参天製薬が取り組む、人も組織も成長できる強い組織とは【セミナーレポート】

参天製薬株式会社

執行役員 人事本部長 藤間 美樹

1985年神戸大学卒業。同年藤沢薬品工業(現アステラス製薬)に入社、営業、労働組合、人事、事業企画を経験。人事部では米国駐在を含め主に海外人事を担当。2005年にバイエルメディカルに人事総務部長として入社。2007年に武田薬品工業に入社し、本社部門の戦略的人事ビジネスパートナーをグローバルに統括するグローバルHRBPコーポレートヘッドなどを歴任。2018年7月より参天製薬に人材組織開発本部副本部長として入社し、2019年4月より現職。参天製薬のグローバル化を推進。M&Aは米国と欧州の海外案件を中心に10件以上経験し、米国駐在は3回、計6年となる。グローバル化の流れを日米欧の3大拠点で経験し、グローバルに通用する経営に資する戦略人事を探究。人と組織の活性化研究会「APO研」メンバー。

1954年兵庫県生まれ。同志社大学政策学部・大学院総合政策科学研究科教授。神戸大学大学院経営学研究科修了。経済学博士。専門は組織論、モチベーション論。著書として『「承認欲求」の呪縛』(新潮新書、2019年2月刊) の他、『「ネコ型」人間の時代』(平凡社新書)、『ムダな仕事が多い職場』(ちくま新書)、『なぜ日本企業は勝てなくなったのか ―個を活かす「分化」の組織論―』(新潮選書)などがある。その他、講演、テレビ出演など多数。

個が活かされない要因と、これからのあるべき姿(同志社大学 太田 肇氏)
グローバル人事ならではの、組織活性化への取り組み(参天製薬株式会社 藤間 美樹氏)
参天製薬が取り組む、人材組織開発とは
主体的なキャリアを築くことと、リーダーの役割(パネルディスカッション)

労働投入のゆがみなどで、「失われた30年」とも言われる1990年代以降の日本経済。これを打破するかのように、働き方改革やダイバーシティへの動きが活発になっています。しかし、現場でのジレンマに陥る人事・採用担当者も多いのが事実。そんな状況下で、先駆者となり成果を上げているグローバル企業ではどのような対策をとっているのでしょうか。そして、これから人事・採用担当者は課題をどう捉え、何を行っていけばいいのでしょうか。

その答えを探るべく、「人も組織も成長できる強い組織の作り方」と題したセミナーを開催。個人を活かす組織づくりの研究で知られる同志社大学教授の太田肇氏、参天製薬株式会社より人事本部長の藤間美樹氏が登壇し、学術・実務両面からお話いただきました。その後、多摩大学大学院客員教授の須東 朋広氏を交えたパネルディスカッションも行われました。

(本記事はdodaが主催したセミナーの内容を要約した上で構成しています)

個が活かされない要因と、これからのあるべき姿(同志社大学 太田 肇氏)

個が活かされない要因と、これからのあるべき姿(同志社大学 太田 肇氏)

日本において採用だけではなく、「組織活性」に注目が集まっていますが、浮き彫りになっている現状の問題点について見ていきましょう。1つ目に「働き方改革が足踏み状態」であることが挙げられます。働き方改革が開始されてもうすぐ1年が経とうとしていますが、企業によってその浸透状況はさまざま。労働時間短縮が進んでいる職場とそうでないところが極端な状況です。あるいは現場レベルで「残業禁止」「生産性向上」と改革が進んでいても、そのしわ寄せで中間管理職の負荷が増大しているケースもあります。これは、社の自発的な改革ではなく、「外圧で渋々やっているから」というのが1つの原因だと考えられるでしょう。

2つ目には「労働生産性と国際競争力」です。1990年頭、日本の労働生産性は世界上位でしたが、90年代半ば以降は低迷が続いています。失われた10年、20年、そして30年という状態に陥っているのです。さらには会社員の意欲、ワークエンゲージメントが世界最低水準であることも課題です。エンゲージメントとは、「主体的に前向きに取り組む」という意を含んでいると考えており、これは非常に危機的な状況です。しかし一方で、フリーランスに絞ってワークエンゲージメントを見てみると、欧米に遜色ないレベルで高い水準になっている。つまり、日本の国民性によってエンゲージメントが低いのではなく、日本の組織・職場に問題があり個人の意欲・能力が十分に引き出せていないことを示しています。これが3つ目の問題点です。

意欲・能力を引き出せない原因とは

日本の労働生産性をアメリカと比べると、金融業・サービス業では3~4割の水準にしか達していません。IT化の遅れも目立ちます。たとえば、ノルウェーの銀行ではIT化を徹底することで少ない人員で現場を回すことを可能にしています。「日本は人手不足」と言われていますが、このような省力化で人員の適正配分が可能になります。

職種別に見ると、日本のエンジニア・研究者はモチベーション・能力ともに高い傾向がみられますが、日本の事務系ホワイトカラー(編集部注:営業や企画、事務管理など)は働き方もキャリア形成も受け身である特異な存在なのです。これは、能力・適性と仕事のミスマッチ、つまり「採用と配属」が要因だと言えるでしょう。たとえば、学歴や年齢が採用基準となっている。あるいは、専門性や希望が尊重されず、定期的な異動が発生する…。つまり、主体的に勉強しても意味がなくなり、キャリアアップしようという意欲への足かせとなるわけです。そして、若くて尖った人材を採用したはずでも、3年でやる気が阻害され丸くなってしまう。これは、制度・しがらみといった組織風土の“見えない障壁”によって消耗してしまうからです。

採用のあるべき姿と、これからのキャリア形成

では、「組織活性化」を推進し、労働生産性を本質から上げていくために、今後採用はどうあるべきなのでしょうか。ポイントは3点あります。

まずは「ゼネラリスト主義に限界が来て、職種別採用にシフトしていく」と考えられます。ゼネラリストは、どうしても広く浅くの技術しか身につかず「素人集団」になりかねません。欧米諸国のようにこれからはどのような職種においてもプロフェッショナルとしての高い専門スキルが求められていくはずです。自らのスキルを高めていくことは、自然とモチベーションやキャリアアップにつながっていくはずです。つまり、「何でもできるゼネラリスト候補採用」はなく、「職種別採用」にウエートが移っていくでしょう。

次に、「インターンシップや体験入社を経てからの採用」が主流になっていくのではないでしょうか。書類や面接だけで能力・適性を判断するのは極めて難しい。いったん採用すると解雇しづらい日本企業こそ、仕事の適性や職場環境、人間関係などを見極め入社するという流れが推進されていくことでしょう。

そして、退職した社員を再び採用をする「Uターン(出戻り・アルムナイ)採用」も活発になっていくべきです。日本人の国民性は、「辞めた人は裏切り者である」「裏切り者を再び迎え入れたくない」「信頼できない」と退職者の出戻りを嫌う傾向があります。しかし、これは感情的なものでしかありません。むしろ、一度外の世界を知っている社員の方が組織へのコミットメントも強くなります。さらに言えば、スピンアウトして起業した人とネットワーク、アライアンスを組んでいくことで、新たな事業開発や組織活性につながることは明らかです。

スピンアウトして起業した人とネットワーク、アライアンスを組んでいくことで、新たな事業開発や組織活性につながることは明らか

では最後に、これからのキャリア形成についても考えましょう。個人は今後会社に指示されたキャリアを歩むのではなく、オーナーシップを持ってキャリア、ひいては人生を歩むことが考えられます。そのため、企業は今後ジョブポスティング型で自ら手を上げるスタイルにしないと、本当のキャリアモチベーションは生まれません。また、入社時にキャリアを決めてしまう「コース分け人事」も時代遅れとなるでしょう。今までは「取締役を目指すなら私生活を犠牲にする」「偉くなるためには、何かを捨てる」といった、キャリアアップと私生活とのトレードオフを強いられてきました。

しかしこれからは、優秀な人材こそ私生活とバランスを大事にしていく傾向が見られるはずです。私は、「能力時価主義の時代」がやってくると提唱しています。これは、学歴や経歴など一度どこかで失敗してしまうともう二度と勝ち上がれなくなってしまう「トーナメント型のキャリア」は終わることを意味しています。つまり、大事なのは過去ではなく「いま何ができるか」ということ。レールに乗っていないとダメ、トーナメントから脱落したらダメ…というのは非常にナンセンスなのです。

このように考えてみると、これからの人事の役割も必然と変わってきます。今までのように人事主導の適材適所は破綻し、人事はあくまでも「個が望む場の提供」「個が望むキャリアへの誘導」をする立場へと変わってくるはずです。組織主導の適材適所と個人による適材適所は異なります。「この方向に進みたい」という個人の意思を支え「場を提供して、側面からサポートする」という役割がこれからの人事・採用担当者の重要なテーマになるでしょう。

グローバル人事ならではの、組織活性化への取り組み(参天製薬株式会社 藤間 美樹氏)

グローバル人事ならではの、組織活性化への取り組み(参天製薬株式会社 藤間 美樹氏)

人事としての私の基軸は2つあります。1つは経営に資する戦略人事。なぜ会社に人事組織があるのか。事業に貢献して初めて存在価値があります。経営のことを考えずに仕事をしても意味がなく、常に経営に紐付いた戦略を考えています。もう1つ大事にしているのが、人と組織の活性化です。人事は何で勝負するのかというと人と組織で、「人と組織がイキイキしている状態」を目指します。先ほども議論に上がっていた、昭和時代に活躍された諸先輩方と平成・令和時代の我々と何が違うのか。少なくとも一人ひとりの能力やポテンシャルに大きな違いはないと考えています。令和の時代がどうなっていくのかという願いも込めてお話ししていきたい。それらの前提と、私自身の海外赴任経験や参天製薬の海外売上比率が30%超というグローバルな状況も踏まえて、お話を進めていきます。

まずは会社の紹介をさせていただきます。当社の基本理念は「天機に参与する」というもので、社名もここからきております。一言で言うと「自然の神秘を解明して、人々の健康の増進に貢献する」ことであり、これを大事に日々事業に取り組んでおります。現在は約2340億円の売上がありますが、皆さんになじみがある薬局で販売されている目薬は売上の10%弱を占める一方、ほとんどが病院向けの医療用医薬品で占められており、現在国内の医療用ではシェア1位という状態です。国内だけではなく現在は60カ国まで販売を展開しており、海外比率は30%を超えております。つまり、参天製薬においても「グローバル」は重要ポイントの1つと捉えています。

組織風土づくりに70%の影響を及ぼす、“Lead People”

戦略と風土の関係は、種と土壌の関係ようなものだと言えます。
戦略と風土の関係は、種と土壌の関係ようなもの

(参天製薬株式会社 登壇資料 ※以下同様)

いかに種(戦略)が素晴らしくとも、土壌(風土)と合わなければ立派な樹木(業績)は育たない。これらの相性は非常に大事なんです。たとえば、人事である皆さんが、本やセミナーを通じて「この人事戦略を、わが社でも取り入れたいな」と思ったとしましょう。そのとき、まずは「自社の社風に合うのかどうか」を考えるわけです。もし無理だと思ったら、戦略を少しアジャストする。ここの判断こそ、私たち人事が重要な役割を担っています。経営陣から言われた通りに戦略を実行するために、風土を変えるのではない。人事がアンテナを張って、その戦略は自社に適切なのか。どうすれば実施できるのかを考えなければなりません。それでもこの戦略は変更せず実施するとなれば、組織風土を変えていきます。

では、経営に資する戦略人事であれば、どこから手を付ければよいのでしょうか。

リーダーの業績に対する影響

組織風土は業績に対して30~40%影響し、組織風土に対してはリーダーの存在が70%影響すると言われています。従ってまず手を付けるべきなのは、リーダーからということになります。では、どのようなリーダーが望ましいのでしょうか。

組織活性化のキーマンとなる、リーダーの条件

私の経験や海外での事例を踏まえながら、望ましいリーダーの条件を見ていきましょう。

望ましいリーダーの条件

リーダーとマネージャーはよく比較されますが、リーダーは“Lead People”であり、マネージャーは“Manage Process ”ではないでしょうか。日本のリーダーは管理職という言い方をします。しかしリーダーとは、「人を管理する」という意味だけではなく、「人を引っ張る」という意味も大事なのです。私は過去に営業組織にも所属しておりましたが、一致団結して「売上を達成しよう!」となるのは、この人についていくのだという思いです。組織力は、支店長や部長という役職ではなく、「▲▲さん」という存在が大きい。つまり、“Lead People”として「この人についていこう」と思わせるような個、リスペクトされる軸を持っていることが大切なのではないでしょうか。

よく人材開発では「弱点を直す」という考え方もありますが、そうではなく「個の強みを発揮し、伸ばしていく」ことの方が大事です。10人いたら10人の強みを組み合わせていったほうが組織はより強くなっていきます。そのために論理的・客観的な態度も求められます。日本人は以心伝心により割と細かいことを言わなくても通用する傾向があります。しかし、ビジネスにおいてバックボーンが違う、グローバルな環境や世代間では、論理性や客観性は特に必要です。論理的・客観的に誰しもが理解できるように説明できなければなりません。
そして、最終的には「リーダーが自信を持って決断する姿勢」も重要だと言えます。特に経営のトップは理屈で判断しないときもあります。たとえば、取締役会で8割が賛成したらやめよう。2割しか賛成しない場合は反対にビジネスの芽があるのではないか-。時としてリーダーはこのような判断を強いられることがありますが、結局最後は自信があるかどうかです。人は誰でも自分が見たこと・経験したことで判断基準をつくりがちですが、自分の範囲の中でやろうとするとイノベーションを起こすことはできません。自身の信念や価値観をベースにしつつも、相手の文化に合わせる柔軟性が大事です。つまり、「異質を受け止める寛容さ」です。これは決して我慢することではありません。その上で、組織としてどうなのかと決めていく勇気が求められます。

では、組織活性化については、どのようにアプローチしていったらいいのでしょう。

企業戦略に沿うと、「アクション・成果重視」となりがちで、結果的に「何で悪いのか」とネガティブな方向へ落ち込んでいきます。組織開発においては「プロセス・成長」を重視しなければなりません。そのためにはまず、対話することです。「目標を伝えたから部下はわかっているはずだ」という“思い込みとズレ”を解消していくことです。「何のためにやるのか」を正しく伝えることができれば、メンバー自身も納得でき、プラスアルファの行動に移すことができます。このようにリーダー自らが”関係の質”を高めることができれば、”結果の質”につなげていくことが可能です。会議で上司の顔色をうかがうことなく、安心して発言できる「心理的安全性」などもポイントの1つと言えるでしょう。

リーダーの存在を後押しする、No.2の存在

以前、人と組織の活性化研究会(通称APO研)にて営業組織におけるリーダーの存在について調査しました。その結果、組織に対する営業所長(リーダー)の影響は当然大きなものでしたが、同時に所内No.2の存在も無視できないことがわかりました。彼らが営業所長とメンバーの意思疎通を助けていたのです。コミュニケーションがうまくないリーダーがいても、それを咀嚼してメンバーに伝える。そしてメンバーの意見を所長に伝える。つまり、No.2となる人材は組織活性化において重要な役割を持ち、カンフル剤、あるいは参謀的な存在と言えるでしょう。適性があれば人材をそこへ向けて育てていくことも必要なのです。同時に、企業において人事は経営陣と従業員の間を取り持つNo.2の立場であるとも言えます。たとえば、経営戦略の先手を打って人事業務を行う。人事が率先してNo.2になることで、会社全体の組織活性につながると思います。

参天製薬が取り組む、人材組織開発とは

参天製薬が取り組む、人材組織開発とは

タレントレビュー

参天製薬ではより良い人材開発を行っていくために、「タレントレビュー」の導入を検討しています。タレントレビューとは人の適性を見る、あるいはどの人材が会社や部門を背負っていくかについての見極めをする仕組み・プロセスです。

タレントレビュー

タレントレビューの大きな特徴は複数の目で議論すること。これまで直属の上司・部下の間だけで決めていたキャリアの方向性を、複数のリーダーおよび各部門を交えて多面的に議論するのが特徴です。タレントレビューでは部下のキャリア志向についてもディスカッションしていくので、上司は部下のキャリアについてあらかじめしっかり認識しておくことが必要となり、一人ひとりと向き合うことが求められます。ここで出たキャリアプランをもとに、部下と育成計画を決め、上司は部下をフォローしていきます。組織全体を俯瞰して考えることで、メンバー自身も「自分はここでどのようなキャリアを歩んでいきたいのか」と考えることができ、主体的なキャリア形成につながっていくと考えています。

参天製薬のリーダーシップコンピテンシーは「天機に参与する」という基本理念に基づいており、基本理念を行動レベルに落とし込んだコンピテンシーで、この参天リーダーシップコンピテンシーを縦軸に、横軸にラーニング・アジリティ(※)を用いています。ラーニング・アジリティの要素は4つで、メンタル・アジリティ(Mental Agility)、ピープル・アジリティ(People Agility)、リザルト・アジリティ(Results Agility)、チェンジ・アジリティ(Change Agility)があります。

(※)ラーニング・アジリティとは、広範で・複雑なリーダー的役割において、人が今まで以上に成功する可能性を見極めるための重要な要素です。

グローバル化の刺激

異文化・多様性・異なる組織風土に対応していくには、また今までの日本ではなくこれからの日本の強みとして変えていくには、ノウハウを本で読んでもつかむこと容易ではありません。やはり肌感覚でつかむことが大事であり、それには海外駐在が1つの近道です。しかし、海外に行ける人と行けない人がいます。たとえば、ワーキングマザーの海外長期駐在は現実的でしょうか。厳しいです。そこで当社では、長期ではなく数週間の連続海外出張を組み合わせるなどの仕組みを取り入れています。これはGlobal Task Forceの議論を通じて提案され、決定しました。

ここで、Global Task Forceについて説明しましょう。本社が海外子会社に対して、「やれ!」というのは私のやり方ではありません。グローバルな人事課題は、グローバルに連携して人事業務を推進する仕組みも構築しました。具体的には、日本も含めた各リージョンで縦割りに意思決定するのではなく、グローバル人事課題はGlobal Task Forceという海外メンバーとの横串の組織で扱う仕組みを徹底しています。つまり、Global Task Forceで人事課題を提案する。そして決まったことは、HR Senior Leaders Team (HRSLT)で意思決定が行われるというガバナンスモデルを構築しています。

海を知らない人に「海が広い」と言ってもわかりません。異文化・多様性に接したことがない人に、異文化コミュニケーションは難しいと言ってもわからないのです。海外メンバーとの交流の場は、工夫次第でいくらでもつくることが可能です。先ほどもお伝えしましたが、自分たちの枠の中で決めるのではなく、視野を広げて大きな枠で捉えてみる。経験の範囲から飛び越えてみる。そのような取り組みを、私たちは積極的にトライしていきたいと思っています。

主体的なキャリアを築くことと、リーダーの役割(パネルディスカッション)

セミナー終盤では、ファシリテーター役の須東氏によるパネルディスカッションと参加者を交えた質疑応答を行い、よりテーマについて掘り下げていきました。

主体的なキャリアを築くことと、リーダーの役割(パネルディスカッション)

「個人のキャリア」に着目し、自立していくためには誰がどう行動するべきでしょうか。

太田氏:「自立のための課題」を会社側から与えるのは、本末転倒です。従って、やはり個人主導が前提となるでしょう。しかし高学歴で優秀であるほど、他律的に歩んできた人が多い傾向にあり、それが課題ですね。本当の意味での自立性というのは、スピンアウトなどがないと生まれてこないのかもしれません。

藤間氏:太田さんのご意見に関連して、会社の仕組みによるところも大きいと思います。終身雇用で社内スキルのための育成的ローテーションをすると、結局“何でもできる人”になってしまう。そして何をしたいかよりも、社内のネットワーク作りにエネルギーを注ぐことになってしまいます。いつ解雇されるかわからない海外のように、個人のキャリアにつながる仕事を自ら獲得していく姿勢が必要です。日本は社員を子ども扱い、海外は大人扱いという言葉の通りで、日本はもっと本人に決断を任せて良いのではないでしょうか。

これからの育成的ローテーションの在り方についてお聞かせください。

藤間氏:部署異動が必要ないケースでも、社歴や経験年数、会社のルールなどで自動的にローテーションされてきたことは問題です。そうやって「扱いやすい人」だけ育成されては、イノベーションが起きるはずもありません。参天製薬では先ほどのタレントレビューによって、必要なローテーションだけをやろうとしています。自身で軸を見つけることがイノベーションにもつながるはずです。

太田氏:その通りですね。定期異動ではなく、空白ポストの有無といった必然的な流れで人事異動をしていくべきでしょう。

藤間さんのお話の中で、リーダーの重要性をご説明いただきました。では、組織活性化のためにリーダーがすべきことは何でしょうか。

組織活性化のためにリーダーがすべきこと

藤間氏:リーダーはビジョンを伝える役割に徹し、メンバーに考えさせるのが良いと考えています。「一番高いあの山に登りたい。その登り方はみんなの方がわかっているでしょう」という問い掛けをするイメージです。先ほども申しましたが、組織が活性化する一番のポイントは「個人の意思・想い」によるところが強いと感じています。

太田氏:
リーダーがロールモデルを示すことでしょう。また、通説とは逆にリーダーがしっかりし過ぎない方が良いかもしれません。上が頑張り過ぎるとタレント人材は活躍できないこともあります。あえて隙を見せることで、メンバーたちが頼り過ぎず自発的に動いていくようになるでしょう。

多様性というキーワードの中で、世代間のズレというお話もありました。世代間のズレについて、寛容さを高めていくコツはありますか。

藤間氏:特効薬はないと思います。寛容さは経験を通じて獲得するものです。とりあえず受け止める姿勢を忘れず、コーチングのような形をとるという手段もあると思います。

須東先生

【取材後記】

個人の働き方や組織の在り方を巡る環境は大きく変化しながらも、内情は旧来の制度・しがらみに縛られたままという現実。さらに企業風土も千差万別であるが故に、「こうすれば100%解決する」という答えは誰も持ち合わせているはずがありません。

しかし、今回の太田氏による学術的なマクロ視点と、参天製薬というグローバル企業の人事責任者である藤間氏による実務視点からの提言は、現状打破に奮闘する人事・採用担当者にとって大きな示唆となったのではないでしょうか。

(文/伊東 宏之、撮影/安田 健示(合同会社フォトレイド)、編集/齋藤 裕美子)