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【弁護士監修】高度プロフェッショナル制度概要とメリット・デメリットを解説◆最新版

PROFILE

第二東京弁護士会所属 中島・宮本・溝口法律事務所

溝口 哲史 弁護士(みぞぐち さとし)【寄稿・監修】

京都大学法学部を卒業後、神戸市役所勤務を経て、2000年に弁護士登録。 主に使用者側で解雇、団体交渉、残業代請求、労災等の労働問題に数多く携わっている。 現在は、働き方改革関連法案の施行に向けた企業の対応に関する助言も行っている。

働き方改革の施策の1つとして注目を集める「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」。高い能力・専門性が必要とされる職種を対象に、導入に向けた準備が進んでいます。

高度プロフェッショナルとは

しかし、高度プロフェッショナル制度は過去にも懸念する声が多く、導入を何度か見送られています。そこで、高度プロフェッショナル制度のメリットとデメリットを比較しながら、仕組みをより深く解説していきます。

高度プロフェッショナル制度の仕組み

高度プロフェッショナル制度は、2018年6月に「働き方改革」の一環として成立しました。高度な知識を持つ、一定額以上の年収がある…といった条件を持つ者に対し、労働時間や休日などの概念を外す制度になります。

高度プロフェッショナル制度の仕組み

高度プロフェッショナル制度の対象となる業務は、“高度の専門的知識などを必要とし”、“従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くない”もので、厚生労働省令で定められている業務になります。

高度プロフェッショナル制度の対象職種

該当になる業務は、“働いた時間と成果の関連性が通常高くないもの”と法律で規定されていましたが、厚生労働大臣が示した厚生労働省令案に記された下記5つの業務について、2018年12月に開催された『第151回労働政策審議会労働条件分科会』にておおむね妥当との答申が出されました。今後、この答申に沿った厚生労働省令が策定されることになります。

 ・金融商品の開発業務
 ・金融商品のディーリング(株式や債券等の有価証券の売買)
 ・市場アナリスト
 ・コンサルタント
 ・研究開発業務

年収要件について

当初、高度プロフェッショナル制度の対象となる労働者の年収は、残業代などを除き、“民間企業労働者の基準年間平均年収額の約3倍(=1075万円)を上回る”とされていましたが、2018年12月に、「対象年収は1075万円以上」とすることについて、概ね妥当との答申が出されました。しかし、平均年収は年々変化するため、1075万円という基準額より下がる可能性もあります。

その他の制度適用要件

高度プロフェッショナル制度とは、一部の労働者について労働基準法上の労働時間規制の適用を除外する制度です。そのため、高度プロフェッショナルを適用するにあたって、下記2点が必須要件となります。

①導入の際、「労使委員会」で対象業務、対象労働者、健康確保措置などを5分の4以上の多数で議決すること
②対象労働者本人が同意すること(1年に1回の更新が適当)

もちろん、本人が同意しなかった場合、「解雇」「不当な条件変更」など、不利な扱いをされることは禁止されます。

企業が徹底しなければならない「健康確保措置」も必須

高度プロフェッショナルに該当する労働者は、時間が制限されない分、健康管理も非常に大事になります。そこで、企業には労働者の健康を確保するための措置を義務づけられています。

① 年間104日以上、かつ、4週間で4日以上の休日を与えること
② 企業は該当者の「在社時間」「社外勤務時間(在宅勤務)」を把握する措置をとっていること
③ 以下いずれかの措置を行っていること
・勤務間インターバル制度の実施 および、深夜労働の回数制限
・健康管理時間(労働時間)の上限を設定(一定時間内)
・年に1回以上、2週間連続の休暇
・時間外労働が一定超えたら、健康診断を実施

「高度プロフェッショナル制度」と「裁量労働制」との違い

高度プロフェッショナル制度は、裁量労働制と似ています。しかし、決定的な部分で異なっています。以下確認しましょう。

高度プロフェッショナル制度裁量労働制度
対象職種

高度な専門的知識を有する以下の業務
(金融商品の開発業務、ディーリング、アナリスト、コンサルタント、研究開発)

専門業務型、企画業務型がある
(高度プロフェッショナル制度よりも範囲が広い)

対象年収

1075万円以上

条件なし

労働基準法

“労働基準法第4章で定められる労働時間、休憩、休日および深夜の割増賃金に関する規定は提供されない”

適用される

労働時間

制限無し

協定などで決められた時間を働いたとみなす

時間外手当

支給されない

みなし残業(固定残業)が含まれており、超過分は支給が必要

休日手当・深夜手当

支給されない

支給される

まず、高度プロフェッショナル制度と裁量労働制の共通点は、「労働時間ではなく労働の成果に対して給料を支払う」ことです。しかし、高度プロフェッショナル制度は、高度な専門的知識が必要な5業務であるのに対し、裁量労働制は、「専門型業務(19業務)」と「企画型業務」と2つの区分はあるものの、幅広い業務が対象となっています。つまり、裁量労働制は、不必要な残業時間を発生させたりすることを防ぎ、全従業員の生産労働制を高めることが目的です。一方、高度プロフェッショナル制度が適用される対象は「従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くない」業務であるため、自由に時間を使えるようにする目的があります。

いつから始まる?ー制度施行は2019年4月ー

高度プロフェッショナル制度は、2019年4月より施行される予定です。ただし、過去に幾度か高度プロフェッショナル制度やその前身となる法案は否決や審議入りを見送られた経緯があり、2019年4月よりも後に施行がずれ込む可能性があります。そのため、常に動向をチェックする必要があるでしょう。(2019年2月現在)

高度プロフェッショナル制度のメリット

高度プロフェッショナル制度が取り入れられると、少ない労働時間でありながら高い報酬が約束される可能性があります。
メリット

メリット①:出勤・退社の時間が自由に決められる

タイムカードなどに縛られず、自分の好きな時間に出勤や退社ができます。時間をずらすことで満員電車通勤から逃れられることもメリットと言えるでしょう。朝型の人は午前中に仕事を全て終わらせることができますし、空いた時間を趣味や勉強、子育てや介護などに費やすことができます。

メリット②:労働時間の短縮がもたらすワークライフバランスの実現

日本企業の慣習に、「定時ギリギリまで働かなければならない」というものがあります。これはチームワークを重視する意味はあるものの、仕事が早く終わった人も定時まで会社に残らなければならない…という気遣いが発生してしまい、大変非効率的です。高度プロフェッショナル制度が適用されれば、仕事が早く終わり次第、遠慮することなく早く帰ることができるでしょう。結果、仕事と生活の調和、いわゆるワークライフバランスが実現されます。

メリット③:労働意欲の向上

旧社会主義国では、働いても働かなくても同じお金がもらえたため、仕事を怠ける人が多数おり、労働生産性が低くなるという欠点がありました。日本式の会社はそこまでではないにせよ、まじめに働くほど損という風潮がないとは言えません。高度プロフェッショナル制度が適用されれば、特に労働生産性が高い人ほど労働意欲が向上します。また、適用外の人も無駄に残業するよりも労働生産性を高めた方が早く帰れる上に給料も上がるので、会社全体の生産労働制の底上げも期待できます。

高度プロフェッショナル制度のデメリット

高度プロフェッショナル制度には、労働時間を自由にできるメリットがある反面、長時間労働が横行してしまう可能性が指摘されています。
デメリット

デメリット①:無駄な労働時間や残業が発生する可能性

成果さえきちんと出せば、短い労働時間で報酬を得ることができるのが高度プロフェッショナル制度のメリットですが、逆に言えば成果が出せない限り、無制限に近いほど労働時間が延びる可能性があることです。これにより、サービス残業が横行するのではと言う反対意見が数多く出ているのも事実です。

デメリット②:健康への影響も

労働時間の制限がないということは、労働者の健康への悪影響が考えられます。そのため、健康管理時間を設けたり、臨時健康診断を実施することを義務づけたりするなどの改正案を政府も打ち出していますが、実例はまだなく効果があるかどうかは定かではありません。

デメリット③:成果の評価が難しい

高度プロフェッショナル制度の場合、労働の評価がとても難しいのが課題です。例えば、研究業務は研究成果が出る数%の研究員とその他の研究員の評価が難しく、正当に労働が評価されない可能性があります。成果だけを見るのか、その過程も見るのか…など、企業によって評価制度の見直しが発生することも考えられるでしょう。

そもそもなぜ成立したの?プロフェッショナル制度の設立経緯

高度プロフェッショナル制度は、最初2007年にアメリカでも実施されている「ホワイトカラーエグゼンプション制度」として法案が検討されました。しかし、過労死の原因となるとして提出には至りませんでした。その後、見直されながら閣議決定までいくものの、なかなか成立しない状態。その中で、働き方改革の風潮もあり、2018年6月にようやく成立しました。

法案起案の背景

高度プロフェッショナル制度は、「労働基準法等の一部を改正する法案」を元に創設されました。労働時間制度を全ての労働者に一律に適用するのではなく、労働者の状況に応じて適用するかどうかを判断し、労働生産性を向上させることを目的としていました。この法案では、従来の裁量労働制やフレックスタイム制の見直しを行われましたが、高度プロフェッショナル制度が成立したのは初めてのことで、大きな注目を集めています。

その背景には、より柔軟な働き方を日本に導入する必要性があるからです。欧米など他の先進国と比べ日本の労働時間は長く、例えば年次有給休暇の取得率は51.1 %(厚生労働省『平成 30 年就労条件総合調査の概況』より)とされ、年々取得率は上昇していますが、実際にはもっと低い可能性もあります。そのため、労働時間を企業側がおしつけるのではなく、労働者が決定する方が良いという気運が高まっていました。

法案成立の経緯

法案成立に関しては、割増賃金や年次有給休暇、裁量労働制などに関しては、労働基準法や指針などの改正が行われました。それに対し、高度プロフェッショナル制度に関しては、これまでの指針等はないため、新たに労働政策審議会において、省令12項目、指針1項目を定めています。

反対派の主な主張は「残業代ゼロ制度」

高度プロフェッショナル制度の反対についても見ておきましょう。反対派の主張は様々ですが、要約すると合法的に残業代がカットされるため「残業代ゼロ制度」にすぎないのではないか、ということです。政府はそれに対し、厚生労働省の調査を元に「すでに裁量労働制においては、一般労働者よりも平均労働時間が短いこと」を根拠にしていましたが、このデータが不正確であったことが判明した経緯があり、正当性が揺らいでしまいました。

賛成派の主な主張は「ワークライフバランスの向上」

一方、高度プロフェッショナル制度の賛成派は、働き方自体を変えることで労働生産性の向上だけでなく、労働者自身のワークライフバランスが向上する効果を挙げています。それを支えているのが、パソコンやスマートフォン、タブレットなどで会社に出勤しなくても働くことができるワークスタイルの登場です。知的労働の部分が大きい職業であれば、自宅に居ながら仕事をしたり、通勤時間をずらして働いたりすることが可能になります。

制度が施行されたらどうなる?

高度プロフェッショナル制度が施行されたら、どのようなことが起こるのでしょうか?メリットの部分がうまく生産性向上につながる可能性も十分期待できますが、労働時間の管理が行われないために過労死などの問題が出てくる可能性も否定できません。

労働時間や休日の概念がなくなり、働かせたい放題になるのか?

高度プロフェッショナル制度が適用された労働者は、原則として労働時間や休日の概念がなくなり、労働基準法の適用が大幅に制限されます。従来、労働基準法は労働者を保護するために休日や残業の制限などが行われていました。しかし、高度プロフェッショナル制度が適用されるとこれらの制限が及ばなくなり、いたずらに長時間労働を強いられる可能性が生じます。極端な話、24時間を何日働いていても、労働基準法違反にならない可能性があります。

前述しましたが、高度プロフェッショナル制度が適用されたるためには、健康の確保措置などについての「労使委員会」での決議や、対象労働者本人が同意することが必要です。また、年間104日以上、かつ、4週4日以上の休日確保を義務があります。働かせ放題にさせないためには、これらのことを労使双方でどのように守っていくかが鍵になります。もし問題が出てくれば、労働者は弁護士に相談し対応することも必要になるでしょう。

交通費や通勤手当はどうなる?

高度プロフェッショナル制度には、法案可決後も様々な問題点が指摘されています。その例として、交通費や通勤手当の支給が挙げられています。年収要件は1075万円以上とされていますが、その金額に交通費や通勤手当が含まれるのか。現状、野党からの追及には「入る」と回答されています。もしそうなると、住宅手当や資格手当なども当然入る可能性が出てくる。つまり、実質の年収が想定よりも低い労働者にも、高度プロフェッショナル制度が適用されやすくなります。

【まとめ】

高度プロフェッショナル制度は2018年12月にある程度詳細が決定したとはいえ、まだ曖昧な点が多く、労働者の長時間労働を合法化するための制度と批判されても仕方がない側面も持ち合わせています。しかし、有効に活用できれば労働生産性が向上し、仕事だけでなくプライベートももっと大事にでき、ワークライフバランスが向上する可能性を秘めていますので、今後の動きに注目しましょう。

 

 
 

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