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盛らずに、ありのままの自社を伝える。自律した個のつながりを生むピクスタの採用広報

PROFILE

ピクスタ株式会社

コーポレート本部 戦略人事部 部長 秋岡 和寿

2002年に神戸大学経営学部を卒業後、同年4月に住友電気工業株式会社に入社。法人営業職や生産企画職を経験した後、2005年に株式会社グロービスに転職。法人営業のリーダー、コンサルタントなどを担当し、法人向け人材育成・組織開発コンサルティングを手掛ける。その後、MBA取得を経て、2014年よりピクスタ株式会社にジョイン。組織開発室長、経営企画部長を歴任し、現在は戦略人事部長として組織づくりの面から企業成長に貢献している。
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ピクスタ株式会社

コーポレート本部 経営企画部 広報グループ グループリーダー 小林 順子

ピクスタが広報活動を本格化させた2013年に広報専任として入社。以降、一貫して同社のブランディングと認知度向上に携わる。2017年からはオウンドメディア『ピクスタ+』の運営や編集、執筆も担い、採用力向上にも寄与している。

自社の目指す姿を明確にし、実現に向けたオペレーションを促す。そして社外へアウトプットしていく…。そうした採用力向上のための道筋が見えていても、実際のアクションとして動かしていくのは難しいものです。人事・採用担当者と経営、さらに広報や事業部門で連携していく必要があり、一貫性のある施策を実現できずに悩む企業も多いのではないでしょうか。

そこで今回訪れたのが、ストックフォトサービス大手として知られるピクスタ株式会社。「才能をつなぎ、世界をポジティブにする」という理念に基づいてサービスを拡大させている同社では、チャットを活用した社内コミュニケーションの効率化と徹底した情報共有を進め、フラットにアイデアを出し合える環境を実現しているといいます。

さらに2017年からはオウンドメディア『ピクスタ+』を立ち上げ、自社のカルチャーや働くメンバーの想いを発信。「自社を“盛らない”」信念で綴られているという記事は実に自然体で、同社の採用力向上に寄与している様子がうかがえます。

カルチャーとオペレーション、そしてアウトプットをうまくつなげる秘訣はどこにあるのか。組織づくりと人事戦略をマネジメントする秋岡和寿さん、広報担当として『ピクスタ+』を運営する小林順子さんに聞きました。

「理念に共感してもらう」って、根本的に無理があるのではないか

御社は徹底した情報共有やフラットな組織づくりを進め、「出産・育児を理由に退職した女性は創業以来ゼロ」という点でも注目されていますね。

「理念に共感してもらう」って、根本的に無理があるのではないか

秋岡氏:自分自身で判断して動く、自律した大人の組織を目指しています。情報共有を徹底したり、フラットな組織をつくったりしたのは、あくまでも事業としての必要性からなんです。

古俣(代表取締役社長の古俣大介氏)は創業のころ、何でも自分で考えて動き、指示を出していたようです。しかしそれで良いサービスを生み出そうとしても限界があった。ユーザーに近い社員の意見を取り入れていく方が良いと気付いて、みんなが自由に意見を出し合えるカルチャーを目指してきました。サービスそのものは真似されたとしても、どんどん新しいアイデアを出して進化していく人や組織は、簡単には模倣できないでしょう。そうした意味では、このカルチャーそのものが競争優位性になるはずだという想いもあります。

同時に、採用の面でも有利になっていきそうですね。

秋岡氏:そうですね。企業が中長期的に成長し続け、ユーザーの支持を得ていき、さらに「ここで働きたい」と思ってくれる人を増やしていくために大切なのは、「正々堂々」「公明正大」という姿勢だと思うんです。わかりやすく言えば、自社のことを伝えるときに「盛らない」ということですね。盛らずに、社内からにじみ出ているカルチャーが伝わるようにしていきたいと考えてきました。

とは言え、カルチャーを根付かせるのは簡単なことではないと思います。どのような取り組みを行ってきたのでしょうか。

秋岡氏:2012年に「才能をつなぎ、世界をポジティブにする」という理念を定め、それに基づくビジョンと、「ピクスタウェイ」と呼ぶ行動指針を決めました。その後はピクスタウェイを振り返るミーティングを毎月行い、今でも2カ月に一度のペースで開催しています。私がジョインして戦略人事部を発足させてからは、さらにメンバーへ浸透させていく試みを施策レベルで打ち出してきました。

ピクスタウェイ

(ピクスタ株式会社提供)

とは言え私自身、当初は「カルチャーの意味ってなんだろう?」と疑問に思うところがあったんですけどね。

カルチャーの意味?

秋岡氏:世の中ではよく「理念に共感してもらうことが大事」なんて言われますが、それって根本的に無理があると思いませんか?理念とは突き詰めて考えれば経営者個人の想いであり、エゴでもある。個人の想いは人それぞれ違うんだから、完全に共感することなんてできないと思うんです。

だから、「押し付けないけどみんなで大事にする」という距離感を大切にしています。みんなに自分が経験してきたことや普段大切にしていることを振り返ってもらい、「ピクスタウェイに重なるものはない?」と問い掛ける。あるいは「あなたがこれからやりたいことと重なるところはありますか?」と聞く。それが採用時点での入り口ですね。重なる部分があるのなら、ぜひ一緒にやりましょうと。企業のカルチャーは、こうした重なり合いの結果として生まれるのではないでしょうか。

経営陣やリーダーは、本人の意思が出てくるまで口を出さない

自律した個人が意見を出し合えるカルチャーは一つの理想形だと思いますが、実際の社内での発信量に偏りが出ることはありませんか?

小林氏:それはないと思います。メンバーとしての目線で言うなら、ピクスタには「問われる文化」があるんです。メンバーそれぞれが「何をやりたいの?」「どうしたら良いと思うの?」と常に問われています。無理やり自律のバッターボックスに立たされる感じとも言えるかもしれません(笑)。

秋岡氏:理念と同じように、個人のやりたいことと会社のやりたいことは違いますからね。そのすり合わせをしていく必要があります。自分が果たす役割や貢献の仕方を定義付けていくことで、「やりたいこと」「やるべきこと」の重なりを見出していってもらう。あくまでも個人が考えるものなので事前に期待値合わせはしないし、経営陣やリーダーは本人の意思が出てくるまで口を出しません。

ただ、その意思を引き出すための関わりには、力を入れていると思います。リーダーはまずメンバーと「個人の人生」について話すんです。ライフプランとか、キャリアアップとか、目指すものは人によってさまざま。それを実現するために社内でどんなことに取り組むか、あるいはどんな等級を目指すかといったことを考えるわけです。

「人事と経営」についてはいかがでしょうか。人事・採用担当者の声は、ダイレクトに経営に届けられていると思いますか?

秋岡氏:はい、壁はまったくないですね。私は人事責任者ですが、採用目標などは経営陣や事業責任者たちと常にすり合わせながら一緒に決めています。事業の様子を見ながら計画を立て、「状況はどうですか?」と経営陣や事業責任者たちに問い掛けながら目標を策定していきます。経営と人事・採用担当者の間に情報格差がないので、連携における課題も感じていません。最終的には自分で責任を持つというプレッシャーはありますけどね。

小林氏:私の場合は、上からたまに「こうしてほしい」と言われることがあっても、それが必要だと思わなければ全否定しますよ。最近では社長との月1回のミーティングの場で「創業15周年を機に、そろそろ何かでバズりたいなぁ」と言われたんですが、「手段から先に考えないでください」とキッパリ言いました(笑)。

キッパリ言いました(笑)

誰にインタビューしてもサービス愛が語られるなら、それを自然に出せばいい

小林さんが担当している『ピクスタ+』についてもぜひ教えてください。どういった経緯で立ち上がったのでしょうか。

小林氏:2016年ごろから構想して、2017年にオープンしました。私は広報の仕事を「コミュニケーションの力で経営課題を解決すること」だと思っています。その当時の課題の一つが採用でした。

なのに、当時のコーポレートサイトはちょっと古臭くて、「ITの会社なのにこれはちょっと…」と感じていました。そこで経営陣に訴えてサイトをリニューアル。また社内のカルチャーや働く人の声を届ける場がなかったので、同じタイミングでオウンドメディアを立ち上げました。今のところは内製で運営しています。

採用広報が前提ということですか?

小林氏:軸としてはそうですが、当初から広がりを持たせていきたいと考えていました。ピクスタが本当にやりたいことを、うまく世の中に伝えられていないと思っていたからです。

たとえばPIXTAは「アマチュアの人が写真を投稿してお小遣いを稼げるサイト」といった取り上げられ方をされることが多いのですが、実際に写真を投稿してくれる人は、「自分の写真を誰かがお金を出して買ってくれる」ということに震えるほど感動しているんです。そういう価値を提供していることも伝えたいけど、あまりメディア受けしません。どうしても数字などを求められて、データで表せないエモーショナルな部分は伝わりにくいんですよね。それなら自分たちで発信していこうと。

そうした「エモーショナルな部分」は、採用にもつながっているのでしょうか?

秋岡氏:応募してくださる方は、だいたい読んでくれていますね。『ピクスタ+』に書かれている会社の雰囲気を感じ取ってくれているのは、面談でも伝わってきます。

会社の雰囲気を感じ取ってくれている

小林氏:実際、入社後の「ギャップがない」という声はよく聞きますよね。

秋岡氏:自分たちのことを盛っていないから、当然といえば当然なんですが(笑)。でもこれを実現できているのは、ピクスタの価値や魅力を小林が高い熱量で、率直に伝えてくれているからだと思っています。

小林氏:ピクスタには自社のサービスを愛していない社員はいないので、誰にインタビューしてもサービス愛が語られるんです。私はそれを自然に書けば良いという感じですね。

運営は内製で進めているとのことでしたが、どのような体制ですか?

小林氏:基本的には広報と人事の共同運営です。メインターゲットは「応募してくれる人たち」なので、記事でバズることを狙うのではなく、ピクスタのことがよくわかるような記事づくりを意識しています。

毎週編集会議を開き、採用を強化する部署の情報をつかんで、インタビュー先などを決めています。採用上のニーズを踏まえてコンテンツを企画する一方、イベント情報などの時事ネタは素早く発信するようにしています。

経営者や人事、広報が「本当にそう思っていることだけ」を伝える

オウンドメディアの運営には手間がかかるのも事実で、なかなか動き出せなかったり、動き出しても外注に頼らざるを得なかったりするケースが多いと思います。内製化することによるメリットはあるのでしょうか?

小林氏:一番は「ちゃんと我々の言葉で語れる」ということでしょうか。こちらが言いたいことをストレートに書いています。ネガティブなことにも触れられるし、変に綺麗にまとまり過ぎることもありません。

秋岡氏:会社としては「自分たちのことを盛らずに出したい」と思っているし、小林自身も「そのまま出せばいいじゃん」と思ってくれています。内製化することで、何を書くかの判断もスピーディーにできているのではないでしょうか。

しかし、「自社のことをそのまま盛らずに出せばいい」と思い切ることにも、勇気がいる気がします。

小林氏:企業と働く人の関係って、恋愛に似ている部分もあるのかな、と思うんです。互いを好きになりつつ、ダメなところも一緒に改善していけるかどうか。良いところだけを見せようとすると、中に入ってからギャップを感じさせてしまうじゃないですか。

個人的には、私自身がこの会社を好きだからこそ「そのままの姿を伝えたい」と思っています。自分が素敵な会社だと思って勤めているから、好きだと思うことを存分に出せばいいんじゃないかな、と。

秋岡氏:私が見ている限り、小林はいつも「読む人たちの疑問に答える」ことを重視してくれている印象があります。この前も、「読む人の疑問に答えることと、自分たちが言いたいことを伝える割合を8:2くらいにしたいね」と話していましたし。

8:2

御社のようにカルチャーとアウトプットを一致させ、「素の自分たち」を発信できるようになるには、何が必要だと思いますか?

秋岡氏:ピクスタの場合は、「社長と人事・採用担当者、広報のベクトルの向きが一致しているからやりやすい」という面があると思います。古俣は変に脚色するのが嫌いだし、盛らない人。小林は「『ピクスタ+』で盛った記事を出してくれ」なんて言われ続けたら、会社を去ってしまうかもしれません(笑)。

ベンチャーやスタートアップは、そうした「価値観のすり合わせ」が大事。経営者や人事・採用担当者、広報が「本当にそうだよね」と一致できるポイントを見つけ、「本当にそう思っていることだけ」を外部に伝えていけば良いんじゃないでしょうか。

小林氏:そうですね。オウンドメディアも手段の一つなので、無理にやることはないと思います。広報だけではなく、人事・採用担当者も経営も「本当にやりたいね」という状態で動き出さないと続かない施策なので。

秋岡氏:ソーシャル時代である今は、企業も一つのコンテンツとして見られています。経営者は「本当にそう思っていること」をベースに組織づくりをしないといけないし、広報も人事・採用担当者もそれを汲み取っていかなければいけない。結局、日々の実態の積み重ねがアウトプットにつながり、良いコンテンツになっていくんですよね。

良いコンテンツ

【取材後記】

「自社のことを伝えるときに“盛らない”」「社内からにじみ出ているカルチャーが伝わるように」という秋岡さんの言葉に、採用活動の本質を見た思いがしました。ミスマッチ解消やリテンションのためには、企業も個人もありのままの自分をさらけ出すべき。頭ではそう理解していても、なかなか徹底できないのが採用活動の難しさでもあります。もし、自社の採用メッセージを「盛ってしまっているかも…」と感じるなら、経営や現場との間に存在するであろうコミュニケーションのゆがみと向き合ってみるべきなのでしょう。

(取材・文/多田 慎介、撮影/黒羽 政士、編集/檜垣 優香(プレスラボ)、担当/齋藤 裕美子)

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