【テンプレート付】辞令とは?交付する際に知っておきたい基本事項_社労士監修

社会保険労務士法人クラシコ

代表 柴垣 和也(しばがき かずや)【監修】

プロフィール

従業員の異動や昇格・降格などの際に交付される「辞令」。企業が従業員に交付する(手交する)正式文書です。

しかし、「辞令」はどのように作成し、交付すればよいのでしょうか?また、「辞令」に法的拘束力はあるのでしょうか?この記事では、人事・総務担当者が知っておきたい「辞令」についての基礎知識をお伝えします。

また、状況に応じて使える辞令テンプレート集もダウンロード可能ですので、併せてぜひご活用ください。

辞令とは?

「辞令」は、もともと中国発祥の言葉です。「告げる、伝える」という意味で古くから使われていました。現在の日本では、企業から従業員に向けての命令文書を指し、「昇給・降給」「昇進・降格」「転勤」「異動」などの人事的な動きがある場合に用いられます。

類似した言葉に「委嘱(いしょく)」という言葉がありますが、「辞令」が社内の従業員に向けた言葉であるのに対して、「委嘱」は専門的な知識を要する業務を、外部の専門家(民間など)に任せる場合に用いられ、特に行政の場面で使われることが多いようです。

辞令の法的拘束力は?

「辞令」は法律で定められているものではないため、それ自体に法的拘束力はありません。そのため、「異動や転勤など、どういった場面で辞令を出すか」「辞令を交付するか、異動の内容を口頭で伝えるか」といった判断は企業に委ねられています。しかし辞令は、従業員との労働契約の締結により企業に認められる「業務命令権」に基づくものであるため、一般的に従業員は従う必要があるとされています。そのため、従業員が辞令に従わなかった場合には、懲戒処分となる可能性があります。

業務命令違反として懲戒解雇となる可能性があるケース

以下の2つの条件を満たした上で、従業員が辞令に従わなかった場合
①業務命令について、就業規則などに規定されている
②辞令の内容が合理的なものである

とは言え、懲戒解雇は従業員にとって社会的・経済的ダメージが大きいため、必ずしも「これらの条件を満たせば懲戒解雇してよい」というわけではありません。企業が従業員に対して無理な辞令を出せば、訴訟問題にまで発展するケースもあるでしょう。辞令の内容が従業員にとって著しく不利益なものと判断された場合には、「人事権の濫用」として辞令自体が無効になる可能性もあります。

安全面が保障されない、無理な辞令により、従業員側が裁判を起こして企業側が負けた例

【辞令内容】治安悪化により生命の危険が生じる地域での勤務
【判決】従業員がその命令を拒否したことによる解雇は無効

従業員とのトラブルを避けるためには、正式な辞令を出す前の内示の段階で、従業員に辞令の内容について十分に説明し、理解してもらうことが重要です。

【テンプレートあり】辞令の書き方

人事の発令は口頭で告げることも可能であり、有効です。しかし下記の理由から、辞令として書面にしておくと間違いがないでしょう。

 ①「言った」「言わない」など、企業と従業員との間に認識の相違が生じる可能性
 ②転居など生活スタイルが変わることもあるため、内容を正確かつ確実に伝える必要性

交付の方法は手渡ししても、印刷したものを社内で掲示しても、メールで伝えてもかまいません。また、昇格などの場合は、書面にして直接渡すことで、従業員のモチベーションが上がるといった効果も期待できます。そのため、厚紙(辞令用紙)に印刷して交付式を行ってもよいでしょう。ここでは、さまざまなケースに沿ったテンプレートをご紹介します。ぜひダウンロードしてご活用ください。

辞令の基本的な書き方

まずは、辞令の基本的な構成と書き方をご紹介します。基本は「いつ、誰から誰に、何の辞令を発令するのか」という情報を明記します。

発令日 辞令を従業員に正式に伝える日程である、発令日を記載します。
例: 2020年1月20日
受令者 辞令を告げる対象である、受令者を明記します。役職に就いている従業員の場合は、役職名も併せて記載しましょう。敬称には、「殿」を使用します。
例: 第一営業部 部長 ○○○○殿
発令者 辞令を発令する、企業側の発令責任者を記載します。通常は、代表取締役や社長を発令者として作成しますが、人事部門の責任者名義にする企業もあります。社内文書であるため、通常は社長印などの押印は省略されますが、企業が正式に発行していることを示すためにあえて押印する企業もあるようです。
例: 株式会社○○○○ 代表取締役社長 ○○○○
内容 辞令の内容として、従業員に伝えるべき情報を簡潔に記載します。詳細は、後述のケース別記載例をご参照ください。
・発令日:辞令を従業員に正式に伝える日程である、発令日を記載します。
・受令者:辞令を告げる対象である、受令者を明記します。役職に就いている従業員の場合は、役職名も併せて記載しましょう。敬称には、「殿」を使用します。
・発令者:辞令を発令する、企業側の発令責任者を記載します。通常は、代表取締役や社長を発令者として作成しますが、人事部門の責任者名義にする企業もあります。社内文書であるため、通常は社長印などの押印は省略されますが、企業が正式に発行していることを示すためにあえて押印する企業もあるようです。
・内容:辞令の内容として、従業員に伝えるべき情報を簡潔に記載します。詳細は、後述のケース別記載例をご参照ください。

昇格・昇給の場合

昇格や昇給の場合は、その結果に至った理由を明記すると、従業員のモチベーション向上にもつながります。

例:昇格の場合

貴殿のこれまでに得た部下からの厚い信頼や功績を称え、○○○○年○○月○○日付をもって、第一営業部 部長の任を解き、同日付をもって営業本部 本部長に任命します。
より一層職務に励み、我が社の発展に貢献されることを期待します。

例:昇級の場合

貴殿のこれまでの功績を称え、○○○○年○○月○○日より、以下の通り給与を支給します。

基本給  ●●●,●●●円
◎◎手当  ●●,●●●円

降格・減給の場合

降格や減給は、何らかの処分や評価結果に基づいて命じられる場合がほとんどです。簡潔に事実のみ言及します。
(関連記事:『【弁護士監修】降格する際、何からどうする?違法にならないために注意したいこと』)

例:降格の場合

貴殿を、○○○○年○○月○○日付をもって、第一営業部 部長の任を解き、同日付をもって第一営業部勤務を命じます。

例:減給の場合

○○○○年○○月○○日より、以下の通り給与を支給します。

基本給  ●●●,●●●円
◎◎手当  ●●,●●●円

入社の場合

入社の場合、「採用」という文言を使い、辞令の内容に加えて配属先の名称も明記します。労働基準法の観点から条件(給与・手当・勤務先など)をきちんと明記する必要があります。また、入社者に対して何を期待しているのか、コメントなどを書き添えてもよいでしょう。

例:

貴殿を、○○○○年○○月○○日付をもって社員として採用し、(配属先)勤務を命じます。
今後の活躍により、我が社の発展に貢献されることを期待します。

退職の場合

退職の辞令は、主に定年退職の際に交付されます。長年会社のために働いてくれた感謝の気持ちも併せて伝えると良いでしょう。

例:定年退職で再雇用しない場合

貴殿を、当社就業規則第*条により、○○○○年○○月○○日付をもって定年退職となることを通知します。
○○○○年入社以降○○年の長きに亘り、我が社の発展に大きく貢献されたことに感謝申し上げます。

例:定年後再雇用する場合

貴殿を、当社就業規則第(定年退職について規定している条項)条により、
○○○○年○○月○○日付をもって定年退職となることを通知します。
尚、定年退職日の翌日より、嘱託社員として再雇用します。

異動の場合

異動の辞令は、どこからどこに異動になるのかを簡潔に記載します。

例:

貴殿を、○○○○年○○月○○日付をもって、営業企画部勤務を命じます。

兼務の場合

現在の任務に加えて、他の職務を兼ねることになる場合、追加で担う任務を伝えた上で、本務についても明示します。

例:

貴殿を、○○○○年○○月○○日付をもって、営業企画部部長の任を兼務することを命じます。
尚、本務は第一営業部 部長とします。

英語で記載する場合

英語では、辞令を「Letter of Appointment」「Appointment Letter」と表現するのが一般的です。基本的な構成に沿った英語表現については、本記事からダウンロードしたテンプレートでご確認ください。ここでは、昇格の場合の英文例についてご紹介します。

例:昇格の場合

We are pleased to inform you that you have been appointed for the position of a Sales Manager as of January 1.
(あなたが、1月1日付をもって営業部長に任命されたことを喜んでお知らせします)

We are also confident that your contribution will take us further to the growth of our company, fulfilling the responsibility of a new position and meeting our expectations.
(あなたが、今後も引き続き新しい職の責務や期待に応え、我が社の発展に貢献されることを期待しています)

辞令交付までの流れ

それでは、従業員に辞令文書を交付するまでの流れを、時系列に沿って確認しましょう。実際の人事では、対象者を選ぶプロセスも必要ですが、ここではすでに対象者が決定しているという前提で、以降の流れを説明します。

1~3カ月前:内示をする

まず対象者が決まったら、正式な辞令を発令する前に内示をします。「内示」とは、発令予定の人事を、対象の従業員に事前に伝えることです。内示をする意味は、大きく分けて2つあります。

1つは、従業員に人事の内容に異議を唱える機会を与えることです。辞令には業務命令という意味がある以上、従業員に異議を唱えられたからといって、必ずしも取り下げる必要はありません。ただし、無理な辞令を強行すると、従業員の退職につながってしまうこともあり得ます。そのため、十分な期間を設けて内示を行い、従業員の納得が得られるようにフォローしましょう。もう1つの意味合いは、正式な辞令に向けた準備期間を与えることです。「転勤」「異動」など、従業員の就業環境が大きく変化する内容の場合、仕事の引き継ぎだけでなく、引っ越しの準備や行政の手続きなども必要になります。

一般的に内示は、口頭でもメールや文書で行ってもかまいませんが、本人と上司のみの限定的な公開が前提となります。口頭で告げる場合は、他の従業員に聞かれないように個室で伝えるようにしましょう。

例:内示(文書の場合)

○○○殿
 貴殿を、○月○日付をもって、下記の通り発令見込みにつき通知する。
 異議がある場合は、○日以内に申し出ること。

1カ月前~10日前:辞令文書を作成する

内示した結果、従業員との合意に至ったら辞令文書を作成します。辞令文書は、本記事でご紹介したテンプレートを参考に作成してください。

10日前~当日:辞令を発令する

いよいよ正式に辞令を発令します。発令とは、当事者以外の従業員や取引先などの関係者に向けて、辞令の内容が公表されることを指します。発令の方法には、定例会議の場で伝えたり、目に見える形で社内掲示したりと、さまざまな方法が考えられます。

10日前~当日:辞令を交付する

発令~当日にかけて、文書で辞令の内容を本人に渡します。文書で交付することに法的な義務はありませんが、企業によっては、辞令交付式として当日にセレモニーを実施するケースもあるようです。

辞令を社内掲示する場合

辞令を社内掲示という形で公表する場合、発令日の10日前~当日に掲示を開始します。内容は、辞令文書と同等で構いません。同日に複数の従業員が辞令を受ける場合には、表形式の一覧にしてもよいでしょう。

掲示する方法には、従業員の目につきやすい掲示板に貼り出すほか、Web上にデータをアップロードできる社内ポータルサイト内で公表するなどがあります。いずれにしても、辞令を掲示する場所は一元管理をして、常に同じ場所で確認できる状態が望ましいです。また、掲示しておく期間も決まりはなく、企業によってさまざまです。Webの場合は、過去の辞令も含めて半永久的に同じ場所に保管している場合もあります。

辞令交付式(セレモニー)を行う場合

辞令交付式とは、辞令を従業員に交付するタイミングで行うセレモニーのことです。最も代表的なものは、入社式です。入社当日、新入社員に入社辞令を交付する形で実施するもので、辞令交付式の一種と言えます。そのほか、当年度に昇格した従業員を対象として、年度初めに昇格辞令の交付式を行う企業もあります。

では、辞令交付式はどのように行えばよいのでしょうか。

時期 受令者の気持ちを考えると、発令日を中心とした数日以内に実施することが望ましいでしょう。とは言え、従業員に辞令の内容が確実に伝わっている状態であれば、辞令交付式の実施が多少遅くなっても、大きな問題にはなりません。

出席者 受令者本人はもちろんのこと、社長・役員・人事担当者などが出席します。場合によっては、現場の管理職や関係の深い企業(親会社など)の役員が出席することもあります。
服装 性別や職位によらず、スーツやそれに準ずる服装で出席することが一般的です。企業が定めているドレスコードなどに準ずるのがよいでしょう。大切なのは清潔・シンプルであること。人事・総務担当者は、服装についても出席者へ一言伝えておくとよいでしょう。
・時期:受令者の気持ちを考えると、発令日を中心とした数日以内に実施することが望ましいでしょう。とは言え、従業員に辞令の内容が確実に伝わっている状態であれば、辞令交付式の実施が多少遅くなっても、大きな問題にはなりません。
・出席者:受令者本人はもちろんのこと、社長・役員・人事担当者などが出席します。場合によっては、現場の管理職や関係の深い企業(親会社など)の役員が出席することもあります。
・服装:性別や職位によらず、スーツやそれに準ずる服装で出席することが一般的です。企業が定めているドレスコードなどに準ずるのがよいでしょう。大切なのは清潔・シンプルであること。人事・総務担当者は、服装についても出席者へ一言伝えておくとよいでしょう。

【参考】セレモニーの流れ

一般的なセレモニーの流れは下記の通りです。セレモニーの進行役は、人事・総務担当者が受任する場合や、従業員の中から選定する場合があります。セレモニーの雰囲気に沿った人選をすることが必要です。

1.開会挨拶(進行役)

「ただいまより、令和2年度辞令交付式(または入社式)を執り行います」

2.社長・役員の挨拶

「はじめに、社長の○○さんより(○○社長より)、一言ご挨拶をいただきます」

受令者に向けた訓示や激励の挨拶をしてもらいます。事前に受令者の情報を伝えるようにしましょう。

3.辞令交付

「辞令交付。○○○○(受令者の氏名)(その後、登壇する受令者の氏名を順に読み上げる)」

受令者が順に登壇し、辞令文書を手渡します。受令者の人数が多い場合には、代表者のみ登壇する形で実施することもあります。辞令文書を受令者に手渡すのは、社長など当日の出席者の中で最も職位が高い方に引き受けていただきます。

4.出席している役員・来賓の紹介

「それでは、本日ご出席いただいた役員・来賓の方々をご紹介します」
「▲▲株式会社取締役○○○○様(順に読み上げる)」

進行役が、役職名や社名と併せて氏名を読み上げるタイミングで、受令者本人にその場で起立してもらいます。

5.受令者代表の挨拶

「次に、受令者を代表して、○○○○さんよりご挨拶をいただきます」

受令者のうち、代表となる1、2名に挨拶をしてもらいます。代表として挨拶してもらう旨は、事前に本人にも伝えておきましょう。
一般的な挨拶は、「辞令に対する喜びや感謝の言葉」「今後の活躍への抱負や決意」「周囲の支援や指導を求める言葉」で構成されます。どのような挨拶をすればよいかを聞かれた場合は、こういった要領で事前にアドバイスしておくと本人も安心です。

6.閉会挨拶(進行役)

「以上をもちまして、令和2年度辞令交付式(または入社式)を終了いたします」

企業は、一度出した辞令を取り消すことができるのか?

異動先の状況が変化するなどの理由で、一度発令した辞令を取り下げなければならないと考えるケースが発生するかもしれません。企業側の辞令取り下げや辞令変更は可能です。そもそも、辞令は全社的な業績や成長を配慮して判断されるもので、状況が変化すれば組織・体制が変わることも十分に考えられるためです。しかし、急な取り消しや撤回を行うと、多くの関係者に影響が及びますので、辞令交付は慎重に行いましょう。

内示なしの辞令交付は違法?

辞令自体に法的拘束力がない以上、内示を経ずに辞令を交付することに違法性はありません。内示とは「従業員に状況を受け入れ、断る機会を与える場」です。従業員にとって利益となる内容(昇給など)であれば、内示がなくてもトラブルにはなりにくいでしょう。しかし、降格や減給など、従業員にとって不利益となる内容の辞令の場合は、従業員とのトラブルを避けるため、内示を行う方が安心です。

辞令は拒否できる?拒否されたら、企業はどう対応すべき?

雇用契約の観点で言うと、就業規則や労働条件通知書の中で、辞令にある内容(人事異動や転勤)が発生する可能性に言及しており、その旨に同意を得ている場合は、基本的に拒否はできません。厚生労働省が公開しているモデル就業規則の中では、懲戒の事由として「正当な理由なく、しばしば業務上の指示・命令に従わなかったとき」とあります。これを踏まえた記載が就業規則にあれば、「辞令という命令を拒否したことを理由」に懲戒対象となる場合もあり得るでしょう。

ただし、「内示」の段階においては、一概にその限りではありません。なぜなら前述した通り、内示はあくまで「従業員に対し、断る機会を与える場」であるためです。内示はまだ業務命令ではありませんので、正当な理由があれば断ることが可能なのです。

従業員が拒否できるケースとは?

企業側が人事権を濫用し、従業員に対して大きな不利益を与える場合、従業員は辞令拒否を行える可能性があります。辞令を交付する際は、当初の雇用契約を確認し、正当な理由を明確にしておくことが重要です。

・入社時の条件と相違がある、契約違反の場合
・人事権の濫用である場合
(業務上の必要性がない、従業員の不利益が大きい、不当な動機や目的など)

辞令を拒否されたときの、企業の対応は?

それでも、もし従業員から辞令を拒否されたらどのように対応すればよいのでしょうか。重要なのは、「なぜ拒否をするのか」をヒアリングすること。従業員との対話を行い、企業側の理由や意図、期待をきちんと説明しなければなりません。

1.従業員の状況を確認する

拒否する理由には、介護を行っている、小さい子どもがいる…などといった個別事情の可能性があります。まずは拒否する理由を把握することが大事です。その上で、代替案を模索する必要があります。

2.会社が従業員に期待していることを伝える

「今回の辞令がなぜ行われたのか」「従業員にどのような期待を寄せているのか」など、会社側の背景をきちんと伝えることも大事です。従業員も理由に納得できれば、受け入れてくれる可能性も大いにあります。

3.辞令に伴う条件(給与や手当)を見直す

個人事情の理解を示した上で、給与や手当といった雇用条件の見直しを行うことは有効です。転居を伴う異動辞令の場合、引っ越し代の補助や住居支援などのサポートを行っている企業も多いです。従業員の状況に合わせたサポートを提供することで、辞令への抵抗感を拭うことができるかもしれません。

それでも辞令を拒否されるようであれば、就業規則にのっとって懲戒処分を検討することになるかもしれません。会社の状況を踏まえて慎重に対処する必要があります。また、自主退職につながる可能性もありますが、その場合も人事・総務担当者はフォローを徹底するべきです。辞令の持つ重さを考え、慎重に対処するようにしましょう。
(参考:厚生労働省『モデル就業規則』)

【文例】辞令を受けてどんな挨拶をすればよい?

辞令を受けて、勤務環境に変化が生じる場合、従業員は同僚や取引先にも挨拶する必要があります。人事・総務担当者は、従業員から挨拶の仕方についての問い合わせを受けるかもしれませんので、下記を参考に対応してください。

挨拶はいつすればよい?

同僚に向けた挨拶は、職場の最終出社日に行われるケースが多いでしょう。
取引先などの社外向けには、正式に発令されたタイミングから最終日にかけて、直接ご挨拶する時間をいただくか、メールで伝えます。人事として注意すべきなのは、内示の段階などで安易に口外することのないよう、念を押すこと。社内外に関わらず混乱をさけるためにも、正式発表後に連絡するように伝えることが大切です。

挨拶では何を言えばよい?

挨拶に含めるのは、「いつから」「どこへ」「(後任がいる場合)後任が誰か」になります。もちろん、一緒に働いてきた同僚や上司、部下、関係者にお礼を言うだけではなく、今後の意欲や想いなどを簡単に伝えるのも良いでしょう。

文例1:異動・転勤の場合

下記の文例はメールの場合を想定していますが、口頭で伝える場合にも同等の内容で構いません。メールは、一人一人に1通ずつ発信するのが理想ですが、時間がないなどの理由でまとめて連絡する場合は、無礼を詫びる一言を添えた上で、BCCで発信します。

株式会社○○ ○○部 ○○様

いつもお世話になっております。株式会社▲▲の▲▲です。

私事ではございますが、○月○日付けで△△△△部へ異動することになりました。
後任として▲▲が担当させていただきますので、よろしくお願い致します。
これまで○○様には、多くのご支援・ご指導を賜りましたことを、心より御礼申し上げます。

本来であれば直接ご挨拶に伺うべきところ、
メールにて失礼させていただくことお許しください。
今後とも、変わらぬお付き合いのほど何卒よろしくお願い致します。

文例2:昇進の場合で、勤務地に変更がない場合

昇進の場合、同部署でそのまま勤務することも多く、口頭で挨拶することができるでしょう。そのような場合は下記の通り、昇進の内容や、日ごろのお礼、今後の抱負や意気込みを伝えます。

○月○日付で、(役職名)を拝命いたしました。
皆様の日頃のご支援の賜物と、心より感謝申し上げます。
このような大役を仰せつかり、身の引き締まる思いです。
今後も、ご期待に沿えるように尽力する所存ですので、
ご指導のほど何卒よろしくお願い致します。

まとめ

法的な義務はないものの、厳かに扱われることの多い「辞令」。企業が成長を続けていくためには非常に重要なものです。

辞令を交付することに敬意を払い、誠実な対応を心掛けることが大切です。ぜひテンプレートをご活用いただき、スムーズな辞令交付にお役立てください。

(制作協力/佐藤 やすよ(まんまるキャリア)、監修協力/社会保険労務士法人クラシコ、編集/d’s JOURNAL編集部)

【Word版】辞令テンプレート集

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