後についての案内を載せている」といった工夫もあり、相手に好印象を与えられるでしょう。

一方、「悪いスカウトメール」の例文では、「他の人にも同じメールを送っている」ことが明らかです。また、「会社説明が長過ぎて、最後まで読む気になれない」「どういう人材を必要としているのか伝わらない」「会社HPのURLを掲載しておらず、不親切」などの問題もあります。

スカウトメールを送る前に、「悪いスカウトメール」の例文と同じようになっていないか、慎重に文面を確認しましょう。

スカウトメールの開封率・返信率を上げるテクニック

「スカウトメールの開封率・返信率が今ひとつ」という悩みを抱えている人事・採用担当者もいるでしょう。スカウトメールの開封率・返信率を上げるには、「新規登録者へのアプローチ」「開封されやすい時間帯でのメール送信」という2つのテクニックを用いることが大切です。

新規登録者からアプローチする

スカウトメールの開封率・返信率を上げるには、新規求職者から優先してアプローチするのが効果的です。転職サイトに最近登録したばかりの求職者は、転職活動への熱度や転職意欲が高いため、気になる求人があれば積極的に転職活動を進める傾向があります。

そのため、データベースから新規登録者を見つけ、いち早くアプローチすることにより、スカウトメールの開封率・返信率が高まるでしょう。同様の求人を出している他社に先を越されてしまわないよう、「自社の募集条件に合致する新規登録者がいないか」をこまめに確認することをおすすめします。

開封されやすい時間帯にメールを送信する

スカウトメールの開封率・返信率を高めるには、開封されやすい時間帯にメールを送信することも大切です。開封されやすい時間帯は業種によりけりですが、一般的には「出勤時間帯(8:00~9:00ごろ)」「ランチ時間帯(12:00~15:00ごろ)」「帰宅時間帯(17:00~18:00ごろ)」の開封率が高いとされています。

なお、夜遅い時間帯にメールを送ってしまうと、「残業が当たり前のブラック企業ではないか」といった印象を与えかねないため、注意が必要です。

スカウトメールの企業インタビュー事例

スカウトメールの活用方法やコツなどについて詳しく知りたい方もいるでしょう。そこで、スカウトメールの活用方法・コツについてインタビューした企業事例を紹介します。

株式会社ネオキャリア

株式会社ネオキャリアの宇田川 奈津紀氏は、スカウトメールによる採用を成功させるための事前準備として、「会社の魅力理解」「現場ヒアリング」「採用戦術の見極め」「スカウト権限の委譲」を挙げています。

事前準備のポイント

会社の魅力理解:競合他社との比較から「事業内容の理解」を深める。その際、「自身が入社した理由」を思い返すと会社の魅力を見つけやすい。
現場ヒアリング:十分に理解するまでミーティングを重ね、現場との信頼関係を築く。
採用戦術の見極め:求人の優先度と難易度(市場感・マーケット感)を踏まえ、採用戦術を組み立てる。
スカウト権限の委譲:現場とのすり合わせをしっかり行い、職務への理解を深めた上で、現場責任者からスカウト権限を委譲してもらう。

スカウトメールを作成する際には「配信までの工数」ではなく「内定までの工数」を重視し、メールの文面をフルカスタマイズ。テンプレを活用する場合に比べ「配信までの工数」はかかるものの、返信率・内定率が上がるため「内定までの工数」の大幅短縮が可能です。

また、メール文面を書く際の公式として、「インスパイア」「オリジナリティ」「プライオリティ」を提唱。この3つの要素を取り入れることで、相手の気持ちを動かせると言います。

相手の気持ちを動かす3つの要素

インスパイア:日常に流れている曲の表現方法を文面に取り入れるなど、常にアンテナを張る
オリジナリティ:文面のフルカスタマイズはもちろんのこと、「競合にはない自社の魅力」をきちんと盛り込む
プライオリティ:「あなただから」「あなたならでは」という差別化(アドオン)を盛り込む

(参考:『例文あり◆未経験者だって2週間あれば内定承諾。返信率が上がるメスライオン流スカウトメール術』)

LAPRAS株式会社

元LAPRAS株式会社の島田 寛基氏は、「知らない会社からスカウトメールが来ても転職潜在層は動いてくれない」と指摘。採用をマーケティング活動として捉え、「認知」や「興味喚起」ができていない方たちにスカウトメールを送信しても、転職顕在層はともかく、転職潜在層はまず反応してくれないと言います。

こうした課題を解決するには、「認知」「興味喚起」「カジュアル面談」「選考」というファネルを可能な限り平らにできるような新ツール・サービスが必要と考え、「TRM(Talent Relationship Management、タレント・リレーションシップ・マネジメント)」を構想中。

「TRM」とは、自社の候補者データベース(タレントネットワーク)上で展開できる採用概念のことです。これを活用できれば、「自社採用サイトに来た人だけにスカウトメールを送る」ということも可能になると言います。

(参考:『やみくもに配信されるスカウトメールは終わりを迎える―「マーケティング視点」で採用は更なる進化へ』)

まとめ

スカウトメールを活用する際は、「誰に」「何を」「どのように」伝えるのかを明確にしておく必要があります。また、メール作成に当たっては、件名や本文の書き方を工夫し、「あなたにだけ・あなただからこそ」という特別感を持たせることが重要です。

開封率・返信率を高めるには、「新規登録者へのアプローチ」「開封されやすい時間帯でのメール送信」というテクニックを使うことをおすすめします。今回紹介した例文も参考にスカウトメールを送信し、自社が求める人材の獲得につなげましょう。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、編集/d’s JOURNAL編集部)

求職者への”口説き方”が分かる!職種別採用DM文例集

資料をダウンロード