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日本IBMの採用改革に見る、激変する市場で求められるスキルとは【セミナーレポート】

PROFILE

日本アイ・ビー・エム株式会社

人事 タレント・アクイジション 部長
杉本 隆一郎

大学卒業後、日本最大級のケーブルテレビ事業者や世界的メディア企業の日本法人で幅広い人事業務を経験。2006年楽天株式会社へ入社し、国際ビジネス経験者や海外MBAを中心とした幹部候補の採用をリード。2012年LinkedIn Japanに人事責任者として参画。2013年4月より日本オフィス代表代行としてビジネスオペレーション全般を統括すると共に、リンクトインの認知拡大に貢献する。その後アクセンチュア株式会社でのリクルーティング シニアマネージャーを経て、2017年9月日本アイ・ビー・エム株式会社に入社。日本における人材採用全般を統括し、組織改革などに従事している。

ダイレクト・ソーシング(ダイレクトリクルーティング)が普及し、多くの企業が採用手法の1つとして導入するようになってきた一方、「人員が足らず活用できていない」「人員を増やそうとしても、どのようなスキルセットが必要なのか判断できない」など、悩まれている企業も多いのではないでしょうか。今回は、楽天やアクセンチュアなど数々の企業での人事経験、かつ、リンクトインの代表代行も務めた経験を持つ日本アイ・ビー・エム株式会社の杉本隆一郎氏に、組織体制の構築方法や採用担当者に必要なスキルについてお話いただきました。
(本記事はパーソルキャリアが主催した5月24日のセミナー内容を要約した上で編集・構成しています)

※記事内資料は日本アイ・ビー・エム社からの提供になります。

リクルーティングではなく、“タレント・アクイジション”へ

リクルーティングではなく、“タレント・アクイジション”へ
日本アイ・ビー・エムでは、採用部門を「タレント・アクイジション」と呼んでいます。リクルーティングは、求人が発生したら人材紹介などの外部パートナーに依頼し、応募意思があったら面接調整、クロージングまで行うなど、採用のワーキングスタイルという意味合いが強いと思います。一方、「タレント・アクイジション」というのは、マーケティングから入社後まで幅広く担当するイメージです。つまり、「とことん自分たちでやり抜こう」という意思が込められているんですね。人材サービス会社に要件を伝えていればアクティブな人材を紹介してくれるし、求人広告を通じた自社ブランディングを行ってくれる。しかし、この状態だと自然に採用担当者は、“待ちの姿勢”になってしまうんです。
タレント・アクイジションの業務範囲
私が採用にコミットしようと決意したのは、楽天株式会社で採用を担当していた頃でした。ご存じの方もいるかもしれませんが、当時から数字に大変ストイックな会社で、人事でありながら毎朝数字確認のミーティングを行っていました。数字シミュレーションを行い、施策を検討し、徹底的に追いかける…。まさに、「成果は自ら計画的に生み出すことができる」ということを、体感できたわけです。採用は、自前で行い数字を追いかけることなんだと、気が付いた瞬間でした。

ダイレクト・ソーシングに可能性を感じたのも、ちょうどその時期です。グローバル人材の採用を担当していたときに推薦された候補者が、リンクトインのDBに存在していた。試しにDB上でスキルを検索してみると、求めている人材がどんどん見つかる。この人に直接自分でスカウトすれば、人材紹介に依頼・推薦が上がってくるまでの時間が短縮できるし、数千万円もの採用費用を浮かせることもできるし、その分候補者と接する時間に使うことができるんじゃないかって。同時に、こんなに可能性ある人材が世の中にいるのだと、改めてダイレクト・ソーシングに無限の可能性を感じたわけです。そう確信したからこそ、この道のプロフェッショナルを極めたい、かつ、そういう人材を輩出したいと考えるようになりました。

エージェント依存からの脱却がミッション。日本IBMでの改革

エージェント依存からの脱却がミッション。日本IBMでの改革
日本IBMに入社して、最初に取りかかったのは「全体最適」です。入社当時のキャリア採用は、人材紹介経由が全体決定者の過半数を占めていました。日本の転職マーケットでは一般的な割合数値だと思うのですが、グローバル視点で見ると非常に高い。そこで私のミッションは「エージェント(人材紹介会社)依存から脱却し、ダイレクト型で採用できる組織を作ること」でした。
私は3つの目標を決め、取り組みはじめました。

  • チームメンバーのスキル向上と再配置(ケイパビリティの底上げ)
  • タレントプールの構築と積極活用
  • 選考状況の“見える化”を行い、ビジネス側とコミットメント

①チームメンバーのスキル向上と再配置(ケイパビリティの底上げ)

まずは、キャリア採用を担うメンバーに対し、社内外に向けて影響力あるリクルーターを目指そうと目標を掲げました。
例えば、社内に対してはキャリア採用のプランを設計できるプロデューサーになってほしいし、アーリーアダプターとして新しいチャレンジに取り組んでほしい。社外に対してもインフルエンサーとしてIBMの魅力を発信していってほしい…このようにリクルーターの人材像を定義し、共有しました。
スキル向上と再配置
そして、メンバーと1on1を繰り返し、各々のスキルと経験値をヒアリング。それぞれのスキルをもとに、ダイレクト・ソーシングを成功させるために3つの組織を編成・メンバー再配置を行いました。世の中から転職の可能性がある人材をソーシングし、IBM独自のDBを作るチーム。そのIBMのDBから最適な人材にアプローチするチーム。そして面接設定やクロージングを行うチーム。役割毎に3つのチームに分け、適切な人材を配置しました。つまり、リクルーター自身のミッションに集中できる環境を作ることで、強みを発揮できますし、KPI数値にコミットすることができるわけです。
(詳細は、『日本IBMが推進するダイレクト・ソーシング最適化を目指した採用組織の変革とは?』をご覧ください)

② タレントプールの構築と積極活用

チームを採用フェーズ毎に分けたことで、もう1つメリットが生まれました。それは、タレントプールを積極的に活用できる状態になったということ。日本市場だと、候補者が一度転職すると2~3年は更新されないケースが多いです。そうなるとタレントプールはなかなかアップデートされず、古いデータとなってしまいます。このようなことが起こらないようにタレントプールを用いてアプローチするチームが、CRMツールやSocial発信、イベントなどを通じ、定期的に接点を持ち、情報をアップデートしつつ、適切なタイミングで声をかけることができるプールの構築と運用を目指しています。

③ 【AgileTA】オープンポジションの優先順位付けを行い、ビジネス側と採用期間をコミット

オープンポジションの優先順位付けを行い、常時複数のオープンポジションを並行して採用活動していると、アクションに強弱が付けられずなかなか充足できません。採用にかける期間が長引くと、人物要件が変わったり、現場から催促を受けたりします。そこで、「AgileTA*」というIBM独自のフレームを導入しました。ビジネスリーダーと一緒に数多い求人を優先順位付けし、コミットした求人から決められた期間内に確実にクロージングしています。アジャイルにアクションを毎日振り返り、毎日改善しながら推進していくわけです。そうすると、「活動中の案件や実施予定のアクション」が可視化され、採用現場主導でアクションがとれ、現場も適切な協力をしてくれるようになる。まだ始まったばかりのプロジェクトですが、確実に良い結果が生まれています。[*TA: Talent Acquisition]

採用市場が日々変わる中で、人事部門に必要なスキルとは

では、「人事部門に必要な人材像」はどういうものでしょうか。十数年採用領域を担当した中で、現在必要なスキルは以下と捉えています。
採用市場が日々変わる中で、人事部門に必要なスキルとは
特徴あるものだけ説明しますと、第一に、マーケット理解や自社ビジネス理解といった、“ビジネス感覚”があげられると思います。先ほどでも述べた、“待ちの姿勢”では、現場や経営者から言われてから採用に着手することになるし、応募者が来てはじめて面接調整に入ることになります。人から指示されたことを淡々とこなす仕事ばかりだと、どうしても疲弊してしまいますよね。人事こそ、「ビジネスを理解して、必要な人材を採りにいくプロフェッショナル」であるべきだと思うんです。自分たちが必要としている人材は世の中にどれぐらい存在して、どんなことを感じているのか、といったマーケット状況を把握する。そして、マーケットのインサイトを正しく押さえて、現場や経営者に共有し対等な立場でやり取りする。何でもかんでも「分かりました」で応じるのではなく、時には「その要件だと難しいです」など、「NO」と言う場面も出てくるでしょう。もちろん、そこには必ず理由は必要です。数値データや情報は武器になるのでしっかりとインプットを続けることが重要ですし、それを正しく活用できる組織をつくらないといけませんね。
そういう意味でも、(上記図内の)“テクニック”にある「データ分析」のスキルは要です。効果検証を行い、改善を繰り返していくことでデータが集約されていきますし、それをもとに「ソーシング」の計画を立てることができます。採用担当者は、まさに人材採用コンサルタントでなければいけません。

また、市場理解に加え、自社のビジネス理解も重要です。例えば、社内のいたるところで勉強会が行われていると思いますが、採用に携わる者こそ積極的に参加すべきです。例えば、業務上のミーティングにも顔を出してみる。現場を体感してみるんですね。人事ってつい分かった気になりがちですが、ビジネスの現場で使っている言葉を知らないと、候補者と会話が成り立たない。ろくな求人票も作れないのではないでしょうか?候補者に対しても人材サービス会社のアドバイザーに対しても、自社をアトラクトするために業務理解は必要だと思います。
マーケットや自社ビジネス理解など“ビジネス感覚”が必要
他にも、“パーソナリティ”にある「“New”への興味・関心」と「Growth Mindset」は重要です。人材サービス会社に依存した採用を行っていると、「人材紹介会社から推薦が上がってこないから」など、いくらでも言い訳ができてしまいます。私は、メンバーが「応募が増えるように打診はしているんですよ」「売り手市場だから厳しいです」などと言ってきたら、必ず「それって自分で試した?」と聞くようにしています。今は自分でくらでも人材DBを検索することができるし、良い人材がいたらすぐにオファーを出すことができる。自分でやってみてダメだったら諦めたらいい。諦めをつけるためにも、まず自分から候補者となる人に声を掛けていくことが大事なんじゃないかと。人事って受け身で守りの仕事であるがゆえに、新しいことに二の足を踏んでしまう方は多いですよね。もちろん、最初からいきなり大きなことをやろうとしなくていいんです。焦らずに小さなことでもアクションをしてみることが重要です。マネジャーの立場であれば尚更、率先して自分が新しいことをやってみる。「君がやらないなら僕がやるよ?」って(笑)。私が皆に「ダイレクト・ソーシングをやろうよ」と言えるのは、自分自身がやってきて成功してきた実績があるから。経験してないと自信を持ってメンバーに訴求できませんよね。採用リーダーである人こそ、率先して新しいサービスやツールにチャレンジすることが求められると思っています。
「“New”への興味・関心」と「Growth Mindset」

…と、ここまで述べてきましたが、もちろん、これらスキル・能力すべてを1人で補うのは無理な話です。

採用リーダーに求められることは、採用チームに必要なスキルセットを理解し、今いる採用チームを適切に配置することだと考えています。それで最初に組織改革を行い、メンバーに採用担当者として目指す人物像を話したのですが、中でも強く伝えたのは力のあるリクルーター(タレント・アクイジション・パートナー)、リーダーになってほしい」ということでした。

採用担当者は“インフルエンサー”として影響力を持つべき

採用担当者は“インフルエンサー”として影響力を持つべき
では、影響力を持つということはどういうことか。

先ほども申しましたが、社内に対しては「採用のプロフェッショナルとして、ビジネス責任者と対等にディスカッションできる」ということです。そして、採用において「彼・彼女に聞けば分かるという状態をつくっておく」ことです。競合も採用活動を活発化している今、経営者や現場から上がってくる声を受けて動いているようでは出遅れてしまいます。常に情報を取りにいき、会話をすることで、自然と人員におけるアラートが集まってくる状態をつくっておく。これはタレント・アクイジションとしては重要だと考えています。
また、社外に対しても影響力は必要です。ダイレクト・ソーシングを用いるときも、面談でもそうですが、リクルーターが「自社を応募してくれた人に対して、最適なキャリアを提案できる」ことが重要だと思っています。極端なことを言えば、「あなたにはあの会社があってると思いますよ」「こんなスキルはこの分野で活かせますよね」って他社を含めて提案ができるリクルーター集団にしたい。候補者と真摯に向き合い、適切な提案ができて初めて候補者に信頼され、関係構築できると思っています。そのような信頼と評判を積み上げて、「あの領域での転職ならあの人に連絡してみるといいよ」と名前を挙げてもらえる。このような社内外の影響力がある採用担当者こそ、これからの時代に求められているのではないでしょうか。

【まとめ】

「現在活躍されている方のリアルなお話を伺うことができ、中身の濃いセミナーでした」「杉本さんの採用のプロとして明確な考え方をご教示いただき満足です」と、参加者からの満足度も高かった杉本氏のセミナー。経験におごることなく、自らも積極的に新しい手法を試し、メンバーを巻き込みながら組織を作りあげているその姿は、まさに“採用プロフェッショナル”を体現されていると感じました。
まとめ

※本セミナーでは、日本アイ・ビー・エム株式会社の杉本隆一郎氏と、パーソルキャリア株式会社の油谷大希によるパネルディスカッションや来場者からの質疑応答も実施。大盛況のうちに幕を閉じました。

 
(文・編集/齋藤 裕美子、撮影/石山 慎治)

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