ポジティブフィードバックとは|やり方や具体例・4つのメリットを解説

d’s JOURNAL編集部

相手の行動の「良かった点」に着目し、肯定的な言葉を用いてフィードバックする、ポジティブフィードバック。「ポジティブフィードバックにはどのようなメリットがあるのか」「部下へのポジティブフィードバックはどのようにしたらよいのか」などを知りたい方も多いでしょう。

今回はポジティブフィードバックの4つのメリット、やり方、シーン別の具体例、注意事項などを紹介します。

ポジティブフィードバックとは

ポジティブフィードバックとは、相手の行動について「良かった点」を評価し、肯定的な言葉を伝えることで相手の成長を促すフィードバックのこと。なお、フィードバックとは、口頭や文章などで行う指摘・評価のことを意味します。

ポジティブフィードバックという言葉は、「看護」や「医学」「ビジネス」において用いられます。

看護におけるポジティブフィードバック

看護の現場においては、チーム一丸となって、より良い医療を提供していくことを目的に、ポジティブフィードバックを行います。

看護の仕事には「患者の命を預かる」という重要な役割があるため、看護師や医師、薬剤師などからなるチームメンバーが連携し、患者一人ひとりに寄り添っていくことが大切です。そのため、ポジティブフィードバックにより、「メンバーのモチベーション向上」や「チーム内での認識共有」「提供する医療のブラッシュアップ」などを図っていく必要があります。

医学におけるポジティブフィードバック

医学においては、「肯定的な」という意味合いでの体の反応を表す言葉として、ポジティブフィードバックが用いられます。具体例としては、以下のようなものがあります。

●怪我をした際、化学物質が血小板を活性化→活性化された血小板からの化学物質放出→血小板がさらに活性化→血液が凝固
●下垂体後葉からのオキシトシン分泌→子宮収縮→神経反射を介して間脳を刺激→オキシトシンがさらに分泌→子宮収縮→分娩

ビジネスにおけるポジティブフィードバック

ビジネスにおけるポジティブフィードバックとは、「成長促進」を主な目的に、相手の「良かった点」を評価し、ポジティブな言葉で伝えるフィードバックのこと。上司と部下との定期的な「1on1」や「フィードバック面談」などにおいて、ポジティブフィードバックが用いられます。

今回の記事では、「ビジネスにおけるポジティブフィードバック」にフォーカスして紹介します。

ネガティブフィードバックとの違い

「ポジティブフィードバック」と相対するのが、「ネガティブフィードバック」です。ネガティブフィードバックとは、相手の行動について「改善すべき点」を指摘し、成長を促すフィードバックのこと。

ポジティブフィードバックとネガティブフィードバックの一番の違いは、コミュニケーションの方向性です。ポジティブフィードバックでは「肯定的」にコミュニケーションを取るのに対して、ネガティブフィードバックでは「否定的」にコミュニケーションを取ります

「資料の提出が遅れたものの、資料そのものの完成度は高かった」というシーンを例に、ポジティブフィードバックとネガティブフィードバックを比較してみましょう。

■ポジティブフィードバックの例文
内容がしっかりまとまっている資料で読みやすかったです。今後は、提出期限も頭に入れた上で、質の高い資料を引き続き作成していけるとよいですね。

■ネガティブフィードバックの例文
いくら内容がしっかりしていても、提出期限を守れないのは問題です。今後は、内容にこだわるのはほどほどにして、提出期限を厳守してください。

上の例文からもわかるように、ポジティブフィードバックとネガティブフィードバックでは、フィードバックされた相手の受け止め方(感情)も大きく異なります。また、フィードバックの「目的」「効果」「注意点」についても両者には違いがあるため、伝える相手や状況によって使い分けることが大切です。

(参考:『ビジネスにおけるフィードバックとは?効果的な手法とポイントを紹介』)

ポジティブフィードバックの4つのメリット

ポジティブフィードバックにより、以下のようなメリットが期待できます。

ポジティブフィードバックのメリット
●部下と良好な関係を構築しやすい
●モチベーション向上につながる
●部下の成長を促進できる
●業務や目標の様子が伺いやすい

それぞれについて、見ていきましょう。

部下と良好な関係を構築しやすい

ポジティブフィードバックは、「上司と部下との会話が少ない」「上司と部下の間で信頼関係が構築されていない」といった悩みの解決に効果的です。1on1やフィードバック面談などにおいてポジティブフィードバックを定期的に行うことにより、上司と部下の会話の機会が増えます。

また、部下は上司が「自分のことを理解してくれている」「自分の仕事ぶりを認めてくれている」と感じ、上司に対して安心感・信頼感を抱くようになるでしょう。それにより、上司と部下の間で良好な関係を構築しやすくなります。

モチベーション向上につながる

自分の行動や結果を褒められるとうれしい気持ちになり、「もっと頑張ろう」と思えるようになるのは、人として当然のことです。ポジティブフィードバックにより、「あなたの仕事ぶりを高く評価しています」というメッセージを伝えることで、相手のモチベーションが自然と高まります。

加えて、仕事に対する自己評価は、自らの主観だけでなく、他者からの評価によっても影響を受けることがあります。ポジティブフィードバックにより「上司に高く評価されている」「上司から期待されている」と感じることで自己肯定感が高まり、部下は「上司の期待に応えたい」「もっと会社に貢献したい」と仕事に対して意欲的になるでしょう。

従業員エンゲージメントの高まりに伴い、定着率の改善(離職率の低下)も期待できます。

(参照:『【1分で解説】モチベーションアップには何が必要?従業員のモチベーションを上げる5つの方法』)

部下の成長を促進できる

ポジティブフィードバックによりモチベーションが向上し、仕事に意欲的になることで、部下の成長がおのずと促されます。

加えて、ポジティブフィードバックでは相手の「得意なこと(強み)」について言及するため、部下は自分自身の強みを認識できます。ときには、「自分では当たり前だと思っていたこと」や「強みだとはまったく思っていなかったこと」を「良いところ」として評価されることもあるでしょう。

自身の強みをしっかり認識することで、得意な部分をさらに伸ばしていけるようになります。そのため、ポジティブフィードバックを繰り返すことにより、部下の成長をさらに促進できるでしょう。

業務や目標の様子が伺いやすい

「ついつい、部下の『良いところ』よりも『悪いところ』に目が行ってしまう」という悩みを抱えている方も多いかもしれません。ポジティブフィードバックをするためには相手の行動を日頃から意識的に観察し、「良いところ」に気付く必要があるので、結果的に相手の業務状況やスキルなどを把握しやすくなるでしょう。

加えて、「肯定的な言葉」が用いられるという特性上、ポジティブフィードバックでは「上司と部下の対話」が自然と生まれます。上司から部下への一方的な指示・依頼にはなりにくいため、「どういったことを意識しながら、業務に取り組んでいるのか」「どのように目標達成をしていきたいか」などを正しく相互認識できるようになるでしょう。

相手の業務や目標について確認しやすくなることで、「組織の目標」と「個々人の目標」を関連づけやすくなるという効果も期待できます。

ポジティブフィードバックのやり方

ポジティブフィードバックにより、「部下との良好な関係の構築」「部下のモチベーション向上」などのメリットが期待できます。「良かった点を具体的に伝える」「行動だけでなく結果も褒める」「さらに良くなるための改善点・課題も伝える」という3点を意識して、ポジティブフィードバックをすることが大切です。

紹介した具体例や注意事項を参考にポジティブフィードバックを行い、相手の成長を促しましょう。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、編集/d’s JOURNAL編集部)

ポジティブフィードバックの際に活用できるフレームワーク

ポジティブフィードバックをする際は、「SBI型」や「サンドイッチ型」といったフレームワークを活用できます。

SBI型とは、状況を説明した上で具体的な行動をピックアップし、その行動に対する感想を述べる手法です。物事の原因と結果を順序立ててフィードバックするため、相手に内容を理解してもらいやすいという特徴があります。SBI型を活用してポジティブフィードバックすることで、「行動が結果にどうつながったのか」「なぜこの行動が良かったのか」がより伝わりやすくなるでしょう。

サンドイッチ型とは、ネガティブな内容をポジティブな内容に挟んでフィードバックする手法です。最初にポジティブフィードバックをした上で改善点を指摘し、最後にもう一度ポジティブフィードバックをして会話を締めます。会話の最初と最後にポジティブな内容を伝えることで、ネガティブな内容を伝えても相手のモチベーションを維持しやすいのが特徴です。

フレームワークの詳細や具体例について知りたい方は、こちらの記事をご確認ください。
(参考:『ビジネスにおけるフィードバックとは?効果的な手法とポイントを紹介』)

ポジティブフィードバックの具体例

ポジティブフィードバックの具体例を、3つのシーンに分けて紹介します。ポジティブフィードバックを行う際の参考にしてください。

シーン①:会議での発言について評価したいとき

会議での発言について評価したいときは、以下のようにフィードバックするとよいでしょう。

■具体例
「この前の会議のとき、誰も意見を出せずにいる状況の中で、みんながハッとなるような発言をしてくれて、ありがとうございました。●●さんのあの発言をきっかけに、みんなが積極的に意見交換できるようになったと思います。これからも、積極的に会議で発言してもらいたいです。」

シーン②:営業について評価したいとき

営業について評価したいときは、以下のようなフィードバックが効果的でしょう。

■具体例
「新規顧客の獲得目標が月10件のところ、先月は12件の新規顧客獲得で、営業目標を達成できましたね。飛び込み営業を毎日するという地道な営業が実を結んだのだと思います。今後も営業目標の達成に向け、引き続き営業を続けていきましょう。」

シーン③:新入社員への教育・指導について評価したいとき

新入社員への教育・指導について評価したいときは、以下のようにフィードバックするとよいでしょう。

■具体例
「新入社員の▲▲さんに対する教育を率先して進めてくれて、ありがとうございます。●●さんの指導のおかげで、▲▲さんのできる仕事が日に日に増えていっているように感じます。▲▲さんの早期戦力化に向けて、これからも親身な教育・指導をお願いします。」

ポジティブフィードバックの注意事項

ポジティブフィードバックをする際は、「褒めることに意識を向けすぎない」「本人と関連性のない事象を評価しない」「フィードバックの時間を空け過ぎない」という3点に注意することが重要です。それぞれについて、見ていきましょう。

褒めることに意識を向けすぎない

ポジティブフィードバックでは、褒めることばかりに意識を向けすぎないよう、注意する必要があります。なぜなら、ポジティブフィードバックはポジティブな言葉により相手の自信・自己肯定感の向上を図るものですが、その一番の目的は「成長促進」だからです。

相手の成長を促せるよう、言葉を選びながら改善点・課題もしっかり伝え、「何をどう改善していくべきか」を相手にしっかり認識してもらいましょう。

本人と関連性のない事象を評価しない

フィードバックする相手がほとんど関わっていない事象に関して言及すると、相手に「この人は自分の業務内容や普段の行動を正しく把握していないのでは」という不信感を与えかねません。そのため、本人との関連性がない・少ない事象について評価するのは避けましょう。

なお、本人と関連性のない事象を評価しないようにするには、個々人の業務内容や日頃の行動について関心をもち、把握しておくことが大切です。

フィードバックの時間を空け過ぎない

フィードバックのタイミングについても、注意が必要です。フィードバックのタイミングが遅くなってしまうと、相手がそのときの状況を忘れてしまうことも考えられます。そうした中でポジティブフィードバックを行っても、思うような効果は期待できないでしょう。

そのため、「フィードバックしたい内容が発生した直後」に伝えることが大切です。忙しくてそのような対応が難しい場合には、「隔週や月に1回」「プロジェクトが終わった直後」というように、定期的にフィードバックできる機会をあらかじめ確保しておくことをおすすめします。

まとめ

ポジティブフィードバックにより、「部下との良好な関係の構築」「部下のモチベーション向上」などのメリットが期待できます。「良かった点を具体的に伝える」「行動だけでなく結果も褒める」「さらに良くなるための改善点・課題も伝える」という3点を意識して、ポジティブフィードバックをすることが大切です。

紹介した具体例や注意事項を参考にポジティブフィードバックを行い、相手の成長を促しましょう。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、編集/d’s JOURNAL編集部)

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