成果主義の導入で失敗しないためのポイント5つ~メリット・デメリットから解説~

d’s JOURNAL編集部
成果主義とは?
成果主義を導入している企業の割合と導入事例
成果主義を導入するメリット
成果主義を導入するデメリット:問題点と今後の課題
成果主義と年功序列の違い
成果主義導入で失敗しないために:押さえておきたい5つのポイント
成果主義導入後、成果が出せていない従業員を解雇できる?
成果主義導入後も適宜見直しが必要

仕事での成果や、そこに至るプロセスに応じて評価を行う「成果主義」。従来の日本企業で主流とされていた年功序列とは、相対する制度です。働き方改革の推進やコロナ禍によりテレワークが普及した近年、仕事の成果に着目して評価する成果主義が注目されています。今回の記事では、成果主義の概要や導入するメリット・デメリット、導入で失敗しないために押さえておきたいポイントなどについてご紹介します。

成果主義とは?

成果主義とは、仕事の成果やそこに至るプロセスに応じて評価する人事制度のこと。年齢や学歴などは一切関係なく、仕事での成果に基づき、昇給や昇進、減給や降格といった処遇を決定します。英語では「result-based human resource management」「performance-based pay system」などと表現されるようです。また成果主義は、短いスパンで転職を繰り返し、キャリアアップやスキルアップを図るのが一般的な欧米で主流となっている制度です。

成果主義 能力主義 結果主義
評価対象

仕事の成果とプロセス

個々人の能力の高さ

営業成績のデータなど
数値結果のみ

着目するポイント

仕事

数値

ここからは、類似した制度との違いについてご紹介します。

能力主義との違い

能力主義とは、「業務を遂行する能力」を評価対象とする人事制度です。成果主義と能力主義はどちらも「年齢や学歴にかかわらず評価を行う」という点では共通していますが、「何を評価対象としているか」が異なります。成果主義では「仕事」に着目して成果の度合いを評価しますが、能力主義では「人」に着目して能力の高さを評価します。

従業員が新たな部門に異動した場合、能力主義では成果が出せなくても「業務の過程」や「取り組む姿勢」を見て評価されるため、すぐに評価が下がることはありません。一方、成果主義の場合、結果を出せなければ評価が下がってしまうでしょう。

結果主義との違い

結果主義とは、営業成績のデータなど、数値結果のみを評価対象とする人事制度です。成果主義との明確な違いは、成果を上げるまでのプロセスは評価対象に含まれないという点です。結果主義では最終的な結果のみを評価対象とするため、「目標達成に向けてどのような計画を立てたか」「実際にどのように業務を遂行したか」というプロセスは考慮されません。

たとえば、結果主義の場合、上司や同僚とのコミュニケーションが苦手な人でも結果を出せば正当に評価され、私的感情に左右されず公正な評価を得られます。一方、成果主義では上司や部下と目標を擦り合わせ、その目標に対して成果を出せたかを評価されるため、社内でのコミュニケーションも重要な要素となるでしょう。

成果主義が注目されるようになった背景

従来の日本企業では、「終身雇用」を前提とした「年功序列」の考え方が一般的でした。しかし近年、「景気の変動」や「雇用情勢の変化」「グローバル化」「働き方の多様化」などを背景に、終身雇用から成果主義に切り替える企業が増えています。

ここからは、成果主義が注目されるようになった背景について、「人件費」と「働き方」という2つの側面から見ていきましょう。

①人件費見直しの動き:1990年代のバブル崩壊から2000年代にかけて成果主義を導入した企業が急増

1990年代のバブル崩壊により、多くの日本企業の業績が悪化しました。そうした中、経営を圧迫する要因の一つとなっていたのが人件費です。特に団塊世代が多い企業では、2000年代にかけて年功序列による人件費の高騰で、従業員を定年まで雇い続ける「終身雇用」を維持できなくなっていました。そこで従来の年功序列に代わる人事制度として注目されたのが、成果主義です。
人件費を適正に配分するための新たな人事制度として、成果に応じた適正な評価により、人件費の削減が可能な成果主義を導入する企業が増加したと言われています。成果主義と関連性が高い制度が、年俸制です。下図の「年俸制導入率の推移」にあるように、2000年ごろから年俸制の企業が増えていることで、成果主義を導入する企業が増加したと推測できます。

●年俸制導入率の推移(1996-2002)

年俸制導入率の推移

(参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構『第2章 成果主義の現実』)
(参考:『年功序列とは?1分でサクッとわかる、制度の仕組みとメリット・デメリット』『終身雇用は崩壊?実は約半数の企業が終身雇用。その是非と次の時代への打ち手とは』)

②働き方の変化:コロナ禍で急速に普及したテレワーク導入による、人事制度見直しの動き

2020年に入ってからは、従業員の新型コロナウイルスへの感染リスクを下げるため、「在宅勤務」をはじめとする「テレワーク」を導入する企業が急増しています。テレワークにより、これまで可能だった時間管理や対面型での人事評価が難しくなったため、「仕事の成果やプロセス」を基に評価する成果主義が注目され、人事評価制度見直しの動きが進んでいる状況です。
(参考:『人事評価制度の種類と特徴を押さえて、自社に適した制度の導入へ【図で理解】』『「テレワーク」とは。働き方改革に向けて知っておきたいメリット・デメリットや実態』『【弁護士監修】在宅勤務の導入方法と押さえておきたい4つのポイント◆導入シート付』)

成果主義を導入している企業の割合と導入事例

日本で成果主義という言葉が脚光を浴びたのは、1992年に国内大手の電機メーカーである富士通株式会社が、成果主義人事を導入したことによります。近年、日本では成果主義を導入する企業が増加傾向にありますが、成果主義が一般的だと言われている欧米ほどには浸透し切っていないのが現状です。

成果主義の導入率に関するデータはありませんが、2004年に厚生労働省が行った調査によると、「個人業績を賃金に反映させる」企業の割合は規模計で53.2%でした。従業員数300~999人の企業では73.6%、従業員数1,000人以上の企業では83.4%と、企業規模が大きくなるほど、「個人業績を賃金に反映させる」企業の割合が高いことがわかります。そのため、大企業を中心に成果主義の導入が進んでいると推測できます。

●「個人業績を賃金に反映させる」企業の割合

「個人業績を賃金に反映させる」企業の割合

(参考:厚生労働省『平成16年度 就労条件総合調査』、独立行政法人労働政策研究・研修機構『第2章 成果主義の現実』)

ここからは、どのような業界・職種で成果主義が取り入れられているのか、導入事例を交えてご紹介します。

成果主義導入が多い業界・職種

グローバル展開を視野に入れているアパレル業界や不動産業界、ベンチャーなどで成果主義を導入している企業が多いようです。成果主義の導入率が高い職種としては、営業や企画開発、コンサルタントなどが挙げられます。「個人の仕事ぶりが、成果に直結しやすい」職種や「仕事の成果を数値化しやすい」職種ほど、成果主義を導入しやすいと言えるでしょう。

導入事例①:花王株式会社~目標管理を活用~

花王株式会社では、年功序列が主流だった1965年から従業員の能力開発支援に力を入れ、目標管理制度を導入しました。2000年ごろ、管理職を除いた職種ごとに役割等級の仕組みを変えた「職群制度」と呼ばれる人事制度を整備。制度内容として、生産部門では結果のみならず「習熟度」という独自の項目を加えるなど、部門と職種ごとの特性に配慮した評価基準を設けています。
この制度では「トップダウンによる一律の目標設定」や「短期スパンでの実績要求」は行わず、従業員の「能力開発」や「創造性の発揮」を促す環境整備を重視しているようです。そして、能力やパフォーマンスが発揮できない従業員に対しては、役割の変更や能力開発を支援しているそうです。
(参考:花王株式会社 常務執行役員 青木寧『花王の人財開発について~人財開発のための評価制度の重要性~』)

導入事例②:武田薬品工業株式会社~行動特性と成果責任を重視~

武田薬品工業株式会社では、1997年に全従業員を対象に成果主義を導入しました。導入時に重視したのは、「コンピテンシー(行動特性)」と「アカウンタビリティー(成果責任)」です。コンピテンシーの評価項目には「職務知識」「問題解決」「仕事への取り組み姿勢」「チームワーク」などを挙げ、その評価基準も公開されました。
目標管理を実現するために評価者となる上司に対しては、「目標設定方法」「ゴールイメージ共有法」など、評価者研修を徹底的に実施。その後も改善を繰り返し、現在は職種に応じた異なる賃金水準と評価基準を設ける「職種別賃金体系」となっているようです。
(参考:武田薬品労働組合前中央執行委員長(現顧問) 髙橋俊之『タケダの成果主義とその課題』『テレワーク中にサボっていないか、日本企業が従業員を熱心に監視してしまう理由』)
(参考:『サンプル付き/コンピテンシー評価はまずモデルの作成から~すぐに使える項目例で解説』)

成果主義を導入するメリット

成果主義を導入することで、企業にとってどのようなメリットが期待できるのでしょうか。成果主義を導入するメリットについてご紹介します。

従業員のモチベーションアップにつながる

成果主義では、若い世代や転職などで社歴の短い従業員も、成果に見合った評価を受けられるため、従業員のモチベーションアップにつながりやすいというメリットがあります。成果に応じて昇給や昇進という目に見えた形で対価があることで、次に取り掛かる仕事へのモチベーションを維持することもできるでしょう。また、努力の結果が評価となって表れるため、人事評価への満足度が高まり、「評価してもらえるよう、仕事を頑張ろう」とさらなる努力を重ねる従業員が増えるでしょう。

競争意識により、個人の能力が向上しやすい

成果主義を導入すると、より高い成果を上げたいと思う従業員が増える傾向にあります。そのため、組織やチーム内で競争意識が生まれ、メンバー同士が互いに切磋琢磨していくようになります。それにより、一人一人の能力が向上しやすくなるでしょう。

能力が高く、自社に合った人材を獲得しやすい

能力の高い人材ほど、年齢や勤続年数に左右されず、自身の能力や仕事の成果で正当に評価される環境を選択する傾向にあります。そのため、成果が正当に評価される環境を整備することは、能力の高い人材に自社を選んでもらうためのアピールポイントになるでしょう。その結果、能力が高く、自社に合った人材を獲得しやすくなると考えられます。

生産性の向上が期待できる

成果主義では、目標を立てて成果を出すことが評価に直結するため、成果を上げるために努力する人材の増加が期待できます。成果を上げて評価される同僚たちに刺激を受けて奮起する人が増えると、生産性向上にもつながるでしょう。そして、成果主義では仕事の成果に応じて報酬を支払うため、成果に対して適切ではない人件費を削減できるというメリットもあります。人件費の最適化によって適切な所に資金を再分配できるため、業績改善にも効果的だと考えられます。
(参考:『【5つの施策例付】生産性向上に取り組むには、何からどう始めればいいのか?』)

成果主義を導入するデメリット:問題点と今後の課題

成果主義にはさまざまなメリットがある一方で、デメリットもあります。成果主義の問題点と今後の課題についてご紹介します。

個人プレーによるチームワークの希薄化

成果主義を導入する際に問題点となるのが、チームワークの希薄化です。個人の成果が評価に直結する組織では、個人プレーに走る人が増える傾向にあるためです。従業員同士が「自分の成績さえよければいい」と考えるようになると、協力を拒んだり、ノウハウを共有しなかったりといった問題が発生します。それにより、組織全体のパフォーマンスが低下する可能性もあります。個人プレーを防ぐためのルール設定や、チームワークを維持するための対策が課題となるでしょう。

常に成果を求められることでストレスを抱えやすい

成果主義には、従業員が「成果を出さなければならない」というプレッシャーを常に感じ、ストレスを抱えやすくなるという問題点もあります。評価の高さに比例し、目標も高くなるため、精神的に疲弊してしまう人も出てくるでしょう。成果主義では可視化しやすい短期成果にばかり目が行きがちです。しかし、短期間で目に見える成果を上げられなくても、中長期的な目線で見れば企業の利益となっている人材もいるでしょう。従業員に「自社に合った評価制度の在り方」をヒアリングするなど、成果主義が離職につながらないための取り組みの整備も課題となります。

部署の特性によって評価基準が設定しづらい

成果主義では、部署の特性によって「評価基準があいまいで設定しづらい」という点も課題として挙げられます。たとえば、営業や企画開発のように短期間で一定の成果が見込める部署は、成果をデータ化できるため評価もしやすいと言えます。一方、成果を数値化できない法務や経理などのバックオフィス系の部署や、成果が出るまでに時間がかかる研究職などは、成果主義を導入することで正当な評価をしづらくなる傾向があります。
毎日ルーティンワークを繰り返すバックオフィス系の部署では、資料作成の「正確さ」「早さ」「対応力」など、客観的に評価できる項目を作成することが課題となります。一方、研究職など短期間での評価が難しい部署については、部署やチームの特性に合わせ、成果主義以外の制度を検討するとよいでしょう。従業員を一定の基準を基に評価する場合、職種別に成績や能力などで目標項目を設定できる「人事考課」も活用できます。
(参考:『人事考課をうまく運用するために、押さえたい目標設定と評価のポイント』)

賃金格差が生まれやすくなる

成果主義は個人の働きぶりによって賃金に差を付けるシステムであるため、「賃金格差が生まれやすくなる」という問題点もあります。賃金格差が大きくなりすぎると、「評価や処遇制度の納得性が得られない」などの問題点が発生します。特に、これまで年功序列型の賃金制度を実施していた企業では、勤続年数の長い従業員ほど不満を感じる傾向にあるようです。
独立行政法人労働政策研究・研修機構が発表した「第2章 成果主義の現実」では、1999年までに成果主義を導入した企業と、2000年以降に成果主義を導入した企業では、1999年までに導入した企業の方が制度・運用ともに賃金格差が大きいことが明らかになりました。その理由として、2000年以降に成果主義について問題点が顕在化し、失敗事例を学んだ上で成果主義の導入に踏み切った企業が増えたからだと考えられます。
賃金格差による不満を生じにくくするためには、成功を再現する能力として「コンピテンシー(行動特性)」を重視したり、部門やチームの業績を評価の一部に加えたりするなど、評価の比重を検討していくことが重要となるでしょう。
(参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構『第2章 成果主義の現実』)
(参考:『サンプル付き/コンピテンシー評価はまずモデルの作成から~すぐに使える項目例で解説』)

成果主義と年功序列の違い

成果主義は、「年功序列」の対義語や反対語としても、よく使用される言葉です。年功序列とは、年齢や勤続年数に応じて「役職」や「賃金」を上昇させる人事制度のこと。勤続年数や年齢が高くなるほど経験やスキル、ノウハウが蓄積されるという考えに基づいて運用されており、定年まで同じ企業で働く「終身雇用」を前提としています。成果主義と年功序列の違いについて、下の表にまとめました。

成果主義 年功序列
評価基準

仕事の成果と業務遂行のプロセスを重視する

年齢、勤続年数を重視する

評価のしやすさ

評価基準が複雑化し、評価しづらい

評価基準が明確で、評価しやすい

賃金

成果に応じて上昇・減少する

年齢、勤続年数に応じて上昇する

人件費

適切な再分配や削減が可能

従業員の高齢化に伴い増大

帰属意識

低くなる傾向がある

高くなる傾向がある

定着率

低くなる傾向がある

高くなる傾向がある

成果主義と年功序列の一番の違いは「評価基準」にあります。年功序列の評価基準である「年齢」「勤続年数」は明確で評価しやすいですが、成果主義の「仕事の成果」「業務遂行のプロセス」は評価基準が複雑で、評価しづらいと考えられています。
そして、成果主義の賃金は成果に応じて上昇・減少するため、人件費の適切な再分配や削減が可能です。一方、年功序列では年齢や勤続年数に応じて賃金が上昇するため、従業員の高齢化に伴う人件費の増大が懸念されています。

年功序列のメリット、デメリット

年功序列は、勤続年数に応じて賃金が上昇するため、長期勤務を前提として働く人が増えるというメリットがあります。長期間一緒に働いていると従業員同士の理解が深まり、チームワークが強固になることから、企業への帰属意識の高まりや定着率の向上が期待できるでしょう。また、経験豊富な従業員が多く在籍することで、若手人材の育成システムを確立しやすいという効果もあります。

一方、年功序列では仕事の成果と評価が連動しないため、従業員が目的意識を持ちにくく、生産性やモチベーションを向上させにくいというデメリットがあります。労働意欲や目的意識の高い若手人材ほど、成果を上げても評価されない状況に不公平さを感じて、離職しやすくなるのも特徴です。加えて、年功序列では年齢や勤続年数に伴い賃金の上昇を確約しているため、従業員の高年齢化によって人件費が増大することも課題に挙げられます。

日本での年功序列制度の導入割合

公益財団法人日本生産性本部の発表によると、日本での年功序列の導入割合は、2018年時点で47.1%でした。1999年の78.2%から31.1%低下しています。一方、役割・職務給といった成果に対する賃金制度は、2018年時点で57.8%に増え、年齢・勤続給を基本とする年功序列の導入率を上回りました。

日本での年功序列制度の導入割合

(参考:公益財団法人 日本生産性本部『第16回 日本的雇用・人事の変容に関する調査』より一部改変)

年功序列制度が徐々に崩壊しつつある

これまで日本で主流だった年功序列ですが、最近では廃止する企業が増えています。その理由として、「バブル崩壊による終身雇用の見直し」「少子高齢化による労働人口の減少」「テクノロジーの発展による人材の流動化」の3点が挙げられます。このような時代の流れを背景に、年功序列から成果主義に移行する企業が増えてきています。
(参考:『年功序列とは?1分でサクッとわかる、制度の仕組みとメリット・デメリット』『終身雇用は崩壊?実は約半数の企業が終身雇用。その是非と次の時代への打ち手とは』)

成果主義導入で失敗しないために:押さえておきたい5つのポイント

成果主義の導入に失敗しないためには、どのような対応が必要なのでしょうか。成果主義を導入する際に押さえておきたい5つのポイントを紹介します。

自社での成果を定義する

成果主義を導入する際は、まず評価基準となる「自社での成果」を定義することから始めましょう。従業員1人当たりが生み出した成果を意味する「労働生産性」には、成果を付加価値として表す「付加価値労働生産性」と、生産量や金額で表す「物的労働生産性」があります。自社での成果として、何を指標とし、何を必要な能力とするのかを明確にしましょう。評価ポイントや昇給・昇進の基準を設定する際は、「評価者が誰であっても同程度の評価になる」「評価された人が納得できる基準である」といった点を意識することが重要です。また、短期間で成果を出しにくい部署や役職への配慮として「評価項目の細分化」に取り組むのもよいでしょう。
(参考:『【5つの施策例付】生産性向上に取り組むには、何からどう始めればいいのか?』)

賃金制度を整える

自社での成果を定義した上で、賃金制度を整備しましょう。成果を賃金に反映する方法として、「給与を歩合制にする」「成果に応じて賞与額を決定する」「成果に応じてインセンティブ報酬を支給する」「年俸制を導入する」などが挙げられます。このように成果主義を導入する際は、賃金制度を改める必要があります。新たな賃金制度の導入後は、就業規則の賃金規程に変更後の制度内容を明記しましょう。そして、賃金制度の変更は、従業員のモチベーションや生活に多大な影響を与える可能性があります。やむを得ず、従業員に不利となるような労働条件の変更を行わなければならない場合は、不利益変更にならないよう、従業員に対し十分な説明を行い、合意を得るようにしましょう。
(参考:『【社労士監修・サンプル付】就業規則の変更&新規制定時、押さえておきたい基礎知識』『【社労士監修・テンプレート付】賃金規程の書き方・変更方法と注意すべきポイント』『【弁護士監修】不利益変更を実施する場合の対応方法とこんな時どうする?16 の事例』)

部署や役職ごとに人事評価制度を整える

部署の特性によっては、評価基準を設定しづらい場合があるため、部署や役職ごとに人事評価制度を整備することが重要です。人事評価制度とは、従業員の能力や企業への貢献度、業務遂行力などについて評価を行い、その結果を従業員の処遇に反映させる制度のこと。成果主義では、適正な処遇を実現するため、客観的な指標に基づく評価を行う必要があります。

評価基準を明確化する方法として、「人事評価の目的を再確認する」「評価制度が正しく機能しているか、スケジュールを見直す」などが挙げられます。例として、適切な人材配置が目的の場合、評価項目の見直しや、賞与・給与査定との連携などが必要となるでしょう。また、業務上必要とされるスキルや求められる成果などを担当職務ごとに明記する「ジョブディスクリプション」も活用できます。ジョブ型雇用や職務給を導入している欧米の企業では、ジョブディスクリプションを作成することで業務上の無駄や非効率を減らし、生産性向上につなげています。
(参考:『人事評価制度の種類と特徴を押さえて、自社に適した制度の導入へ【図で理解】』『ジョブディスクリプションとは?テンプレートと記載例を使って作成、採用・評価に活用!』)

売上や数字だけではなく、目標達成状況も評価する

成果主義では仕事の成果に応じて評価しますが、売上や数字だけを目標にしないことがポイントです。先述した通り、成果主義はスタンドプレーを生み出しやすいため、「企業」「チーム」「個人」の目標をリンクさせる目標管理方法の「OKR」を用いて、目標達成状況も人事評価に反映するとよいでしょう。高い成果につながる行動特性を意味する「コンピテンシー評価」を基準とした評価項目の作成や、上司だけではなく部下や同僚など多角的な視点で評価を行う「360度評価」など、自社に適した評価制度を導入するのも一つの方法です。
(参考:『人事評価制度の種類と特徴を押さえて、自社に適した制度の導入へ【図で理解】』『OKRとは?Googleやメルカリなど導入企業の事例に学ぶ、失敗しない導入方法』『コンピテンシーとは?1分でサクッとわかる!意味や使い方、スキルとの違いを解説』)

成果主義を効果的に運用するために、他の制度と組み合わせる

成果主義は、労働者本人の裁量で仕事の進め方や労働時間を決定できる「裁量労働制」と組み合わせることで、生産性の向上が期待できます。裁量労働制では、従業員は自分に最適な方法やペースで業務を進められるため、業務効率化につながるのがその理由です。また、職務の難易度や責任の度合いに応じて給与を支払う「職務給」にもマッチする評価制度であると言われています。

成果主義を効果的に運用するためには、評価者の研修と育成も欠かせません。評価者が評価基準に対する理解度を深め、評価する技術を習得できるように、研修や講習会などを設けて評価スキルの向上につながる対策を用意しましょう。メンバーの状況把握や人材育成といった観点から、上司と部下が1対1で定期的に対話を行う「1on1」と組み合わせるのも有効です。
(参考:『【弁護士監修】裁量労働制を導入するなら、ここに注意!正しく運用するための基礎知識』『【1on1シート付】1on1で何を話す?失敗しない方法を実施前に知っておこう』『1on1に対するはたらく側の本音。調査から見える「あるべき姿」とは』)

成果主義導入後、成果が出せていない従業員を解雇できる?

成果主義の導入により、十分な成果を出せている従業員とそうではない従業員が明確に分かれるでしょう。しかし、十分に成果を上げられていないからといって、企業はその従業員を自由に解雇することはできません。労働契約法第16条により、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定められているからです。

能力不足や成果不足を理由にただちに解雇することは、基本的に不当解雇に当たるため、まずは十分な指導・教育を行った上で、「降格」や「賃金の引き下げ」などを検討するとよいでしょう。
(参考:『問題社員の特徴と違法にならない対応方法。協調性がない・無断欠勤…どう対応する?』)

成果主義導入後も適宜見直しが必要

時代や雇用形態の変化に伴い、評価基準も変更される可能性があるため、成果主義導入後も適切に制度を見直す必要があります。見直し方法の一つとして、「チームの仕事を評価対象に加える」ことで、個人だけではなく組織のチーム力向上が期待できるでしょう。さらに、「従業員にヒアリングし、自社に合った成果主義の在り方を模索する」ことで、人事評価に対する従業員の不満解消にもつながります。

まとめ

仕事の成果に応じて評価する成果主義には、「従業員のモチベーションアップ」や「自社に合った人材を獲得しやすい」といったメリットがある半面、「チームワークの希薄化」や「評価基準を設定しづらい」などのデメリットもあります。「部署や役職ごとに人事評価制度を整える」「目標達成状況も評価する」などのポイントを押さえた上で成果主義を導入し、導入後も必要に応じて見直しを行いましょう。他社の導入事例なども参考に、自社に合った人事制度を検討してみてはいかがでしょうか。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、編集/d’s JOURNAL編集部)