退職を決意した人は、本当の理由を言わない?【退職理由・交渉のホンネ調査2019】

d's JOURNAL編集部
退職経験者・検討者に聞く「本当の理由」。給与、環境、人間関係が上位に
半数以上の人が、会社に「本当の退職理由」を伝えていない
会社に引き留められたことがある人は、ほぼ半数
退職希望者は相談時に引き留めてほしいのか?
退職を引き留められた際、会社にとどまるのか?
退職を未然に防ぐために人事担当者ができる対策

社員から退職の意思を告げられた際にどのように対応すべきか、頭を抱える人事担当者も多いのではないでしょうか。部署異動で引き留められるのか、昇給など何らかの条件を提示して引き留めた方がよいのか、あるいは引き留めたところで退職希望者の気持ちを変えられるのかー。退職者の本音についてわからない部分が多い中で、退職意思を固めた社員の決意を変えることは難しいケースがほとんどでしょう。

d’s JOURNAL編集部では、昨年に引き続き“退職理由について”の調査を実施。「退職経験がある」「退職希望を上司や人事担当者に相談したことがある」という20代・30代のdoda会員298人を対象に、実状に迫ることで、退職を決断・検討する社員のリアルな声が明らかになりました。昨年の調査結果との違いや傾向などを比較しながら、社員の退職を未然に防ぐために人事担当者ができる対策についてもご紹介します。

退職経験者・検討者に聞く「本当の理由」。給与、環境、人間関係が上位に

これまでに退職の経験がある人や、退職希望を上司や人事担当者に相談したことがある人は、どのような理由で退職を決意したのでしょうか。「退職した本当の理由」について、昨年の調査結果と比較しながら、2019年の傾向を探ってみました。

働き方改革や求人の売り手市場により、待遇や働き方に対する不満が上位に

「本当の退職理由」について聞いてみたところ、「給与への不満」(17.3%)が最も多く、昨年から大幅にランクを上げる結果となりました。次点が「業務過多・労働環境に不満」(15.1%)で、昨年と同様の2番目となっているほか、新たに「雇用形態や勤務時間などの働き方を変えたい」(12.8%)がランクインしています。

本当の退職理由

具体的には「昇給する見込みがない」「労働環境の改善が望めない」など、現在の会社で働き続けていると未来を描けないと感じた場合に退職を考える人が多いようです。近年は働き方改革の認知や求人の売り手市場といった影響もあり、「他にもっと良い条件の会社があるのではないか」と、給与や雇用形態、労働条件などを他社と比較して転職に至る人が増えていると考えられます。

「給与への不満」の回答の中から一部抜粋
●入社時に提示されていた年俸と賞与支給時の支給額が合っていなかったため、会社の将来に不安を感じて退職した(小売 / 営業職 / 32歳男性)
●賞与支給の不安定さと業績不振により、未来が見えてこなかったので退職を決めた(電池製造 / 研究開発 / 36歳男性)
●10年勤めたが基本給もほとんど上がらず、給料の割に仕事量が合わなかったため退職を決めた(メーカー / 技術職 / 33歳男性)

「人間関係への不満」を理由とする退職希望者は依然として多い

昨年の調査で最も多かった「人間関係への不満」(14.1%)は今年も3番目に多く、依然として上位に入っています。また「上司に気に入られた人が評価される」「上司と仕事のやり方が合わなかった」などの回答から、上司や同僚との間で感じるストレスや、上司からの評価に対し不満を抱いたことが退職のきっかけになっているようです。このことからも、社員同士や組織内での相互理解を深めると同時に、公平かつ納得感のある評価基準を明示することが大切だと言えるでしょう。

また、「人間関係」を理由にした人の中には、パワハラやモラハラといったハラスメントにより、退職を決意するまでに追い込まれた人が一定数いることもわかりました。これらの事象は、問題が発覚してからでは手遅れです。相談窓口を用意するなど、人事担当者として日ごろからの配慮を心掛けましょう。

(参考:『【弁護士監修】パワハラ防止法成立。パワハラ問題へ企業はどう対応する?対策法を紹介』)

性別、年代によって退職理由は異なる

男女別で見ると、男性よりも女性の方が「人間関係への不満」を理由とする割合が高く、特に30代女性は19.0%と、女性の退職理由の中では最も多くなっています。

20代・30代男性

20代・30代女性

一方、30代男性の23.6%が「給与への不満」を理由に挙げています。仕事内容に対して給与が見合っていない現状や、キャリアプランへの不安などから、より高い収入を求めて退職を決意していると推測できるでしょう。20代男性は「雇用形態や勤務時間などの働き方を変えたい」(20.0%)が最も多く、次いで「新しい職種に挑戦したい」(17.5%)、「職務内容のミスマッチ」(12.5%)という結果になっています。新卒入社時から一定の業務を経験したことで、自分に合う働き方を求める人や仕事内容にミスマッチを感じ始める人が出てくるようです。

半数以上の人が、会社に「本当の退職理由」を伝えていない

上司や人事担当者に「退職したい本当の理由」を伝える人は、どの程度いるのでしょうか。それぞれの割合と、実際にどのように伝えたのかを聞きました。

上司よりも人事担当者の方が「本当の理由」を言いにくい?

「退職した本当の理由を会社に伝えましたか?」という質問に対し、上司へは「伝えた」が47.0%、「伝えなかった」が53.0%。そして人事担当者へは「伝えた」が35.9%、「伝えなかった」が64.1%という結果になりました。会社の規模や体制によっては、人事担当者との接点が少ない場合もあり、上司と比較して意思を伝えにくいことが背景にありそうです。

本当の理由を伝えるか?

上司や人事担当者に「本当の退職理由」を伝えた理由

「本当の退職理由を上司に伝えた」と答えた人に、正直に伝えた理由を聞いてみると以下のような回答がありました。

●上司とは人間関係が良好で、また上司にも転職経験があり理解があるため、一番不満に思っていた理由を話した(医薬品・医療機器 / 事務・アシスタント / 25歳女性)
●やりたいことができなかったことを上司に伝え、理解してくれた(建設・プラント・不動産 / 31歳女性)

上司との関係が普段から良好な場合は、本音を話し、理解を得た後に退職したいと考える人が一定数いるようです。退職の理由によっては出戻り・アルムナイや、形を変えて今後も仕事で関わる可能性もあるでしょう。上司・部下間で信頼関係が築けていることはマイナスにはなりません。マネジメント層への研修の際に、部下とのコミュニケーションの取り方を伝えるなど、現場の環境づくりに対して人事担当者はどのようなフォローができるかを考えてみてはいかがでしょうか。

一方で、「本当の退職理由を人事担当者に伝えた」と答えた人にも同様の質問をしてみると、以下のような回答がありました。

●会社として職場環境を改善してほしいという想いがあり、本当の理由を伝えた(小売 / 企画/ 37歳女性)
●給料面の不満があった。退職時に会社に伝えることで、他の人にとって少しでも改善につながればいいと考えた(人材サービス・アウトソーシング / 技術職・専門職 / 34歳男性)

建前ではない“本当の退職理由”を人事担当者(会社側)に伝えることで、組織体制や評価制度、労働環境の改善につながることを期待する人もいることがわかります。入社時の手続きや入社研修など、最初に人事担当者と深く関わった場合や、直属の上司との問題で悩んでいた場合などに、人事担当者に相談するケースが多いようです。人事担当者が社員から退職希望の相談を直接受けた際には、まずは現状を把握し、部署異動や配置転換などで改善される可能性がないかを考えるなど、客観的な目線での対策が求められるでしょう。

上司や人事担当者に伝えた退職理由と「本当の理由」は違う

このように、上司や人事担当者に「本当の理由」を伝えなかった人は半数以上いますが、退職する際に伝えた「建前」の理由はどのようなものなのでしょうか。「上司に伝えた退職理由」「人事担当者に伝えた退職理由」について聞いてみると、どちらも「新しい職種に挑戦したい」が最も多く、次いで「出産、介護などの家庭の事情」「別の業界に挑戦したい」という結果になっています。

上司・人事に伝えた理由

また、双方に対して「そもそも(退職理由を)伝えていない」という回答も多く上がっています。「上司や人事担当者に理由を聞かれなかった」「退職する理由が明確だった」ということから、はっきりと伝えずに退職した人もいるようです。この調査から、「本当の退職理由」と「上司や人事担当者に伝えた建前の退職理由」には、大きな隔たりがあることがわかります。

本当の退職理由を伝えなかった理由としては、以下のような回答がありました。

・業務改善を何度も直訴したが変わらず、無駄だと思った
・(上司・人事担当者ともに)本音で話せる関係性ではなかった
・既に意思は固く、引き留められたくなかったため

退職希望者は上司や人事担当者との関係を踏まえ、スムーズに退職できることを望むために、本当の退職理由を伝えない傾向にあるようです。自社が抱える課題を改善するためにも、上司や人事担当者は退職希望者の「本当の理由」を知る必要があります。組織サーベイなどを活用してコンディションを測る、職場やキャリアに関する相談窓口を設置する、定期的に面談の機会を設ける…など、状態を常に把握できる環境を整えることや、社員からのアラートを察知できるようにすることが大切です。もちろん、単に数値や内容を聞いて終わりでは意味がありません。上司や人事担当者が改善に取り組む前向きな姿勢を見せることが重要でしょう。

会社に引き留められたことがある人は、ほぼ半数

社員から退職の意思を伝えられた際、上司や人事担当者はどの程度の割合で引き留めようとするのでしょうか。退職希望者のうち、どれだけの人が引き留められたのか、また引き留められた場合にどのような条件を提示されているのかを探りました。

退職の意思を伝えた際に、引き留められた人は5割以上

「退職の意思を伝えた際に、会社から引き留められましたか?」という質問に対し、「引き留められた」が53.7%、「引き留められなかった」は46.3%で、昨年の調査結果とほぼ同様の結果となりました。退職希望者の半数以上が引き留められており、上司や人事担当者、経営者から「会社に残ること」を提案されているケースが多いようです。

退職の意思を伝えた際に、会社から引き留められましたか?

引き留める際に、ほとんどの会社が条件を提示できていない

条件提示

「引き留められた」と回答した人に「会社からどのような条件提示が行われたか」を聞いたところ、「部署や給与などの条件は変わらないが、熱心に口頭で引き留められた」(45.0%)という声が圧倒的に多く、次いで「希望の働き方・雇用形態へのシフト」(20.6%)という結果となりました。上司や人事担当者が引き留めるに当たり、退職希望者が求める条件に応えることが難しく、まずは気持ちを伝えることで思いとどまらせようとしていると推測できます。

退職希望者は相談時に引き留めてほしいのか?

退職希望の相談をする際、「引き留めてほしかった」と考えていた人はどのくらいいるのでしょうか。「引き留めてほしかった人」「引き留めてほしくなかった人」のそれぞれの割合と理由について聞きました。

約半数は会社に引き留めてほしくない?

「正直なところ、引き留めてほしかったですか?」という質問に対して、「引き留めてほしくなかった」(50.7%)が半数を超え、次いで「どちらともいえない」(36.7%)、「引き留めてほしかった」(11.7%)という結果になりました。退職希望を口にした時点で、既に次のステップへの意思は固く、引き留められることを希望する人は少ないことがわかります。つまり、退職の意思を留意させる手段としての「引き留め」は、あまりポジティブな効果を生まない可能性があることが読み取れます。

正直なところ、引き留めてほしかったですか?

退職の意向を伝えるタイミングで、退職意思や転職先はほぼ決まっている

「会社に退職の意向を伝えたとき、転職先は決まっていましたか?」という質問では、43.0%が「次の会社の内定承諾をしていた」、8.1%が「内定承諾まではしていないが、オファーをもらっていた」と答えました。退職の相談をする時点で、約半数が退職意思や転職先がほぼ決まっているようです。この結果からも、会社から引き留めを望んでいる人は少なく、退職意思を覆すことは難しいと言えるでしょう。

会社に退職の意向を伝えたとき、転職先は決まっていましたか

退職を引き留められた際、会社にとどまるのか?

退職を引き留められた際、退職希望者はどのような選択をするのでしょうか。「会社にとどまる選択をした人」「会社にとどまらず退職に至った人」のそれぞれの割合と理由について聞きました。

退職希望者のうち、約9割がそのまま退職に。上司や人事担当者の対応する姿勢が重要

「引き留められて、会社にとどまりましたか?」という質問に対して、「会社にとどまらなかった」と回答した人は88.1%と高い数字になりました。会社に引き留められたとしても、多くの人たちがそのまま退職に至っていることがわかります。年代別・性別で見た場合には、20代男性で最もその傾向が強いことが見て取れます。

引き留められて、会社にとどまりましたか?

会社にとどまらなかった理由として「次の転職先が決まっていて、意向が固まっていたから」(39.0%)が最も多く、「その場しのぎの対応で、改善されなさそうと感じたから」(31.2%)という声も上がっています。

上司や人事担当者の言葉に心を動かされて会社に残る人がいる一方で、対応する姿勢や表情、話し方などから「その場しのぎ」だと受け取られてしまうこともあります。「どのような態度・姿勢で退職希望者の相談に乗っているか」「真剣に現状改善に努めようとする姿が見られるか」で、退職希望者の選択が変わる可能性もありそうです。

とどまらない理由

退職をとどまった人は2割以下。熱心な引き留めや条件提示がきっかけに

引き留められた退職希望者のうち、引き留められて会社にとどまった人は11.9%で、非常に少ないことがわかります。引き留めに応じ、会社にとどまる決断をした人の多くが「引き留めてくれた上司や人事担当者の言葉に心を動かされたから」(36.8%)、次いで「提示されたポジション(異動や業務変更)に納得したから」(21.1%)と答えています。異動や業務変更など、退職希望者が求める条件を提示することが有効なケースもありますが、上司や人事担当者が「これからも一緒に働きたい」「会社にいてほしい」という気持ちを伝えることが、最も大きな効果を発揮する可能性があります。これまで会社や業務に貢献してくれたことに改めて感謝を伝え、今後期待したいことなどを具体的に伝えるとよいでしょう。

とどまってから後悔している可能性も。継続的なフォローが必要

上司や人事担当者に引き留められて会社にとどまる決意をした人に、その後の気持ちについて聞いてみたところ、「一日が始まることが辛く、後悔した」「根本的な問題解決には至らず、スキルを身に付けて転職しようと気持ちを切り替えた」などの声が上がっています。このように、会社にとどまった後も前向きになれず迷いが残り、結果的に退職するケースが多く見られます。会社にとどまるように引き留めるだけでなく、その後どのようにフォローを行っていくかを考える必要がありそうです。

退職を未然に防ぐために人事担当者ができる対策

「退職相談の時点でほぼ意思が固まっており、会社が引き留めても退職をとどまる人が少ない」という結果から、社員の早期離職や退職を未然に防ぐためには、場当たり的な引き留めではなく、事前の対策が重要だと言えます。ここでは、人事担当者としてできる研修やフォローなど、幾つかの対策をご紹介します。

対策①:まずは現状を把握する

まずは現状の離職率状況を確認し、「何が退職の理由となっているか」を明らかにすることが大切です。離職率を会社全体だけでなく、年代別や職種別などのさまざまな角度から見てみることで、退職理由を特定しやすくなります。現状を把握した上で、「部署異動や配置換え」「社員のキャリア開発のサポート」や「人事評価制度の見直し」「多様な働き方の提案」などの施策を検討し、離職率の低減につなげましょう。
(参考:『離職率とは?計算方法や業種別平均離職率、離職率を下げる方法【計算用エクセル付】』)

対策②:意見を言いやすい関係性を築くため、研修やフォロー制度を導入する

「人間関係への不満」を退職理由に挙げる人が多いことから、日ごろから意見を言いやすい関係づくりが必要だと言えます。「メンター制度」「ブラザー・シスター制度」「OJT」といった制度を取り入れ、新入社員と先輩社員の関わりを増やすことが早期離職の防止に役立つでしょう。また、定期的に面談を行う「1on1」を導入することで、社員のキャリアに対する考え方を確認することができます。社員の状況に応じて、適切な研修やフォローを検討してみましょう。
(参考:『メンター制度導入のメリット・デメリットとは。 押さえておきたい制度運用のコツも解説』『ブラザー・シスター制度は早期離職防止に効果アリ?OJT・メンター制度との違いとは』『OJTとは?メリットデメリット、やり方、手順を徹底解説【受け入れシート付』『【1on1シート付】1on1で何を話す?失敗しない方法を実施前に知っておこう』)

対策③:面接の時点でミスマッチを減らす

退職者を減らすには、採用の段階からミスマッチを減らすことが重要です。求職者に自社のことを説明するときは、条件や待遇面をPRするだけでなく、仕事内容や企業風土などについて「正しい情報」を伝えることを心掛けましょう。また求職者が自社に合う人材かどうかを見極めるために、面接時の質問を工夫することも効果的です。
(参考:『面接官を初めてやる人が知っておきたい質問例7つと面接ノウハウ【面接評価シート付】』)

対策④:たとえ退職しても良好な関係性を築く

社員の退職はできる限り避けたいものの、自分のスキルを活かして転職や起業するなど、一社にとどまらない「雇用の流動化」が一般化していることも事実です。そこで最近では、一度退職した人を再雇用につなげる「アルムナイ」を活用する企業が増えてきています。退職者と良好な関係を築いておくことで、優秀な人材の確保につなげましょう。
(参考:『アルムナイとは?退職者ネットワークを活用し、工数をかけずに優秀人材の採用へ』)

強引な「引き留め」ではなく、「本当の退職理由」を確認して改善を

これまでの調査結果から、社員から退職の相談を受ける時点で本人の退職意思が固まっているケースが多く、退職の相談をする社員は、大きな覚悟と決意を持って相談に臨んでいると言えます。そのため、人事担当者は社員からの相談に真摯に向き合い、「なぜ退職の決断に至ったか」を紐解くことが重要です。

また、強引に引き留めて社員が退職をとどまったとしても、本人が継続的に悩みを抱える可能性があります。定期的なフォローを行うとともに、「本当の退職理由」から浮き彫りになった根本的な問題の解決にも取り組みましょう。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、企画/d’s JOURNAL編集部 齋藤 裕美子)