中堅中小企業でも採用したい人材が集まる!魅力的な求人票・求人広告の書き方

WOKE株式会社

取締役 北原 航(きたはら わたる)

プロフィール
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  • 脳の記憶する仕組みから求人票・求人広告を魅力的に書くポイントを理解する ~重要な3つの要素〜
  • 採用したい人材へのメッセージは事実(デモグラフィック)×心情(サイコグラフィック)をもとに検討する
  • 自社の魅力を4つの【P】のフレームワークで整理。コピーと文章(事例・数字)で差別化する

テクノロジーの進化や社会の変化に伴い、採用マーケットや求職者の志向は大きく変わってきています。

その変化に対応し、選考方法をバージョンアップさせなくては、厳しさを増す採用マーケットを勝ち抜き、良い人材を獲得することはできません。とは言え、何から手をつけていいかわからない…という人事・採用担当者も多いのではないでしょうか。

特に昨今は、大手企業を中心に数十人、数百人規模で人材を募集するケースも増えており、会社の知名度や待遇・福利厚生などで見劣りする中堅中小企業からの相談が増えている傾向にあります。

そこで今回は、応募を獲得するための求人票・求人広告の書き方について、私たちの脳の癖を活用し、採用したい人材の記憶に残るためのノウハウをお伝えします

求職者に嫌われる“NGワード” とその言い換え方法などを、明日から使えるよう、わかりやすく実践的にまとめています。知名度や条件に関係なく、採用可能性を高めることができる手法として、ぜひ参考にしてみてください。

脳の記憶する仕組みから考える重要な3つの要素

いきなりですが、問題です。

下の写真の中に【食材】はいくつあるでしょうか?

15秒間で1つでも多く見つけてください。

 

何個見つけることができたでしょうか?

 

キャベツ、レモン、ブロッコリー、卵、ネギ…

 

10個以上見つけられた方は素晴らしい集中力をお持ちです!

 

では続いて、上記の写真を見ずに記憶を思い返しながら以下の質問にお答えください。

先ほどの写真に

『3つの鍋がありましたが、それぞれ何色でしたか?』

『フライパンは何個ありましたか?』

冷蔵庫の上には何がいましたか?』

 

さて、皆さんの回答はいかがでしょうか?この問題、意外に難しかったのではないでしょうか?

 

それぞれの答えは以下の通りです。

 

『3つの鍋がありましたが、それぞれ何色でしたか?』→黄色、赤色、(黄)緑色

『フライパンは何個ありましたか?』→2個

冷蔵庫の上には何がいましたか?』→ワニ

 

食材はたくさん覚えられたのに、その他のものは覚えられない…
このギャップはなぜ生まれるのでしょうか?

答えはシンプル。

それは、最初の質問のときは「写真の中に【食材】はいくつあるでしょうか?15秒間で1つでも多く見つけてください」と質問されたからですね。

鍋やフライパンは確かに目には入っていたはずです。でも、覚えられなかった。もしくは、忘れてしまったわけです。

それには私たちの脳の特性が影響しています

脳は1秒間に1100万ビット(1.3メガバイト)の感覚情報を処理します

しかし、そのうち記憶にとどめることができるのは、40ビットだけと言われています。

全情報のわずか0.000036%だけです

意識して処理できる脳のキャパシティは限られているので、“3つの要素”だけに絞って記憶するそうです。

その3つの要素とは…

(1)自分に関係のあるもの

(2)便益(メリット)のあるもの

(3)驚き・意外性のあるもの

この3点です。

先ほどの写真においては、「写真の中に【食材】はいくつあるでしょうか?15秒間で1つでも多く見つけてください」という指示によって、食材が「自分に関係のあるもの」かつ「便益(メリット)のあるもの」になったのです。

ちなみに『冷蔵庫の上には何がいましたか?』の問題の答えは「ワニ」になります。

これは比較的正答率が高いのですが、その理由は「驚き・意外性のあるもの」であるからです。あの写真において冷蔵庫の上にワニがいることは違和感しかないですよね。

このように私たちの脳は特定の情報だけを記憶するという癖があります

この脳の癖を意識すれば、数多くの求人(※2023年9月27日時点でのdoda掲載求人数218,358件)に埋もれることなく、採用したい人材の脳に記憶される求人票・求人広告をつくることができるのです。

では脳が記憶する “3つの要素”を以下の求人票の設計図に落とし込んでみましょう!

 

 

誰に、何を、どう言うのかという求人票の設計図ができあがりました。

それでは次からは求人票・求人広告の設計図を因数分解して、1つずつポイントを整理していきましょう。

 

両輪で駆動させるターゲット設定

1つ目は、自分に関係のあるもの―誰に言うか(ターゲット設定)です。言い換えるならば、「これは自分向けの求人だ!」と採用したい人材に認知してもらうことです。

ターゲット設定の重要性は認識されている方も多いと思いますが、よくあるミスを2つ挙げておきます。

  (1)事実ベースのターゲット設定しかしていない

  (2)ターゲットの範囲が大きすぎる

年齢や経験、職種、希望年収など統計学的なデータのことをデモグラフィックと言います。

多くの企業がデモグラフィックに関するターゲット設定は実施しています。ですが、デモグラフィックと対をなすサイコグラフィックと言われる心情面の設定が欠けているケースが多くあります。

事実(デモグラフィック)×心情(サイコグラフィック)でターゲット設定をする必要がある理由は、設計図の次の項目にあたる「何を言うか」に関係してきます。

事実(デモグラフィック)の設定しかできていない場合、ターゲットに訴求できるポイントが条件面(給与や休暇など)に偏る傾向があります。

条件面で他社より優位であれば応募を獲得しやすいかもしれませんが、そうでない場合(そうでない場合が多い!)は、何を言えばよいかわからなくなってしまいます。

心情(サイコグラフィック)でのターゲット設定ができていれば、業務内容や働く環境、福利厚生や社風などにおいて自社の魅力づけが可能となります。

また、採用におけるミスマッチを防ぐ効果や入社した方の定着率UPも期待できます。

ですので、条件面で優位性が見つけられないと感じている会社ほど、心情面でのターゲット設定が重要となってきます。

 

 

もう一つのよくあるミスは、ターゲット設定を大きくしすぎてしまうケースです。

「ターゲットを狭くすると採用成功に十分な母集団が形成できない」という懸念を中堅・中小企業の人事・採用担当者からよく聞きますが、これは逆です。

ターゲットを広げるということは、大企業を含む数多くの企業と同じ土俵で勝負することを意味します。多くの人が魅力に感じるブランド力や条件がある大企業と同じ土俵で勝負して、勝てる企業はほとんどありません。

であれば、中小企業は戦う土俵を決めたうえで、採用したい人材像―ターゲットに響くメリットを伝えるのが正しい戦略なのです。

 

自社の魅力を4つの【P】で整理整頓

ターゲットを決めたら、次はそのターゲットにとっての便益(メリット)を考えます。

脳は自分にとって得になる情報が大好物です。この便益(メリット)を見つける際にお勧めなのが採用広報の4Pの活用です。

採用広報の4Pは 「人が組織に共感する4つの要素(4P)」に沿って自社の魅力をわかりやすく整理するための、採用戦略に関するフレームワークです。

①Philosophy=理念・目的:組織のビジョン・目的に対する魅力
Profession=仕事・事業:組織の活動に対する魅力
People=人材・風土:メンバーと接することで得られる魅力
Privilege=特権・待遇:組織に属することで得られる処遇や特権

 

※MVV:Mission・Vision・Valueの略

 

採用広報の4Pを活用することで、自社の魅力を整理して見つけ出すことが可能となり、今まで気がつかなかったメリットを発見することができます。

 

そして、そのメリットが本当に有効なものかをチェックする必要があります。

そこでポイントになるのが、「本当にターゲットにとってのメリットなのか」「他社にはないオリジナリティ・優位性があるか」の2点です。

これを4象限にまとめたのが下記の図です。

 

 

抽出したメリットが本当にメリットになるのか、この4象限にマッピングしていくことで明確にできます。

ターゲットにとって興味があり、かつオリジナリティ/優位性がある右上の象限に分類されるものは、「ドストライク」という表現通り、求人票・求人広告はもちろん、面接や入社前面談などにおいても訴求すべき自社の採用活動における武器となります。

一方で、ターゲットにとって興味が無く、オリジナリティ/優位性がない情報は、採用する側もされる側もメリットのない内容であるため、最低限の情報提供にとどめた方が良く、応募検討の雑音とならないように注意が必要です。

そして、この4象限の中で、新しい悩みを人事・採用担当の皆さんにもたらすのが、「レッドオーシャン」「独りよがり」に分類される情報です。実際の採用活動においては、この2象限に分類されるものが集中してしまうことが少なくありません。

 

メリットを強化する表現の工夫

「レッドオーシャン」「独りよがり」の問題を解決するのが、求人票の設計図の最後「どう言うか(表現方法)」です。

脳の記憶する3つの要素でいう驚き・意外性のあるものに該当します。

これはいわゆるコピーライティングの領域です。

世の中にある当たり障りのない平凡なメッセージを、手垢のついていないコピーに変換することで、ターゲットの興味を増幅し、オリジナリティ/優位性を高め、「レッドオーシャン」「独りよがり」から「ドストライク」の象限に持っていくことができます。

 

 

例えば、「Uターン歓迎!地域密着で働きませんか?」という情報。Uターン歓迎の求人募集自体は珍しくありませんし、この表現だけでは大きな差別化は期待できません。Uターンを希望しているターゲットの視点から見ても、募集しているエリアで複数の求人があれば、それは「レッドオーシャン」と言えるでしょう。

しかし、「課長は●●高校、部長は●●高校出身です」と求人票・求人広告に記載があったらいかがでしょうか?

「もしかしたら共通の知り合いがいるかもしれない」「課長が同じ高校出身か、そういえばあの先生元気かな?」など、本気でUターンでの転職を検討している方にとって、その求人は記憶に刻まれるはずです。

また、コピーや文章表現に自信がないという方にお勧めなのが「徹底した具体化」です。

「高いコミュニケーションスキル」「女性が活躍している」「着実に売上拡大」「多様なキャリアパス」「安定した労働環境が魅力」…こういった抽象的な言葉は話し手からすると便利ですが、解像度が低く求職者に届きません。

そんなときは、数字や具体的な事例を載せることにこだわりましょう!

例えば…

 

数字や具体的な事例を載せることが他社との差別化になります。

これは特別なスキルではなく、情報収集を頑張る!という誰にでもすぐにできることです。

 

まとめ

誰に、何を、どう言うかという求人票の設計図について、具体的に活用するイメージが持てたでしょうか?

この設計図を使いこなすためにお勧めの練習方法があります。それは、「転職サイトに掲載されている求人広告の中から興味があるものを選び、設計図を基にその理由を解説する」というトレーニングです。

「これはいい求人だ。なぜなら、ターゲットが明確で、ターゲットにとってのメリットを、手垢のついていないコピーや具体的な情報で表現しているから」という解説を、背景・根拠を含めてできるようになればOKです。

これまで求人票や求人広告は勘や感覚、他社事例をもとにつくられてきました。ですが、脳科学の観点で正しいつくり方、記憶に残るための方法がわかってきました。ぜひ、採用成功につながる自社ならではの、魅力に溢れる求人票・求人広告を生み出していきましょう!

企画・編集/白水衛(d’s JOURNAL編集部)

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