スカウト、カジュアル面談経由だからこそ「選ばれる」面接を!応募者の“志望動機をつくる”面接官メソッド

パーソルキャリア株式会社

国家資格キャリアコンサルタント 武田 雄

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  • 自社を転職先の選択肢に“入れてもらい、入社してもらう”という、「選ぶ面接」から「選ばれる面接」への意識転換が重要
  • カジュアル面談の目的は「情報交換によって応募者の企業・業務理解を深めてもらうこと」であり、「見極め」を目的とする面接ではない
  • “変わらない面接官の意識”を変えるには、「データの活用」と「面接官研修の利用」が有効

2019年の末に発生した新型コロナウイルス感染症は、転職市場を大きく変化させ、企業の採用活動にも大きな影響を与えました。近年はそのような世情を踏まえて、ダイレクト・ソーシングやカジュアル面談、オンライン面接などを実施する企業も多くあります。

しかし、企業がさまざまな工夫をする一方で、依然として採用が難しい状況が続いています。採用活動や面接の課題点はどこにあり、どのようにすれば求める人材の採用につなげられるのでしょうか。

そこで今回は、「HRアナリスト」チームでさまざまな企業の採用・面接改革をサポートしている武田氏に、近年の転職市場の動向や、面接官に望まれる意識・対応について聞きました。

コロナ禍により採用活動の「オンライン化」が進む

まずは、近年の転職市場の状況についてお話しいただけますか。

武田氏:ここ数年では、やはり新型コロナウイルス感染症の影響が大きいと言えます。企業としても、先が見えない状況下では積極的な採用活動を行いにくく、多くの企業が採用活動を中断しました。

一方、「自社や業界の将来性に不安を感じた」「倒産で転職活動を余儀なくされた」「自身の成長のためによりよい環境を求めた」などを理由に、求職者の数は増加。結果として、2020年には長く続いていた売り手市場が買い手市場に転じたと言われていました。

しかし、厚生労働省のデータでここ数年間の推移を見ると、実際の求人数は2020年6月以降緩やかな回復傾向にあり、doda転職求人倍率の底も2020年7月となっています。つまり、買い手市場に転じたのは本当にわずかな期間で、随分と前から売り手市場に戻っている、というのが転職市場の実情です。

そのような近況を踏まえつつ、「企業の採用活動」や「求職者(応募者)の行動」にはどのような傾向があるかを教えてください。

武田氏:最も大きな採用活動の変化は、「オンライン面接」の導入です。コロナにより移動に規制がかかり、多くの企業で採用活動のオンライン化が進みました。企業・求職者に共通して言えるメリットは、話をするための物理的なハードルが大きく下がったことです。

従来は、応募者が応募先の企業に訪問し、対面で面接を行うことが前提でした。遠方の応募者はわざわざ新幹線や飛行機を使って面接地に向かうので、移動時間もコストもかかります。それらの負担を理由に、魅力的な企業への応募を断念したケースもあるでしょう。しかし、面接がオンライン化したことで現地に行く必要がなくなり、気軽に面接や面談に参加できるようになったのです。

企業としても、これまで対象になりにくかった遠方の求職者にまで採用ターゲットを広げられるようになりました。また、時間や工数を削減でき、予定調整がしやすくなった分、求職者との対話の機会を積極的に設けることも可能です。多様化する個人の価値観に合わせて自社をPRするために、ダイレクトソーシングやカジュアル面談を実施する企業も増えています。

コロナ禍により採用活動の「オンライン化」が進む

「気軽に参加する」応募者と「高い意欲を求める」面接官

面接のオンライン化は、双方にとってメリットのある変化だったように感じます。その上で、企業が採用活動に苦戦している理由はどこにあるのでしょうか。

武田氏:課題を一言で表現するならば、「いつまでも変わらない面接官の意識」かと思います。時代に合わせて、面接官の意識・対応も変えていかなければならないのです。

面接の目的は「応募者の把握と評価」と「応募者への情報提供と意向形成」の2つと言われて久しいですが、後者をやろうという意識がない、もしくはその必要性に気付いていない面接官はまだまだ多いようです。

■参照:面接は「見極め」だけじゃダメ!選ばれるための「魅力付け面接」メソッド ~初級編~

面接官の意識・対応がアップデートされないことで、採用活動にはどのような影響があるでしょうか。

武田氏:採用活動のオンライン化により、求職者は気軽にカジュアル面談や面接に参加できるようになりました。そのため、「気になったのでまずは話を聞きに来ました」「スカウトメールが送られてきたので選考を受けてみました」というスタンスの方も多くいらっしゃいます。

一方、「企業が選ぶ」という意識のままの面接官は、自社への高い意欲や明確な志望理由、覚悟を期待しています。

双方の意識にギャップが生まれるため、気軽な意識で参加している応募者を「志望動機が不明確だ」「自社で働く覚悟がない」などと評価して、本来は自社で活躍しうる人物まで不採用にする面接を繰り返してしまうのです。

情報格差をなくし、志望動機を一緒につくる面接を

自社の求める人材を獲得し、よい採用につなげるために、面接ではどのようなことを行うとよいでしょうか。

武田氏:まずは、今の時代当たり前になってきている「選ぶ面接」から「選ばれる面接」への意識転換です。面接は「選考」ですので、当然企業も人材を選びますが、応募者も企業を選んでいるという前提はしっかりと押さえておくべきだと思います。

さらには「志望動機を応募者と面接官が一緒につくっていく」という考えも持っていただきたいです。応募者の志向や価値観を基に自社の情報を提供し、「自社に入社する理由」をつくっていく。自社を転職先の選択肢に入れてもらい、最終的に入社してもらう、という面接が理想です。

一方で、入社後のギャップが大き過ぎた、もしくはそのギャップが解消される兆しがなく、せっかく入社した方が早期退職をするケースも多くあります。「リアリティーショック」とも言われるこのギャップも、実は面接から生まれていることが多いんです。

志望動機をつくるためには応募者のニーズを満たす情報を伝えるのが基本ですが、よい面ばかりをお伝えして、ネックとなる情報を隠してしまっては、企業と個人の情報格差が大きく、入社後のギャップを生み出す要因になってしまいます。「この部分については改善が必要だと思っており、現在このような取り組みをしている」というように、よい点だけではなく、課題点や対応策もしっかり伝えていくことが重要です。

情報格差をなくしてミスマッチを防ぎつつ、志望動機を一緒につくっていくことで、応募者に意向を固めてもらうということですね。

武田氏:はい。そしてこの取り組みは面接官一人一人が行うものでもありますが、企業全体の共通認識とすることも重要です。まずはカジュアル面談や一次面接の担当者が応募者のニーズに応じた情報を提供し、意向を醸成します。そしてその情報をきちんと次の面接官へと引き継ぎ、次の面接官はさらに応募者の解像度を上げながら情報提供を行って、志望理由を高めていけるとよいでしょう。

「気軽に参加する」応募者と「高い意欲を求める」面接官

カジュアル面談の目的、勘違いしていませんか?

ここまで「カジュアル面談」というキーワードが多く聞かれましたが、前提として、カジュアル面談と面接の違いを教えてください。

武田氏:カジュアル面談の定義は企業によって異なりますが、大きく2つの種類があるかと思います。1つ目は、応募意思を不問とし「応募前に企業の話を聞きたい」という方に実施するもの。もう1つは、既に自社の選考に応募している方に対して、一次面接前の情報提供の場として用意するものです。

いずれの場合も、カジュアル面談の目的は「情報交換によって応募者の企業・業務理解を深めてもらうこと」にあり、「見極め」を目的とする面接とは主旨が異なります。当然、カジュアル面談担当者の役割も、面接官とは異なると言えるでしょう。

カジュアル面談を実施したものの、「面接への応募につながらない」「面接を辞退された」とお悩みの企業もあるかと思います。その理由と改善策を教えてください。

武田氏:一つの要因として、企業の情報提供が通り一遍的で、「求職者に刺さっていない」「求職者理解の前提が抜けてしまっている」ことが考えられます。志望度を高めるには、求職者のニーズや価値観に合った情報提供が必要です。「ホームページやパンフレットを見ればわかるような情報ばかりを淡々と説明される」「聞きたいと思っていたことが聞けない」という面談では求職者のニーズを満たせず、結果、本選考に進まないという現象が起こります。

これについては、面接と同様に「求職者理解を実践しつつ情報提供をすること」が重要です。具体的には、「弊社のどのような点に興味を持っていただけましたか」「どのようなキャリア展開を希望していますか」というようにヒアリングをし、得られた回答に対して適切な情報を提示
していくとよいと思います。ただし、あくまで面談ですので、「志望動機を聞く」「合否を出す」のは不適切です。

■参照
カジュアル面談とは|導入メリットや面談の流れを解説【質問集付き】
せっかくのチャンス逃してるかも…。やってはいけないカジュアル面談NG項

「変わらない面接官の意識」を変えるには?

先ほど、課題点として「いつまでも変わらない面接官の意識」を挙げていただきました。どうしたら従来の意識をアップデートしてもらうことができるでしょうか。

武田氏:実は「企業が選ぶ側」という意識の面接官は、面接に慣れていない方ではなく、何十年も面接を経験してきたベテラン面接官の方に多いです。これは市況が変わっていることを知らず、悪気のないケースが大半なのですが、人事・採用担当者としては、自分よりも役職が上の方に対して「面接官としての意識を今の時代に合わせて変えてください」「態度や言動を改めてください」とは言いにくいですよね。考えられる方法としては、「データの活用」と「面接官研修の利用」があります。

まず、人材サービス会社を利用している場合は、面接後のアンケート結果をフィードバックする方法です。「面接官の印象」や「自社への志望度」などを定量的に示すとともに、定性的なコメントをデータとして提示します。客観的な結果を示して、まずは「変えなければいけない」という意識を持っていただくことが大切です。エージェントと良好な関係が築けているのであれば、エージェントから直接話をしてもらうのもよいでしょう。

もう一つは、面接官研修に「オブザーバー(見学者)」として参加していただく方法です。「若手向けに面接官研修を実施するので、面接をバトンタッチされる立場として研修の内容を認識しておいていただきたい」「非常に重要な内容なので、参加者が一次面接や二次面接で研修の内容を実践できているかチェックしていただきたい」というように、「参加者としてではなく、フォロー役として同席してほしい」というニュアンスにするとよいでしょう。研修に参加していただくことで気付きが生まれ、最新の情報をインストールしていただくことができるはずです。

面接官研修サービスのご案内

パーソルキャリア株式会社では「面接官研修サービス」を提供しています。

研修サービス3つの特徴

こちらの研修サービスでは、企業の採用課題に合わせてカリキュラムのカスタマイズが可能です。研修後のフォローアップ体制も整えており、その場限りでない「面接力」の定着を実現します。面接官の意識改革を実現したい方、面接官としてのノウハウ・スキルに不安がある方はぜひご活用ください。

取材後記

コロナ禍によって採用活動のトレンドや求職者の意識が変化した昨今、企業・面接官には市況や求職者のニーズを踏まえた対応が求められることがわかりました。面談や面接においては、相互理解を深めて正しい情報を提供すること、そして、応募者の志望動機を一緒につくっていくという意識が重要です。必要に応じてデータや面接官研修を活用し、よりよい採用につなげてはいかがでしょうか。

(企画・編集/海野奈央(d’s JOURNAL編集部)、制作協力/株式会社mojiwows

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