プレイングマネージャーとは?基本的な役割とチームを活性化させるポイント

d’s JOURNAL編集部

プレイングマネージャーとは、売上に直結する業務を担うプレイヤーとしての役割と、部下や組織をマネジメントするマネージャーとしての役割をあわせ持ったポジションを指します。

また、人材不足や新たなテクノロジーの出現といったビジネスの環境において、迅速な意思決定や柔軟な対応が求められる場面が多くなり、プレイングマネージャーの存在感が増しているといえるでしょう。

この記事では、プレイングマネージャーの基本的な役割やチームを活性化させるためのポイントなどを解説します。

プレイングマネージャーとは


プレイングマネージャーの役割を正しく把握するために、まずは基本的な捉え方から見ていきましょう。組織における役割や管理職との違いについても解説します。

プレイングマネージャーの概要

プレイングマネージャーは、売上に直接関わる業務に取り組むプレイヤーでありながら、部下の育成や組織の管理といったマネジメントに関する職務も任されるポジションを指します。個人としての目標達成を目指しながらも、チームとしての目標も同時に達成していくことが求められる立場です。

プレイングマネージャーが求められる理由としては、人材不足や成果主義による影響の他に、社会の変化に対応していくといった点が挙げられます。ビジネスを取り巻く環境に大きな変化が見られる時代にあって、迅速な意思決定や柔軟な対応といった部分は重要です。

そのため、中小企業だけでなく大企業のなかにおいても、プレイングマネージャーの役割を担う人はいるでしょう。さまざまな業種や職種で求められている存在だといえます。

管理職との違い

プレイングマネージャーが個人の業績と組織のマネジメントの両方の役割が求められるのに対して、管理職はチーム内における責任者を意味しています。管理職は部下の育成や指導、計画の立案や組織の円滑な運営などを担うポジションであり、基本的に現場の実務を担うことはありません。

また、管理職は法律上の管理監督者ですが、プレイングマネージャーは業務内容によっては管理監督者に該当しない場合があります。労働基準法第41条における管理監督者の規定として、「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」と定められています。

そのため、立場上は管理職として扱われているプレイングマネージャーであっても、労働基準法上の管理監督者に該当せず、残業代の支払いが必要なケースがあるでしょう。プレイングマネージャーとしての役割を与える前に、労働条件などをきちんと精査しておく必要があります。

(参照:『労働基準法』 )

組織における役割

プレイングマネージャーの組織における役割として、まずは個人として能力やスキルを高めつつ、自らに与えられた業績に関する目標を達成することにあります。プレイヤーとして認められる成果を出していくことが重要です。

そのうえで、チームメンバー相互のサポート関係を構築しながら、組織として成果が出せるようにマネジメントに取り組んでいく必要があります。組織の目標を明確に掲げ、チームメンバーの行動や意識を目標達成に集中させることで、組織としての生産性の向上を促していきます。

また、人材育成の面においてもプレイングマネージャーは役割を担っており、自社が求める人材像に沿った育成を実施していくことになるでしょう。

プレイングマネージャーが求められる理由


プレイングマネージャーが多くの組織や業種で求められているのは、いくつかの理由が関係しています。具体的にどのような理由があるのかを解説します。

人手不足による影響

プレイングマネージャーが求められている理由として、人手不足による影響が挙げられます。バブル経済が崩壊して以降、景気後退による業績不振などから、人件費の削減を行う企業が増加しました。

人員整理の流れは、直接的に売上の向上に貢献しない管理職のポジションにおよび、管理職の数が減少傾向となりました。結果として、現場の業務を担当していた従業員がマネジメントの役割も担うようになり、プレイングマネージャーの必要性が増したといえます。

(参考:『人手不足が課題になる日本の現状|原因と企業が取り組むべき対策を解説』 )

成果主義の影響

不況や企業業績の悪化から、従来の日本企業で見られた終身雇用・年功序列といった労働環境に変化が見られるようになり、具体的な業績への貢献度によって報酬や人事評価を行う成果主義の仕組みを取り入れる企業が増えました。

そのため、組織のマネジメントを担う役割の管理職自身も、プレイヤーとしての能力を求められるようになり、プレイングマネージャーの増加につながったといえるでしょう。

(参考:『成果主義の導入で失敗しないためのポイント5つ~メリット・デメリットから解説~』 )

社会の変化における影響

IoTやAIなど新しいテクノロジーの出現や、働き方の多様化など社会の変化が激しくなっています。そうした状況下にあって、企業が持続的な成長を遂げていくには、自律的に行動できる人材の確保が欠かせなくなりました。

現場の実務に精通し、経営層の意向を理解したうえでマネジメントに取り組める人材が多くの企業で求められるようになったといえます。迅速な判断能力とイレギュラーな課題にも柔軟に対応できるスキルを備えたプレイングマネージャーの役割は大きくなっています。

プレイングマネージャーに必要とされるスキル


プレイングマネージャーとして活躍してもらうには、必要なスキルを備えた人材をポジションに充てることが大切です。どのようなスキルが具体的に求められるのかを解説します。

コミュニケーション能力

プレイングマネージャーは、高いコミュニケーション能力が求められるポジションだといえます。現場の従業員や経営層などと日々コミュニケーションを取っていく必要があるため、どのような立場の人とも円滑なやりとりが行えるスキルを身につけておくことが大事です。

プレイヤーとしては他のメンバーや顧客とのやりとりが必要であり、マネジメントの立場としてはチーム全体の進捗管理やメンバーのサポートなど、さまざまなコミュニケーションを行わなければなりません。多様な価値観や意見を認め、柔軟に受け入れていくスキルが必要です。

バランス感覚

プレイングマネージャーはプレイヤーとしての能力と、マネージャーとしての能力の両方が求められます。そのため、どちらか一方の立場に偏らず、バランス感覚を持って職務にあたっていくことが重要になるでしょう。

成長意欲

身につけたスキルや知識は、時代の変化とともに通用しなくなる場面があります。必要に応じて、新たなスキルや知識を習得していくことも、プレイングマネージャーに求められるものの一つです。

自分を成長させるために、積極的に学んでいく姿勢を見せることで、他のメンバーの学習意欲を駆り立てる能力が必要とされます。

タスク管理能力

プレイングマネージャーが担う業務は広範囲にわたるため、タスク管理の能力も不可欠となるでしょう。プレイヤー、マネージャーそれぞれの役割においてバランスを取りながら職務を遂行していくためには、高い自己管理能力が求められます。

リーダーシップ

プレイングマネージャーはリーダーとしての役割も担っているので、チームメンバーを引っ張っていくだけのリーダーシップが必要です。メンバーの意欲を高め、それぞれの適性に応じた能力を発揮してもらうには、リーダーとしての存在感が重要だといえます。

プレイングマネージャーが抱えやすい課題


プレイングマネージャーはさまざまな業務や役割を担うため、課題として抱え込んでしまう部分も多くあります。具体的な課題としては、次の3つが挙げられるでしょう。

・業務量が多い
・評価基準を設定しづらい
・マネジメント不足に陥りがち

それぞれの課題について解説します。

業務量が多い

プレイングマネージャーは前述の通り、プレイヤーとマネージャーの両方の役割を担うため、抱え込んでしまう業務量が多くなりやすい立場です。業務過多の状態が慢性化してしまえば、チームや組織にとって悪影響が生じる可能性があります。

定型業務だけでなく、イレギュラーな対応に迫られる場面も多くあるため、日常的にストレスやプレッシャーを感じやすいといえるでしょう。

評価基準を設定しづらい

プレイングマネージャーは同時に2つの役割を担うため、どちらの評価を重視するか、基準を設けておく必要があります。どのように評価をするかは、業務内容などによって異なりますが、適正な評価が行われなければモチベーションの低下につながるでしょう。

プレイングマネージャーを多く必要とする企業こそ、事前に人事評価制度や労働条件の見直しなどを行っておくことが大切です。

マネジメント不足に陥りがち

マネージャーとしての役割を十分に果たせていない場合、不足している部分をプレイヤーとしての能力で補おうとするケースがあります。一見すると業績に影響が出ていないため気付かれにくいポイントですが、本来であればマネジメント能力の向上によって解決すべき問題です。

プレイングマネージャーは個人としての業績は求められる一方で、チームや組織としての成果も求められる立場です。マネジメント能力が不足したままの状態だと、将来的にチームをうまくまとめ切れないといった事態を招く恐れがあるでしょう。

プレイングマネージャーとして力を発揮してもらうためのポイント


プレイングマネージャーとして、存分に力を発揮してもらうには以下の5つの点を重視することが大切です。

・スケジュールに余裕を持たせる
・業務の振り分けを見直す
・業務フローを精査する
・チームの自律性を高める
・マネジメントに関する知識を身につけてもらう

それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。

スケジュールに余裕を持たせる

プレイングマネージャーの業務は広範囲にわたるため、突発的に対応しなければならない業務も必然的に多くなります。イレギュラーな問題に素早く対応するには、スケジュールにある程度の余裕を持たせておくことが大切です。

スケジュールに余裕がない状態だと適切に対応できないばかりか、他のメンバーの業務にも大きな影響を与える場合があります。常に迅速な対応ができるように、組織全体の労務管理を見直してみましょう。

業務の振り分けを見直す

一人のプレイングマネージャーに業務が集中し過ぎると、パフォーマンスの低下につながるといえます。業務の負担を軽減するには、どの業務を優先的に取り組むかを決めて、周囲の理解を図る必要があるでしょう。

業務フローの見直しは、プレイングマネージャーだけに限らず、組織全体の生産性を向上させることにもつながります。1on1ミーティングなどを通じて、業務に過度な負担が生じていないかをチェックしてみましょう。

業務フローを精査する

前述の通り、プレイングマネージャーは業務過多の状況に陥りやすい立場です。そのため、タスクを細かく洗い出して、他のメンバーに任せられる部分がないかや、効率化できるところがないかなどを整理しておく必要があります。

どのタスクにどれくらい時間がかかっているのかを把握しておけば、時間管理も行いやすくなるでしょう。また、定型業務についてはITツールの導入なども検討して、自動化できないかを検証することも大切です。

チームの自律性を高める

チーム全体の自律性を高められれば、マネジメントに関する業務の負担を軽減できます。具体的な方法としては、マニュアルの作成や情報共有の徹底、メンバーの業務範囲の見直しや裁量の拡大などが挙げられます。

プレイヤーとして本人が頑張るだけでなく、チームとして自律的に働きやすい環境を整えることもプレイングマネージャーの大事な役割の一つです。

マネジメントに関する知識を身につけてもらう

プレイヤーとしての能力を高めていくことは重要ですが、一人で対応できる業務量には自ずと限界があります。そのため、プレイングマネージャーの能力を最大限に活かすには、マネジメントに関する知識を習得してもらうことが重要です。

また、同時にマネジメントの実務経験を多く積める環境を整えていきましょう。マネージャーとしてのスキルが向上することで、組織全体の生産性も高まっていくはずです。

まとめ

プレイングマネージャーは、売上に直接的に関する業務を担うプレイヤーとしての役割と、チームメンバーを引っ張っていくマネージャーとしての役割を同時に求められる立場です。そのため、コミュニケーション能力やタスク管理能力、リーダーシップに関する能力などさまざまなスキルが求められます。

人手不足や新しいテクノロジーの出現、社会情勢の変化などの影響によって、企業が持続的な成長を果たしていくには、迅速な意思決定と変化に対応できる柔軟さが必要とされています。

プレイングマネージャーは変化の激しい時代において重要な役割を担っているため、組織全体でサポートしていくことも必要です。

(制作協力/株式会社STSデジタル、編集/d’s JOURNAL編集部)

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