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【弁護士監修】嘱託社員を雇うには?給与や注意点など知っておきたい雇用のポイント

PROFILE

弁護士法人あおば(大阪弁護士会所属)

代表弁護士 相川 祐一朗

弁護士として10年、企業法務を中心に活動。課題が問題になる前に拾い上げる顧問弁護士として、中小企業経営者に事前対応の考え方への転換を促すかかわりを続けている。問題従業員対応の他、就業規則改定から紛争解決まで、中小企業が直面する法的な問題全般を扱う。

契約社員の一種である「嘱託社員」とは、法律上の用語ではありませんが、主に定年退職後に再雇用の契約を企業と結んだ人を指す用語として使われています。近年進んでいる高齢化や労働力不足を背景に、経験やスキルのある労働者に嘱託社員として活躍してもらおうという動きが広がっています。今回は、嘱託社員とは何かをはじめ、賃金の決め方や契約の結び方、メリットや注意点など、嘱託社員を雇う際に知っておきたい内容を解説します。

嘱託社員とは、非正規雇用の社員のこと

「嘱託(しょくたく)」という単語には、「ある一定の行為をすることを頼んで任せる」という意味があります。その単語が入った「嘱託社員」とは、正社員のような正規雇用ではなく、有期雇用契約を結んだ上で非正規雇用として働いている労働者を指します。英語では、「non-regular staff」「fixed-term employee」「temporary employee」「part-time employee」などと表現されることが多いようです。嘱託社員という雇用形態自体は特に法律で規定されていないため、具体的な雇用条件や待遇などは企業が自由に決めることができます。

嘱託社員は契約社員の一種。派遣や業務委託とは違い「雇用契約」がある

企業と有期雇用契約を結ぶことから、嘱託社員は契約社員の一種となります。契約社員という雇用形態自体が特に法律で規定されていないこともあり、同じような仕事内容や勤務実態でも、「嘱託社員」と「契約社員」のどちらの名称で呼ぶかは、企業によって異なります。

雇用形態ごとの違い

雇用形態ごとの違い

嘱託社員の実態は、ほとんどが定年後再雇用制度によるもの【労働条件通知書サンプルあり】

嘱託社員は非正規雇用の一つですが、実際には長年勤めてきた企業で定年退職後に再雇用されるケースがほとんどです。定年後再雇用制度について、簡単に解説します。

定年後再雇用制度とは、定年を迎えた65歳までの労働者を再雇用する制度のこと

定年後再雇用制度とは、長年勤めた企業を定年退職した労働者のうち、定年後も引き続き働くことを希望した人と、新たに雇用契約を結ぶことです。また、高年齢者の安定した雇用を目的とした「高年齢者雇用安定法」の改正により、定年年齢が65歳未満の企業は「65歳までの定年の引き上げ」「65歳までの継続雇用制度(再雇用)の導入」「定年の廃止」のいずれかの措置を行うことが定められました。厚生労働省の平成30年『高年齢者の雇用状況』集計結果によると、65歳までの高年齢者の雇用確保措置を行っている企業全体の79.3%が、定年後再雇用制度を導入しています。
(参考:『【弁護士監修】定年後再雇用制度を整備・活用する際の注意点を徹底解説』)

雇用契約の結び方

定年を迎えた労働者を嘱託社員として再雇用する場合、給与や勤務時間などが定年前とは異なるケースも多いです。トラブル防止のためにも、新たに雇用契約を結び直す必要があります。以下のような項目を含む労働条件通知書や雇用契約書を交付しましょう。

 

必要な項目

・雇用形態
・雇用期間
・契約更新の有無
・就業時間
・就業場所
・就業内容
・休日、休憩時間、所定外労働時間
・有給休暇
・賃金(計算方法、支払い方法、昇給に関する内容など)
・退職に関する事項
・諸手当
・社会保険

(参考:『【弁護士監修】定年後再雇用制度を整備・活用する際の注意点を徹底解説』/『【弁護士監修】労働条件通知書は2019年4月、電子交付可能に|記載項目・記入例付』)

退職金は通常通り支払われる

定年を迎える労働者が再雇用を希望し、定年後も継続して働くことになった場合でも、いったんは定年退職扱いとなり、退職金を労働者に支払う必要があります。嘱託社員として再雇用した労働者が退職する際の退職金については、企業によって対応が分かれますが、支払わないのが一般的のようです。

定年後再雇用制度で雇用をすると、助成金が受け取れる

企業が定年後再雇用制度を利用して一定の条件を満たした場合、国から「65歳超雇用推進助成金」を受け取ることができます。この助成金には、「65歳超継続雇用促進コース」「高年齢者評価制度等雇用管理改善コース」「高年齢者無期雇用転換コース」の3つがあります。

支給される条件支給金額届け出方法
65歳超継続
雇用促進コース

・定年の引き上げ(65歳以上迄)
・定年の廃止
・希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度(再雇用)の導入
※1事業主につき1回限り

「60歳以上の被保険者」の人数と、何歳までの「引き上げ・継続雇用」をしたかによって決まる

いずれかの措置を実施後、2カ月以内に「支給申請書」に必要書類を添えて提出

高年齢者評価制度等
雇用管理改善コース

・高年齢者の人事評価制度の導入/改善
・高年齢者の希望に合わせた「短時間勤務制度」などの導入/改善
・高年齢者のための研修制度の導入/改善
・法定外の健康管理制度の導入
※1年以内

制度の整備などにかかった経費に、所定の助成率を乗じた金額が支給される

事前に「雇用管理整備計画書」を提出して認定を受ける

高年齢者無期雇用
転換コース

・50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用に転換した場合

対象1人につき、
・中小企業は48万円
・中小企業以外は38万円

生産性条件を満たした場合、
・中小企業は60万円
・中小企業以外は48万円

・計画開始の2カ月前の日までに「無期雇用転換計画書」を提出して認定を受ける
・対象者に対して、転換後6カ月分の賃金を支給した日の翌日から起算して2カ月以内に「支給申請書」に必要書類を添えて提出

(参考:厚生労働省ホームページ『65歳超雇用推進助成金』/『「65歳超雇用推進助成金」のご案内』/『65歳超雇用推進助成金の改正のご案内』)

定年後再雇用で嘱託社員として雇用する場合は、5年ルールの適用外に

改正労働契約法では、「有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申し込みにより無期労働契約に転換する」という「5年ルール」があります。嘱託社員は契約社員の一種であるため、基本的には5年ルールが適用されます。しかし、定年後再雇用で嘱託社員として働いてもらっている場合、「適切な雇用管理に関する計画を作成していること」「都道府県労働局長の認定を受けた事業主であること」という2つの条件を満たしていれば、特例として5年ルールの適用外とすることができます。なお、特例を適用するためには、本社・本店を管轄する都道府県労働局に認定申請をする必要があります。
(参考:厚生労働省『無期転換ルールの継続雇用の高齢者に関する特例について』)

嘱託社員雇用のメリットは「スキルの高い労働力の確保」

長らく企業で働いてきた定年退職者は、多くの業務を経験してきた人材でもあります。そのため、嘱託社員として再雇用する際の一番のメリットとして、「スキルの高い労働力を確保できる」ことが挙げられます。

嘱託社員雇用のメリット

企業側のメリット・自社で得た経験やスキル、人脈をそのまま活用してもらうことができる
・賃金や労働時間といった労働条件の見直しにより、人件費を抑えることができる
・新人を採用するよりは、時間や費用がかからない
労働者側のメリット・これまでの経験やスキル、人脈を活かすことができる
・担当業務の変更により、責任が重い業務やプレッシャーから開放される
・短時間勤務や隔日勤務など、柔軟な働き方に対応してもらえることが多い
・定年退職前の未消化の有給休暇を使うことができる

嘱託社員の給与は、同一労働同一賃金に注意

定年退職した労働者を嘱託社員として再雇用する際、人事担当者にとっての悩みの一つが、「給与をどのくらい支給するか」ということです。支給金額は企業によってさまざまですが、嘱託社員になると「管理職でなくなる」「勤務時間・日数が減る」ことが多いため、退職前の給与の7割程度の金額を支給するのが一般的なようです。しかし、給与が急激に下がると嘱託社員のモチベーションや生活にも影響が及ぶ可能性があるため、仕事内容や年金の受給金額などを総合的に判断した上で金額を決定しましょう。
ただし、嘱託社員としての労働条件や権限・責任などが正社員の勤務内容と変わらない場合、「同一労働同一賃金」の原則に抵触しないように注意する必要があります。「同一労働同一賃金」の原則とは、「雇用形態の違いに関わらず、労働内容が同じであれば同じ賃金を支払うべき」というものです。政府の進める「働き方改革」の重要なポイントの一つであるため、この原則を守ることが企業側には求められます。「正社員と同じ分量で同じ仕事をしているのであれば、正社員に準じた給与を支給する」または「仕事内容を正社員よりは簡易なものにする・もしくは仕事上の権限や責任を減らす代わりに、給与も下げる」のどちらかの対応をする必要があります。
(参考:『【弁護士監修】同一労働同一賃金で、企業はいつどのような対応が必要?』)

嘱託社員を雇用する場合の注意点

嘱託社員を雇用する際に、人事担当者が知っておきたい注意点をご紹介します。

残業や有休はどうなる?

業務の都合で嘱託社員に残業をしてもらいたい場合、時間外労働や休日労働についての取り決めである「36協定」を結んだ上で残業代を支給すれば、嘱託社員にも残業をお願いすることができます。なお、働き方改革により、大企業の場合は2019年4月から、中小企業の場合は2020年4月から、残業の上限時間が法律で定められることになったので、違反しないように注意しましょう。
(参考:『【弁護士監修】定年後再雇用制度を整備・活用する際の注意点を徹底解説』『【弁護士監修】残業時間の上限は月45時間-36協定や働き方改革法案の変更点を解説』)

有給休暇については、入社後6カ月以上が経過している嘱託社員に対しては、週の所定労働日数に応じた日数を付与する必要があります。定年退職した労働者を嘱託社員として再雇用する場合、有給休暇の計算は「継続勤務」と見なされるため、通算した勤続年数に基づく日数を付与しましょう。さらに、定年退職前に未消化だった有給休暇を使うことも可能です。

社会保険や年金はどうなる?

勤務時間など一定の条件を満たしている場合には、嘱託社員も社会保険への加入が必要になります。しかし、定年後再雇用により正社員から嘱託社員になった場合、仕事内容や勤務時間などの変更によって、給与が下がるケースも多いでしょう。その際、何も手続きを行わないと、「給与は下がったのに、毎月支払う社会保険料は正社員のころと変わらない」という問題につながります。問題の解決には、定年退職に伴う「被保険者資格喪失届」と再雇用に伴う「被保険者資格取得届」を同時に年金事務所に提出する、いわゆる「同日得喪」と呼ばれる手続きを行う必要があります。同日得喪をすることで、毎月の社会保険料を再雇用された月から、再雇用後の給与に応じた金額に引き下げることができるため、忘れずに手続きを行いましょう。詳しい手続き方法については、日本年金機構のホームページで確認できます。

管理職への任命は可能?

優秀な労働者には、定年退職後に嘱託社員として再雇用した後も、管理職として活躍してもらいたいケースもあるでしょう。企業側と本人の同意があれば、嘱託社員として再雇用した労働者を管理職に任命することは可能です。その際は、就業規則などの規定に基づいた役職手当を支給しましょう。ただし、定年後に勤務時間を短くした場合、役職者に任命することで本人の身体的・心理的負担が増えてしまう可能性もあります。健康状態などを配慮した上で、管理職に任命するかどうかを慎重に検討しましょう。先に述べたように、定年退職前と労働条件や権限・責任が変わらないのであれば、基本的に賃金に差を設けることはできません。

異動や出向は可能?

就業規則などに規定されていれば、嘱託社員に異動・出向してもらうことができます。とは言え、これまでの部署とは無関係の部署や遠く離れた部署への異動・出向は、本人の身体的・心理的負担につながる可能性もあります。企業側としては、これまでの業務経験を活かせるような部署や、転居の必要がない部署への異動・出向にとどめるなど、十分な配慮をしましょう。また出向の場合、出向先との間で「出向期間」や「出向が延長される可能性」などについて契約書を交わしておくことも重要です。

試用期間は設けてもいいか?

試用期間とは、業務とのマッチングなどを考慮して、本契約を結ぶかどうかを企業側・労働者側の双方が判断するための期間のことを言います。定年前の人材を正社員として本採用する前に、数カ月間の試用期間を設けて嘱託社員として雇うことは可能です。一方、定年後に嘱託社員として再雇用する場合、「自社で長年働いていた」という実績があるため、試用期間を設けるのはふさわしくないとされています。

嘱託社員の昇給や評価制度はどうする?

人事評価に基づき給与を上げることは、労働者のモチベーション向上につながります。嘱託社員を人事評価制度の対象とするかは企業によってさまざまですが、より意欲的に仕事に取り組んでもらうためには、人事評価制度の導入や昇給の実施を前向きに検討する必要があります。仕事内容や勤務時間の違いなどを考慮し、必要に応じて正社員とは異なる基準・項目の人事評価制度を構築しましょう。

契約期間は何年?

契約期間を何年間とするかについて、法的には特に決められていません。しかし、定年後に嘱託社員として再雇用する場合、企業側はこれまで以上に労働者の健康状態に気を配る必要があるため、複数年での契約は避けた方が良いでしょう。実際に多くの企業では、65歳まで契約更新される可能性があることを示した上で、契約期間を「1年間」とし、本人の健康状態や仕事を継続する意思を確認しながら嘱託社員との契約を更新しているようです。

嘱託社員として雇用する場合、就業規則の見直しを

定年退職した労働者を嘱託社員として迎え入れたい場合、就業規則の見直しが必要です。定年後再雇用制度に関する項目がない場合や、定年後には再雇用しないという項目がある場合、就業規則を改め、定年後再雇用の項目を設ける必要があります。就業規則の見直しが済み、労働基準監督署に届け出た際には、変更点について社員に周知しましょう。また、継続して該当者が出る見通しがあるのであれば、嘱託社員用の就業規則を作成することも検討するべきです。

契約書の結び方のポイント

定年後再雇用した嘱託社員と契約を結ぶ際のポイントは、以下の4つです。

①雇用契約期間の明記

基本的に有期雇用と考えられるので、雇用契約書には雇用期間を明記する必要があります。

②法律で決められた記載事項の網羅

契約書に記載すべき項目は、法律で決められています。記載漏れがないように注意しましょう。
(参考:『【弁護士監修】労働条件通知書は2019年4月、電子交付可能に|記載項目・記入例付』)

③就業規則に記載された労働条件との比較

就業規則は、自社の全労働者に対する労働条件の最低ラインを示したものです。そのため、就業規則に記載の労働条件と比較した際に、契約書の労働条件の方が労働者にとって不利益なものになっていないかどうか注意しましょう。

④正社員の労働条件との比較

正社員と比較した際、嘱託社員の労働条件が不合理なものになっていないかどうか注意する必要があります。「同一労働同一賃金」の考えもあることから、嘱託社員の仕事内容や職務の重要度、勤務時間などを考慮した上で、不合理にならない労働条件を設定しましょう。なお、通勤手当や皆勤手当といった諸手当は、原則的に嘱託社員にも支給するものとされています。

嘱託社員をやむを得ず解雇する場合に注意したいこと

本来であれば嘱託社員に勤務し続けてもらうことが望ましいですが、やむを得ず、「契約期間中の解雇」や「契約更新しない」といった判断をしなければならないケースもあるでしょう。嘱託社員をやむを得ず解雇する際の注意点について、正社員の場合との比較を交えながら、簡単に表にまとめました。

※解雇に踏み切るほどの客観的理由がない場合、「本契約を最後に、次回は契約更新しない」という旨の「不更新条項」を定め、今後の契約更新がないことについて、労働者の同意を得るという方法もあります。

【まとめ】

近年、日本では、定年退職した労働者を嘱託社員として再雇用する企業が増えてきています。嘱託社員を雇う際は、労働者の身体的・心理的負担を考慮した上で、業務内容や給与、勤務時間、契約期間といった労働条件を決める必要があります。業務経験の豊富な嘱託社員に活躍してもらうことで、人手不足を解消しましょう。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、監修協力/unite株式会社、編集/ダイレクト・ソーシング ジャーナル編集部)

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