企業が行うべき災害対策とは? 前編/“従業員を守る防災”を具体策まで解説

d’s JOURNAL編集部

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  • 企業防災の目的は、「従業員の安全を確保すること」と「事業の継続を図ること」
  • 企業は自社の災害リスクを洗い出し、従業員の安全を守るための対策を検討する必要がある
  • 具体的な対策としては、「ハザードマップの確認」「緊急時の対応メンバーの選定」「初動対応の検討」「災害時の安否確認方法の策定」「防災訓練や教育」「防災備蓄品の準備」などがある

災害大国と呼ばれる、日本。近年は地震や豪雨などの大規模な自然災害が各地で発生しているほか、感染症のまん延やサイバー攻撃など、予期せぬ事態が起こり、事業の継続が阻害されるリスクが増しています。

また、労働契約法第5条においても、企業には従業員の安全を確保するための配慮が義務付けられており、従業員の命や身体を守るために、しかるべき対応を行わなければ、安全配慮義務違反になる可能性もあります。

企業でも、災害に対する危機感は高まっている一方で、「実際にどういった対策が必要なのか」「自社の備えに不備はないのか」など、不安に感じることもあるのではないでしょうか。

そこで、企業が行うべき災害対策を前後編に分けてご紹介していきます。前編となる今回は、企業防災の基礎知識を解説するとともに、従業員を守るための具体策などを解説します。行うべきことをまとめたToDoリストもダウンロードできますので、ぜひご活用ください。

企業防災とは

企業防災とは、災害の発生に備えて企業として対策を行うこと。ここで言う「災害」とは、地震や台風、豪雪などの自然災害のほか、火事や感染症、サイバー攻撃も含みます。

企業防災で大切な観点は、「①従業員の安全を確保すること」と「②事業の継続を図ること」の2点です。①は主に防災に重点を置き、発生する災害の種類を想定し、それに対して準備や対策を講じることを言います。②は事業継続のための計画を立て、災害を含む緊急事態が発生した際にも、早急に事業活動を復旧させたり損害を最小限に留めたりすることです。


企業防災への取り組み状況

では、実際にどれくらいの企業が企業防災への取り組みを実施しているのでしょうか。
災害発生などの緊急時に事業継続を図るための事前計画である、「BCP(事業継続計画)」の策定状況を見てみると、内閣府防災担当が2022年3月に発表した『令和3年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査』によると、2021年度の企業規模別のBCPの策定状況は、「策定済み」「策定中」を合わせて、大企業で85.1%、中堅企業では51.9%となっています。特に中堅企業では、BCPの取り組みが、あまり進んでいない状況と言えるでしょう。


(参照:内閣府防災担当『令和3年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査』)

災害が発生してから対応を検討しては、守るべき命を守れなかったり、復旧が遅れ企業の存続が危ぶまれたりする可能性もあるため、事前に「災害時の対応をまとめる」「事業継続のための計画を策定する」などの準備をしておくことが重要です。

従業員を守るために、企業が行うべきこと

ここからは、主に自然災害の発生時に着目し、従業員の安全を守るために企業が行うべきことを解説します。


自社の災害リスクを洗い出す

安全対策を行うためには、最初に自社の状況を把握し、災害時のリスクを洗い出すことが大切です。

●ハザードマップの確認
●設備リスクの把握
●緊急時の対応メンバーの選定
●避難経路や安否確認フローの有無/内容確認

ハザードマップは、自治体のホームページや国土交通省のポータルサイトなどから入手可能です。ハザードマップを参考にしながら、「オフィスが被災想定区域に該当しているか」や「備品の位置、耐震性、倒壊した際の危険性」などを状況別に確認し、どのような災害が起こった場合にどのようなリスクがあるかを把握します。

また、「緊急時に誰が何を行うべきか」「避難経路や安否確認のフローは確立されているか」など、災害時の対応が現時点でどのように設定されているかも確認しておきましょう。

災害時の初動対応について検討する

災害が起きた際、被害の拡大を阻止し従業員の安全を守るためにも、初動対応の内容やその担当者についても検討が必要です。

●ケース別の安否確認方法
●安全誘導
●帰宅困難時の対応

災害の発生するタイミングが必ずしも就業時間内であるとは限らないため、就業時間外や長期休暇中(帰省先など)での安否確認方法や、連絡がつかない場合の確認手段などについても想定しておきます。

また、事前に「指示」や「警察・消防への通報」「避難誘導」「初期消火」などの担当者を設定したり避難経路を明確にしたりすることで、非常時の混乱を最小限に抑えられる可能性が高まります。

帰宅できない従業員がいる場合を想定して、備蓄品の確保とともに災害後の対応についても検討しておきましょう。

災害に備えて事前対策を行う

続いて、前項で洗い出した自社の災害リスクや初動対応の内容を踏まえて、災害に備えた準備を行います。

●災害時の行動マニュアル策定
●防災訓練・防災教育
●災害時の安否確認の方法策定
●防災備蓄品の準備
●設備の安全対策

行動マニュアルで優先事項や災害時のフローを策定するとともに防災訓練や防災教育を実施し、災害時に従業員全員が共通認識を持てるようにします。従業員の安否確認する方法については、電話やメール、災害用伝言ダイヤルのほか、サービス会社が提供している安否確認システムを利用する方法もあります。

ライフラインや交通網の寸断により帰宅が困難になった場合に備えて、オフィスに防災備蓄を確保しておくことも大切です。内閣府が2015年に発表した『大規模地震の発生に伴う帰宅困難者対策のガイドライン』では、「企業は従業員がオフィス内に待機できるよう、3日分の必要な水、食料、毛布などの物資の備蓄に努める」との記載があります。

加えて、オフィス家具の倒壊やガラスの飛散により従業員がけがをしないような対策を行うことも大切です。

まとめ

企業防災の目的は「従業員の安全を確保すること」と「事業の継続を図ること」であり、法令的にも社会的にも責任が求められるものです。従業員の命を守るために、自社の災害リスクを洗い出したり備蓄品や初動対応を検討したりするなどして、非常時への備えを進めましょう。後半では、事業継続のための計画の考え方や対応例について解説します。

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(企画・編集/田村裕美(d’sJOURNAL編集部)、制作協力/株式会社mojiwows

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