早期離職が起こる理由とは|離職率の傾向や対策・改善事例を解説

d’s JOURNAL編集部

採用した社員が3年以内に辞めてしまう「早期離職」。早期離職が増えることにより、「採用・育成コストの高騰」や「既存社員のモチベーションの低下」などが懸念されます。新入社員の早期離職を防ぐための施策について、知りたい人事・採用担当者も多いのではないでしょうか。

この記事では、新入社員の離職率の傾向や早期離職が起きる原因、早期離職への対策について解説します。離職率が改善した企業の取り組み事例も紹介しているので参考にしてください。

新入社員が早期離職する実態

早期離職とは、採用した社員が3年以内に退職することです。仕事に慣れ、戦力として今後の活躍を期待する社員が辞めてしまうことは、企業にとって大きな問題と言えます。新入社員の早期離職は、近年どのように推移しているのでしょうか。

厚生労働省発表の資料に基づき、新規大卒就職者の早期離職の現状について見ていきましょう。

(参考:厚生労働省『新規学卒就職者の離職状況を公表します』2021年10月22日)

新規学卒就職者の就職後3年以内の離職率

2020年度における就職後3年以内の離職率は、学歴別、卒業年別とも、前年度に比べて若干低下しています。2018年3月卒業者の就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者で36.9%、新規大卒就職者で31.2%という結果でした。

新規学卒就職者の就職後3年以内離職率

【中学】  55.0%(▲4.8ポイント)
【高校】  36.9%(▲2.6ポイント)
【短大など】41.4%(▲1.6ポイント)
【大学】  31.2%(▲1.6ポイント)
※( )内は前年度差増減

(参考:厚生労働省『新規学卒就職者の離職状況を公表します』2021年10月22日)

新規大卒就職者の就職後3年以内離職率の推移を見ると、直近20年以上にわたって3割前後とほぼ横ばいで推移しています。この結果から、新規大卒就職者の早期離職が長年にわたり、企業にとっての課題となっていることがうかがえます。

新規大卒就職者の就職後3年以内離職率の推移
新規大卒就職者の就職後3年以内離職率の推移
(参考:厚生労働省『新規学卒就職者の離職状況を公表します』2021年10月22日)

事業所規模別の離職率

早期離職率は、事業所の規模によっても大きく異なります。新規大卒就職者の離職率を見てみると、事業所の規模が小さいほど離職率が高い傾向にあることがわかります。離職率が一番高い「5人未満」規模と、離職率が一番低い「1000人以上」規模を比較すると、2倍以上の開きがあります。

事業所規模別の離職率

(参考:厚生労働省『新規学卒就職者の離職状況を公表します』2021年10月22日)

産業別の離職率

離職率を産業別に見ると、2018年3月卒の新規大卒就職者で最も離職率が高いのは、「その他」で61.3%でした。次いで、「宿泊業・飲食サービス業」が51.5%、「生活関連サービス業・娯楽業」が46.5%、「教育・学習支援業」が45.6%などとなっています。一方、最も離職率が低いのは、「電気・ガス・熱供給・水道業」で11.1%でした。次いで、「鉱業・採石業・砂利採取業」が11.5%、「製造業」が19.0%となっています。

サービス業の早期離職率が高い背景としては、「他業種より賃金水準が低い」「労働時間が長く、休日・深夜勤務も発生する」「土日祝日に休みづらい」などの原因が考えられます。

産業別の離職率
(参考:厚生労働省『新規学卒就職者の離職状況を公表します』2021年10月22日)

早期離職が起こる原因

ここまで近年における新入社員の早期離職の状況を見てきましたが、新入社員が離職を考えるきっかけや理由には、どのようなものがあるのでしょうか。2017年度に内閣府が実施した「子供・若者の意識に関する調査」では、初職(学校などを卒業または中途退学した直後の就業)の離職理由として下図のような結果が得られました。

初職の離職理由(複数回答可)
初職の離職理由
(出典:内閣府『特集 就労等に関する若者の意識』)

離職の理由として最も割合が高かったのは、「仕事が自分に合わなかったため」で43.4%でした。次いで、「人間関係がよくなかったため」が23.7%、「労働時間、休日、休暇の条件がよくなかったため」が23.4%、「賃金がよくなかったため」が20.7%と続きます。

また、離職理由の中で最も重要な理由についても、「仕事が自分に合わなかったため」が23.0%で最も多くなっています。次いで、「人間関係がよくなかったため」が10.0%、「結婚、子育てのため」が8.5%、「健康上の理由で勤務先での仕事を続けられなかったため」が7.0%という結果でした。

「離職の理由」「最も重要な理由」ともに「仕事が自分に合わなかったため」が一番多いことから、入社前に想像していた仕事内容と実際の仕事内容とのギャップが、早期離職を考える大きな要因となっていることがうかがえます。人間関係や労働条件の不満も、新入社員のモチベーションやエンゲージメントを低下させ、早期退職を招くでしょう。

早期離職が与える組織への影響

早期離職が組織に与える影響としては、「採用コストの高騰」「既存社員のモチベーション低下」「企業のイメージダウン」の3つが考えられます。それぞれについて、見ていきましょう。

採用コストの高騰

戦力となる前の段階で社員が早期離職してしまうと、今まで費やしてきたコストが無駄になり、企業にとって大きな損失となります。また新しい人材確保にも動く必要があり、求人掲載にかかる費用や選考のための人件費だけでなく、研修を実施するための教育コストもかかってきます。早期離職が度々発生するようでは、企業経営にも悪影響となるでしょう。

既存社員のモチベーション低下

早期離職は既存社員のモチベーション低下にもつながります。同僚の早期離職が増えると、「自社に何か問題があるのではないか」と考えてしまう既存社員もいるためです。また、離職者が担当していた仕事の引き継ぎなどで既存社員への業務負担が増えた結果、職場の雰囲気が悪化することも考えられます。

モチベーションの低下や職場の雰囲気の悪化により、連鎖退職につながる可能性もあるでしょう。

企業のイメージダウン

早期離職は、企業のイメージダウンにもつながります。早期離職が慢性化すると「離職者が多い=働きにくい会社」という印象を与えてしまうためです。

今や、求職者はSNSや口コミサイトなどで、企業の評判の良しあしを簡単に知ることができます。特に離職率などのネガティブな情報ほど広がるのが早いため、社外にネガティブな情報が拡散した結果、今後の採用活動に悪影響を及ぼす可能性があるでしょう。

早期離職が起こるのを防ぐには

早期離職を防ぐ方法としては、「採用ミスマッチの対策」「入社後のフォローの徹底」「労働条件や待遇の改善」の3つが挙げられます。それぞれについて、見ていきましょう。

採用ミスマッチへの対策

早期離職が起こる原因の一つは、採用のミスマッチです。採用の段階で自社の社風とマッチする人材を適切に把握できていないと、入社後のギャップにより離職につながる可能性が高くなります。採用ミスマッチの対策としては、「採用基準があいまいではないか」「採用基準の評価方法が不明確でないか」などを見直すことが有効です。

給与や休日などの労働条件については、企業説明会や内定時にわかりやすく説明することでミスマッチを防げます。企業文化や職場の雰囲気などは、面接で伝えるとよいでしょう。

(参考:『ミスマッチとは?新卒・中途採用の早期離職防止に有効な原因別の対処方法を紹介【資料付】』)

入社後のフォローの徹底

早期離職を未然に防ぐには、入社後のフォローを徹底することも大事です。入社後は「こんなはずではなかった」「思っていたのと違う」などのギャップが起こりやすいため、社員にある程度の実力がつくまではフォローしつつ、オンボーディングを充実させましょう。

オンボーディングとは、企業が新規採用した社員を対象として行う教育プログラムのことです。仕事の進め方や必要な知識、企業のルール、文化などを早期に身に付け、企業に早くなじんでもらうことを目的に、継続的に実施します。

また、社員が孤立しないように交流の場を整えるなどの対応も有効です。職場で同僚や上司と気兼ねなく交流できるよう、職場で各自が好きな席で働くフリーアドレス制の採用や、社内SNSやチャットツールの導入などを検討するとよいでしょう。

(参考:『オンボーディングとは?有効な施策や事例・導入プロセスについて解説<調査・対策資料付き>』『【成功事例付】フリーアドレスが向いている企業とは?オフィスへ導入前に押さえるべきポイント』)

労働条件や待遇の改善

労働時間や給与など、待遇面への不満が原因で早期離職が生じている場合には、労働条件の改善や福利厚生の導入などの待遇改善を検討しましょう。具体的な改善策としては、フレックスタイム制度や短時間勤務制度など、柔軟な働き方を選べるような制度の導入が有効です。

また、仕事の成果を人事評価や賞与に適切に反映させるための環境の整備も求められます。速やかに待遇を改善するのが難しい場合には、企業としてこれから待遇改善に取り組んでいく意欲があることを従業員に示すとよいでしょう。

企業としてのフェーズや企業を取り巻く環境によっては、上述の3施策全てを同時進行するのは難しい場合もあるのではないでしょうか。優先順位を見極め、できる施策から順番に進めていくことをおすすめします。

離職率(定着率)を改善した企業事例

では実際に、企業はどのような取り組みにより離職率(定着率)を改善しているのでしょうか。離職率を改善した3社の企業事例をご紹介します。

株式会社カーセブン デジフィールド

自動車の小売りと買い取りのFCチェーン「カーセブン」を展開している株式会社カーセブン デジフィールドでは、働き方改革の一環としてさまざまな施策を実践し、社員の離職防止や定着支援向上に努めています。2008年に42%だったという離職率は、2021年には7.9%と大幅改善を達成。入社3年以内の離職者はほぼゼロという状況です。

同社は「家族が起きている間に帰宅してもらうこと」の実践により、労働環境を改善。人事制度の賞与の評価項目に「生産性」を加え、残業時間が少ないと評価が上がる評価システムに変更したことで残業時間はほぼゼロとなり、その年の社員への賞与は大幅にアップしました。

また、社内教育研修予算を無制限に設定し、社員一人ひとりがスキルアップするためのフローを築いています。2018年にスタートした「奨学金支援制度」は、特に若年社員の離職を防ぐことに効果を発揮し、定着率の向上につながっています。

(参考:『残業時間を減らせば賞与大幅アップ!?業務・人事システムの刷新で離職率を7.9%に改善。カーセブンの人事戦略論とは』)

ユーザックシステム株式会社

BtoBパッケージソフトの開発・販売・サポートを行うユーザックシステム株式会社では、2017年から4年連続で「社員定着率100%」という数字を達成しています。

同社には「ヤングボード制度」という仕組みがあり、若手社員の意見を取りまとめ、さまざまな制度として業務運営に反映。若手社員自身が働きやすい環境をつくるプロセスに関与できるのが、この制度の特徴です。提案力向上の訓練や、業務上の改善点に気づく力を養う機会としても効果を発揮しています。

また、定着率において重視しているのが、1年目の若い社員に特化したメンター制度です。早い段階で新入社員のフォローができるため、離職防止につながっています。

(参考:『入社後のギャップが離職を高める1番の要因!?4年連続で社員定着率100%を達成した「ヤングボード制度」とは』)

ダイドードリンコ株式会社

缶コーヒーでおなじみのダイドードリンコ株式会社では、「生産性向上が、つまり業績向上につながる」との考えのもと、働きやすさを追求した独自の取り組みを実施しています。取り組みの例としては、午後の生産性を高めるために昼休憩時のうたた寝を許可する「カフェインナップ」や、社内のフラットなコミュニケーションを促進する「カジュアルワーク」などが挙げられます。

また同社では、社員の承認欲求を満たして付加価値を高めることが生産性向上につながるとしています。そのため、業務終了後に社長と会食する機会を設けて企業方針を社長が直接社員に伝える「Do meeting(オフサイトMTG)」の実施や、「家族あっての仕事」という意識から家族報『Fanpany』も刊行。さまざまな取り組みは早期離職を防ぐとともに、定着率向上も期待されています。

(参考:『ダイドードリンコの「採用ブランディング」と「定着」への施策【セミナーレポート】』)

まとめ

早期離職が慢性化すると、採用コストの高騰や既存社員のモチベーション低下、企業のイメージダウンなどの問題につながる可能性が高くなります。

新入社員が早期離職を考える大きなきっかけとなるのが、入社前に想像していた仕事内容と実情とのギャップです。早期離職を起こさないために、「採用ミスマッチへの対策」「入社後フォローの徹底」「労働条件や待遇の改善」などの取り組みが有効と考えられています。

今回の記事で紹介している離職率を改善した企業事例なども参考に、離職率の低下に向け、できることから取り組んでみてはいかがでしょうか。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、編集/d’s JOURNAL編集部)

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