人材不足に悩む中小企業の担当者必見!人事のプロが語る「選ばれる企業」になるために2024年行うべきこと

Thinkings株式会社

執行役員CHRO 佐藤 邦彦

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  • 現在の採用市況「人手不足による売り手市場」は、今後も加速する一方であり、それを前提にビジネス・採用に取り組む必要がある
  • 人手不足による採用難が続く中で、DX化の推進が、企業としての強みとなり、採用面でも魅力に繋がる
  • 「選ばれる企業」になるためには、自社の事業や組織の強み・弱みを整理し、未来予測に照らし合わせた戦略を立て、投資することが大切

依然として人材不足と呼ばれる状況が続く中、特に中小企業では「取り組むべき課題が見いだせない」「改善するための方法がわからない」といった悩みも多いようです。

そこで今回は、ライフネット生命や電通デジタルにて人事責任者、リクルートワークス研究所で「Works」の編集長を務めた経験のある、Thinkings株式会社の執行役員CHRO佐藤邦彦氏に、2023年までの市況や採用領域で予測される未来、その中で選ばれる企業になるために、2024年に取り組むべきことを伺いました。

人材不足は加速の一途。中小企業ではAIやChatGPTの活用が鍵

現在、Thinkings株式会社のCHROとして、どのような役割を担っていらっしゃいますか。

佐藤氏:大きく2つあり、1つは自社の人事責任者として、採用や育成、評価制度の運用などに携わっています。もう1つは、人事・採用に関する情報の発信者としての役割です。自社の提供サービスが採用管理システムであることから、人事・採用担当者の悩みに触れる機会も多いので、これまでの経験を踏まえながら、現在の課題と今後の対策についてお話しさせていただくことがあります。

これまでの人事や、現在さまざまな採用課題に触れているご経験なども踏まえ、転職市場の現状をどのように捉えていらっしゃいますか。

佐藤氏:業界や職種、新卒・中途を問わず、全体的に人材不足で、完全に売り手市場な状態にあると思います。企業の経営資源は「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」と言われますが、従来はどちらかというと、人材よりお金や物の調達の方が難しいとされていました。昨今は難易度が逆転して、人材の確保の方が非常に難しくなってきています。実際、ビジネスの戦略や資金力はあっても、人手不足や早期離職によってビジネスを前に進められないという企業が多いですね。

そして人口動態上、この状況は一時的なものではなく、今後も加速する一方だと考えられます。このような状況を見ると、企業側はそれを前提としてビジネス戦略を組み立てていかなければならないだろうと思います。

依然として人材不足が続きそうとのことですが、その上で2024年以降はどのような未来が予測されるとお考えでしょうか。

佐藤氏:私たちは、昨今の採用領域の時代変化を、次のように3段階にして提唱しています。

●採用1.0
1999年ごろ。インターネットの普及によって、情報収集の媒体が紙からWebに移行。
●採用2.0
2010~2012年ごろ。スマートフォン所有率の上昇により、情報流通のスピードや感度が向上。情報の方向性も一方通行から双方向に。
●採用3.0
2023年~。AI、ChatGPTの普及。

この十数年でさまざまな変化が起こっていますし、現在、インターネットの普及と同じレベルの速度でAIやChatGPTが普及し、採用だけではなくビジネス全体が激変すると考えられます。企業規模にかかわらず、大きな変化である採用3.0の動きに乗り遅れた企業が衰退し、先回りして対応できる企業が2024年以降も戦い続けられるのではないかと思います。

人材不足は加速の一途。中小企業ではAIやChatGPTの活用が鍵

市況や未来予測を踏まえて、中小企業はどういった意識を持っているとよいでしょうか。

佐藤氏:まずは、市況を押さえるとともにグローバルの動きと日本の動きとのギャップを捉え、10年、20年先の未来予測をしっかりすることです。今後も採用難が続くことを前提とすると、企業にできる対応は「これまでとは違う手法で人材を補う」か「人を増員せずにいかに仕事を回すか」の2つしかありません。

前者の場合、例えば外国人労働者を雇うことが挙げられますが、今の日本の賃金水準はグローバルで見ると低く、また「賃金が安くても働きたい」と思えるほどの魅力もないですし、現実的ではないでしょう。

また、中小企業では「専任の採用担当者がいない」「人事チームがつくれない」という企業も多く、別の業務と兼務しながら人事・採用を担当しているケースが多いため、社員の業務量も膨大になるのは言うまでもありません。

それらを踏まえると、後者のように、人が当たり前のようにやっている、もしくは人でなければできないと考えられていた仕事の大部分をDX化していくこと、いわゆる「聖域なきDX化」に注力すべきだと思います。採用業務でいえば、弊社が提供しているような採用管理システムを活用して業務を効率化することもできますが、AIを活用して採用合格の可能性を出したり、面接を行ったりするほどに、テクノロジーは進化しています。そういった分野や未来の変化にもアンテナを張り、一歩踏み込んだ改革をしていく必要があると言えるでしょう。

求職者はステータスにこだわらない傾向。中小企業にも好機

AIやChatGPTなど、テクノロジーが進化する中で、求職者のニーズはどのように変化しているのでしょうか。

佐藤氏:求職者は、「採用の場面でAIを使用するのは倫理的にどうなのか」と懸念するよりも、「AI面接に抵抗がない」「膨大なデータを基に機械的に分析をする方が信頼度が高い」という声が出ていると実際に活用している企業からも聞いています。特に若い世代は日頃からそういう技術をさまざまなアプリやサービスで使いこなしているので、採用フローの中でAIが活用されることにあまり抵抗感がないようです。

また、スマートフォンの普及により求職者の情報収集能力がとても高まっていますし、情報に双方向性が出てきたことによって、「認知度の高い有名企業」という企業規模や所属ステータスにこだわるのではなく、自分の価値観にあった企業を求める傾向が強くなっています。つまり、求職者のニーズを満たしていれば、中小企業でも選ばれる企業として大きく飛躍する可能性は十分あると思います。

求職者はステータスにこだわらない傾向。中小企業にも好機

求職者のニーズを満たす「中小企業の魅力」になり得ることとは、具体的にどのようなことがありますか。

佐藤氏:大企業にはメリットだけでなく、もちろんデメリットもあるので、大企業のデメリット部分が自社のメリットであることをきちんと提示できれば、中小企業にも勝ち筋はあると思います。例えば、現在のトピックで言うと、ChatGPTをはじめとした生成AIといったテクノロジーのキャッチアップをスピーディに行えることは魅力の一つになるでしょう。全社的なDX推進は、実は大企業の方が、承認フローや既存システムとの調整が複雑で実践まで時間を要する傾向があり、フットワークが軽い中小企業の方がチャンスとも言えます。

時代の変化をいち早く捉えて新しいテクノロジーをビジネスに取り入れた企業や、ドラスティックなDX推進といったチャレンジングな取り組みをしている企業は注目されますし、それをアピールすれば、採用にもプラスに働きます。もし現段階でできる方がいないのであれば、できる方をアサインするなど、そこに注力できる中小企業に勝ち筋が見えてくると思います。

「未来における自社の強みは何か?」を問い続ける

変化が激しい時代の中で「選ばれる企業」になるために、中小企業が取り組むべきことは何ですか。

佐藤氏:先ほどもお話した通り、世の中の変化を先取りし、一歩先の動きを把握することが大切です。しかし、把握するだけで終わってしまったり、自社の強みと時流が乖離したりしてしまっては意味がないと思っています。自社の組織や事業の強みや弱みがどこにあるのかを整理した上で、今後の予測と照らし合わせた戦略を立てることが重要です。

例えば、極論ですが、ChatGPTの普及によって、将来的に必要とされるエンジニアの数は激減する可能性があります。にもかかわらず、「優秀なエンジニアが大勢いること」を強みに挙げているようでは、未来の先取りとは言えません。一方で、時流に鑑みて「自社の優秀なエンジニアの得意領域を活かして配置転換を行い、積極的なDX推進に注力する」のであれば、それは強みになるかもしれないですよね。

「"未来"における自社の強みは何か?」を問い続ける

現在だけでなく、未来における自社の強みを把握するにはどうしたらよいでしょうか。

佐藤氏:とても難しい問いなのですが、あえて言うならば、未来予測と並行して自社の強み探しを常にやり続けることだと思います。大手ではありますが、わかりやすい例が富士フイルムです。フィルム事業が衰退するという予測を立てた上で、「フィルムがどのような基礎技術のもとに成り立っているのか」「自社にはどの領域の研究者がいるのか」というように、事業や人員構成を細かく分解し棚卸しを行うことで、改めて自社の資産を整理しました。その上で強みを活かした新規事業を生み出していきました。結果、現在はバイオや医療系の企業として注目されています。

決してギャンブル的にビジネスを転換したのではありません。常に自分たちの事業の状況や人員構成、持っているスキルやノウハウを把握し、未来予測に絡めて、どの領域でなら自社資産を活かせるのかと試行錯誤と失敗を繰り返して、今の姿があるのではないでしょうか。

繰り返しになりますが、まずはそういった事例や現在のトレンド、欧米を軸とした世界の動きといった情報を集める。次に、それと自社理解を擦り合わせて、今後どう戦っていくのかを考え続けること、そこに投資することが大切だと思います。

そのようなことに取り組んでいること自体が、企業の魅力にもなり得そうですね。最後に、人事・採用担当者や経営者の方に向けて、メッセージをお願いします。

佐藤氏:今後人材マーケットの市況が大きく変わることはおそらくないので、いつまでも「大企業にはかなわない」「魅力がなく人材不足が解消できない」と嘆いていても、前に進むことはできません。先ほどもお話しした通り、現在は中小企業にとって新しい取り組みを始めるチャンスでもあります。情報のキャッチアップをしながら、自社の強みを活かせる領域に積極的にチャレンジしていただき、時代に即した採用を行っていただければと思います。

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取材後記

テクノロジーの進化は採用活動にも大きく影響しています。AIやChatGPTが採用の場面でも急速に普及しつつある現在、こうした時流と自社の強みを融合させられることが、採用の成功につながりそうです。事業継続のためにも、一度自社の魅力を整理してみてはいかがでしょうか。

(企画・編集/田村裕美(d’s JOURNAL編集部)、制作協力/株式会社mojiwows

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